そもそもスマートタグって何?
スマートタグとは?
スマートタグは、なくしそうな物や忘れがちな物に取りつけて使うIoTデバイスです。
あらかじめスマホと連携させておくことで、スマホの表示で物の場所を特定したり、アラームを鳴らして探しやすくしたりでき、「忘れ物防止タグ」「落とし物防止タグ」などと呼ばれることもあります。
スマートタグの明確な定義はありませんが、家電批評ではこうした類似製品を以下の2つにジャンル分けをしています。購入する際には、まずその製品が“本当に忘れ物防止タグなのか”をチェックすることも重要です。
スマートタグの種類は?
スマートタグ(忘れ物防止タグ・落とし物防止タグ)
スマホのアプリと連携し、基本的にスマホとの通信はBluetoothで行います。
通信距離は製品によってまちまちですが、最大数十メートル程度。比較的障害物にも強いのが特徴です。
家の中で物に隠れて迷子になりがちな、財布や鍵などにつけておくと探しやすくなります。
また、スマホと連携しているため、家から出るときやお店から出るときなど、タグをつけた物が手元から離れたときにプッシュ通知をくれるのもポイント。忘れ物の防止にも役立ちます。
【ココに注意!】スマートタグ自体にGPS機能はありません!
ほかのサイトではスマートタグにGPS機能が搭載されているような書き方をしている記事も見受けられますが、スマートタグ自体には位置情報を送受信する機能はありません。
連携したスマホが、スマートタグとの通信が途切れた位置の情報を、GPSから取得して表示しているだけです。
また、「GPSトラッカー」という名称で販売されているのに、実際はスマートタグという製品も。置き忘れなどで紛失物がその場から動かなければスマートタグでも十分なのですが、紛失物を拾った人が交番などに届けたり、あるいは盗まれたりと、紛失物の場所が移動してしまうと行方知れずになってしまいます。
GPSという言葉に惑わされて、リアルタイムで位置情報がわかると考えていると、あとでショックを受けることになるので気をつけてください。
見守りGPS(GPSトラッカー)
スマホなどと同じようにSIMが内蔵され、モバイル回線(LTE-Mなど)で通信します。
仕様表に測位方式の欄があり、GPSの衛星名などが書かれていたら見守りGPS(GPSトラッカー)です。
スマホと連携しておけば、アプリのマップ上でほぼリアルタイムで本体の位置情報を監視・追跡ができるほか、移動の履歴も見られるようになっており、子どもの見守り用途などにはスマートタグよりもこちらが便利。
なお、スマートタグと比べると、月額料金がかかる、バッテリー持ちが悪い、サイズが大きく重い、といった点がデメリットになります。
スマートタグの選び方は?
スマートタグとひとくちに言っても、さまざまな形状や機能の製品が多数販売されているほか、先に触れたようにスマートタグ以外の製品も混在しています。
ここでは、スマートタグ選びの重要なポイントを解説します。
用途
スマートタグが便利なのは、物が「家の中でなくなる」「外出時に家に忘れる」「外出先で置き忘れる」「外出先で落とす」ような場面で、家でも外でも使うような物に使うのに向いています。
具体的な物としては、鍵、財布、スマホあたり。ちなみにスマホを探すのに使いたい場合は、スマホには取り付けず、別々に持つことになります。
また、後述しますがクラウド追跡機能に対応したスマートタグであれば、盗難防止用にも活用できる可能性があります。
タイプ
スマートタグを使うことに決めたら、次は形状を選びます。
鍵やカバンなどにつけるのであれば、リングやストラップを通せる「穴あきタイプ」がおすすめ。また、今回紹介するAirTagのように、穴は開いていないけれども専用ストラップが販売されているような製品もあります。
財布につけるのであれば、クレジットカード大の「カードタイプ」をカードポケットに入れるのがスマート。このほか、パソコンやタブレットなど、フラットなものに貼り付けられる「シールタイプ」もあります。
探知・通知機能
スマートタグは、スマホからアラームを鳴らして探し出せます。逆に、スマートタグのボタンでスマホを鳴らして探せる製品もあります(この使い方をする場合は、スマホとスマートタグを別々に持つ必要あり)。
このほか、スマートタグが手元から離れた際のアラート機能や、第三者のスマホに反応してスマートタグの現在地を表示するクラウド追跡機能を搭載した製品もあります。ちなみに今回比較する製品で使うAppleの「探す」もクラウド追跡機能のひとつ。
防水性能
出先で落とした場合などに備え、可能なら防水機能の高いものを選んでおくほうがいいでしょう。
電池交換
スマートタグの多くは、電池交換可能なタイプと電池交換不可の使い切りタイプに分かれますが、なかにはワイヤレス充電に対応した製品や有償で本体ごと交換してくれる製品も。電池交換タイプは約1年程度、使い切りタイプは約3年程度もつものが多いようです。
それではテスト方法の紹介の前におすすめの製品を発表します!
スマートタグのおすすめは?
忘れ物防止タグのおすすめ比較表
プロと一緒に実際に使ってみた、忘れ物防止タグのおすすめランキングです。それぞれの項目を緑のボタンで並べ替えられるので、商品選びの参考にしてみてくださいね。
商品 | |||||||||||||||||||
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AppleAirTag
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|
1年(約)※電池交換可能 |
31.9mm |
31.9mm |
8mm |
11g |
IP67等級 |
||||||||||||
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アンカー・ジャパンEufy Security SmartTrack Card
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|
85mm(約) |
2.4mm(約) |
54mm(約) |
12.4g(約) |
IPX4等級 |
不可(電池寿命最大3年間) |
||||||||||||
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プラススタイルまもサーチTag
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|
40mm |
8mm |
40mm |
10g(電池込み) |
IPX5等級 |
可能 |
【1位】アップル「AirTag」
- AppleAirTag
- 実勢価格: ¥4,059〜検証時価格: ¥3,896〜
- サイズ
- ステルス性
- 位置情報精度
- 更新頻度
- 安定性
- 近距離の探しやすさ
- 遠距離の探しやすさ
- 設定のしやすさ&使いやすさ
- 電池寿命
- 1年(約)※電池交換可能
- 幅
- 31.9mm
- 奥行
- 31.9mm
- 高さ
- 8mm
- 重量
- 11g
- 防塵・防水性能
- IP67等級
- 型番
- MX532ZP/A
元祖「探す」アプリが使えるスマートタグ。離れた場所の紛失物を見つけやすい「探す」アプリが使えるだけでなく、UWB(超広帯域無線システム)によって近距離の紛失物の距離と方向まで教えてくれるのは、ほかの2製品にはない強みです。
また、本体をiPhoneに近づけるだけで簡単にペアリングできるので、初期設定の手間もありません。
一方、価格が高めなのが難点で、ほかの2製品にあるようなスマートタグからiPhoneを探せる機能がないのはマイナスポイント。
また、スマートタグとしてはかなり有名な製品のため、目立つ場所につけていると、盗難などでは取り外されてしまう心配もあります。
【2位】アンカー・ジャパン「Eufy Security SmartTrack Card」
- アンカー・ジャパンEufy Security SmartTrack Card
- 実勢価格: ¥3,542〜検証時価格: ¥3,990〜
- サイズ
- ステルス性
- 位置情報精度
- 更新頻度
- 安定性
- 近距離の探しやすさ
- 遠距離の探しやすさ
- 設定のしやすさ&使いやすさ
- 幅
- 85mm(約)
- 奥行
- 2.4mm(約)
- 高さ
- 54mm(約)
- 重量
- 12.4g(約)
- 防塵・防水性能
- IPX4等級
- 電池交換
- 不可(電池寿命最大3年間)
- 型番
- T87B2
2022年末に発売されるや、一時品切れになるほどの人気となったスマートタグ。
最大の魅力はAppleの「探す」アプリが使えてカードタイプであること。クレジットカード大のサイズで極薄なので、財布のカードポケットにもしっかり収められます。
また、iPhoneとスマートタグを、双方向でアラームを鳴らして探せる機能も備えています。
UWBには非対応ながら、Ankerグループ独自のホームセキュリティアプリ「Eufy Security」への登録が可能。
「探す」はAppleデバイスでしか使えませんが、このアプリであればAndroid端末にも対応しているため、iPhoneユーザー以外でもスマートタグとして活用できます。ただし、位置情報のログはスマートタグとの通信が途切れたところで止まってしまいます。
ほかの2製品と異なり電池交換はできませんが、電池寿命は3年と長く、最長2年間(AnkerJapan公式サイト会員登録の場合。未登録だと18カ月)の保証がつく安心感の高さもポイントです。
【3位】プラススタイル「まもサーチTag」
- プラススタイルまもサーチTag
- 実勢価格: ¥1,980〜検証時価格: ¥3,480〜
- サイズ
- ステルス性
- 位置情報精度
- 更新頻度
- 安定性
- 近距離の探しやすさ
- 遠距離の探しやすさ
- 設定のしやすさ&使いやすさ
- 幅
- 40mm
- 奥行
- 8mm
- 高さ
- 40mm
- 重量
- 10g(電池込み)
- 防塵・防水性能
- IPX5等級
- 電池交換
- 可能
比較製品中唯一の穴あきタイプで、防水性能もIPX5とまずまず。バッグなどにくくりつけて使いやすいのが特徴です。
また、iPhone側からスマートタグのアラームを鳴らせます。
価格は3480円とほかの2製品より安く、保証期間が2年なのもうれしいサービス。
電池交換もOKなので、買い直しの必要もありません。なお、厳密に音量を測ってはいませんが、試用時のアラームの音はほかより大きく感じました。
まもサーチはもともと見守りGPSジャンルの製品ですが、スマートタグは完全に別扱いで、まもサーチのアプリからは使えません。「探す」アプリにのみ登録できます。
気になった点としては、本体のボタンを押した感覚がなかったり、操作音の違いが説明書だけではわかりづらかったりして、きちんと操作できないことがありました。
スマートタグのテスト方法は?
テストでは「探す」アプリでどれくらい紛失物が見つけられるのかを知りたいですよね。
そこで、今回のテストでは大切な物が盗まれたと仮定して、泥棒役が3つの製品を持って移動。
持ち主役がiPhoneでチェックした画面とあとから照らし合わせ、位置や時間がどの程度ずれていたかを確認しました。なお、泥棒役はiPhoneユーザーではない設定です。
【テスト結果】位置情報に差はなし! ただ更新頻度はバラつきあり
●徒歩移動時の位置情報のズレは?:通知がどの製品も遅い
検証をスタートしてまず最初に気づいたのが、「iPhoneがスマートタグから離れる(iPhoneが移動)」と来る通知が、「スマートタグがiPhoneから離れる(スマートタグが移動)」場合にはどの製品からも来ないんです。
つまり、家の自転車置き場から自転車を盗まれるような場合、即座に気づくことは難しいということ。以前AirTagのテストをしたときにも同じことを感じたので、もしかしたら「探す」アプリの仕様なのかもしれません。これは少し心配です。
また、初動の遅さも気になりました。駅までは徒歩5分ほどの距離ですが、最初に動いたEufy Security SmartTrack Card(お財布アイコン)でも、5分ほど遅れていました。
●電車移動(地上)のズレは?:iPhoneユーザーが多いのか通知が早い
電車移動は、席が100%埋まっている状態で立っている人も多数。周囲にiPhoneユーザーも多かったのか、更新頻度は高め。更新が遅い製品でも5分以内に位置情報が更新されました。
位置情報もかなり正確で、各アイコンがきちんと線路の上に表示されています(実際にはAirTagの自転車アイコンとまもサーチのカードアイコンは同じ位置で重なっています)。
ただし、泥棒役の居場所に到達するまで2~3分のラグがありました。
なお、3製品の位置情報の更新時間はまちまちで、画面を見ていても抜きつ抜かれつ。どうやら近くにiPhoneを見つけたら、手当たり次第通信をして位置情報を送ってくれる、というわけでもなさそうです。この近くのiPhoneをスルーしている感覚は、電車に限らず徒歩移動でもありました。
●電車移動(地下)のズレは? :地下でも大きな位置情報のズレはなし
GPSロガーだと、地下に入ると位置情報の更新が止まったり、位置情報が関係ない別の場所に飛んだりということがあるのでスマートタグも同様かと思いきや、地下だからといって極端に位置情報の精度が悪くなることはありませんでした。
ただし、泥棒役の現在地とのタイムラグはかなり大きくなりました。時間にして5分以上、駅にして2駅分以上遅れるケースもありました。
なお、傾向としては遅れが大きくなりますが、場所によっては3分程度で更新されたところもないわけではありません。
●建物内での移動のズレは? その①:細かい動きにはどの製品も対応できない
空港は駅も地下ですが、全てのスマートタグが空港に集まったのは、泥棒役が空港に到着した時刻から6分後。
ちなみに、「探す」のマップは視点を変更して3D表示にすることもできますが、建物の階数表示には非対応。建物内の何階にあるか、まで測位して表示してくれたらさらに便利ですが、現状では不可能です。もし建物内を追跡したり探したりするのであれば、AirTagのUWBのほうが見つけやすいかもしれません。
泥棒役は一度、Eufy Security SmartTrack Card(お財布アイコン)の場所から画面左の建物の出っ張った部分へ移動し、しばらくうろうろしたあと、画面下側に向かって歩いたとのこと。
ところが、3製品は出っ張った部分へは移動せず。その後、まもサーチ(カードのアイコン)とAirTag(自転車のアイコン)だけが画面下側に進み、Eufy Security SmartTrack Cardはかなり遅れました。
数分おきに細かく動いていたので、まったく通信が止まるわけではありませんが、3製品とも建物内の細かい動きにはそれほど強くないのかもしれません。
●自動車移動のズレは?:大きなズレはありません
このほか、盗まれたあとに車で持ち去られることを想定して、自動車でも移動してみました。
時間帯は深夜で日中に比べると人通りもそこまで多くはありませんでしたが、位置情報はしっかり更新されました。
テストではタクシーを使ったのですが、運転手さんはAndroidユーザー。ということは、近くの歩行者や前後を走る自動車などに反応して位置情報を更新してくれるということ。
また、泥棒がiPhoneユーザーであれば、同じように居場所を追跡することができるでしょう。
【まとめ】UWB機能があるAirTagが一歩リード! 自分の使い方に応じて他の2製品も選んでOK
今回比較した3製品は、どれも「探す」アプリで紛失物を探しますが、UWBで紛失物まで高精度で誘導してくれるAirTagは、室内での紛失物探しには一歩リードしている感がありました。
しかし、どのスマートタグもiPhoneがスマートタグから離れると通知をくれるので、家から出るときの忘れ物や、外出先への置き忘れ防止用途では差を感じません。
また今回のテストの結果、「探す」アプリに表示される位置情報にほとんど差はなし。
位置情報が更新される速さや頻度にもっと違いが出るかと思ったのですが、持ち歩くたびに各製品の印象が変わるため、ここにも差はなさそう。であれば、あとは使い方や好みで選ぶのがよさそうです。
-
AirTag…… UWBを使ってより短時間で探し物を見つけたい人に向いています。ほかのスマートタグでアラームだと探しづらいと感じた人にもおすすめ。
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Eufy Security SmartTrack Card …… お財布やパスケースに使いたい人向け。クレカのような外観なので、セキュリティグッズバレしたくない人にもうってつけです。Androidユーザーも使用できます。
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まもサーチTag …… リーズナブルで高性能なスマートタグを探している人におすすめ。カバンやリュックなどにつけることを想定している人にも適しています。
以上、「探す」アプリ対応のスマートタグの比較結果を紹介しました。
普段気をつけているつもりでも、うっかり忘れ物をしたり、物をなくしたりすることはあります。
また、大切な物を盗まれたときのショックも計り知れません。心配な物にスマートタグをつけておけば、万が一の事態で助けになってくれるかもしれませんよ。
「探す」対応のスマートタグなら見守りGPSの代わりにもなる?
今回のテストでは、同じように誰かのiPhoneの近くを通っても、必ずしも同じタイミングでスマートタグと通信し、位置情報が更新されるわけではないことがわかりました。
その更新のタイミング次第で実際の居場所からのズレは大きくなりますが、時間にして数分程度の誤差。どの製品もどこを通ったのかはかなり正確にわかります。
この点だけなら子どもの見守りGPSとしても使えそうですが、見守り用途になると移動のルートを知ることも重要。しかし、スマートタグでは移動履歴を記録できないうえ、近くにiPhoneがないと通信が途絶えてしまいます。
見かけ上はルート内にいるように見えても、実際はただ周りに人がいなくて通信が止まっているだけ……ということもあり得ます。いざ探そうと思っても、どこを探したらいいのかわからなくなってしまうわけです。
こうしたことを考えると、いくら「探す」ネットワークが優秀でも、スマートタグを見守りGPSの代わりに使うのは危険。
自分の持ち物がどこに持ち去られたのかを知る用途にはアリですが、見守り用途に使うなら、やっぱりどこにいても居場所を教えてくれる見守りGPS一択です。