フィリップスから電動ファン内蔵マスクが発売!
2020年11月、フィリップスから電動ファン内蔵マスク「ブリーズマスク」が発売されました。日本電産が開発した最大41Lの空気流量を誇るファンを内蔵することで、内部が蒸れず呼吸がしやすい快適さを実現。また、N95規格(※)のフィルターを使うことで花粉を95%、細菌を99%、ウイルスを98.87%カットするとうたっています。
※NIOSH(アメリカ合衆国労働安全衛生研究所)が制定した呼吸器防護具の規格基準。試験粒子を95%以上捕集できることを表す
PHILIPS
Series6000
ブリーズマスクACM066/01
実勢価格:9800円
重量:約60g(フィルター、ファンモジュール込み)
サイズ:1種類(鼻の付け根から顎までが12cm以下の人推奨)
バッテリー:最大3.5時間
フィルター:1枚付属
お値段は約1万円。フィルターは本体に1枚付属していますが、交換用に別途購入する必要があり、発売後はこのフィルターが売り切れ状態(1月下旬時点では在庫復活)に。
蒸れやメガネの曇りなどに悩まされている人や、「人と違ったマスクをしたい」という層にヒットしたようです。
ですが価格はもとより、製品のウリとなっている「エアフローシステム」には呼気をまき散らすのでは? という疑問もじつはあります。
そこで前編・後編の2回にわたって、この最新マスクを徹底レビュー。後編の今回は実際の着用感や呼気モレについての検証結果をご紹介します。
▼ブリーズマスク【前編】はコチラ!
【呼気もれテスト】不織布&布に及ばず
まずは呼気のモレをテスト。「ブリーズマスク」のほか、比較として「ウレタン」「不織布」「布」もテストしました。
▼テスト方法
煙を出す「フォグマシン」を使って呼気のモレを比較。
呼気のモレを比較してみると、布マスクと不織布マスクは顔にフィットさえしていればモレなし。ウレタンはダダ漏れでした。
ウレタンはダダ漏れ
兄弟誌MONOQLOでもワーストバイになった人気ウレタンマスクはダダ漏れ。
不織布はしっかりガード
不織布は鼻と顎がフィットさえしていれば、しっかりガードしてくれています。
布もしっかりガード
布マスクもしっかりガード。検証したのは兄弟誌『MONOQLO』ベストバイであるグンゼ製品。
グンゼ(GUNZE)
肌にやさしい洗える布製マスク
実勢価格:1078円(2枚入り)
サイズ:1サイズ
生地:綿65%、ポリウレタン35%(本体)
洗濯方法:洗濯機
生産国:日本
ブリーズマスクは△
下の写真にはうまく写らずわかりにくいのですが、ファンからしっかりと排気されています。
素材タイプ別「呼気もれ」の比較としては、不織布&布が高評価となりました。
呼気は出るのでコロナ時代には使いみちが……
快適さと防護性能がフューチャーされているブリーズマスクは、ファンで内部の呼気を排出する構造。そこで注意したいのが「感染させる可能性」、つまり飛沫です。
フォグマシンを使用した呼気モレ検証では、当たり前ですがファンの部分からの呼気はもちろん大量。
コロナは現在のところ、飛沫感染のみといわれてますが、あまりに呼気が出るのはやはり考えものです。もちろんフィリップスは承知のうえなので、公式ホームページにも以下のような文言を記載しています。
▼公式サイトの注意書き
※建物内や公共交通機関内、また三密下のような環境で、電動ファン機能を使用することはお控えください。気温の高い日は熱中症対策を十分に行いながら使用ください。
感染防止よりも「感染させる」防止が重要な今の局面には、呼気のもれるマスクは微妙。公式サイトで「*」扱いで小さく記載しているのがやや解せない印象がありました。
【装着感テスト】耳の負荷は大きめ
続いて装着感テストです。マスクの装着感で重要となるのが耳紐の形状。長時間装着する際の耳の痛みにつながります。
▼テスト方法
人の顔幅を模した型の耳ウラ部分に紙粘土をつけてマスクを装着し、3時間後の状態をチェック。
布:◎ 負担が少ない
兄弟誌のベストバイになった「グンゼ」の製品だけあり、紙粘土テストで変形はほぼなく、長期間つけても負担が少ないです。
ブリーズマスク:× 耳が痛くなりがち
不織布マスク以上に紙粘土が大きく変形。耳紐はかためでファン自体の重みも加わり、実際に装着していても、1時間ほどで痛くなりました。
ウレタン:○
布マスクには及びませんが、まずまずの結果です。
不織布:△
ウレタンよりも装着感は劣りますが、ブリーズマスクよりは上でした。
【フィット感テスト】鼻部分が弱いです
N95規格のフィルターが優秀なブリーズマスクですが、フィット感が低ければ効果も下がります。そこでフィット感をテストしました。
▼テスト方法
口から吸引できるマネキンにマスクを装着し、ボックス内に疑似花粉を散布してテストしました。
ブリーズマスク:フィルター性能はいいが装着が難しい
疑似花粉を使用したフィット感&カット力の比較では、鼻の部分のフィット感が弱く、鼻から疑似花粉が侵入し、のど奥まで入ってしまいました。フィルター自体の性能は高いのですが、しっかりフィットするような装着がむずかしかったです。
▼正面
▼鼻
▼のど
布マスク:花粉をしっかりカットしてくれた
一方、布マスクはのど奥への擬似花粉の侵入はほぼナシ。優秀でした。
【バッテリー持ち】最長3.5時間と短めです
使い勝手では、バッテリー持ちが短いのが気になりました。公称では「3時間の充電で最短2時間、最長3.5時間」となっています。
人混みの中での使用厳禁なマスクのため、「屋外を1人で歩く時だけ」の使用だとしても、2日程度で充電が必要に。毎回3時間の充電は、日常使いにはやや大変かもしれません。
【フィルター交換】日常使いに290円はやや高い
大気質指標によっては最大122時間使用できるとなっていますが、現実はなかなかそうはいかないもの。化粧をする場合は付着してしまいますし、にんにくが好きだったりタバコを吸う人だとやはりニオイが……。
試したところ、フィルターは2日程度でニオイが気になりました。できれば毎日交換したいですが、1枚約290円はなかなかのコストです。
ネットではウレタンマスクをフィルター代わりに使用するという人も多いようでしたが、機能的にはやはり純正をおすすめします。
【メリット】蒸れない快適さは実感しました
ここまでデメリットばかりご紹介してきましたが、1カ月半使用した担当編集的には、快適さという面ではたしかに実感がありました。
ファンで呼気が排出されるので、一般的なマスクに比べると蒸れがなく汗ばむこともなかったです。
ただし、本製品の公式サイトの紹介にもある「アクティブな運動」時にすごく快適かという点では微妙。ランニングでの使用時などは確かに多少はラクにはなるのですが、ジムなど周りに人がいる環境で使用すべきかは難しいところです。
また、交通機関や人混みでの使用がむずかしい製品ということになると、普段からマスクを2枚持ちする必要があるということに。日常的な使い勝手としてはその点が気になりました。
まとめ:コロナ流行中の即買いは待った!
ガジェット好きには期待のブリーズマスクでしたが、検証した結果は「今は使いドコロがない」というものでした。そもそもコロナ禍においてマスクは感染防止よりも、飛沫防止として着用が推奨されているもの。なので、交通機関や人混みでの使用に向いていないとなると、日常生活の中で使う機会は非常に限られてしまいます。
今回はコロナ時代のマスクという観点ではデメリットが多くあがってしまいましたが、ワクチンや治療薬が普及して感染が落ち着いた未来には、花粉症対策としては機能的には優秀な製品のはず。その際にはオススメしたいというのが今回の結論です。
▼おすすめの不織布マスクは?
以上、フィリップス「ブリーズマスク」の検証結果でした。いろいろデメリットもありますが呼吸はラクチン。これからの進化に期待したいです!
人にうつさないことが重要な今の状況では、屋外のみの使用は辛いです。