安いワイヤレスイヤホンの魅力は?
ひとつひとつの音を明瞭に描き楽器やボーカルに質感を与える高解像なサウンド、ピアニッシモからフォルテッシモまで音圧の変化を忠実かつ素早く反映するダイナミクス……音楽の魅力を味わうにはこうした音質がバランスよく備わったいいイヤホンが必要です。
そんなイヤホンがお手頃価格なら嬉しいですよね。
新製品が相次ぐ人気の価格帯で比較!
今回は、高品質コーデック「LDAC」やノイキャンにも対応する1万円前後の安いワイヤレスイヤホン4製品を比較しました。
しかし、完全ワイヤレスイヤホンは電波まわりの認証費用などでコストがかさむため“1万円で良音”がそもそも難題。
3万円クラスの製品と比べるとどうしても限界はありますが、今回の比較で上位の製品なら、解像度の高さなどは十分味わえるはず。高音質の入門におひとついかが?
安いワイヤレスイヤホンの選び方は?
今回、雑誌『家電批評』編集部は安いワイヤレスイヤホン4製品をピックアップ。オーディオライターのゴン川野さんとクラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さんとともに使い勝手と音質をテストしました。
テスト方法
音質は川野さんと飯田さんが採点。ノイズキャンセリング機能やマイク性能は編集部が採点しました。1万円クラスの枠内で点数づけを行っています。
テスト1:使い勝手
各製品の「マイク性能」「外音取り込み」「ノイズキャンセリング」「アプリ」をチェックしました。
マイク性能は屋外からの通話を録音して判定。ノイズキャンセリングは通勤の電車内やカフェなどの実環境で、外音取り込みは屋外での聞こえ方の自然さや音楽を止めて会話できるかという観点から評価しています。
テスト2:音質
専門家2名がじっくり視聴
専門家である川野さん・飯田さんが音質を詳しくチェック。
LDACに対応するAndroidスマートフォン、ソニー「Xperia 10 Ⅲを」使用し、Amazon Musicのハイレゾ音源を中心に試聴しました。
川野さんはヨルシカなどのJポップを、飯田さんはオーケストラやピアノ曲などのクラシックを主に試聴しています。
なお、10点満点の項目は5.1〜6.9点が、20点満点の項目は15.1〜16.9点が合格ラインです。
安いワイヤレスイヤホンのおすすめは?
【1位】エディファイア「W260NC」
- 総合評価
- おすすめポイント
-
- 音質も機能面も弱点が少なく完成度が高い
- 実用的なノイズキャンセリング性能
- がっかりポイント
-
- ケースから着脱しづらい
- 重量
- 5g(片耳)、50.2g(約、ケース込み)
- 再生時間
- 6時間(ANC入)、8時間(ANC切)
- 防水性能
- IP54
- 対応コーデック
- AAC、SBC、LDAC
- ドライバー
- デュアルダイナミックドライバー
- 型番
- W260NC
テスト1:使い勝手
- マイク:良好
- 外音取り込み:良好
- ノイズキャンセリング:良好
- アプリ:良好
低音域を明確に抑制でき、電車や飛行機などではノイズキャンセリング効果をしっかり実感できます。
他製品より優位なのがマイク性能。声が途切れにくいのでWeb会議にも◎です。アプリも使いやすいです。
ノイズキャンセリングは高・低を選べます。
テスト2:音質
- 音色:ウォーム
- 装着感:良好
<解像度:良好>
弦楽アンサンブルのヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・ピアノのサウンドの質感の違いが表現できています。
<クリアさ:良好>
透明感のある響きです。
音色がウォームなためかクリアというよりは柔らかさが際立っています。
<音域バランス:良好>
バランスよく、変化を豊かに伝えています。
中低域に重心があり、やや高域に強調感もあり。弱ドンシャリです。
<音像定位:良好>
クラシックではとても自然で広がりもあります!
楽器の配置はわかりやすいが、音像は僅かに曖昧です。
<ダイナミクス:良好>
音圧も音域も変化に富んでいます。
LDACらしいダイナミックレンジの広さはあまり実感できず。
音質総評
コスパが良い! 音色・強弱・立体感などの変化に富んでいます。
暖色の音で響きも心地よい。
ケースから着脱しづらい……
弱点はケースから出しにくいことです。
【2位】final「ZE3000 SV」
- finalZE3000 SV
- 実勢価格: ¥9,035〜
- 総合評価
- おすすめポイント
-
- 良好な装着感
- 細やかかつ骨太なサウンド
- がっかりポイント
-
- 低音域の表現が惜しい
- 声を拾いづらいマイク性能
- 重量
- 4g(約、片耳)、39g(ケース込み)
- 再生時間
- 7時間(ANC切)
- 対応コーデック
- LDAC、AAC、SBC
- ドライバー
- ダイナミックドライバー
- 型番
- ZE3000 SV
弱点が少なく誰にでもおすすめ。特にボーカルものにマッチ!
テスト1:使い勝手
- マイク:微妙
- 外音取り込み:合格
- ノイズキャンセリング:合格
- アプリ:良好
マイクは声が途切れ途切れになり歪みも目立ちます。
ノイキャンは圧迫感のなさを優先した「コンフォートANC」という弱めなもの。電車内などでは今回4製品中1位のEdifier「W260NC」より物足りないですが、建物内の空調音などは低減できており、コンセプト通りの結果でした。
EQは手動調整です。
テスト2:音質
- 音色:ウォーム
- 装着感:良好
<解像度:良好>
ピアノの残響感なども豊かです。
エディファイア「W260NC」より低域が高解像。ヨルシカの楽曲ではボーカルの質感も再現しています。
<クリアさ:良好>
すっきりと音が立ち上がる。音そのものは太く伸びやか。
粒立ちがよくボーカルの輪郭が明瞭です。
<音域バランス:優秀>
非常にいい。どの音域も伸びやか。
フラットに聞こえて低音の厚みもある。理想的なバランス。
<音像定位:優秀>
オーケストラでは横の広がりに加え、縦の空間性も感じられました。
定位は明確。空間は広く緻密。
<ダイナミクス:良好>
低域が膨らむ場面では、若干不自然。
低域の押しが強く迫力がある。細かい音も再現できていた。
音質総評
以前は解像度重視だったが、final「ZE3000 SV」はボーカルも滑らかに再現。サウンドが進化した。
その他
イヤーピースが豊富です。
【3位】NUARL「N6 Lite」
- NUARLN6 Lite
- 実勢価格: ¥9,778〜
- 総合評価
- おすすめポイント
-
- 外音取り込み量が多い
- 良好なノイズキャンセリング
- がっかりポイント
-
- じっくり聴くには解像度やダイナミクスが不足している
- 重量
- 4.5g(約、片耳)、36.0g(約、ケース込み)
- 再生時間
- 6時間(ANC入)、8時間(ANC切)
- 対応コーデック
- LDAC、AAC、SBC
- ドライバー
- ダイナミックドライバー
- 型番
- N6LITE-GR
カラバリや外音取り込みなど音質以外の点が見どころです。
テスト1:使い勝手
- マイク:良好
- 外音取り込み:良好
- ノイズキャンセリング:良好
- アプリ:なし
専用アプリがないためEQ(イコライザー)の調整などはできません。外音取り込みはいかにも「取り込んでいる」という聞こえ方ですが、聞こえる外音の量が多く実用的です。
マイク性能も1位のエディファイア「W260NC」の次に途切れなどが少なめでした。
ノイズキャンセリングは低音がしっかり抑え込めており良好な出来栄えです。
タッチもしやすいです。
テスト2:音質
- 音色:クール
- 装着感:合格
<解像度:微妙>
final「ZE3000 SV」やエディファイア「W260NC」と比べ、音の芯が抜けたようなサウンドです。
情報量が少ないため、高域がハッキリ聞こえます。
<クリアさ:合格>
音のエッジは立っています。
全体的にはクリアだが高域がややキンキンする楽曲もあります。
<音域バランス:微妙>
やや平面的なサウンドです。
バランスは高域寄りで、中低域が薄い。迫力がなく希薄な音。<
<音像定位:良好>
サウンドフィールドとしてはとくに狭苦しくないです。
音像定位ははっきりしており、空間も感じられます。
<ダイナミクス:合格>
音楽的にドキドキする、あるいは色気のあるような変化は表現できないです。
一応、合格ラインです。
音質総評
「ただ鳴っている」という印象を拭えない。不快ではないので、BGM的な聞き方ならアリです。
その他
着脱しやすいです。
【4位】水月雨(MOONDOROP)「Ultrasonic」
- 水月雨(MOONDOROP)Ultrasonic
- 実勢価格: ¥9,900〜
- 総合評価
- おすすめポイント
-
- ユニークなデザイン
- 自然な外音取り込み
- がっかりポイント
-
- マルチポイント非対応
- 平板かつ高域寄りの特性
- 重量
- 4g(片耳)、65g(ケース込み)
- 再生時間
- 6時間(ANC切)
- 対応コーデック
- LDAC、LC3、AAC、SBC
- ドライバー
- BA+ダイナミックドライバー
- 型番
- ULTRASONIC
不快な音質ではないため作業中のながら聴きにはいいかも。
テスト1:使い勝手
- マイク:微妙
- 外音取り込み:良好
- ノイズキャンセリング:合格
- アプリ:良好
マイク品質は残念。声がこもって聞こえ、歪みも目立ちます。
ノイズキャンセリングは全体的にNUARL「N6 Lite」やエディファイア「W260NC」より弱め。
一方、外音取り込みは4製品で最も自然で音楽を止めれば、会話もしやすいです!
タッチ設定は細かくカスタム可能です。
テスト2:音質
- 音色:クール
- 装着感:合格
<解像度:微妙>
NUARL「N6 Lite」より密度はあるがクラシックには厳しいです。
解像度不足だが高域寄りのバランスのため解像感はあります。
<クリアさ:合格>
クリアといえばクリアだが全体的に音質が粗いです。
低域がタイトなので高域には抜けのよさがあります。
<音域バランス:微妙>
NUARL「N6 Lite」に近い。中低域が弱く音に厚みがないです。
中低域が薄味すぎで音楽全体に厚みがないです。
<音像定位:合格>
クラシックでは楽器の定位を感じづらい。
音数が少なめで寂しく音場も狭いが、定位は明確。
<ダイナミクス:微妙>
オーケストラをなぜここまで平坦に表現するのか?
低音が出ないのでダイナミクス表現は苦手。
音質総評
音楽から生命力が抜けている。
小音量でもボーカルは聴きやすいとは言える。
その他
側面をスライドして取り出します。
まとめ:音質のfinalもしくは汎用のエディファイア
以上、安いワイヤレスイヤホンのおすすめランキングでした。
テストでわかったのは?
使い勝手テストでわかったのは、この価格帯の弱点はマイク。ノイズキャンセリングは実用的でした。
音質テストでは、LDACに対応するAndroidスマホ・ソニー「Xperia」で試聴したところ、音質に大きな差がありました。
マルチポイント時はLDAC非対応
2台のデバイスと同時に接続できるマルチポイントにも水月雨(MOONDOROP)「Ultrasonic」以外の3製品は対応しています。
しかし3製品ともマルチポイント時はLDACが利用できなくなるのが残念。音質か利便性かを選ばなくてはいけません。
利便性も含めればW260NCが優勢! 音質にこだわるならZE3000 SVが筆頭候補!
「音質にこだわってみたい」が「手頃さも大事」という人向けのイヤホンを探す今回の企画。結論としてはエディファイア「W260NC」とfinal「ZE3000 SV」がおすすめということに。
どちらも「この価格でよくぞここまで!」というサウンドでハイコスパなイヤホンです。
なお、スペック面では4製品ともaptX系のコーデックに非対応なのが残念。音質を引き出すにはアンドロイド端末の中でもLDACに対応する機種が必要となります。
NUARL「N6 Lite」はカジュアルがコンセプトの製品なので音質重視のテストとは相性が悪かったかもしれません。
水月雨(MOONDOROP)「Ultrasonic」は高音質を狙えるハードウェアではあるので、改良を期待したいです!
記事を参考に、ぜひお気に入りのワイヤレスイヤホンを見つけてください。
安いワイヤレスイヤホンのおすすめ
エディファイア
W260NC
【音質BEST】安いワイヤレスイヤホンのおすすめ
final
ZE3000 SV
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コスパのよさがすごい。クラシック音楽も十分楽しめますよ!