どんどん進化する完全ワイヤレスイヤホンとは?
コードがなくて便利でカッコいいけれど、電池の持ちが悪くて音がプツプツ……。音質も一体型イヤホンほど良くない印象が強い完全ワイヤレスイヤホンですが、それはもう過去の話かもしれません。
現在、完全ワイヤレスイヤホンには、電池持ちや音切れの心配をしなくてもよく、機能性も優れた製品が増えました。マイク対応の製品も多く、通話時にも便利です。そのうえ、値段も安くなってきているというのだから試してみたくなるってものです。
音のプロと編集部が音質と通信安定性を厳正にチェック!
今回は音のプロであるサウンドプロデューサーの大澤大輔氏と、東京音研放送サービス代表の原田裕弘氏にご協力いただき、「音質」「装着感」「遮音性」を検証してもらいました。
辛口識者による厳正なテストで行ったテスト内容は以下の通りです。
検証1:音質「各音域の出力量とバランスの良さが重要」※各20点満点
採点方法は音質にこだわるために、「高音域の質」「中音域の質」「低音域の質」を各20点満点。低音好き、高音好きなど好みはあると思いますが、純粋に万人に受ける音としてバランスの良さを重視しています。
また総合的なおとの広がりや響などを考慮する「ダイナミクス」も20点満点とカウントしています。
検証2:装着感「イヤーピースの進化も重要」※10点満点
激しい動きをするとポロポロ耳から落ちがちな完全ワイヤレスイヤホンですが、イヤーピースの進化により紛失の心配は格段に減りました。
また装着感の良さは音楽を聴くうえで大事な要素です。
検証3:遮音性「音漏れしないイヤホンはもはや常識」※10点満点
イヤホンを適切に装着した状態で、外の音がどの程度遮断できるかを検証。ノイズキャンセリングモデルについては、ノイズキャンセリング機能の精度を遮音性として評価しています。
ということで、雑誌『家電批評』がプロと選んだ人気ワイヤレスイヤホンのおすすめをランキングで公開します。
完全ワイヤレスイヤホンのおすすめは?
SONY「WF-1000XM4」
SONY
WF-1000XM4
実勢価格:2万4500円
Rentioレンタル価格(7泊8日):4
▼テスト結果
- 低音域の質: 18.0点/20点
- 中音域の質: 17.5点/20点
- 高音域の質: 17.75点/20点
- ダイナミクス: 18.0点/20点
- 装着感: 8.5点/10点
- 遮音性: 9.0点/10点
- 合計: 88.75点/100点
ベストバイに輝いたのは、SONY「WF-1000XM4」。音質、ノイキャン、使い勝手、すべての面で前モデル「WF-1000XM3」を上回りました。
しかも、「XM4」は単純な後継機ではなく音は完全に別物。XM3の、エネルギッシュな反面やや狭さを感じるサウンドから、開放感があるきめ細やかなサウンドに進化。低音域はより低い音まで出るようになり、高音域の遠近感も大きく改善されています。XM3を派手すぎると感じていた人も気持ちよく音楽に入り込めるはずです。
ただし、耳の形にフィットしないと「中~高音域がシャキッとはしていない」(原田さん)あるいは「優しい音になった」と感じるかもしれません。店頭でフィット感を確認してから購入検討しましょう。
音質が抜群で、モニターライクな自信さえうかがえる神機。ソニーの個性を感じる音場感ですが、とても気持ちよく聴けます。
自社開発のプロセッサーV1で高音質を実現
最高品質のチップを搭載し、高音域でのノイズキャンセリング性能が向上しました。開放感あるきめ細やかなサウンドで、低音域はより低い音まで出るようになり、高音域の遠近感も大きく改善されています。
個人最適化で空間表現をより忠実に再現
360 Reality Audioを搭載。アプリで耳の形を撮影し最適化します。耳の形にフィットしないと、本来の音質を感じられなくなる可能性もあるため、店頭でフィット感を確認することをおすすめします。
軽量化されたコンパクトデザイン
耳の接触面を増やすような形状設計でイヤホンが小さくなりました。
イヤホンを装着したまま会話ができる
声を認識すると音楽を一時停止し、外音取り込みに切り替わります。
低音が多めでソフト。中~高音域は控えめで耳障りな印象はありません。イヤホンも小型で使い勝手がいいです。ちなみに、イヤーピースはポリウレタン製のみ。
次に紹介する前モデルの「XM3」と同じく、音楽再生中に周囲の音を聞ける「外音取り込み機能(アンビエントサウンドモード)」を搭載しています。
SONY「WF-1000XM3」
SONY
WF-1000XM3
実勢価格:19,980円
Rentioレンタル価格(7泊8日):3
▼テスト結果
- 低音域の質: 17.0点/20点
- 中音域の質: 17.0点/20点
- 高音域の質: 17.5点/20点
- ダイナミクス: 18.0点/20点
- 装着感: 9.0点/10点
- 遮音性: 8.5点/10点
- 合計: 87.0点/100点
2位はSONY「WF-1000XM3」。全体的にバランスがよく高品質な音でワイヤレスイヤホンを牛耳ってきた「元祖神機」。型落ちとはいえ高評価は覆りません。
BOSE「QuietComfort®Earbuds」
BOSE
QuietComfort®Earbuds
実勢価格:16,500円
▼テスト結果
- 低音域の質: 16.0点/20点
- 中音域の質: 16.5点/20点
- 高音域の質: 15.5点/20点
- ダイナミクス: 16.0点/20点
- 装着感: 9.0点/10点
- 遮音性: 9.0点/10点
- 合計: 82.0点/100点
3位はBOSE「QuietComfort®Earbuds」。立体感があり、表情豊かなダイナミックな音が特徴的。中音域の量が多く躍動感があります。
またノイキャン性能は、どのイヤホンでも悪影響を与えてしまいがちですが、本機はそれをほとんど感じません。
タッチセンサーで操作できる
タッチセンサーでシンプルに操作できるのもうれしいポイントです。
4位: Apple「AirPods Pro」
Apple
AirPods Pro
実勢価格:2万5800円
▼テスト結果
- 低音域の質: 14.5点/20点
- 中音域の質: 15.5点/20点
- 高音域の質: 15.5点/20点
- ダイナミクス: 15.5点/20点
- 装着感: 8.0点/10点
- 遮音性: 9.0点/10点
- 合計: 78.0点/100点
4位はApple「AirPods Pro」。iPhoneユーザーをとりこにした本機。音質面ではソニーに明らかに劣りますが、真髄は使い勝手にあります。
5位: JBL「LIVE PRO+ TWS」
JBL
LIVE PRO+ TWS
実勢価格:1万2100円
▼テスト結果
- 低音域の質: 15.5点/20点
- 中音域の質: 15.0点/20点
- 高音域の質: 15.25点/20点
- ダイナミクス: 15.5点/20点
- 装着感: 8.5点/10点
- 遮音性: 8.0点/10点
- 合計: 77.75点/100点
5位はJBL「LIVE PRO+ TWS」。細身ですが、音質は低音域はパンチがあり、中音域はしっかり出ています。反発力のある音から出てくるバウンスがJBLっぽいです。アプリも優秀で自由に音のバランスを自分好みに変えられます。
6位: NUARL「N10 Pro」
NUARL
N10 Pro
実勢価格:2万1450円
▼テスト結果
- 低音域の質: 15.5点/20点
- 中音域の質: 15.0点/20点
- 高音域の質: 15.0点/20点
- ダイナミクス: 15.5点/20点
- 装着感: 8.0点/10点
- 遮音性: 8.0点/10点
- 合計: 77.0点/100点
6位はNUARL「N10 Pro」。全域にわたりバランスが取れた質の高い音。特に中音域から高音域が印象的でNUARLらしい透明感がある上品でクセのない音像。アプリのEQを「標準」から「フラット」にするとさらに音質がアップします。
イヤーピースが付属
2種類合わせて3000円相当のイヤーピースが付属しています。
7位: Master&Dynamic「MW08」
Master&Dynamic
MW08
実勢価格:3万4980円
▼テスト結果
- 低音域の質: 15.0点/20点
- 中音域の質: 15.5点/20点
- 高音域の質: 14.5点/20点
- ダイナミクス: 16.0点/20点
- 装着感: 7.0点/10点
- 遮音性: 7.0点/10点
- 合計: 75.0点/100点
7位はMaster&Dynamic「MW08」。豊かな情報量と濃い音場が特徴的。音のサイズも大きく、とても攻撃的で圧倒され本体同様に高級感があります。ただし安定した空間の表現が没入感を高めるぶん、スピードの変化に弱いです。
8位: SHURE「AONIC 215」
SHURE
AONIC 215
実勢価格:2万7200円
▼テスト結果
- 低音域の質: 14.0点/20点
- 中音域の質: 14.75点/20点
- 高音域の質: 15.25点/20点
- ダイナミクス: 14.75点/20点
- 装着感: 7.5点/10点
- 遮音性: 8.0点/10点
- 合計: 74.25点/100点
8位はSHURE「AONIC 215」。高音域が伸び伸びとしているわけではありませんが、バランスは決して悪くなく音楽をきちんと聴かせてくれます。
9位: Jabra「Jabra Elite 85」
Jabra
Jabra Elite 85t
実勢価格:2万6800円
▼テスト結果
- 低音域の質: 14.0点/20点
- 中音域の質: 14.5点/20点
- 高音域の質: 14.0点/20点
- ダイナミクス: 14.0点/20点
- 装着感: 7.5点/10点
- 遮音性: 8.5点/10点
- 合計: 72.5点/100点
9位はJabra「Jabra Elite 85」。結構硬めで柔軟性のない出音。情報量も少なく音が痩せてしまっていますが、低音域の余分な長さで少しだけ補っている感じです。
10位: NUARL「N10 Plus」
NUARL
N10 Plus
実勢価格:1万9800円
▼テスト結果
合計 70.5点/100点
10位はNUARL「N10 Plus」。作り込みすぎで音質がいいとはいえません。音のサイズも遠く小さく、立体感もない残念な評価でした。
11位: Victor「HA-FX100T」
Victor
HA-FX100T
実勢価格:1万2770円
▼テスト結果
合計 69.75点/100点
11位はVictor「HA-FX100T」。中低域~低域の距離感がちぐはぐでリアリティがなく、ある程度音量を入れないと鳴ってくれません。
12位: JBL「Club Pro+ TWS」
JBL
Club Pro+ TWS
実勢価格:1万2243円
▼テスト結果
合計 69.0点/100点
12位はJBL「Club Pro+ TWS」。全体的に奥行きがなく、JBLスピーカーのようなふくよかな空間感はほぼゼロ。明らかなドンシャリ傾向です。
プロのテストを元にしたおすすめ商品ランキングを紹介したところで、完全ワイヤレスイヤホンの選び方のポイントとトレンドを紹介します!
完全ワイヤレスイヤホンのメリットとデメリットは?
買い替える前に、やはり「音が切れたりしないのか」や「どのくらい便利なのか」など、メリットとデメリットが気になりますよね。ここでは完全ワイヤレスイヤホンを使うメリットとデメリットを紹介します!
完全ワイヤレスイヤホンを使うメリット
ワイヤレスイヤホンを使用するにあたっては、以下のようなメリットがあります。
- ケーブルが絡まる心配がない
- 断線の心配がない
- 不要なノイズがない
- スマートフォンから離れても音が聞こえる
- ケースがあるから、カバンの中で収納に困らない
- 運動中でも聞ける
まずワイヤレスイヤホンはケーブルを必要としないので、ケーブルが絡まってなかなか解けないといったストレスが解消されます。またケーブルが断線してしまうといったトラブルもありません。ケーブルが服や手にぶつかったときに「タッチノイズ」が聞こえることもないため、まさしくストレスフリーで音楽を楽しめます。
一定の距離内であればスマートフォンから離れても問題ないため、室内での利用にも最適です。専用充電ケースがついているので、カバンの中での収納にも不自由せずケーブルタイプよりも容易に出し入れできます。
また、充電ケース使用でワイヤレス充電できる機種もあります。商品を選ぶ際は、充電端子もチェックするといいでしょう。
防水・防汗機能が搭載されたワイヤレスイヤホンもあるため、運動中はもちろんのこと、水の中でも使用できます。これはジムに通っている方などにとって、かなり嬉しいポイントではないでしょうか。
ワイヤレスイヤホンが登場したことで、シーンを選ばずに音楽を楽しめるようになりました。通勤通学や運動中、室内での作業中などあらゆる場面において「ケーブルがない」というのは大きなメリットなのです。
ワイヤレスイヤホンを使うデメリット
とても便利なワイヤレスイヤホンですが、デメリットも存在します。ワイヤレスイヤホンを使うことで生じるデメリットは以下のとおりです。
- 充電が必要となる
- 失くしやすい
- 音質の劣化
- 音が遅延する場合がある
- 音飛びの恐れがある
- 耳の形に合わない方もいる
ケーブルタイプのイヤホンとワイヤレスイヤホンとの一番の違いは、充電式である点でしょう。ワイヤレスイヤホンは毎日充電する必要があり、充電を忘れてしまうと使えません。また専用のケースはあるものの、小型であるため落としてしまうと見つかりにくく紛失のリスクはケーブルタイプよりも高くなります。
ケーブルタイプよりも音質が劣化する点もデメリットといえます。ワイヤレスイヤホンは再生機器側でデータを圧縮し、Bluetoothを用いてイヤホン側に音を送ります。イヤホン側は圧縮されたデータを元に戻し再生。この圧縮し戻す作業の間に、音質が劣化してしまうことがあります。音が遅延してしまう原因もこの作業によるものです。
また、電波状況によっては音飛びが発生する場合もあります。音飛びは電波の届かない場所にいたり、電波干渉を受けたりすることで起こるものですが、頻度は高くありません。
最後に耳の形状によって、そもそもワイヤレスイヤホンが入らない方もいます。これはケーブルタイプに比べ、イヤホン部分が大きくなっているためです。心配な方は購入する前に一度試してみることをおすすめします。
失敗しない完全ワイヤレスイヤホンの選び方は?
数ある製品のなかから、どれを選べばいいのかわからない……。イヤホンを選ぶうえで永遠のテーマですが、音質面をとってみてもさまざまな要素から“良い音質”が成り立っています。
そのうえで、完全ワイヤレスを買ううえで押さえておきたい「音質」「装着感」「接続安定性」「再生時間」「ANC性能」「防水性能」の重要性を解説していきます。
選ぶポイント1:音質「好みの音質を見極める」
俗に音質が良いと言われるイヤホンは、高音・中音・低音がバランス良く出力され、迫力のある音のことです。
完全ワイヤレスイヤホンは利便性が重視されがちで、正直なところ音質は期待されていませんでしたが、モデルが新しくなるごとに技術革新が行われ、音質はかなり向上してきており、今後はさらに発展していくと予測されます。
【1:対応コーデックの種類と特徴】
もっともわかりやすい音質面での技術でいうと、「コーデック」がそれにあたります。コーデックとは音声を圧縮する方式の名称で、その種類によって音質は変化します。圧縮率が低ければ高音質ともいわれますが、近年はQualcomm社のaptXシリーズの技術革新によって高音質を実現しています。
また後ほど解説する通信の安定にもコーデックが関わってきます。圧縮率が低いと通信速度にも影響が出てしまうので、データが大きければいいというわけではありません。高音質と通信速度を兼ね備えたコーデックが理想のイヤホンといえます。
SBC
標準的な音質。汎用性が高く、ほぼすべてのBluetooth製品が採用しています。
AAC
データの変化が少なくSBCより高音質。iPhoneやiPadに搭載しています。
aptX
CD音源相当の音質で、SBCやAACより高音質。Androidスマホに標準搭載しています。
aptX HD
ハイレゾ音源の高音質を再生し、SBCやAAC、aptXより高音質です。
aptX LL
音源の伝送遅延量は圧倒的に低いですが、音質はAAC相当です。
aptX adaptive
ハイレゾ音源でaptX HDより高音質。対応スマホはSDM865搭載したAndroid。
LDAC
ソニー開発のハイレゾ音源を再生する最上位音質。圧縮率が低く通信環境を選びます。また現状だとLDACを再生できる完全ワイヤレスイヤホンはありません
以上、コーデックの種類を紹介してきましたが、実はコーデックは手持ちのプレーヤーに依存してしまうため、iPhoneを使っている人はAACでしか再生できません。逆にプレーヤーにAndroidスマホを使っている人は、コーデックの種類が豊富なので状況に応じて好みのコーデックで再生することができます。
ただし、Androidユーザーでも注意することがあります。たとえばaptX adaptiveに対応するイヤホンでも、それに対応するプレーヤーは新しいスマホに限定されます。手持ちのスマホのCPUを確認しましょう。
【2:ドライバの種類と特徴】
一方でイヤホンの音質を担保するうえで重要なのがドライバーです。電気信号を音に変換するスピーカー部分で、イヤホンにとっての心臓部といえます。ドライバの種類や構造、また口径や素材を変えるだけで音の志向や良し悪しが変わるので、メーカーの腕の見せ所です。
ダイナミック型
音の信号を振動版に伝え音を出力する仕組み。幅が広く低音域を出力した音は迫力と臨場感があります。比較的安価なイヤホンが主に採用しています。
バランスド・アーマチュア型
振動版を小さなピンで振動する仕組み。高音域や中音域の音の再現が上手く、繊細で高解像度になる傾向があります。また小型のドライバーというメリットを生かし、複数のドライバーを搭載し、より細かい原音に忠実な再生を可能とします。価格が2万円を超えるハイクラスイヤホンが多いのが特徴です。
ハイブリッド型
ダイナミックドライバーとバランスド・アーマチュアドライバーの両方を搭載。迫力さと繊細さを兼ね備えています。
ここまで音質を解説してきましたが、スペックが高ければ高音質というわけではありません。実際に試聴してみて、好みに合っているのか確かめるのをオススメします。
選ぶポイント2:装着感「フィットしないと、本来の音を引き出せない」
どんなにスペックが高く音質が良くても、耳にイヤホンがうまくフィットしていなければ、イヤホン本来の性能は引き出されません。付属品に各サイズのイヤーピースがあるように、フィット感はそれだけ重要です。
【1:装着方法の種類と特徴】
そして装着方法には大きくわけて「カナル型」「インナーイヤー型」「耳掛け型」「ネックバンド型」があり、特徴も異なってくるので、好みのタイプを見つけてみるといいでしょう。
カナル型
耳の穴にイヤホンの先端を差し込んで聴くタイプ。耳栓のように耳の奥まで差し込むため、密閉製が高く音漏れがしにくいのが特徴です。また、低音域の表現に優れているので、重低音を楽しみたい人にオススメです。
しかしその一方で、長時間装着していると、耳に痛みが生じたり疲労が蓄積することがあります。
インナーイヤー型
耳の穴の縁に引っ掛けて聴くタイプ。周囲の音を取り込みやすく長時間使用しても疲れにくいのが特徴です。また、カナル型と異なり、低音域の再生が苦手で高音域の再生が得意です。
なお耳への密着感がないため、音漏れがします。公共の場で使用する際は音量に気を付けましょう。
耳掛け型
耳の付け根に引っ掛けて聴くタイプ。耳の穴にイヤホン差し込むタイプやオーバーイヤータイプがありますが、いずれも装着中の安定感が高いのでスポーツをしながら使用する人にオススメです。
【2:付属品のイヤーチップにも注目】
イヤホンを購入すると大抵付属品で同梱されている丸っこい何か。コレはイヤーチップというもので、耳の穴のサイズによって付け替えます。すぐにイヤホンが外れてしまう人は、そもそもイヤーチップが合っていません。
耳にぴったりのイヤーチップにすれば、装着感だけでなく、音質も別物になって聴こえるでしょう。購入時のイヤーチップを使い続けている人は、是非一度すべてのイヤーチップを試してみることをオススメします。
選ぶポイント3:接続安定性「旧チップのイヤホンは遅延が起こりがち」
発売当初から比べると格段に改善されましたが、Bluetoothイヤホンの宿命で音の遅延や音の途切れが発生してしまいます。混戦エリアともなるとブツブツと音が切れがちで音楽再生をするうえで相当なストレスです。
「内蔵チップ(プロセッサ)」や「Bluetoothバージョン」「Class」先に解説した「コーデック」によって接続安定が大きく左右されるので購入する際にチェックが必要になってきます。
【1:内蔵チップの種類と特徴】
日進月歩で進化を続けるイヤホンのなかで、最もスピードが速いのが内蔵チップです。あまりにも進化が速いため、割と新しいモデルでさえ、わずか半年で旧モデルと位置付けられてしまうこともあり、チップはワイヤレスイヤホンにとってかなり重要な部品となっています。
で、そもそも「チップって何?」って感じですよね。
一言でいうとスマホとイヤホンの「通信の安定接続」と「省電力」を担ってくれるものです。これまで100本以上のBluetoothイヤホンを試聴してきてわかったのは、チップがグレードアップすると、より快適に使用することができるということです。
そのためメーカーは新チップを搭載したイヤホンを開発するのに競争が起きています。ほとんどのメーカーはアメリカの大手半導体メーカーであるQualcomm社のものを使用していますが、開発力のあるAppleやソニーは内製化しています。
下の図は各メーカーが採用しているチップ一覧です。新しいチップほど音質や使い勝手の評価が高く、逆に古くなるほど音質は低下し、バッテリー持ちや通信安定性が微妙になっていきます。価格が安いからといって迂闊に手を出してしまうと、思わずしっぺ返しを食らうことがあるので、“壁”を見極めることが重要です。
Apple(アップル)のチップ
「W1チップ」を内蔵したAirPods第1世代から3年を経て発売されたAirPods第2世代には「H1チップ」が内蔵されています。音質は2段階以上良くなり、通信速度やバッテリー持ちも向上しています。
また最新のAirPods ProにはH1チップをベースとしたアンプなどをパッケージ化したSiPを搭載しています。
SONY(ソニー)のプロセッサ(チップ)
ノイキャンに力を注いできたソニーは、ノイキャンイヤホン用にプロセッサを応用しました。ワイヤレスイヤホンは識者から高評価を得て、音質面でベストバイを獲得しています。
Qualcomm(クアルコム)のチップ
ワイヤレスイヤホンを加速度的に進化させたクアルコムのチップ。通信方式に改善を加えながら、左右の音声を送信して再生する「TWS Plus」という仕組みになりました。
※残念ながらすべてのAndroidスマホで使えるわけではなく、対応するQualcomm社のチップを搭載したAndroidスマホが必要です。なお最新のAndroidスマホであればほぼ対応しています。
BOSE(ボーズ)のチップ
2017年を最後に新製品のワイヤレスイヤホンを発売していなかったBoseは、2020年に新製品を発売。おそらくチップも旧型から新型へ変更されています。
このように、イヤホンを購入するうえで物差しにもなる内蔵チップですが、公開していないメーカーもあります。その際は、以下で解説する「Bluetoothバージョン」を物差しに推測するといいでしょう。
【2:Bluetoothバージョンと特徴】
そもそもBluetoothというのはデジタル機器用の近距離無線通信規格のひとつで、対応する機器同士がワイヤレスでデータのやりとりを行うものです。
Wi-Fiと混同する人もいますが、Wi-Fiが複数の機器で通信をするのに対して、Bluetoothは1対1の通信を主な目的としています。転送速度はWi-Fiと比べると遅いですが、消費電力が少ないことからスマホやタブレットにも搭載されています。
Bluetooth 1.1
初めて一般公開された最も普及したバージョン
Bluetooth 1.2
2.4GHz帯域のWi-Fiなどとの干渉対策が盛り込まれた
Bluetooth 2.0
最大通信速度を3Mbpsに切り替えられるEDRがオプションで追加
Bluetooth 2.1
ペアリングが簡略化され近距離無線通信のNFCに対応
Bluetooth 3.0
最大通信速度が24Mbpsとなり約8倍の速さに
Bluetooth 4.0
大幅に省電力化されたLow Energyが追加
Bluetooth 4.1
Low Energyにモバイル端末向け通信サービスの電波との干渉を抑える技術、データ転送の効率化、自動の再接続機能、直接インターネット接続できる機能が追加
Bluetooth 4.2
Low Energyの通信速度が2.5倍高速化
Bluetooth 5.0
Low Energyのデータレートが4.0の2倍、通信範囲が4倍、通信容量は8倍に。またメッシュネットワークにも対応
Bluetooth 5.1
方向探知機能を追加
Bluetooth 5.2
LE Audio規格の追加を含む複数の改良
イヤホンを選ぶ際は、新しいBluetooth5.0以降の機種が安定しやすい傾向があります。
【3:Classの種類と特徴】
Bluetoothには電波の強度を規定した「Class」があります。電波の強度により分類されていて、Classによって有効通信範囲が異なります。
Class1
最大出力数は100mWで、想定通信距離はおよそ100m程度
Class2
最大出力数は2.5mWで、想定通信距離はおよそ10m程度
Class3
最大出力数は1mWで、想定通信距離はおよそ1m程度
イヤホンのほとんどがClass1もしくはClass2に分類されています。日常で使用する場合、スマホから100m以上離れることはないと思いますが、Class1だとより心強いです。
【4:各コーデックによる遅延と特徴】
先ほど音質面でも紹介しましたが、「コーデック」は音声データ容量差から、通信速度にも影響が出てきます。圧縮率が低いとデータ容量が重くなり、通信速度が遅くなる傾向がありますが、aptXシリーズは音質を良い状態にしたままで通信速度を安定させています。
SBC
遅延目安170~270ミリ秒。標準コーデック
AAC
遅延目安90~150ミリ秒。主にiOSで採用され、Android8.0以降でも対応
aptX
遅延目安60~80ミリ秒。主にAndroidで採用
aptX HD
遅延目安130ミリ秒前後。aptXのハイレゾ版
aptX LL
遅延目安40ミリ秒未満。aptXの低遅延バージョン
aptX adaptive
遅延目安50~80ミリ秒。電波状況に応じて転送ビットレートを可変
LDAC
(非公開)
遅延だけでみればaptXシリーズが圧倒的な数値で、データサイズが大きいLDACは遅延がかなり生じます。
音質と通信速度を兼ね備えたaptX adaptiveが今後台頭してきそうなので期待が高まります。
選ぶポイント4:連続再生時間「5時間以上+急速充電の対応」
どんなに音が良くても、すぐにバッテリーが切れては意味がありません。当初は2~3時間程度しか持たなかったバッテリーも、最近のイヤホンは10時間を超えるものまで登場しています。
またイヤホンを収めるケースにもバッテリーケースを担うものまであり、ケースと併用して100時間を超えるものも珍しくありません。
オススメは10分ケースに収めると1時間以上再生してくれる急速充電にも対応するイヤホン。この充電方法であれば、万が一イヤホン本体のバッテリーが切れてしまっても、すぐに使えて便利です。
選ぶポイント5:ANC性能「ノイキャンと合わせて外部音取り込み機能もチェック」
ハイエンドイヤホンのほとんどが搭載しているトレンドのノイキャンイヤホン(ANC=アクティブ。ノイズ・キャンセリング)。ヘッドホンほどの強度ではありませんが、より日常生活を快適にしてくれる機能がイヤホンにも応用されトレンドになっています。
ノイキャンの強度や使い勝手はイヤホンやメーカーによって思想がバラバラで、音質にも影響を与えてしまうことがあります。音質を楽しみたかったり、使い勝手を重視したかったりなどユーザーの好みが分かれるところでもあるので、しっかり吟味しましょう。
そこで見落としがちなのが「外部音取り込み機能」です。
耳栓の形状をしているカナル型イヤホンでも十分騒音はカットできますが、周囲の音を聞き取るためにには一度外さないといけないのが玉に瑕。その点、外部音取り込み機能があれば、触れたりタップするだけでシームレスに切り替えられるので、かなり利便性が上がります。
ノイキャンイヤホンの購入を考えている人はしっかりチェックしてみてください。
選ぶポイント6:防水性能「汗や雨にも強いと安心感が違う」
左右が独立しケーブルレスであることからスポーツ利用も多い完全ワイヤレスイヤホン。イヤホンに完全防水・防滴製用があれば雨のなかでのランニングや汗をかいてもへっちゃらです。
防水規格については以下のように定められています。
IPX1
鉛直から落ちてくる水滴による有害な影響がない。防滴Ⅰ型
IPX2
鉛直から15度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない。防滴Ⅱ型
IPX3
鉛直から60度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない。防雨型
IPX4
あらゆる方向からの飛沫による有害が影響がない。防沫型
IPX5
あらゆる方向からの逆流水による有害が影響がない。防噴流型
IPX6
あらゆる方向からの強い噴流水による有害が影響がない。耐水型
IPX7
一時的に一定水深の条件に水没しても内部に浸水しない。防浸型
IPX8
継続して水没しても内部に浸水しない。水中型
これだけ見てもわからないと思うので、補強しますと、IPX1~IPX3までは水滴が対象になっていて、IPX4は雨や水しぶきが対象になっています。
IPX5やIPX6になると、より防水性が高まり、シャワーの水や流水に濡れてしまっても大丈夫です。
さらにIPX7になると完全に水中に落としても大丈夫。30分ほどなら水泳をしながら音楽を楽しめるようになります。
スポーツ専用イヤホンというと音質を疑いがちな時期もありましたが、近年登場しているイヤホンは防水・防滴性能に優れ、かつ音質も良いというイヤホンも少なくありません。スポーツ用に別途イヤホンを用意することもないので、考慮にいれるといいでしょう。
ただし、いくらひとつひとつのスペックが高くても、必ずしも高音質になるとは限らないのが音の難しいところです。最終的に製品にあたり各メーカーの思想や技術者の手腕が試されるので、性能を生かし切れていないことも珍しくありません。
ということで、今回の検証では「音質」「装着感」「遮音性」にフォーカスしました。
【まとめ】進化したソニー「WF-1000XM4」がベストバイ!
以上、完全ワイヤレスイヤホンのおすすめランキング12選でした。
2年越しの正統進化を遂げたソニーの「WF-1000XM4」がベストバイに。音にこだわるiPhone派にもおすすめで、音質・NCに加え、360 Reality Audioも楽しめます。
また、今回はこれまで『家電批評』本誌でテストしていなかった製品も加えた最新ランキングとなっています。JBLの「LIVE PRO」は軽い装着感も魅力、それに濃厚なサウンドが欲しいなら「MW08」もおすすめです。