10万円台で手に入る高画質超望遠ズームレンズに注目

10万円台で手に入る高画質超望遠ズームレンズに注目 イメージ

オリンピック、パラリンピックでも話題を集めたブルーインパルスの展示飛行。航空機や鉄道、動物園やスポーツの撮影などを始めると、「もっと被写体を大きく写したい!」という願望がこみあげてきませんか。

そんな方におすすめしたいのが「超望遠ズームレンズ」です。でも「大きい・重い・高価」と三拍子揃っているのが望遠レンズ。特にソニーやキヤノンなど純正のものは20万~40万円が当たり前の世界で、尻込みしてしまいすよね……。

そこで今回は、少しがんばれば手が届く最新超望遠ズームレンズとして、「シグマ」「タムロン」の新製品に注目しました。

超望遠ズームレンズってどんなもの?

一般的に、望遠側が400mm以上まで達するレンズを「超望遠ズームレンズ」と呼びます。

下の写真はベイブリッジまで約2km、500mmの写真に写っている中央の赤い灯台まで約2.5kmという距離で撮影したもの。超望遠ズームレンズを使うと、遠い被写体もここまで大きく写ります。

超望遠ズームレンズってどんなもの? イメージ
超望遠ズームレンズってどんなもの? イメージ2
超望遠ズームレンズってどんなもの? イメージ3

今回ピックアップした、シグマ「150-600mm F5-6.3 DG DN OS│Sports」と、タムロン「150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)」。どちらも画質にこだわるユーザーに人気のフルサイズミラーレス向けのレンズです。

フルサイズミラーレスには、キヤノン、ソニー、ニコンと、「Lマウントアライアンス」としてレンズ規格を統一しているパナソニック、シグマ、ライカが参入していますが、コスパに優れたサードパーティー(レンズメーカー製)レンズが揃っているのはソニーとLマウントだけ。

シグマとタムロンのレンズのうち、シグマはソニーとLマウントに、タムロンはソニーのみに対応しています。

超望遠ズームレンズってどんなもの? イメージ4

第3回目の今回は、シグマ「150-600mm F5-6.3 DG DN OS│Sports」とタムロン「150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)」を実際に使って比較。どちらが買いなのか徹底検証しました。

▼第1回 シグマ「150-600mm F5-6.3 DG DN OS│Sports」の記事はコチラ

▼第2回 タムロンの記事はコチラ

甲乙つけがたい好成績「シグマ」と「タムロン」

あらためて、今回比較する2製品をご紹介します。

シグマ「150-600mm F5-6.3 DG DN OS│Sports」

シグマ「150-600mm F5-6.3 DG DN OS│Sports」 イメージ

シグマ
150-600mm F5-6.3
DG DN OS│Sports
実勢価格:15万8400円

サイズ・重量:φ109.4×265.6mm(最大径×長さ)・2100g(三脚座込)
レンズ構成枚数:15群25枚
※サイズや価格はEマウント版です

▼テスト結果
描写性能:20/20
AF性能 :18/20
使い勝手:16/20
サイズ・重量:15/20
コストパフォーマンス:19/20
総合得点:88/100

タムロン「150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)」

タムロン「150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)」 イメージ

タムロン
150-500mm F/5-6.7
Di III VC VXD (Model A057)
実勢価格:14万500円

サイズ・重量:93×209.6mm(最大径×長さ)・1880g(三脚座込)
レンズ構成枚数:16群25枚

▼テスト結果
描写性能:19/20
AF性能 :17/20
使い勝手:19/20
サイズ・重量:18/20
コストパフォーマンス:20/20
総合得点:93/100

どちらも10万円台で、スペックや性能面の近いレンズですが、実写すると両者のコンセプトは大きく異なっていました。

それでは比較ポイントをくわしく見ていきましょう!

比較ポイント1:使い心地

まずは画質やAF性能以外の使い勝手を比べてみます。

シグマのレンズで実際に撮影してすぐに気づくのが「作りのよさ」。具体的にはレンズ鏡筒が堅牢で各パーツが精度良く組み上がっていることが伝わってきます。

ズーム操作はシグマがラク!

ズーム操作はシグマがラク! イメージ

シグマはズームリングやフォーカスリングの動きに「遊び」がなく、実にスムーズな操作感です。また、ズームトルクスイッチをS(スムーズ)にすると、レンズの先端を持って一気にズームする「直進ズーム」操作ができます。

昔のズームレンズでは定番の操作法ですが、最新レンズで対応しているのはシグマくらい。

ズーム操作はシグマがラク! イメージ2
ズーム操作はシグマがラク! イメージ3

鏡筒の先端を持って「えい!」と動かすだけでズームできるので、一気に構図を変えられて大変便利です。

タムロンはズームロックが秀逸!

タムロンはズームロックが秀逸! イメージ

一方、タムロンのレンズはズームロック機構がとても直感的

超望遠ズームはレンズが重いため、持ち歩いている間に鏡筒が自重で伸びてしまうのを防ぐズームロック機構が必須となります。スイッチ式のシグマと異なり、タムロンはズームリングを前後に引く操作だけでロックOK。

タムロンはズームロックが秀逸! イメージ2
ズームリングをレンズの先端側に軽く押し出すと……。
タムロンはズームロックが秀逸! イメージ3
ロックがかかります。

操作が簡単。これで確実に不快な現象を防げます。しかもズームをロックしなくても、ほとんど自重で伸びないところも優秀です。

撮影中にいいレンズだなと実感しやすいのはシグマでしたが、撮影の前後で歩き回る際には、レンズそのものが軽量でズームロックのストレスがないタムロンの便利さを実感しました。

比較ポイント2:画質

続いて画質の比較です。実写を繰り返してみたところ、シグマはタムロンよりシャープでキレのよさがあり、タムロンはどこか柔らかさのある印象。どちらも文句ナシの画質であることは間違いありません。

シグマ:シャープでキレがいい!

写りは素晴らしいの一言。まさに息をのむ描写です。

シグマは、超望遠ズームで撮影したとは思えないキレのある描写と、とくに300mmまでの近接性能の高さには驚かされました。最もマクロができるのは焦点距離180mm近辺で、最大倍率0.34倍(※)、58cmまで被写体に近寄れます。

その状態でも絞り開放からとてもシャープに光を結ぶので、撮影中はうれしくて口角が上がりっぱなしでした。

シグマ:シャープでキレがいい! イメージ
撮影距離:約3.5m

望遠端・絞り開放の条件ですが、ダチョウの産毛の一本一本までとても繊細に描写。ズームレンズで撮ったことが信じられないレベルです。

シグマ:シャープでキレがいい! イメージ2

また拡大部を観察してみても、色のズレやにじみの無い素晴らしい描写です。ズームレンズでは、ハイエンドクラスのレンズでなければ達成できないような光学性能でした。

※撮影倍率:カメラの撮像面(フィルムの1コマやイメージセンサー)に写る像の大きさと実際の被写体の大きさの比率。例えば8cmの被写体が撮像面で2cmで写っていた場合、0.25倍となる

タムロン:接写性はシグマ以上!

タムロンも、シグマ同様に大変に素晴らしい写りです。本当に超望遠ズームなのか? といい意味で疑問に感じる描写性能が魅力。

シグマと比べると、ズーム全域での接写性はタムロンが上。たとえば最大撮影倍率ではシグマがわずかにリードしていますが、タムロンは望遠端でも1.8mまで接写することができます。
 

タムロン:接写性はシグマ以上! イメージ
撮影距離:約2.5m

こちらの写真はアクリル板越しですが、それを感じさせない描写はさすが。1.8mまで寄れるのでポジショニングの自由度が高いのも魅力です。シグマがシャープなのに対し、繊細で柔らかさもあるタムロン。

タムロン:接写性はシグマ以上! イメージ2

色のズレやにじみのない描写です。接写性能×ズームレンズの利便性という組み合わせで撮影の幅が大きく広がりますね。

また、シグマは180mm時に58cm、600mm時で2.8mと、ズーム位置によって最短撮影距離の変動が大きいですが、タムロンはサイズ以外の点でも撮影時に融通の利く撮影感覚となっています。

比較ポイント3:オートフォーカス

比較ポイント3:オートフォーカス イメージ

オートフォーカスの精度は、定量比較が可能な被写体として、東海道新幹線小田原駅で高速通過する新幹線を撮影してテストしました(上の写真はシグマのレンズで撮影したもの)。

条件はどちらも望遠端。シグマとタムロンで焦点距離に100mmの違いがありますが、撮影時間の都合でその点は今回考慮していません。それぞれのレンズで約200ショットずつ撮影し、最良と最低の結果を省いた標準的な結果の平均値を計算すると、以下のようになりました。

比較ポイント3:オートフォーカス イメージ2

AFが反応するレスポンスはタムロンのほうが一瞬速いですが、シグマのほうが被写体への追従性で優る感触。鉄道撮影ではシグマがやや有利と言えそうです。Sportsを冠するとおり、動きモノに強いことを示しました。

まとめ:普段使いに重宝なのはタムロン

実写して比較したところ、スペックや性能面だけではわからない違いが見えてきました。

シグマは「スポーツライン」のコンセプトどおり、性能を優先しタフな使用用途にも対応。大きさ・重さがそのまま堅牢性につながっている実感があり、信頼感に溢れています。

ソニーには「FE200-600mm」という純正の超望遠ズームがあり、AF速度や連写では今回の2製品より優勢ですが、シグマは純正にはない接写性と、よりコンパクトなサイズという武器があり、コスト的にも魅力的です。

まとめ:普段使いに重宝なのはタムロン イメージ

一方のタムロンは、普段使いできる超望遠ズーム。軽さと収納性の高さが大きな利点です。堅牢性ではシグマのほうが強い印象ですが、そこまでの強さは必要ないという人にとってはシグマの重さはデメリットでしょう。

シグマのメリット・デメリット

シグマのメリット・デメリット イメージ

▼よかった点
・堅牢性
・単焦点レンズに迫る描写性能
・近接性能の高さ
・実勢価格
・質感・仕上げの高さ

▼惜しかった点
・サイズ
・重量

タムロンのメリット・デメリット

タムロンのメリット・デメリット イメージ

▼よかった点
・コンパクトサイズ
・単焦点レンズに迫る描写性能
・近接性能の高さ
・実勢価格
・トータルバランス

▼惜しかった点
・望遠端が500mm
・簡易防滴のみ

どちらも優秀な製品ですが、今回の結論としては「より多くの人に使いやすい」「持て余さない」という点で、タムロン「150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)」をベストバイとしておすすめします。

初めて超望遠ズームレンズを買うなら、とくに推奨する一台です。

豊田慶記 氏
写真家
豊田慶記 氏 のコメント

テストしてみて、今回のレンズを装着できるボディを持っていないことを後悔しているほどです。

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以上、シグマとタムロンの10万円台で手に入る超望遠ズームレンズの比較でした。気になったらチェックしてみてくださいね。

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