フルサイズミラーレス用超望遠ズームレンズ

先日閉幕したオリンピック、パラリンピックではブルーインパルスの展示飛行が話題になりました。航空機や鉄道、動物園やスポーツの撮影などを始めると「もっと被写体を大きく写したい!」「超望遠レンズが欲しい」と思いますよね。

そこで、画質やコスパの良さで話題の超望遠ズームレンズ「シグマ150-600mmF5-6.3 DG DN OS | Sports」を3回シリーズで深掘りします。

本レンズには「ソニーαシリーズに対応するEマウント版」と「シグマ(fpシリーズ)、パナソ ニック(LUMIX Sシリーズ)、ライカの(SLシリーズ)に対応するLマウント版」があります。初回となるこの記事では、レンズの外観や機能の解説とLマウント版の実写レビューをお届けします。

シグマ150-600mm F5-6.3 DG DN OS | Sports

シグマ150-600mm F5-6.3 DG DN OS | Sports イメージ

シグマ
150-600mm
F5-6.3 DG DN OS | Sports
実勢価格:15万8400円(Eマウント)、15万4800円(Lマウント)

2021年8月27日発売

▼Eマウント

▼Lマウント

シグマ「150-600mm F5-6.3 DG DN OS|Sports」はフルサイズミラーレス専用に新発売した超望遠ズームレンズです。型番に「Sports」とありますが、これはレンズのコンセプトを示すもの。同社のレンズは以下のこの3つのライン(コンセプト)のいずれかに当てはまるように設計されています。

●望遠レンズなど、強力な手ブレ補正と高速なAF性能、タフな使用に耐える高剛性と防塵防滴に配慮した構造などによって競技スポーツを撮影するプロの使用に応える性能重視のSportsライン。

●数値的な光学性能だけではなく、ボケ味や上質な使用感など使い心地、撮影した写真を観た時の満足度をまでを考慮したArtライン。

●撮影性能やハンドリング、軽量コンパクトな作りでカメラバッグへの収納性といった普段使いの快適さとトータルバランスのContemporaryライン。


今回紹介するのはSportsライン。本レンズは冒頭でも触れている通りフルサイズミラーレス専用設計のSportsラインの第一弾となります。実はこのレンズには一眼レフ機向けの従来型もあり、もし本レンズを検討している場合はミラーレス専用であることを示す「DN」という印がレンズ名に入っていることを確認して下さい。

超望遠ズームなので巨大で操作パーツも豊富

このレンズ、サイズは最大径が約110mm、全長約264mm、重量約2,100g(2.1キログラム)、フィルター径が95mmとなっています(Lマウント版)。焦点距離600mmをカバーするズームレンズとしては比較的コンパクト、という評価になりますが、かなり大型のレンズになりますので、手持ちのカメラバッグに納まるかどうかを事前にチェックする必要があります。一応、カメラポーチがレンズに付属していますが普段持ち歩くのには適しません。

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このような本格的な超望遠レンズは鏡筒側面にAF/MF切り替えレバーやフォーカスリミッター、手ブレ補正機構のモード切替レバーを配置するのが一般的。それは本レンズも同様です。

目新しいのは「L/T/S」のズームトルクスイッチ。Lはロックで可搬時にズームが自重で伸びてしまわないようズームをロックするポジション。これは150mm時に設定可能となっています。

Tはタイトを意味していて、ズームリングの操作トルクが重めになります。Sはスムースで、頻繁にズーム操作をする場合や、ズームリングではなくフードやレンズ先端部を持ってエイヤっとズームを直進操作をする場合に利用します。

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三脚座のフット部分はアルカスイス互換形状(※)。三脚座リングは90°毎にクリック感のあるタイプ。特定位置で回転がストップすることなく360°回転します。操作感は大変スムースで高級感があります。レンズフードはかぶせ式で先端がラバーで保護されているので、フードを下にして地面に置いた場合にも安心です。

また。本レンズのLマウント版は1.4倍と2倍のテレコンバーター(テレコン)に対応し、最大で1200mm相当画角が楽しめます。

 
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シグマ
TELE CONVERTER TC-2011
4万352円

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実写レビューPART1 <Lマウント編>

製品解説はこのくらいにしてLマウント版の実写テストに進みましょう。使用ボディは2020年発売のパナソニック LUMIX S5です。

実写レビューPART1 <Lマウント編> イメージ
 

使用感:作りの良く十分高速なオートフォーカス

レンズ鏡筒の堅牢な作りと各部が精度良く組み上がっていることが伝わるスムースな操作感がとても心地良く、Sportsラインの世界観を容易に想像することが出来ますし、良いレンズを使っているという感覚があり気分が良いです。ちなみに公式オンラインショップで17万6000円でしたが、確実にお値段以上のクオリティであると、撮影前から理解出来ます。

S5との組み合わせは約3kg。徒歩での移動時は正直苦痛に感じる重さなのでリュックタイプのカメラバッグを推奨します。AF速度はパナソニック純正の「LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.(14万6000円)」と同等か少し劣る程度、より上位クラスのProレンズ「LUMIX S PRO 70-200mm F2.8 O.I.S.」と比べると明らかに遅いですが、超望遠レンズとして十分に高速なAF速度だと評価しました。

S70-300mmとAF速度にどのくらい違いがあるのか測定もしました。もっとも大きな差がでたのがズーム位置300mm、カメラから被写体までの撮影距離が1.2m、無限遠からAFを開始させて合焦音がするまで、という条件。それぞれ10回ずつ手計測したところS70-300mmが約0.4秒、本レンズが約0.5秒でした。体感でもワンテンポ純正レンズが早く合焦する印象はありますが、それ以外のシーン、具体的には撮影距離が7mを超えるシーンではほぼ同等でした。

ズームトルクスイッチについては、T(タイト)にしていても片手で50mほど持ち歩いていてみると自重で伸びました。三脚座を持って移動するのであれば、Tに設定しておけば伸びることはありません。

画質:撮影中に思わずニンマリするほどの高画質

写りは素晴らしいの一言。正に息を呑む描写です。写真を観ていると超望遠ズームで撮影したとは思えないキレのある描写と、とくに300mmまでの近接性能の高さには驚かされました。

最もマクロが出来るのは180mm近辺で、最大倍率0.34倍、58cmまで寄ることが可能です。至近端でも絞り開放からとてもシャープに光を結ぶので撮影中は口角が上がりっぱなしでした。

画質:撮影中に思わずニンマリするほどの高画質 イメージ

移動中は正直シンドいですが、この写りと使い勝手ならば頑張って持ち歩きたくなります。動物園での使い心地も良く、LUMIX S5の動物認識AFの威力もあり、AF設定で特に工夫することなく撮影に集中出来ます。

このレンズは開放F値が暗いレンズですが、フルサイズ機の高感度特性の良さも相まってノイズをそれ程気にすること無く撮れるのは良いポイントでしょう。とは言え、レンズが暗いことは暗いので、動物園での撮影では檻や網と動物との距離感を考慮して撮影しないと檻や網の形状が分かってしまう写り込みになるので要注意です。ど

んなシーンでも檻や網を強引にボカしてごまかせる大口径単焦点望遠レンズのようにはいきません(最もそういうレンズは100万円以上が相場です)。しかし、動物の毛並みといった写りだけに注目するとまるで単焦点望遠レンズのようです。

画質:撮影中に思わずニンマリするほどの高画質 イメージ2
画質:撮影中に思わずニンマリするほどの高画質 イメージ3

2倍のテレコンバーターと組み合わせでも描写の変化はごく軽微。正直なところココまで画質低下が少ないということを信じられませんでした。AF速度は若干遅くなりますので、新幹線などの高速な被写体や、スポーツやドッグランなどの動きの大きな対象では安定して撮影することが難しくなりますが、風景写真であれば問題はありません。

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Lマウント版のまとめ:超望遠ズームが欲しいならベストバイ

Lマウント版のまとめ:超望遠ズームが欲しいならベストバイ イメージ

Lマウントユーザーで超望遠ズームが欲しいと思っている人であれば即買い推奨。それが筆者の結論です。テレコンが必要な場合、AF速度を重視するのであれば1.4倍をチョイスするのが賢明です。というのも画質を維持したまま素の状態と遜色ない速度でAF可能だからです。

Sportsラインに相応しい描写力とAF性能、強力な手ブレ補正で安心して撮影を楽しむことが出来ます。性能や画質に加え作りの良さにも感銘を受けました。正直これほどのレンズが20万円以下で手に入るというのは、「シグマ企業努力し過ぎ」という感すらあり、どんな魔法でこのクオリティを実現出来たのか想像もつきません。

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ネガティブなところを挙げると、たしかにレンズ単体で2.1キロというのは負担ではありますので、600mmまでは必要ない、などの自分の中で優先順位を設定し、例えば400mmまでで良ければシグマ「100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary100-400mm(通称ライトバズーカ)」を選択するというのも手段の1つです。

しかし、写りもAF性能も本レンズが1枚上手。筆者はLマウントボディを所有していませんが、本レンズの為にボディを買っても良いかも? と本気で考えています。

『家電批評』2021年11月号

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晋遊舎
家電批評
2021年11月号
実勢価格:700円

本記事は、『家電批評』2021年11月号掲載のものをより詳細にしたものです。