富士フイルムからレンズ一体型のGFXが登場!
フィルム時代から「35mm」より上位に位置づけられてきた中判カメラは、緻密で豊かな描写が魅力です。そんな中判カテゴリーをリードしているのが富士フイルムのGFXシリーズです。
中でも最新モデル「GFX100RF」は、レンズ一体型を採用することで高い携帯性を実現。約80万円という高価格ながら、初回予約は即完売し、量販店では3カ月待ちと注目を集めています。
富士フイルム「GFX100RF」の実力は?
富士フイルム「GFX100RF」
- 画質
- 機能
- 使い勝手
- サイズ・重量
- コスパ
- 幅
- 133.5mm
- 奥行
- 76.5mm
- 高さ
- 90.4mm
- 重量
- 735g(約)
- 画素数
- 1億200万画素(約)
- 手ブレ補正
- なし
- EVF
- 0.5型、約 576万ドット
- 液晶モニター
- 3.15型チルト式タッチパネル
- 最大動画サイズ
- 4K、29.97p
- 型番
- GFX 100RF BLACK
中判カメラとは思えないコンパクトさ!
ストラップは牛革仕様、長さ調整はできません!
身長170cm程度で、カメラがこのくらいの位置にきます。ベルトのバックルに当たってしまいカメラが傷つきかねないのが、大変気になります。
紐を編み込んだようなロープタイプの高品質なショルダーストラップ。肩当て部分は本皮製です。全長は実測で約115cmあり、長さ調整はできません。
1億画素では横1万1438×縦8579pxの画像になります。約3km離れた建物の大きなロゴが読み取れるほどの解像度です。
フルサイズよりも大きな中判サイズのセンサーを採用
富士フイルムのラージフォーマット(中判サイズ)は、フルサイズと比べてかなり大きいのがわかります。
その差は約1.7倍、APS-Cと比べると約3.7倍にもなります。このおかげで1億200万画素を実現し、緻密な画質が得られます。
RAWデータは200MB以上なのでマシンパワーが必要です
CPUよりもメモリ容量が重要で、最低でも16GB以上が理想です。
Adobe LightroomやPhotoshopを使って現像するなら、Raw現像キャッシュとしてSSDの空き容量を20GB程度設定しておきましょう。
アルミ削り出しボディが美しい。しかし、操作性にやや不満あり
まずはボディをじっくり見てみましょう。
アルミ削り出しの天面カバーや金属製で細かいローレットが刻まれ、クリック感のあるダイヤル類など、富士フイルム曰く「工芸品の如き細部へのこだわり」が詰まっているのだとか。
重さは中判カメラとしては軽量な約735gで、片手でしっかりホールドでき、レンズフードを外せば普段遣いのバックにも収まりそう。シャッター音も驚くほど静かで、街中のスナップにもよく馴染みます。
パーツのつくりに詰めの甘さを感じる部分もありますが、「中判を身軽に、楽しく」を体現したデザインだと言えるでしょう。
フロントコマンドダイヤル
絞り値の変更のほか、ISO感度の変更などを設定できます。
デジタルテレコン切替レバー
最大80mmまで、3段階あるクロップ機能をレバーで変更可能です。
単焦点のF4レンズ
GFX初のレンズ一体型。35mm判換算で28mm相当。4段分のNDフィルターを搭載しています。
アスペクト比切替ダイヤル
4:3や1:1など、9種類あるアスペクト比をダイヤルで変更できます。
リアコマンドダイヤル
フロントと同様、絞り値やISO感度などを割り当てられます。
レンジファインダー風のEVF
RF(レンジファインダー)と製品名に付いていますが、光学ファインダーではなく、EVFのみ。このEVFと液晶の色みの違いが気になりました。
電源レバー/シャッターボタン
フロントと同様、絞り値やISO感度などを割り当てられます。
露出補正ダイヤル
親指を無理なく置ける位置にあり、適度なクリック感で操作性は良好です。
フィルムシミュレーション
写真フィルムの色味や質感をデジタルで追求する機能。フィルム銘を冠した好みのモードを選び、写真の仕上がりを整えます。
チルト液晶
上下チルトではなく、X-T5のような3方向チルトにしてほしかった。
レンズフード
外せばレンズの長さは半分程度になります。
シャッタースピード/感度変更ダイヤル
シャッタースピードと感度変更が同じダイヤルに。ISO感度の設定は、ダイヤルを上に持ち上げながら回転させるのですが、少し面倒です。
F値はレンズの絞リングで調節
F値の変更は、「絞りリング」が基本です。カチカチとクリック感があり、しっかりとして好印象です。設定で前後のコマンドダイヤルにも割り当てられます。
レンズシャッターを搭載
レンズ内にシャッター機構があるレンズシャッター方式を採用。シャッター時の振動が少なく、動作音も静かなのが特徴です。
アスペクト比を自由に変更できる
これもGFXシリーズ初。アスペクト比の変更がダイヤル式になりました。ただ、回転が重く少し回しにくい印象です。
夏場など、汗ばんだ指だと滑るかもしれません。
実際の撮影体験はどうなのかレビュー!
アスペクト比を自在に変える楽しさ
では、実際の撮影体験はどうなのか。じっくりレビューします。
中判フィルムは、一般的なデジタルカメラの3:2と異なる縦横比。645(4:3)や6:6(1:1)、6:7が主流で、このアスペクト比により、独特の雰囲気がありました。
GFX100RFでは、これらのアスペクト比をダイヤルを回すだけで、全9種類を即座に切り替えられます。メニューを表示させてアスペクト比を選ぶのではなく、物理ダイヤルを備えた点が高評価です。
なお、アスペクト比切替ダイヤルを「C」にセットすれば、前後のコマンドダイヤルでも変更可能です。比率を変えるたびに構図の発想が切り替わる感覚は、撮る側にとって新鮮で刺激的です。
いつもの景色でも、65:24で切り取ると映画のワンシーンのように見えたり、1:1ではモチーフが引き締まってアート感が出たりと、写り方がガラッと変わります。
こうした“作品づくり”に直結する楽しさは、他の機種にはなかなかない魅力です。
9種のアスペクトが楽しい!
切り替え可能なアスペクト比は、4:3、3:2、16:9、65:24、17:6、3:4、1:1、7:6、5:4の9種類!
撮影前に、このアスペクト比が合いそうだな……と考えるのが楽しい。
【アスペクト比】17:6
1/750秒/F5.6/ISO160/クロップなし/ACROS+Rフィルター/グレイン・エフェクト:強、粒度・大
パノラマのアスペクト比にすることで絵にリズム感が出ました。
【アスペクト比】7:6
1/600秒/F4.0/ISO160/+1.3EV/クロップなし/ETERNA/シネマ/グレイン・エフェクト:強、粒度・小
スクエアよりもわずかに横長のアスペクト比です。
【アスペクト比】1:1
1/500秒/F5.6/ISO160/−0.7EV/クロップなし/PROVIA/スタンダード/カラークロームエフェクト/強
正方形のアスペクト比はどこかアーティスティック。記憶色に近い再現が素晴らしいです。
【アスペクト比】3:4
1/400秒/F5.6/ISO160/+0.3EV/クロップ63mm/ETERNA/シネマ
3:4は、カメラを正位置で構えなががら縦位置構図で撮れます。
デジタルテレコンが便利です
アスペクト比を変えずに、画像をクロップして被写体を大きく写すことが可能です。最大の80mmでも約1900万画素あるので十分でしょう。
1億画素の緻密さはさすがですが……
GFX100RF最大の強みは、やはりその描写力。ディテールは非常に緻密で、風景やスナップでも細かい葉の質感や建物の凹凸までしっかり描き出してくれます。
富士フイルムらしい色のりのよさや、滑らかな階調表現力も健在。JPEGの撮って出しでも十分に完成度の高い絵が得られます。高感度耐性も上々で、ISO3200〜6400でもノイズは目立ちにくく、夜の撮影でも不安はありませんでした。
しかし、期待値が高すぎたせいか「写りの感動」は想定より淡白に感じました。さらに、センサーの四隅や画面端では解像感がやや落ちる場面もあり、大型センサーの“どこを切っても完璧”とまではいかない印象です。
また、焦点距離も気になった点で、35mm(28mm相当)のレンズが中途半端に感じました。レンズ先端から20cmまで寄れますが、28mm相当の広角ゆえ、寄っている感じがしません。
山岳などの風景ならもっと広い画角が欲しいですし、スナップなら50mmなど、もう少し狭い画角がいいのになぜ28mm相当? と考えてしまいます。
1/500秒/F4.0/ISO160/+2.7EV/クロップなし/PROVIA/スタンダード/3:4
LCDがチルトのみなので、ローアングル撮影では縦位置アスペクト比の3:4が便利。背景のトーン描写がとても美しく夕日を待ってみよう、という気持ちになるカメラです。
AFがやや不安定でレバーの反応も遅い
AFまわりは、全体として“使えるけど油断はできない”という印象です。
動物にも対応する被写体検出機能を搭載しますが、瞳AFを有効にしても時に背景へピントが抜けてしまうことがあり、精度面ではまだ改善の余地があります。
AF-Cも追従が少し甘く、動きのある被写体では思ったように食いついてくれない場面もありました。
さらに、フォーカスレバーの反応が鈍いときがあり、操作していて「あれっ?」と思うことが何度か発生。
フォーカスレバーはメニュー操作にも利用できますが、カーソル移動が途中で止まるなど、ちょっとしたストレスを感じる場面があります。
撮影そのものを台無しにするほどではないにせよ、スムーズな操作に慣れている人ほど違和感を覚えるかもしれません。
なお、バッテリーは省電力性能が高く、スマホと接続しなければ1000枚以上撮れるタフさがあります。撮影中の電池残量を気にすることは少ないでしょう。
ただ、電源オフ後にバッテリーが自然に減っていたこともあり、待機電力の制御にはまだ調整の余地がありそうです。
問題のフォーカスレバー。カーソル移動時の上下左右だけでなく、押し込みの反応もイマイチです。
瞳AFは左右を選べます
瞳AFは、AUTOのほか、左右の優先度を選べます。
1/18秒/F5.6/ISO500/+2.3EV/オート/クロップなし/ノスタルジックネガ/グレイン・エフェクト:強、粒度・大4:3
絵作りの設定と微ブレでカラーネガのライブ感を表現してみました。
「瞳AF AUTO」に設定して、合焦マークが表示されていましたが、実データではなぜか背景にピントが……。撮影後はしっかりとプレビューで確認したほうがよさそうです。
ポートレートはピントの甘いカットが想定より多く「もっとしっかり撮ればよかった」という気持ちになりました。
フジだから出せる色彩が最大の魅力
アスペクト比の変更に加えてフィルムシミュレーションも楽しい
富士フイルムのカメラといえば、やはり「フィルムシミュレーション」。
富士フイルムが長年手がけてきたネガフィルムやリバーサル(ポジ)フィルムの理想をデジタル画像で追求したもので、撮って出し(JPEG)の画づくりを自分好みに仕上げるための楽しい機能です。
パソコンを使わずにここまで表現を追求できるのはこのカメラの大きな魅力です。
1/640秒/F4.0/ISO320/−1.0EV/オート/クロップ:45mm/ETERNA ブリーチバイパス/アスペクト比4:3
暗い緑の表現がとても良く、赤色の繊細で複雑な表現はフジならではです。
1/240秒/F5.0/ISO160/−1.0EV/クロップなし/ACROS+Rフィルター/グレイン・エフェクト:弱、粒度・大/アスペクト比4:3
ACROSのモノクロトーンが美しく、粒状感がさらに深みをだしています。
1/180秒/F4.5/ISO160/−1.0EV/クロップなし/PROVIA スタンダード/アスペクト比1:1
バランスの取れた色合いが特徴で、どんなシーンにも合うフィルムシミュレーションです。
1/280秒/F5.6/ISO200/−1.0EV/クロップ:45mm/ETERNA ブリーチパイパス/グレイン・エフェクト:弱、粒度・小/アスペクト比4:3
硬調な画作りでボケ描写の傾向を強調。いい感じに仕上がりました。
1/240秒/F4.0/ISO160/−1.3EV/クロップなし/ACROS+Rフィルター/グレイン・エフェクト:弱、粒度・大/アスペクト比3:4
硬調ながら粘るシャドー特性なので、フィルム写真のような再現性を得られる。影を探しながら街を歩くのもおもしろいです。
好きなフィルムシミュレーションで撮影していると、やっぱりフジの絵は美しいと感じさせてくれます。
フルサイズ機との違いは? パナソニック「LUMIX S5」とポートレート比較
パナソニック「LUMIX S5」を加えて、ボケ加減やスキントーンを比較しました。
パナソニック「LUMIX S5」
- パナソニックLUMIX S5
- 実勢価格: ¥154,700〜
パナソニック「LUMIX S5」は、後継機のLUMIX S5 Ⅱ(実勢価格:24万7500円)が発売されても人気が高く、中古市場で活発に取引されています。
- 型番
- DC-S5-K
【組み合わせレンズ】シグマ「24-70mm F2.8 DG DN Ⅱ |Art」
- シグマ24-70mm F2.8 DG DN Ⅱ |Art
- 実勢価格: ¥165,000〜
- 型番
- 24-70F2.8 DG DN II/SE
ボケ加減とスキントーン
パナソニック「LUMIX S5」:全体的に青白さがあり肌の色も白すぎ
富士フイルム「GFX100RF」:見た目の色彩に近い温かみを感じる明るい色
絞り値は、富士フイルム「GFX100RF」、パナソニック「LUMIX S5」どちらもF4で撮影。
フルサイズよりも大きな中判サイズのセンサーということで、大きなボケを期待していましたが、パナソニック「LUMIX S5」とほぼ変わらない印象です。
ボケに大きな期待は禁物ですね。スキントーンは、富士フイルム「GFX100RF」が発色よく、自然で健康的に見える肌の色。
一方、パナソニック「LUMIX S5」は全体的に青白く、肌の色もやや不自然に感じます。色の表現については、「GFX100RF」が好印象です。
AE比較はパナソニック「LUMIX S5」が優勢
パナソニック「LUMIX S5」
自動露出(AE)に関してはパナソニック「LUMIX S5」が優秀です。
富士フイルム「GFX100RF」
富士フイルム「GFX100RF」は背景の明るさに合わせてしまい、人物は露出補正が必要なほど暗く写っています。
気になる高感度耐性は十分強い
1億画素ともなると、いくら大型センサーでも画素ピッチが狭くなるため、高感度には弱くなるのでは? と懸念されます。
しかし、そんな心配はまったく無用で、ISO5000でもノイズが少なく、ディテールまでしっかりと再現されているのには驚きです。
ISO3200程度であれば、ノイズをまったく気にすることなく常用できそうです。
ISO5000で撮影
拡大
ノイズは感じさせす、細部まで潰れずに再現しています。
まとめ:中判をカジュアルに楽しむ唯一無二感
以上、富士フイルム「GFX100RF」の紹介でした。
富士フイルム「GFX100RF」は画面の四隅で解像感がやや落ちることもあったとはいえ、総合的には文句なしの高画質です。
しかし、気になる点も……。まずは、名称にRF(レンジファインダー)を冠するにも関わらず、光学ファインダーを備えているわけではなく、レンジファインダー特有の視覚体験も得られないこと。
また、手ブレ補正の非搭載も残念です。高精細なだけに欲しかった。
そしてもう一点、悩ましいのが価格です。約80万円という価格帯は、「中判としては手ごろ」とも言えますが、冷静に考えるとドイツのライカやスウェーデンのハッセルブラッドといった欧州の高級競合モデルも射程圏内に入ります。
AF精度や操作系の完成度などを含めて、「その価格に見合う完成度か?」という疑問も湧いてきます。
とはいえ、アスペクト比を切り替えながら撮る楽しさや、同社ならではの色再現の美しさなど、数字には表れにくい“写真の楽しさ”を追求する人には、唯一無二のカメラになるかもしれません。
おすすめしたいのは完成度よりも、表現の自由さや雰囲気を重視する人。逆に、価格相応の性能や信頼性をシビアに求める人には、予算があっても慎重に見極めてほしいカメラです。
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EVFの色みは正確ではなく、クオリティがいいとは言えません。