広角・標準・望遠の大三元レンズでも、問題はそのお値段なんです
「広角・標準・望遠」の3本、いわゆる“大三元レンズ”は、多くのプロが愛用する憧れ。ましてや、メーカー純正となると、雲の上の存在です。その性能は使うだけで自分の撮影レベルが上がったと感じられるほど。しかし、その分だけ非常に高価で気軽に手が出せません。
たとえばニコンのフルサイズで広角・標準・望遠の大三元レンズを揃えると……。
▼広角レンズの場合…
ニコン
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
実勢価格:20万2000円
▼標準レンズの場合…
ニコン
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
実勢価格:24万314円
▼望遠レンズの場合…
ニコン
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR
実勢価格:26万2980円
……合計なんと約70万円もするんです。ちょっと、趣味レベルでの出費で考えると震える金額ですよね。もう諦めるしかないのでしょうか……。
大三元レンズのわかりやすい魅力は低いF値独特の明度とボケの表現力
とはいえど、やっぱりほしい大三元レンズ。ここで一旦、その魅力について触れておきましょう。
大三元レンズの魅力は、やっぱりF値が2.8という明るい高品質レンズで統一されていること。このF値は、小さい=明るい写真が撮れるという数値です。
山岳写真家の園部大輔氏によれば「F2.8のレンズは一般的なF5.6のレンズと比べ、約4倍暗い場所に強いと考えて差し支えない」とのこと。
また、F値が小さいほど、一眼カメラならではのボケを体感できます。「F2.8の望遠レンズであれば、誰もがプロが撮ったように美しい、背景のボケた写真を撮影できます」と園部さん。そうしたボケによる表現力の大きさも、F値の小さい明るいレンズの魅力です。
しかし、明るいレンズほど値段は高くなってしまいます。ここでF2.8のレンズとF3.5か-5.6のレンズの値段の違いにも触れておきましょう。
ソニーのF2.8のレンズの値段がこちら…。
ソニー
FE 24-70mm F2.8 GM
実勢価格:23万3945円
やっぱり20万はゆうに越えてきますね。では、同じくソニーのF3.5-5.6のレンズの値段は……。
ソニー
FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS
実勢価格:4万4270円
なんと、約5倍もの価格差があるんです。ズームレンズのランクはF3.5-5.6が「エントリークラス」、F4が「スタンダードクラス」、F2.8が「ハイクラス」という風に分けられていて、最上級のF2.8は下のクラスと比べて、それだけ魅力的な性能なんです。
なんだか大三元レンズを揃えるのは、絶望的な感じがしてきましたが、ご安心を! 救世主的なレンズが存在するんです。
サードパーティ製レンズなら大三元レンズが純正の半額以下!
そこで、近年レンズ選びで注目されているのが、メーカー純正より安く大三元レンズが手に入るタムロンやシグマといったサードパーティの存在。
特にコスパを意識するなら、ボケ味に定評があるなど侮れない描写力を発揮してくれるタムロンはオススメのサードパーティ。中でも注目は広角の15-30mmで、やや重たいのは気になりますが、安いだけでなく描写性能もすべての広角レンズの中でトップクラスというモンスターレンズです。
もちろん標準、望遠レンズの性能もしっかりしていて、最近のタムロンやシグマのレンズは、本当に純正レンズの半額以下なのかと疑ってしまうほど良い製品なんです。ただし、実勢価格は変動します。以下製品の価格は取材時の内容になりますのでご了承ください。
▼タムロンのF2.8の広角レンズなら…
タムロン
SP 15-30mm F2.8 Di VC USD
実勢価格:8万1020円
対応形式:ニコンF、キヤノンEF、ソニーAマウント
前述の定評でこの価格は、まさしく神コスパと呼ぶに相応しい広角レンズ。その魅力は、広角レンズのトップとして君臨してきたニコンの14-24mmの存在を脅かすほど!
▼タムロンのF2.8の標準レンズなら…
タムロン
SP 24-70mm F2.8 Di VC USD G2
実勢価格:10万8477円
対応形式:ニコンF、キヤノンEF
安定した画質かつ、美しいボケ感で撮影できるコスパの優れた標準レンズ。なお、この同ランクの製品群だとシグマのレンズなどもオススメなので、購入する際はよく検討して選ぶと良いでしょう。
▼タムロンのF2.8の望遠レンズなら…
タムロン
SP 70-200mm F2.8 Di VC USD G2
実勢価格:12万7700円
対応形式:ニコンF、キヤノンEF
旧モデルからリニューアルし、さらに手ぶれ補正とAFの安定感を向上させた望遠レンズ。ボケ味と手ぶれ補正で、ライバルのシグマと違いを生み出しています。
さらに描写力もキャノンのF2.8の望遠レンズと比較しても、引けを取りません。
「発色、ボケ味などわずかな違いはありますが、大きなレベルの差は感じられず、タムロンもキヤノンに負けない素晴らしい描写です。動体でのAFはさすがに純正品の方に利がありますが、安さに比例しない描写性能の良さがあるタムロンのコスパには驚かされます」とは山岳写真家の園部氏も絶賛。
サードパーティの型落ちでも描写はお値段以上!
さらに、コスパ最優先で選ぶなら、もうワンランク下のF2.8標準レンズと望遠レンズがあります。どちらも大三元と言っていいのか迷うほどの安さですが、写りはお値段以上です。
以下のタムロンの28-75mmは、発売されたのが約15年も前のレンズですが、動作や描写は安定しています。また70-200mmの望遠レンズは、AFのスピードや追随性こそ純正と比べて劣りますが、描写はしっかりしているので、F2.8望遠レンズの入門に最適です。
タムロン
SP AF28-75mm F/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO
実勢価格:2万4218円
対応形式:ニコンF、キヤノンEF、ソニーA、ペンタックスKマウント
まさかの2万円代で購入できるF2.8レンズ。画質も素晴らしく、コスパ重視のユーザーにとって救世主とも呼べる存在です。
望遠だってこのお値段!
タムロン
SP AF70-200mm F/2.8 Di LD [IF] MACRO
実勢価格:5万4668円
対応形式:ニコンF、キヤノンEF、ソニーA、ペンタックスKマウント
F2.8の望遠レンズなのに、たったの5万円台というコスパの良さが光ります。AFや描写性能は最新機種には劣りますが、それでも十分実用的な画質で撮影できます。
以下は大三元から外れてしまいますが、オススメのレンズ。
シグマ
SP AF12-24mm F4.5-5.6 Ⅱ DG HSM
実勢価格:7万5480円
対応形式:ニコンF、キヤノンEF、シグマSAマウント
各社のF2.8広角レンズよりさらに広角な12mmが魅力のシグマのレンズです。ほかとは違う超広角の世界をこの安さで体感できます。
このように、最後のシグマのみ大三元とは別枠の製品として紹介しましたが、サードパーティのレンズに注目することで、コスパを意識しながらも大三元を揃えることは十分可能なんです。これまで純正品の価格が高いから……と諦めていた人は、ぜひサードパーティのレンズを試してみてください。