どっちも10万円台。シグマとタムロンを比較します

前回の記事ではシグマ150-600mmF5-6.3 DG DN OS | SportのLマウント版をテストしました。今回はEマウント版のレビューです。

基本的に光学性能はLマウント版と同じですがEマウント版はテレコンバーターに対応し ていません。そして、ソニーEマウントにはさまざまな超望遠ズームレンズが存在しま す



ここでは、人気のフルサイズミラーレス機「α7 III」と組み合わせた場合の使用感と、 価格的に本レンズ最大のライバルと言えるタムロン「150-500mmF5-6.7 Di III VC VXD(Model A057)」との比較レビューを行います。

シグマ「150-600mm F5-6.3 DG DN OS | Sports」

シグマ
150-600mm
F5-6.3 DG DN OS | Sports
実勢価格:15万8400円(Eマウント)

2021年8月27日発売

▼比較したタムロンはこちら

タムロン
150-500mm
F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)
実勢価格:14万500円(Eマウント)

2021年6月10日発売

※製品写真はα7Ⅲとの組み合わせ(PHOTO:小川賢一郎)

ライバル「タムロン」はコンパクトさが魅力

タムロンレンズの紹介をしますと最大径が約93mm、全長約210mm、重量約1,900g(1.9キログラム)ですが、簡単に着脱可能な三脚座を取り外すと約1.7キログラムまで軽量化出来ます。フィルター径は82mm。望遠端が500mmと600mmのシグマより100mm短くなっていますが、その代わり最大径で約2cm、長さで約5cm、重さが200g以上軽く仕上がっているコンパクトサイズが最大の特徴です。

接写性はシグマ同様に非常に高く、最大撮影倍率はシグマとほぼ同等の約0.32倍とかなりのテレマクロ性能を楽しめるだけでなくカメラバッグへの収納性も高い「持ち歩ける超望遠ズーム」となっています。価格も14万500円とシグマより少しお手軽!

Eマウントは他にもいろんな選択肢がある

望遠側が500mmを超えるクラスではタムロン「150-500mmF5-6.7 Di III VC VXD(Model A057)」に加え、シグマ同様600mmまでズームできる純正レンズのソニー「FE200-600mmF5.6-6.3 G OSS」も有力な選択肢です。また望遠側を400mmまでで我慢する代わりにコンパクトさを優先するのであればソニー「FE100-400mmF4.5-5.6 GM OSS」シグマ「100-400mmF5-6.3 DG DN OS | Contemporary」も検討対象になるでしょう。

純正レンズで直接のライバルとなるのがFE200-600mm。重さこそシグマとほぼ同等ですが、長さはフード無しの状態で約32cmとかなりの体躯で持ち歩きには相当苦労します。加えてシグマやタムロンのような接写性もありません。

しかし、そういったネガティブな面を補って余りあるAF性能が備わっています。またスペックのワリには良心的な約24万円という価格に収まっているのも魅力(とは言えAmazon価格でシグマより約8万円ほど高く、タムロンとは約10万円の価格差があります)。用途がハッキリしていたり、将来的に高速連写ができるα9系やα1を購入予定がある場合や、サイズよりも信頼性や純正レンズという安心感を重視するのであれば、FE200-600mmを積極的に検討することをオススメします。

シグマ VS タムロン 実写レビュー

それではシグマ「150-600mmF5-6.3 DG DN OS | Sports」と、タムロン「150-500mmF5-6.7 Di III VC VXD(Model A057)」比較レビューです。

使用感:タムロンの方がやっぱりラク

タムロンレンズは操作性に関しても洗練されており、ズームロック機構が大変直感的。シグマのようにスイッチを探す事無くズームリングの前後操作のみで簡易的にロック出来る「フレックスズームロック」は特筆に値します。

シグマのように直進ズーム的な操作は出来ませんが、操作トルクが適切なのにズームをロックしなくても自重で伸びることが無い点も美点です。レンズフードはバヨネットタイプ。先端はラバーで保護されていて剛性感も十分。全長は短めで遮光性よりも可搬性を重視しています。シグマの方が上質な操作感で心地良く感じましたが、サイズ感ではタムロンが圧倒的に魅力的です。

α7 IIIでのAF速度は300mm時、撮影距離1.2m、無限遠からAF開始させて合焦音がするまで、という条件で測定したところ、どちらも約0.4秒台。シグマが平均0.45秒、タムロンは平均0.4秒でした。その他の条件でも計測してみましたが、体感と実測値ともにタムロンの方が動作が若干速いと感じました。

直接の比較ではありませんが、純正のFE200-600mmやFE100-400mmと比べるとAF速度とレスポンスは体感で少し及びません。動きの激しい被写体、例えば撮影距離が7m以内でのドッグランなどでは純正レンズにアドバンテージがあると思いますが、そのほかの一般的な用途や撮影距離が十分に離れているサーキット等ではシグマもタムロンも問題なく対応出来る実力があります。

実写(シグマ):Lマウント版同様に素晴らしい

LUMIX S5との組み合わせ時にも感じた通り、大変に素晴らしい写り。撮影した写真を眺めているだけでも楽しく、この描写であればこのサイズと重さであっても苦にならないと感じさせてくれます。

AFの動作はとてもスムースで、動物認識や瞳認識などタムロンレンズと同様に問題なく動作しますし合焦精度も申し分ありません。速度的には実測値・駆動速度の体感共にタムロンの方がAFは速いと思いますが、表現が難しいのですが合焦までのスムースさという意味ではシグマの方がスッと合う感じを持ちました。どちらにしろほぼ互角という認識で間違いないと思います。

今回比較は行っていませんが、同じくシグマにラインナップされているよりコンパクトな100-400mmF5-6.3 DG DN OS | Contemporary(通称ライトバズーカ)と比べてAF性能は本レンズの方が明らかに快適です。日常使いのトータルバランスを重視するコンテンポラリーラインと、全てが性能重視のスポーツラインという製品コンセプトの違いでしょう。

移動中は正直シンドいですが、この写りと使い勝手ならば頑張って持ち歩きたくなります。動物園での使い心地も良く、LUMIX S5の動物認識AFの威力もあり、AF設定で特に工夫することなく撮影に集中出来ます。

このレンズは開放F値が暗いレンズですが、フルサイズ機の高感度特性の良さも相まってノイズをそれ程気にすること無く撮れるのは良いポイントでしょう。とは言え、レンズが暗いことは暗いので、動物園での撮影では檻や網と動物との距離感を考慮して撮影しないと檻や網の形状が分かってしまう写り込みになるので要注意です。

どんなシーンでも檻や網を強引にボカしてごまかせる大口径単焦点望遠レンズのようにはいきません(最もそういうレンズは100万円以上が相場です)。しかし、動物の毛並みといった写りだけに注目するとまるで単焦点望遠レンズのようです。

実写(タムロン):手ブレ補正や接写性ではシグマを上回る!

シグマ同様に大変に素晴らしい写りという感想。本当に超望遠ズームなのか? と良い意味で疑問に感じる描写性能が魅力です。シグマと比べてズーム全域という意味での接写性はタムロンが上。例えば最大撮影倍率ではシグマが僅かにリードしていますが、タムロンは望遠端でも1.8mまで接写することが出来ます。シグマレンズは望遠端で2.8m(600mm時の最短距離。180mm時に最短58cmかつ最大倍率となる。)と、ズーム位置によって最短撮影距離の変動が大きく、タムロンレンズの方がサイズ以外の点でも撮影時に融通の利く撮影感覚となっています。

シャッターボタンやAF-ONボタンを押下してから実際にAFの転がり始めるまでのレスポンスが良く、手ブレ補正もまずまず強力。シグマと比べると軽さで保持が楽という点もあるのか、ファインダー像は安定している感触を得られました。パッと構えてサッと撮る程度では分からないかも知れませんが、長時間の撮影や歩き回って撮影、というようなシーンでは(撮影者やカメラとの相性があるので明確な優劣があるわけではありませんが)、手ブレ補正はタムロンが少し上という感触です。

新幹線でAF速度を比較。AF精度はシグマがやや優勢

定量比較可能な被写体ということで、東海道新幹線小田原駅で高速通過する新幹線を被写体にAFテストを行いました。条件はどちらも望遠端。シグマとタムロンで焦点距離に100mmの違いがありますが、撮影時間の都合でその点は考慮していません。それぞれのレンズで約200ショットずつ撮影し、最良と最低の結果を省いた標準的な結果の平均値(オリンピック方式)で合焦率を算出しています。

AFの結果から言えば、高速で通過する新幹線(目測で250-260km/hくらい)を捉えた場合、α7 IIIとシグマレンズの場合は合焦率が約87.2%、タムロンレンズでは約77.8%でした。ちなみに、S5とシグマレンズで同様にテストしたところ、高速で通過する条件では約81.2%でした。鉄道撮影に限って言えばシグマのほうがオートフォーカスの精度は高いと言えます。

なお、ソニーα7 IIIとLUMIX S5の比較(ともにシグマ150-600mmを使用)では、α7 IIIは遠ざかる被写体に対してS5より17%合焦率が高く、像面位相差AFの優位性を示しました(LUMIX S5はコントラストAF)。接近する対象についてはほぼ互角ですが、新幹線という条件に限って言えば大外しする頻度はα7 IIIの方が少なく安定した結果を得られました。

一方で動物園ではS5の方が安定してAF追従する印象があります。このあたりは得手不得手がある、という評価が公平でしょう。画質面で言えばS5の方が明らかに美しいと感じました。2018年3月発売のα7 IIIと2020年9月発売のS5を比べているので画質的には新しい方が当然有利です。

気になったところ:ボディの性能も使い勝手に影響する

タムロン、シグマとも真夏の炎天下、動物園で作例を撮影しましたが、感触は写り使い勝手ともに満足行くものでした。しかし、30分ほど直射日光に晒しているとタムロンのAF精度が少し怪しくなってきました。撮影日は最高気温が35℃でした。シグマでも同様の使い方をしましたが、シグマの方が程度が良い印象です。

LUMIX S5でシグマレンズと組み合わせて同様の条件で撮影していた場合には発生しなかった現象なので、α7 IIIのボディが高温に弱いという可能性も否定出来ません。どちらにしろ炎天下で長時間撮影する場合はタオルを掛けたり、定期的に冷ますための休憩を挟む(撮影者にとっても重要です)などの運用上の工夫はあった方が良いと思われます。

シグマレンズ使用時、LUMIX S5とα7 IIIでどちらが強力な手ブレ補正を持っているか?という点では圧倒的にS5という結果になりました。体感で2段くらいは違っており、EVFの像がピタリと安定するS5と比べて、α7 IIIではフラフラピクピクと落ち着きません。もちろん手ブレ補正の効果が無いワケではありません。ソニー機全般に当てはまる事ですが、ソニーの手ブレ補正はスペックの75%程度の実力と捉えるのが妥当に思います。

このように、同じレンズでもボディで満足度が変わってしまうことにも要注意です。

はじめての超望遠にはタムロンがベスト

スペック的には近いシグマとタムロンの超望遠ズームレンズですが、両者のコンセプトは大きく異なっていることが比較してみると明らかになりました。「Sportsライン」というコンセプト通り、性能を優先しタフな使用用途に対応するヘビーデューティーなシグマ。大きさ重さがそのまま堅牢性に繋がっていると感じさせてくれ、信頼感に溢れています。

純正のFE200-600mmと比べてみると、純正にはない接写性と、よりコンパクトなサイズという武器を持っていてコスト的にも大変魅力的です。

タムロンレンズは普段使い出来る超望遠ズームです。軽さと収納性の高さが大きな魅力。堅牢性ではシグマの方が強そうな感触がありますが、通常の運用ではソコまでの強さが必要ないぞ、という人には大きさ重さはデメリットでしかありません。

というのもシグマと比べてレンズ単体の全長で約5cm、直径で2cmという差はカメラバッグには収納出来る・出来ないという違いになりますし、ストラップで肩がけにした際にも「コレを持ち歩くのは正直厳しいのでは?」というシグマに対して、「これなら持ち歩けそう」と感じるタムロンという違いがあります。

手持ちで鏡筒を伸ばした状態でサイズを比較。焦点距離が長くフードも大型なシグマ。やはり腕への負荷はタムロンより大きい(PHOTO:編集部)

なので、撮影対象や使い方によって評価結果が大きく変わります。ちなみに描写性能については好みにもよりますが、よりシャープでキレのよい印象のあるシグマに対して、どこか柔らかさのある印象のタムロンという具合でほぼ互角。どちらも単焦点望遠レンズ並の光学性能である、と評価しても過言ではありません。

ということで、Sportsを冠する通り、防塵防滴に配慮された構造と前面レンズに撥水防汚コート採用によって、多少の風雨に晒されても問題ないなど、タフな使用用途を想定する場合はシグマを、よりカジュアルな使い方を想定していたり、トータルバランス重視であるならタムロンを選ぶのが適切で、後述するランキングでも1位はタムロンとなりました。

純正のFE200-600mmと比較検討する場合は、シグマレンズが検討対象となります。純正はシグマレンズよりもAFが高速かつ高レスポンスなので、特にα1やα9 IIと組み合わせ、AF-Cさせながら高速連写するシーンにおいて、純正レンズはその真価を発揮します。その一方で巨大です。将来的にハイエンドモデルを購入予定がある、かつ大きさを厭わないのであれば純正レンズがオススメです。それ以外のシーンにおいては体力や運用方法と相談し、例えば純正レンズほどではないがタフに使いたいのであればシグマを選ぶのが良いでしょう。

100-400mmクラスと悩んでいる場合、400mm以上の望遠が欲しいかどうか、が焦点となります。撮影シーンで言うなら動物園やサーキットでは400mmでは正直物足りない場合が多いので、フルサイズ機で撮影するのであれば最低でも500mmは必須です。一方風景写真の使い方であれば、対象にもよりますが400mmまであれば事足りるシーンが多いと思います。

ともあれ、写真は「撮ってナンボ、機材を持ち歩いてナンボ」の世界なので持ち歩けないことには仕方がありません。レンズ単体で2キロを超えると世界がガラリと変わります。というのも持ち歩くのはレンズだけではないからです。シグマ(約2.1キロ)とタムロン(約1.9キロ)には約200gの差があり、タムロンを選択し三脚座を取り外しスリム状態(約1.7キロ)にすれば約400gにまでその差が広がります。400gはペットボトル1本、単焦点レンズ1本、X100VやGR IIIなどのコンパクトデジカメ1台以上の余裕を生む差です。

例えばシグマのライトバズーカは1140gとスリム状態のタムロンよりさらに500g以上軽量となっており、Sportsと比べるとなんと約1キロの差があります。

サイズと重量の違いというのは量販店などで軽く触ってみただけでは分からない差である、ということを実際のフィールドでは体感出来ますので、もし可能であればレンタルサービスやメーカー主催の試用キャンペーンなどで使用感をチェックして欲しい、というのが筆者の本音になります。

普段レビュー機材の返却にそれほど後ろ髪を引かれることはありませんが、今回のシグマとタムロンについては返却しなければならないという現実を受け入れることが難しく、同時に「なぜLマウント機やEマウント機を所有していないのか?」という後悔がいまだに胸中を渦巻いています。

それほどシグマもタムロンも素晴らしいレンズでした。

『家電批評』2021年11月号

晋遊舎
家電批評
2021年11月号
実勢価格:700円

本記事は、『家電批評』2021年11月号掲載のものをより詳細にしたものです。