家庭用スポットクーラーとは?
スポットクーラーとは、簡単に説明すると室外機にあたる部分が内蔵されたエアコンに似た空調家電のこと。
移動式エアコン、スポットエアコン、ポータブルクーラーなどとも言われ、壁や窓にエアコンを取り付けられない場合でも使えるのが特徴です。一般的なエアコンに比べると、電気代も安くてリーズナブルです。
スポットクーラーにはコンパクトな家庭用タイプと大型の業務用タイプがあり、冷房機能だけでなく、温風・暖房機能や送風・除湿機能を搭載したものがあります。
冷風機、エアコンとの違いは?
スポットクーラーは、コンセントやUSBに挿すだけで手軽に使用できる冷風機(冷風扇)と似ている印象がありますが、その違いは何でしょうか?
スポットクーラーは冷風扇より冷却
冷風機(冷風扇)は、“水が蒸発する際に熱を奪う”という気化熱の特性を利用した製品で、本体に水や氷水を入れて使用します。
卓上で使えるものから業務用のタイプまであり、部屋の空気が水を含んだフィルターを通過することで、少し熱が奪われた空気が出てくるという仕組みです。
過去に兄弟誌『MONOQLO』で冷風扇のテストを行ったところ、氷や冷却材を使用しても手間の割に涼しさはイマイチで、冷却効果はあまり期待できませんでした。
一方、スポットクーラーは、暖かい空気は熱交換され冷たい風が
エアコンとの違いは冷やす効率
スポットクーラーのエアコンとの違いは、冷やす効率の違いにあ
エアコンの熱交換は大きな室外機によって効率よく屋外で行われますが、スポットクーラーは本体内で行われるためエアコンほど効率よく熱交換は行われません。そのため部屋全体を冷やすよりも、一部に冷たい風を送るときに役立ちます。
スポットクーラーは部屋全体を冷たくしたいという場合には向きませんが、排気を外に逃がすダクトやホースが付いているものを選べば、エアコンと同じように部屋に冷たい空気だけを残すことができます。また室外機も必要ないので、工事不要で簡単に導入できます。
エアコンとの違いは、スポットクーラーは移動が可能で室内でも室外でも使える点にもあります。持ち運びが可能で場所を選ばないので屋外のイベントなどでも活躍します。
スポットクーラーはコンパクトクーラー、ポータブルクーラーなど、メーカーによっても名称はさまざまですが、 今回は排気用のダクト・ホースを付属した、エアコンと同様構造を内蔵した家庭用スポットクーラーを比較します。
スポットクーラーの選び方は?
それでは、どのようにスポットクーラーを選べばいいでしょうか。ここではスポットクーラーの具体的な選び方のポイントをご紹介します。
排気ダクトがあると部屋の温度上昇を防ぐ
スポットクーラーは前面に冷たい風を出すのと同時に熱い空気を作り出すもの。この熱い空気を外に出す排気用ダクトがあると、部屋の温度上昇が防げます。
排気用ダクトがないと熱い空気が部屋の中に排出され、逆に部屋全体としては温度が上がることに。普通のクーラー代わりにと思っている人は排気ダクトがあるものを選ぶようにしましょう。
設置場所にあったサイズを選ぶ
実使用を考えると排気ダクトを設置するのは必須。窓などに固定することを考えると設置場所は限定されます。
コンパクトでしかも部屋から部屋へ移動が簡単なスポットクーラーですが、基本的に床置きして使うものなので、部屋を占有します。このため、狭い部屋やキッチンなどに置くときは設置するスペースの大きさを確認してから購入することが重要です。
部屋の大きさに対して大きすぎるものを買うと、圧迫感が出てしまいます。小さくなると冷房性能も弱くなってしまいますが、まずは設置スペースから大きさの限界を確認して選ぶようにしましょう。
冷房能力は家庭用が0.7~2.0kW、業務用は2.5kWを目安に
スポットクーラーの冷房能力はkW(キロワット)で表されます。家庭用なら0.7~2.0kW、業務用なら2.5kWといったところが選ぶ目安です。
ちなみに通常のエアコンであれば6畳で2.2kW、8畳で2.5kWといったところが目安。使用する部屋の広さや用途に合わせて適切な冷房能力のものを選びましょう。
レジャーで使うなら形も重視
屋外での暑さ対策に使う場合は、移動や持ち運びを快適にしてくれる、取っ手が付いたものや丈夫なキャスターが付いたものを選ぶと良いでしょう。
また、大勢が集まるレジャーシーンでは、吹き出し口の数が多いと効率的に冷気を送ることができて便利です。電池で稼働し、電源やコンセントを必要としないものもあるので、場所を選ばずに使いたい場合はチェックしてみてください。
スポットクーラーにあると便利な機能は?
スポットクーラーを選ぶときにこだわりたい機能についても解説します。このような機能があるとより便利に使えるかもしれません。
冷暖房兼用モデルや除湿機能付きなら一年中使える
スポットクーラーの中には冷房機能以外の機能があるものが存在。たとえば暖房機能付きであれば冬にも使えますし、除湿機能付きならジメジメする梅雨の季節にも活躍します。
大きなスポットクーラーだとしまう場所を見つけるのも大変。オールシーズン使えるものであれば、ずっと出しっぱなしにできるというメリットもありますね。
キャスター付きだと移動が楽
コンパクトとはいってもスポットクーラーはそれなりに重さがあるもの。キャスター付きなら部屋から部屋への移動や、掃除のときに動かすのが楽々です。
移動させて使う可能性があるならキャスター付きのものを選ぶようにしましょう。
ドレン水が出ないノンドレンタイプが使いやすい
スポットクーラーは原理上、内部でドレン水と呼ばれる水が発生します。通常のスポットクーラーはこのドレン水をタンクに貯蔵するため、人間が定期的に捨てる必要があります。
ノンドレンタイプと呼ばれるスポットクーラーはドレン水を内部で蒸発させて放出するタイプのもの。ドレン水を捨てる手間が減るためより快適に使うことができます。
タイマーやオート運転機能
電源を切り忘れることが多い方は、タイマー機能が付いたものを選ぶと良いでしょう。電源をつけたり消したりする時間を設定することで消し忘れを防ぎ、無駄な電気代をかけずに済みます。
特に寝る前にスポットクーラーを使うのであれば、あって損はない機能です。さらにリモコン付きならなお便利です。
首振り機能
使うシーンによっては、首振り機能がついていたほうが便利なこともあります。例えば、レジャーや作業場など大勢の人が集まる場所です。より多くの人に効率よく涼しい風を送ることができます。
大型、小型の家庭用スポットクーラー4製品を比較
今回はAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどのネット通販で人気の家庭用スポットクーラーから、パワフルな大型タイプ2製品とコンパクトで持ち運びがラクな小型タイプ2製品を比較しました。
- アイリスオーヤマ「IPA-2203G」(大型)
- ハイセンス「HPAC-22E」(大型)
- シロカ「SY-D151」(小型)
- 山善「YEC-M03」(小型)
性能をテスト
高温多湿の密室で、大型・小型のスポットクーラーの「性能」を徹底比較しました。
1:冷却性能
真夏の蒸し暑い屋内環境を想定し、密閉状態の恒温室にて、室温30℃・湿度80℃の条件で検証。
被験者が恒温室に入り体を慣らしたのちに、各製品の最強設定の冷風を2分間顔に浴びてもらい、試験前後のサーモカメラの画像および被験者の体感評価から、体を冷やす効果を確認しました。ダクトは恒温室の通気口に固定し、排熱を行いながら運転しました。
2:冷房&除湿性能
室温30℃・湿度80%の恒温室の空調を切り、
同条件にて「除湿(ドライ)」モードでも測定。なお、恒温室の広さは8畳程度です。
3:静音性
本体から正面1mの距離に騒音計を設置し、「冷風」モードと「除湿」モード動作時の騒音値を計測。本体を作動させていない時の騒音は41.5dBで、「除湿」よりも「冷風」の方が騒音が大きい傾向にありました。
4:電気代
室温24~25℃・湿度50~55%の測定環境にて、コンセントに挿したワットモニターを介し、「冷風」モードの最強風量で運転。計測時間と消費電力から、1時間あたりの電気代を算出しました(1kWhあたり27円で計算)。
使い勝手をテスト
大型・小型のスポットクーラーの「使い勝手」を家電プロレビュアーの石井和美さんと一緒に検証しました。
1:ボタン操作
本体ボタンの押しやすさや反応、配列などを確認。リモコンのボタンで、温度設定や風量の自動調節を行うメーカーもあり、リモコンの操作性や利便性も含めて評価しました。
2:持ち運び
持ち手の形状や配置、本体重量、ダクトのサイズなどから持ち運びやすさを評価。大型2製品に関しては、持ち上げやすさに加え、キャスターの駆動性もチェックしました。
3:排水のしやすさ
小型タイプは取り外しが可能な貯水タンクを内蔵し、本体を動かす手間いらず。大型タイプに関しては、排水の作業中に大きさや重さを負担と感じるかが評価の分かれ目となりました。
比較検証の結果、冷却性能については大型タイプに軍配が上がりましたが、使い勝手については小型タイプが優秀でした。
最新スポットクーラーの検証の結果は?
今回は、「部屋全体を冷やす効果がある」とうたっている家庭用の大型2製品と「冷風・除湿性能」のある家庭用の小型2製品を比較しました。
4製品とも部屋全体は冷えないが除湿はされた
「冷房&除湿性能」に関しては、今回のテストでは4製品とも室温を低下させるものはありませんでした。冷房時は機械から放出される熱量が大きいためか、山善は冷風・除湿とも室温が横ばい、他の3製品は冷風のほうが室温が微増するいう結果に。
ただ、除湿時は4機種とも湿度が20%以上低下しました。大型2製品は冷房時の方が湿度の下げ幅が大きかったです。
それでは、そんな「冷房&除湿性能」の結果を踏まえ、一番気になる「冷却性能」の評価がよかった順に、テスト結果の詳細をご紹介します。
アイリスオーヤマ「IPA-2203G」
アイリスオーヤマ
ポータブルクーラー
IPA-2203G
実勢価格:7万3180円
サイズ・重量:W286×D320×H700mm・22kg
消費電力:755/870W
モード:冷風:強・中・弱・自動 4段階、除湿:弱のみ、送風:強・中・弱 3段階
窓パネル付き
▼テスト結果
冷却性能 | 冷房性能 | 除湿 | 静音(冷風) | 静音(除湿) | 電気代 | ボタン操作 | 持ち運び | 排水 |
◎ | × | ◯ | △ | ◯ | × | ◯ | △ | △ |
今回の検証した中では大型タイプのアイリスオーヤマ「IPA-2203G」は、体に直接冷風を当てた場合の冷却機能が4製品中もっとも優秀でした。
風向きはカバーの傾きを変えることで上下方向に調整が可能。大型にしては運びやすく操作性もまずまずですが、電気代が飛び抜けて高いのがネックです。
体感では一番涼しい
サーモカメラの色味では、山善とシロカの小型タイプに比べて、大型のアイリスとハイセンスのほうが低温となりました。また被験者の体感でも風の強さ、冷たさともに大型のほうが強力に感じました。
排水ホースのつけ外しには注意が必要
排水用の穴から即座に排水されるので、うっかり付属品の排水ホースが外れた場合に惨事が起こってしまうリスクがあります。
ハイセンス「HPAC-22E」
ハイセンス
スポットエアコン
HPAC-22E
実勢価格:4万2800円
サイズ・重量:W300×D330×H670mm・21.5kg
消費電力:620/720W
モード:冷風:強・弱・自動 3段階、除湿:弱のみ、送風:強・弱・自動 3段階
窓パネル付き
▼テスト結果
冷却性能 | 冷房性能 | 除湿 | 静音(冷風) | 静音(除湿) | 電気代 | ボタン操作 | 持ち運び | 排水 |
◯ | × | ◯ | △ | ◎ | △ | △ | △ | × |
ハイセンス「HPAC-22E」は、編集部員の自宅検証では、本体正面の温度を効果的に冷やしてくれました。
静音性・電気代のコスパはよいですが、持ち運びがしづらいので、力持ちか、あるいは本体を窓際からあまり動かさないという人に向いています。
除湿モードの静音性は良好
除湿モードの静音性は良好でした。4製品の中で比べると静音性は高かったです。
排水はひと苦労
持ち手が狭く、重い本体を傾けて排水する必要があり、シニア世代が使用するには負担が大きすぎます。
山善「YEC-M03」
山善
コンパクトクーラー
YEC-M03
実勢価格:4万9800円
サイズ・重量:W270×D266×H432mm・約10kg
消費電力:170/190W
水タンク容量:約1.7L
モード:冷風:強・弱 2段階、送風:強・中・弱 3段階、ドライ:弱のみ
▼テスト結果
冷却性能 | 冷房性能 | 除湿 | 静音(冷風) | 静音(除湿) | 電気代 | ボタン操作 | 持ち運び | 排水 |
△ | ー | ◯ | × | △ | ◯ | ◯ | ◎ | ◎ |
小型タイプの山善「YEC-M03」は、持ち運びと排水のしやすさは申し分なく、4製品中唯一の送風スイング機能も好評でした。
使い勝手で選ぶならアリですが、本体サイズに対して存在感を放つ巨大なダクトと、騒音の大きさには注意したいところです。
持ち運びしやすくて排水もしやすい
折り畳み式の取っ手が便利で持ち運びしやすいです。コンパクトですが排熱ダクトも装備しており、外へ逃がすことも可能です。
スイング機能が優秀
山善には風を左右に振る機能が備わっており、広範囲に風を送ることができます。ただし、ボタンがどの機能に対応しているかは少し分かりにくかったです。
シロカ「SY-D151」
シロカ
SY-D151
実勢価格:3万9800円
サイズ・重量:W220×D220×H414mm・6.5kg
消費電力:160W
水タンク容量:1L
モード:冷風:強・中・弱 3段階 除湿:強・中・弱 3段階 送風:強・中・弱 3段階
▼テスト結果
冷却性能 | 冷房性能 | 除湿 | 静音(冷風) | 静音(除湿) | 電気代 | ボタン操作 | 持ち運び | 排水 |
△ | ー | ◯ | △ | ◯ | ◯ | ◯ | ◎ | ◯ |
シロカ「SY-D151」は、本体もダクトもコンパクトサイズで、狭いスペースでの使用にもっとも適していると思われます。
除湿を3段階で設定でき、電気代も手頃なので、送風と除湿を1台にまとめたいのであれば選択肢に入るでしょう。
編集部員がスポットクーラーを6畳の部屋で使ってみた
『家電批評』編集部員が実際に自宅に持ち帰って、再度冷風テストを実施。実際の使用環境を想定し、自宅で「部屋全体を冷やす効果がある」とうたっているアイリスオーヤマ、ハイセンスの大型2機種の冷房検証を行いました。
30℃の部屋で1時間冷風で運転してみましたが、結果はご覧のようになりました。
外気温27.8℃で、エアコンを室温30℃になるまで運転し計測。最大で室温は9.2度下がりましたが、外気温が低かったこともあり「1時間何もなし」の条件と大差なく、部屋の空間全体が劇的に冷えることがない結果となりました。
まとめ
以上、最新スポットクーラーの検証結果でした。
今回の検証では、冷却機能では大型タイプが優秀で、中でも体に直接冷風を当てた場合はアイリスオーヤマが風の冷たさ、強さが他のものより強い傾向にありました。しかし、持ち運びや排水のしやすさなど、使い勝手で選ぶなら小型タイプがいいでしょう。
設置場所や排水の手間など、実際の使用環境を想定すると、大型タイプは導入するメリットは少ないかもしれません。
編集部員の自宅で行った大型2機種の冷房の検証でも、部屋全体を冷やす効果は満足に得られなかったことから、スポットクーラーは体の表面をピンポイントで冷やすには有効ですが、部屋全体を冷やすにはやや厳しいと判明しました。
部屋全体を涼しくしたい場合は、潔く窓を開けて換気し、扇風機やサーキュレーターで送風したほうが体感的に涼しく感じられるかもしれません。
ちなみに、今回は家庭で使いやすいサイズの4商品を比較しましたが、過去の「家電批評」テストで最も冷却性能が高かったスポットクーラーがこちら。
トヨトミ 「TAD-22KW」
トヨトミ(TOYOTOMI)
スポット冷暖エアコン TAD-22KW
実勢価格:4万9880円
トヨトミ「TAD-22KW」は、背面にダクトを装着する口が2つ用意されていて、排気だけでなく、給気もダクトで室外から行えるのが特徴。冷却性能は壁かけエアコンほどではないですが、構造的にはエアコンにかなり近いと言え、暖房機能もあります。
実際に使うシチュエーションを想定して、選んでみてください。
エアコンの売れ筋ランキングもチェック!
エアコンのAmazon・楽天の売れ筋ランキングは、以下のリンクからご確認ください。
約6畳の部屋に大型タイプを置くと、かなり圧迫感があります。窓パネルの取り付けは簡単でした!(編集部・土屋)