自動フィルターおそうじ機能ほど 誤解されている機能はない!

生活家電の中でもエアコンは汚れがたまりやすく、カビの発生源となったり性能の劣化につながることから、マメな掃除は欠かせない。

そこで、人気を集めているのがエアコンを自動でお掃除してくれる機能である。「これで厄介な掃除から解放される」と、飛びついた人も多いだろう。

2005年に、この「フィルター自動おそうじ機能」を業界で初めて搭載したのが、富士通ゼネラルである。フィルターのホコリを自動的にブラシでかきだし、ダストボックスにためるという当時としては画期的なものだった。

消費者の人気が高まるにつれ、その後は他メーカーも追随。エアコンの目玉機能として認知されることになる。発売当初こそ上位機種のみ搭載されていたが、登場から10年以上が経ち、今では最廉価機種を除くほとんどの機種に、この機能が付くほどポピュラーになった。

その一方で、フィルター自動おそうじ機能が付いていながら、内部を見たら汚れがひどくて驚いたという不満の声が、5年以上利用しているユーザーから多く聞こえている。

試しに、筆者が3年ほど使用した自動フィルター掃除機能付きモデルのフィルターを外してチェックしてみると、カタマリこそなかったが、網目には細かいホコリが付着して流路を塞いでいる。

結局、機能搭載以前と同様にブラシや掃除機で詰まったホコリを取り、水洗いする始末。「自動おそうじ」とうたいながら、実際は以前と変わらぬ掃除が必要だという事実には、「自動」を期待して買ったユーザーが違和感を覚えて無理はない。

そんな状況の中、「看板に偽りアリ!」 と、この性能に真っ向から異議を唱えるのが、エアコン掃除のプロとして、長年ハウスクリーニング業界で活躍するA氏だ。

「そもそもエアコンの自動フィルターおそうじ機能はまったくといっていいほどの無意味な機能に思えます。付いていてどれだけ役に立っているのか? このフィルターのおそうじ機能だけで、エアコンをきれいに維持することは不可能です。」(A氏)

製品人気を反映し、A氏のもとにも、この機能がついたエアコンのクリーニング依頼も増えている。出向いた家のエアコンを確認すると、5年以上使用の場合、その内部はほぼ100%がホコリだらけだという。

「5年以上使っている機種はどれも汚れがひどく、機能が全く役立っていないことを実感します。

常にフィルターやダストボックスなどを掃除する必要があるのに、メーカーは肝心なユーザーが行うべき手間の部分を多く語っていないのではないでしょうか。

”お掃除ロボ”などと、あたかも掃除要らずで、使用できるというような印象だけをアナウンスするので、消費者も”掃除をしなくていいんだ”と勘違いしてしまいます。それを鵜呑みにして、一切掃除をしなかったら、数年後にはとんでもないことになりますよ」(A氏)

実際、メーカーホームページの製品紹介には、便利そうな自動おそうじ機能の説明の最後に、「※」としてびっしりと言い訳に近い但し書きが並ぶ。このことからも、「自動おそうじ」機能は、その言葉から想像されるような万能機能ではないことを、ユーザーは知っておくべきだろう。

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またユーザーから、販売店で“10年間掃除をしなくても大丈夫です”といわれたという話を聞き、そのデタラメさに呆れ果てたという。

「とんでもない大嘘ですね。このホコリだらけの状況で使い続けたら絶対に10年なんて持ちません。機能なしの機種の方がよほど寿命はのびるのではないでしょうか。買い替えを促すためにこんな機能を付けたのかと、勘ぐってみたくもなりますよね」(A氏)

家であれモノであれ、きれいにし、長く快適に使用してもらうことをモットーとする掃除のプロにとって、この中途半端な機能には憤懣やる方ないという思いであろう。

「これを見てください」といって取り出したのは、A氏が実際に掃除に出かけた家のフィルターや、フィルターを外した熱交換器、送風口の状況を撮影した写真だった。

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こちらは5年使用後の状態。

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こちらが送風口。


どの部品を見ても汚れ放題で、送風口にはホコリとカビがびっしり付着しているのがハッキリと確認できるほどだ。

さらに、5年以上使用したおそうじ機能付エアコンの熱交換器部分の写真には、ホコリが何層にも積もり積もって山を作っている。

これで効率良く部屋を冷やすことは無理だとひと目でわかるだろう。フィルター自動おそうじ機能付きだからといって、掃除をしなくても大丈夫だと思ったら大間違いなのだ。

「おそうじ機能はフィルターのホコリを、ブラッシングや吸引で除去していく仕組みですが、今まで作業をした機種はいずれも取り切れておらず、5年以上放っておくとこんな状況になってしまいます。この現象はすべてのエアコンで起こりうる問題なのです」(A氏)

自動おそうじ機能が普及したことで よりホコリが除去しづらくなっているという皮肉

もう一つ、A氏が自動おそうじ機能の弊害と指摘するのは、熱交換器部分の深刻なホコリ溜まりだ。この箇所へのホコリの蓄積は、この機能が搭載される以前の機器では、あまり見られなかったという。

「ひと昔前の標準型エアコンのフィルターは比較的目が粗く、気流の流れにのって内部のホコリを外へ排出してくれました。

しかし、機能付きのフィルターは目が細かく内部に入り込んだホコリが外に逃げずどんどん蓄積されていくだけ。これが熱交換器にホコリがたまる大きな原因と考えます。

この状態で運転をしても、効きが悪いので消費電力は大幅に増えますし、故障の原因にもなってしまいます」(A氏)

フィルター自動おそうじ機能のデメリットはこれだけにはとどまらない。

以前の標準的なエアコンであれば、ユーザーはフィルターのみ掃除すればよかったのが、機能付きになってからは、ダストボックスにたまったホコリ廃棄などの作業も追加されたのだ。

「エアコンは部屋の高い場所に設置されているため、ただでさえ掃除がしにくいものです。これが改善されたのであれば問題はないのですが、機能が付いたあとは、さらにお客様自身で行う掃除がひと手間増えています。もはや本末転倒といえますね」(A氏)

メリットがないにもかかわらず 手間ばかりが増えていく

掃除が大変になったのは、ユーザーだけではない。A氏のような、クリーニングをするプロの手間も増えている。汚れが激しい熱交換器の洗浄に時間が取られ、機能付き機種は構造が複雑で分解にも手間を要する。

業者に依頼をすると所要時間も費用も今まで以上にかかってしまう。ほぼメリットがないにもかかわらず、ユーザー負担ばかりが増えてしまうというのは噴飯ものだ。

「こんなひどい状況になっていながら、一般の人にあまり事実が知れ渡っていないことには歯痒さがあります。

いまだに家電店に行くと、10年お掃除不要とセールストークをしている人がいると聞きますから、それを信じて疑わない人は今後もますます増えていくと思います。

私が一番危惧しているのは、掃除をしていないエアコンから送り出される大量のホコリとカビの胞子を含んだ風を吸い込むことによる健康被害です。

最近はエアコンに搭載された高性能なセンサーで人を感知してその人に向けて風を送るような機種もありますが、汚れた風をわざわざピンポイントで浴びせられるわけですから、カビ胞子を吸わざるを得ない。これは非常に危険です」(A氏)

大人はもちろんだが、高齢者や小さい子どものいる家庭なら、より深刻な不安となっていくはずだ。

「もともとメーカーでは分解洗浄など考えていないのかもしれませんが、メーカーはシンプルで洗浄しやすい製品を考えてほしいですね。

我々の仕事を増やしてほしいのではなく利用者の健康維持のお手伝いができることは何か?

消費電力云々も必要でしょうが、クリーニングが簡単にでき掃除の頻度も増えることにより、いつもきれいな空気を吸える環境を作ること。購入者にとって本当に必要な機能を開発していただきたいですね」(A氏)

こうした不満を解消するべく、メーカーもフィルター掃除だけではなく、約3年前から熱交換器の掃除もできる機能を搭載した機種も投入している。熱交換器に撥水コーディングを施し、熱交換器から出る結露を使って付着した汚れを洗い流し、ドレンから排出するというものだ。

搭載機種の価格はまだ高額でハイエンドモデルにしか採用されていないが、A氏のようなプロや実際に使用する消費者の声に押されながら、エアコンの自動おそうじ機能も新たな時代へ徐々に舵取りをしているといえよう。

【買う前に知っておきたいこと①】 「自動おそうじ」はグレードにより違う

ひとえに「自動おそうじ」機能といっても、種類はさまざま。フィルター以外もキレイにしてくれるのは一部の最上位モデルのみ。今、現在一般家庭で稼働している多くのエアコンはフィルターのみを自動掃除するタイプ。少なくとも、このタイプの場合は、夏本番を迎える前に専門業者に清掃を依頼するべき。

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【買う前に知っておきたいこと②】 メンテナンス費用はむしろ高くなる

自動おそうじ機能付きのエアコンは、非搭載モデルに比べて内部構造が複雑になるので、専門業者の清掃費は逆に高額になる。掃除する機能があるほど、業者の掃除費が高くなるのは、なんとも解せない話ではある。

【買う前に知っておきたいこと②】メンテナンス費用はむしろ高くなる 自動フィルターおそうじ機能おすすめ イメージ

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