爆売れ高級炊飯器「炎舞炊き」の新モデルを検証!
象印といえば、国内屈指の炊飯器メーカー。その創業100周年にあたる2018年に鳴り物入りで登場したのが、高級炊飯器の「炎舞炊き」シリーズです。
炊飯器としての実力の高さもさることながら、コロナ禍で“おうちごはん”をおいしく食べたいという需要も追い風となり、現在までに50万台以上を出荷する大ヒットを飛ばしています。
象印マホービン「炎舞炊き NW-FA10」
象印マホービン
炎舞炊き NW-FA10
実勢価格:14万2810円
サイズ・重量:約W26×D33×H23.5cm(ふた開き時の高さは47.5mm)・約8kg
炊飯容量:0.09~1.0L(最大5.5合)
炊飯時消費電力:1240W
炊飯1回あたり消費電力量:151Wh
※炊飯量やメニュー等により異なる
そんな炎舞炊きのハイエンドシリーズが2022年6月にモデルチェンジ。それが「炎舞炊き NW-FA10」です。今回は新モデルで進化したポイントや、ご飯の味はどう変わったのかなどを、プロとともに徹底チェックしました。
メーカー曰く「激しい対流」にこだわった炊飯器です
「炎舞炊き」の大きなこだわりは、内釜底をローテーションで加熱し、かまど炊きの複雑な対流を再現するヒーター構造です。
ポイント1:コイルの配置で対流を改善
従来のモデルでは底面に均等配置していた6つのコイルを、新モデルでは上の画像のような配置に変更。横方向の対流を改善しています。
こちらは釜の中の対流をイメージしたものです。縦方向の対流を作るヒーターと横方向の対流を作るヒーターの2種類を組み合わせ、より複雑な対流を実現。お米をよりふっくら甘く炊き上げるとしています。
ポイント2:大火力を生かす鉄を仕込んだ内釜
蓄熱性に長け、熱効率のよい鉄を組み込んだ自慢の内釜。1センチのフチも熱の高効率化に寄与しています。基本構造は初代と同様です。
ポイント3:好みに応じた多彩な炊き分け機能
新モデルは手動の設定項目が増加。ご飯の感想をもとに121通りの食感調整を行う「わが家炊き」など炊き分け機能を搭載しています。
ポイント4:最大40時間保温とタッチパネル操作
40時間の保温が可能な「極め保温」や感度がよく見やすいタッチパネルにも注目。実用性重視で使いやすいです。
炊飯器の中でお米はホントに舞うのか検証
IHヒーターの改良が進化ポイントの「炎舞炊き」。複雑な対流が可能になり「縦横無尽にお米を激しく舞い上げる」とうたっていますが、炊飯中の釜の中でお米がいったいどんな動きをしているのか気になりませんか?
過去のテストにならって「舞ってるか」をチェックしました!
実は、『家電批評』本誌では5年前にパナソニックの「おどり炊き」の米が“踊るか”を検証したことがありました。
このときは計3製品で試したのですが、結果はどれも踊らず。炎舞炊きもヒーターを切り替えながら集中加熱するなど、おどり炊きに似た部分がありますが、今回は果たして……。
かくはんテストの方法
1:食紅を使って2色の米を作る
赤と青の2色の食紅をお米にしっかり染み込ませます。時間にして30分程度。
2:下層のお米を入れてならす
2色のお米で層を作り、炊飯時にお米がどう動くかを見ます。まず赤いお米を下に敷き詰め、平らにならします。
3:上層のお米を静かに入れる
赤いお米の上から、青いお米をそっと入れていきます。その後、炊飯用の水を釜のフチから層を崩さないように投入します。
4:標準モードで炊飯する
標準モードで炊飯します。お米がイメージどおり舞っていれば、赤と青が混ざり合うはずです。
かくはんテストの結果、お米は舞わず……
検証の結果、なんとお米は舞いませんでした。炊き上がったご飯の写真を見ると、水に溶け出した食紅で変色はしていますが、お米は炊飯前の2層のまま。ただ、検証に立ち会ったプロによると「お米を見ると、水はきちんと対流している」ことがわかるそう。
舞ってはいないがお米はしっかり炊けていた
この検証ではお米の舞いを確認できませんでしたが、立ち会ったプロによれば「水はきちんと対流している」(片山さん)とのこと。
どういうことなのか詳しく教えてもらうと「お米がきちんと横に膨らんで、ぽてっと丸くなっていますよね。これは、お米に水分が行きわたっている証拠。水がきちんと対流していない場合、こうはなりません。つぶしてみても中が粉っぽくなく、ねっとりしていてしっかり糊化(※)しています」。
※糊化:米に含まれるでんぷんは水分と一緒に加熱されることで、 でんぷんの間に水分子が入り込み粘りが出て柔らかくなること
ちなみに、表面や底面のお米が長くなっているのも「炊飯理論にかなっていて、むしろ正しい炊飯曲線で炊けているといえる」(片山さん)のだそうです。
そこで、この結果をメーカーに問い合わせてみました。
メーカーから「お米の重さの違い」を指摘されました
検証結果をメーカーに問い合わせてみたところ、検証でのお米の着色方法が、メーカーのテストとは異なっていることが発覚しました。
メーカーの試験ではお米に水を染み込ませないよう、水中ではなく空中で着色を行ったそうです。編集部の方法では、お米が水分を吸って重くなってしまうそう。
象印マホービンの広報担当の方いわく、「食紅を溶かした水に浸したら、お米が水分を含んで重くなるので舞いません……」とのこと。標準モードの炊飯では不要な“浸漬(浸水)”をしたのと同じ状態になったため、お米が舞わないとの見解でした。
また、塗料も編集部が使った食紅ではなく、油性塗料を使っているという違いがありました。
玄米と白米で再実験も「舞う」とは言い難い
そこで、検証方法を改めてやり直しました。今回の検証用機材ではメーカーと同条件での検証が難しかったため、別の方法で追加検証をしてみることに。
色付きのお米の代わりに白米と玄米を1.5合ずつ入れ2層に。水は釜のライン(3合)まで注ぎ、浸漬はせずに炊飯する方法です。お米が舞うかどうかを再実験しました。
結果は上の写真からもわかるとおり、完全にかくはんはされていませんが、最初の検証に比べるとお米は動いた(舞った)印象。下に敷いた白米が表面にも出ていますし、断面も上層の玄米部分に少し白米が混ざっているように見えます。
ただし、「縦横無尽に舞い上げる」ところまでは感じられませんでした。
お米と食のプロ3人で総合的に評価
ここまでお米が舞うか舞わないかを検証してきましたが、炊飯器においていちばん重要なのは「炊いたご飯がおいしいこと」。
お米のプロと料理のプロ計3名が、異なる炊飯モードで炊いたご飯や異なる状態のご飯を試食して、食味テストを行いました。また実際に新モデルに触れてもらい、機能や使い勝手のよさなどもチェックしました。
検証項目
検証は以下の9つの項目をチェックしました。
- 炊きたて
- 保温(極め保温モードにて21時間後の評価)
- 冷やご飯
- 冷凍ご飯
- 早炊き
- 白米特急(早炊きよりも高速な炊飯モードとしての評価)
- 機能性(機能の豊富さ)
- 使い勝手(操作感)
- お手入れ
なお、炊飯にはすべて同じ銘柄の無洗米を使用(事前の浸漬なし)。「炊きたて」「冷やご飯」「冷凍ご飯」は標準モードでの炊飯で評価しています。
「炊きたて」と「保温」はハイエンドにふさわしい味
プロ3名に試食してもらったところ、炊きたてに関しては満場一致の「◎」評価です。
火通りがよく、中までしっかり糊化しているのに、張りもある。
甘みや旨みを強く感じられる、上級モデルにふさわしいご飯。
また、五つ星お米マイスターの片山さんは、過去のテストで何度も最高評価を獲得してきたタイガーのハイエンドモデルを引き合いに、「象印は旨みを重視、タイガーは甘みを重視している傾向があると感じますが、おいしさはほぼ互角。あとは好みの問題でしょう」と絶賛。
さらに、「先代の炎舞炊きと比べ、つやを出すために表面を溶かして生まれるような不自然な粘りが抑えられている」点も進化のポイントとして挙げました。
炊き立て:◎
粒立ちがよく弾力のあるご飯。自然と噛む回数が増え、甘みや旨みもより強く感じられました。
歯離れのよい“しっかり”したご飯。さすがハイエンド。
保温:◎
長時間の保温後もパサつきがなくしっとり。色の変化もなく、大きな劣化は感じられません。コシも保っていました。
21時間も保温したとは思えないほどみずみずしい!
冷やご飯:○
おいしいですが、少し劣化を感じます。冷やご飯で食べるなら、もう少し芯まで火が通っているほうがいいかもしれません。
よくいえばさっぱりした味ですが、ちょっと薄いかな。
冷凍ご飯:○+
炊きたてからの劣化が少なく、お米の香りや味もしっかり。炊きたて時の出来のよさを反映しています。
お米の食感がよく、しっかり潤いもありますね。
早炊き:△+
糊化が弱く加水量も少ないので食感がかたいです。舌ざわりも悪く、総合的に標準モードよりも格段に味が落ちました。
炊飯時間を考えると、中心の糊化がやや足りません。
白米特急:△
ふたを開けた瞬間、水の量を間違えたのかと思うほどビッチャリ。食べると表面以外は糊化していないようでした。
外がやわらかく中がかたい。18分でこの出来は残念です。
機能性:◎
とにかくメニューが豊富。基本メニューだけでも「熟成」や「鉄器おこげ」「お弁当」「蒸気セーブ」など多彩です。さらに「炊き分け セレクト」15パターン、「わが家炊き」121パターンの炊き分けができます。
使い勝手:○+
見やすくて操作しやすいです。パネルの表示がシンプルで見やすいだけでなく、文字を大きくできるのも◎。水に濡れた手でも操作ができ、感度のよさもグッド。持ち手がなく、移動しづらい点だけが残念です。
お手入れ:◎
本体から取り外せるのは内ぶた(セット)と内釜ぐらいで、洗う物が少ないのは◎。また本体や外ぶたの内側は比較的フラットな構造で、サッと拭きやすく、毎日の手入れも苦になりません。
【まとめ】「舞い」には疑問符も、炊き立てと保温はハイエンド機にふさわしい味
「お米を激しく舞い上げる(象印)」というメーカーの謳い文句に疑問が残るテスト結果でした。しかし、実食してみると、炊き立てと冷凍ご飯のクオリティは先代モデルより進歩しています。
またプロを驚がくさせたのが、1日近く(21時間)保温したご飯です。「一般的なミドルクラスの炊飯器なら12時間ぐらいから色が変わり、ニオイも出てくる」(片山さん)のが普通ですが、本製品は21時間後でも色の変化はほぼなし。でんぷんの劣化も少なく、水分も全体的にしっかり残っている状態で「これなら十分使える」(さわけんさん)レベルでした。
一方、先代モデルからあまり進化を感じられなかったのは、早炊きや白米特急モード。今後出てくる新製品で「白米特急で早炊きの味を出せるなら、高く評価したい」(片山さん)というコメントも出ました。
ということで、象印マホービン「炎舞炊き NW-FA10」の総合評価はA+となりました。
最後に、メリットとデメリットです。
▼メリット
- 炊きたてのおいしさが格別
- 冷凍ご飯、保温もハイレベル
- 各種機能が使いやすい
▼デメリット
- 早炊きがやや長時間
- 早炊きと特急はあまり進化を感じられなかった
- メーカーの主張する「米の舞い上がり」は確認できない
課題点もありますが、結論としては、旨みが強く、粒立ちのしっかりしたハイエンドにふさわしい味。これだけ格別なご飯が食べられる炊飯器なら、もうお米は舞っても舞わなくてもどちらでもいい気がしましたが、どうでしょう?
以上、象印マホービン「炎舞炊き NW-FA10」の検証でした。旨みが強く粒立ちのしっかりしたご飯が炊けるので、炊き立てごはんをよりおいしく食べたい人に、おすすめしたい製品です。
お米の売れ筋ランキングもチェック!
お米のAmazon・楽天の売れ筋ランキングは、以下のリンクからご確認ください。
粒感がしっかりあって、もっちり!