巷で飛び交うイヤホンの噂真実を見極めるため調査しました
イヤホンを日々使っている中で、疑問に思うことが多々あると思います。
たとえば、「ハイレゾ対応を謳っている製品を使っているけど、効果がわからない」、「エージングってなんだろう? 」などの疑問は、イヤホンの種類や機能、そしてユーザーの数だけあることでしょう。
それらをネットで検索しても、結論がわからずじまいな場合もしばしば。そこで当編集部は、イヤホンにまつわる疑問や噂を解決するべく製造メーカーに取材を行いました。
「ハイレゾ」って本当に意味ある?4つのメーカーに聞きました
ハイレゾとは、正式名称を「ハイレゾリューション(High Resolution)」と言い、「高解像度」という意味です。ハイレゾの音源はCD音源を上回る多くの情報量を持っていて、音の広がりや臨場感、精細さを再現できます。このハイレゾ音源を楽しむためは、ハイレゾに対応したイヤホンの使用が推奨されています。
これは日本オーディオ協会がハイレゾ対応だと認定した証として表示されるロゴマーク。認定されるには、40kHz以上の高域再生能力に加えて、聴感評価でハイレゾにふさわしいとメーカーが判断することなどの条件をクリアしなければなりません。
つまり、「ハイレゾ対応=高音質」ということをメーカーと日本オーディオ協会が保証したということになります。しかし、耳に聞こえない40kHz以上の高い周波数まで再生する必要は本当にあるのでしょうか? その真偽について、各メーカーからの回答をご紹介します。
【メーカーの回答①ソニー】「ハイレゾ再生は音楽の再現に影響します」
ソニーは、「イヤホンであっても、ハイレゾの再生によって音場の空気感、音の立ち上がりなどの、音楽の再現に影響はあります」というハイレゾには意味があることを示唆する回答でした。
ソニー
XBA-N3
実勢価格:3万1903円
重量:約7g(コード含まず)
コード長:約1.2m
型式:密閉ハイブリッド
ドライバー:ハイブリッド
感度:107dB/mW
再生周波数帯域:3Hz~4万Hz
インピーダンス:16Ω
最大入力:100mW(IEC)
コードタイプ:着脱式Y型
入力プラグ:金メッキL型ステレオミニプラグ
【メーカーの回答②JVC】「よりリアルで自然な可聴域を再生するためには必要です」
JVCの回答は、「聴覚を超える音であってもそれが出ているかいないかによってその音階の基音に影響を及ぼします。よりリアルで自然な可聴帯域を再生するためには可聴帯域外の再生も必要になってきます」と具体的にハイレゾの効果を説くものでした。
JVC
SOLIDEGE 01 inner HA-FD01
実勢価格:3万7980円
重量:約20g(ケーブル含まず)
コード長:1.2m
ドライバー:ダイナミック型
ドライバーユニット:口径11mmD3ドライバーユニット
出力音圧レベル:103dB/1mW
再生周波数帯域:8Hz~52,000Hz
インピーダンス:16Ω
最大許容入力:200mW(IEC)
入力プラグ:φ3.5mm24金メッキステレオミニプラグ(ストレート)
【メーカーの回答③ファイナル】「あまり効果はない」
一方で、ファイナルは製品にハイレゾ対応ロゴマークを表示させているものの「あまり効果はないと考えています」と懐疑的な回答でした。
ファイナル
F4100
実勢価格:2万7935円
重量:約12g
コード長:1.2m
ドライバー:バランスドアーマチュア型
コネクター:MMCX
感度:106dB/mW
インピーダンス:42Ω
【メーカーの回答④大手A社】「ハイレゾ対応でリアリティーある音を堪能できます」
メーカー大手のA社も、「イヤホンでもハイレゾ対応することによって、細やかなニュアンスから演奏中の空気感まで、リアリティーあふれる音を堪能することができます」という肯定的な回答です。
メーカー各社からの回答は、ハイレゾ対応にすることで「音が変わる」という意見が多数を占めていました。たとえ可聴範囲外でも、サウンドの空気感やニュアンス、音の立ち上がりなどに影響を及ぼしているとしています。ただし、「あまり効果がない」説もある以上、ハイレゾ対応で音が本当に変化するかどうかを自身の耳で判断することが必要かもしれません。
「バランス接続」は効果ある?メーカーの答えは賛否両論でした
まずはじめに、「バランス接続」についてご説明しましょう。
一般的なイヤホンには、「アンバランス接続」が採用されています。左右のGND(グランド)信号が同じ回路を通過するシンプルな構造が特徴です。対して「バランス接続」は、左右のGND信号を完全に分離できる構造をしています。それには、ノイズが軽減されるなどのメリットがあり、「アンバランス接続」より音質面で優れているとされています。
「バランス接続」を行うには、専用のケーブルとDAP(デジタル・オーディオ・プレイヤー)が必要です。専用ケーブルの端子は主に2.5mm4極で、4.4mm5極のものもあります。ちなみに、「アンバランス接続」の端子は、3.5mm3極です。そして、スマホなどのリモコン付きには3.5mm4極で、リモコンの信号も同じ回路を通過します。
理論上では「バランス接続」によって音質が良くなるはずですが、実際のところ効果はあるのか、メーカーに聞きました。
【メーカーの回答①ファイナル】「バランス接続で音質が向上するかは製品次第」
ファイナルの見解は、「音質が向上するかどうかは製品次第で、一般化はできないと考えています。バランス接続で左右の信号が交じるクロストークという現象が減るため、音質が向上するはずですが、現実の製品では必ずしもそうではないようです」と否定的です。
【メーカーの回答②大手A社】「バランス接続により音質は確実に向上します」
その一方で大手A社は、バランス接続により音質は確実に向上するとのこと。「チャンネルセパレーションに優れたバランス接続にすることによって音の解像度が向上し、広い音場を感じていただけるかと思います」との回答で、音質向上に肯定的でした。
ほかの回答として、「効果は確認できた」、「個体差がある」など消極的な肯定派のメーカーや「理屈では向上するはずだが実際は怪しい」という否定的な立場をとるメーカーなどさまざまで、効果については賛否両論でした。
そして、効果が認められるとするのは、イヤホンだけではなく「バランス接続」対応のDAPも製造しているメーカーだったのが印象的です。両方を製造しているのなら、自社製品同士を組み合わせて音質の確認ができます。しかし、イヤホン単体の場合は、再生するDAPとの相性次第で効果が変わってしまう可能性があり、メーカーの答えがバラバラなのもこれが理由ではないでしょうか。
「エージング」は効果ある?全メーカーの回答は「効果あり」です
「エージング」という言葉をご存知でしょうか? 新品のオーディオ機器で数十時間から数百時間かけて音楽を再生させる慣らし運転をすることにより、音質が変わるという効果のことです。イヤホンには、振動板など機械的な駆動部分があるため、効果が期待できます。
そこでイヤホンの「エージング」について取材したところ、なんと全メーカーが効果有りとの回答でした。加えてファイナルは、自社ホームページで「エージング」について言及していたのでご紹介します。
このように、原因は定かではないようですが音質は変化するという見解を記載しています。
ファイナル
E3000
実勢価格:4976円
重量:14g
コード長1.2m
ドライバー口径:6.4mm
感度:100dB/mW
インピーダンス:16Ω
この「E3000」をはじめ、振動板の面積が少ないEシリーズは「エージング」に、150~200時間程度かけてほしいとのことでした。またファイナルは、脳が音に慣れていき部分から全体へと音質評価が変わる「脳のエージング」説も唱えています。通常の使い方で「エージング」を行っていると、人間の耳がイヤホンの音に慣れてくる効果はありそうですね。
メーカー各社が肯定した「エージング」の効果。ただし、劇的に音質が変化するのではなく、徐々に変わっていく傾向にあるので、そのことには注意してください。
イヤホン技術者が認める神イヤホンを教えてもらいました
イヤホンを製作している技術者の人がどんな製品をベンチマークにしているのか、もしくは神イヤホンが何なのかはユーザーにとって気になるところです。これはぜひ聞いてみたいということで、メーカーに質問をぶつけました。
【メーカーの回答①ソニー】「MDR-CD900STをリファレンスしてベンチマークとして利用しています」
まずソニーは、自社製品の「MDR-CD900ST」をリファレンスして、ベンチマークとして利用しているケースがあるそうです。
【メーカーの回答②JVC】「神ヘッドホンが存在しますが、機種は秘密」
JVCは、「長い間にわたって神ヘッドホンが存在しますが秘密です」とのことでした。
【メーカーの回答③ファイナル】「エティモティックリサーチ ER-4PT」です
ヘッドホンを回答するメーカーが多いの中、イヤホンを挙げてくれたのはファイナル。教えてくれた神イヤホンは、エティモティックリサーチ「ER-4PT」です。
エンジニアによるとこの製品は、「理論原理主義のイヤホンで、良い音とは何かを考える上で、非常に参考になります」とのことでした。
エティモティックリサーチ
ER-4PT
実勢価格:2万6980円
重量:28g
コード長:1.5m
感度:102dB(SPL@0.1v)
インピーダンス:27Ω
ドライバー:バランスドアーマチュア型
イヤホンにまつわる噂の解明を行ってきましたが、いかがでしたか。良いイヤホンを購入するなら、開発者がベンチマークにする製品も選択肢に入れておきたいですね。