「Copilot+ PC」のAI機能はどうなった?
マイクロソフトが2024年6月に発売した「Copilot+ PC(コパイロット プラス PC)」。
40TOPS(整数演算を1秒間に40兆回実行できることを表す)以上のNPU(ニューラルプロセッシングユニット)を搭載していることが要件となり、PCのAI処理が爆速になると大いに期待されました。
しかし、リリース当初は、目玉となるAI機能が少なく「出オチ」と評されることも。
そこで、発売から半年以上が経過した現在(検証時)、仕事で使えるようになったのかをチェックしました。
結論として大きな変化は見られないものの、可能性を感じるポイントが見えてきました。
まず、セキュリティの問題でリリースが延期になっていた目玉機能「リコール」がプレビュー版で使用可能に。
これは一定時間ごとにスクリーンショットを撮影し、後から振り返ることができる機能。NPUを駆使して色や写っている 物体、動画サイト内の映像中の文字など、あいまいな検索ワードでも画面に写っていれば引っかかる仕組みです。
確かに便利なものの、仕事に必須かと言われると疑問です。
一方、ネット接続がなくても大規模言語モデル(LLM)が動作す る点には大きな可能性を感じました。
2025年2月現在(検証時)ではNPU向けに最適化されたDeepSeek R1モデルが動作します。日本語未対応なのは惜しいですが出力は高速で、Wi‐Fiを切っても(ローカル環境で動いているので当たり前ですが)動作します。
オフラインでのAI活用はNPUを積む理由の一丁目一番地。セキュリティや通信環境に左右されず、さまざまなシーンで活用できるため、今後も使えるモデルが増えることに期待です。
Copilot+ PCの3つの要件
- 40TOPS以上のNPU
- 16GB以上のDDR5/LPDDR5
- 256GB以上のSSD/UFS
重要なのはNPUの要件。40TOPSでAI処理をカバーし、CPUなどの消費電力を抑えてPC全体の処理を高速化する狙いがあります。
いちばん気になるAI機能は?
スクショのAI検索「Recall」やローカルでのLLM動作などAI機能が続々搭載されています。
リコールは便利だが仕事には不要かも
Windows Helloの認証が必要
使うたびに認証は少し面倒
使用の際はWindows Hello(生体認証)での認証が必須。PINや指紋認証、顔認証などの設定が必要で、毎回認証を求められるのはセキュリティのためとはいえ少し面倒です。
「青色」「侍」などあいまいな単語で検索可能
写った内容で検索できる!
「侍」などの検索ワードを入れてみると、テキストの「侍」だけでなく、写真などに写っている場合もAIが侍と判断してヒットします。
うーん、普通に探すほうが早いのでは……?
画面のスクショを常に撮影し記録
テキスト情報はコピペ可能
5秒ごとにスクショが撮影され、ストレージに保存されます(上限はストレージの容量に依存)。
スクショ上のテキスト情報はそのままコピペ可能なのは便利です。
NPU搭載なのでネット接続なしでLLMが動作
Visual Studio Codeの拡張機能「AI Toolkit」を用いてDeepSeekを動かします。
ローカル処理なので動作は快適ですが、日本語に非対応なのが残念。英語や中国語ができるなら仕事でも使えそうです!
タスクマネージャーを開いてパフォーマンスを確認すると、確かにNPUを用いて処理しています。使用率は最大でも50%前後で、それ以上は上がりませんでした。
その他のAI機能
自動スーパー解像度
低解像度の映像をNPUで高解像度化するゲーム向けの機能です。
ライブキャプション
PCの音声出力にリアルタイムで英語字幕を付けます。
コクリエイター
手描きスケッチとテキストを組み合わせて画像を生成するペイントアプリの機能です。
下手な絵がレベルアップ!
イメージクリエイター/リスタイル
フォトアプリに搭載された画像生成機能。テキストのみの入力で生成可能です。
資料用の挿絵を手軽に生成!
Windows Studioエフェクト
PC内蔵カメラとサウンドに手軽に効果を適用。使用しているアプリが変わっても同一の効果を保持できます。
今後実装されるAI機能
Teamsのスーパー解像度
MicrosoftのWeb会議ツール「Teams」での画質をアップスケール。特にネット環境が悪い場合に効果を発揮するとか。
高度なWindows検索
PCストレージ内のファイルのほか、OneDrive内のファイルであいまい検索が可能になる機能。これは便利そうです!
Copilot+ PCとMicrosoft 365 Copilotは別物です
Copilot+ PCを買っても、ExcelやWordなどのOffice製品上で使えるCopilotはついてきません(個人向けMicrosoft 365の別途契約が必要)。
名前が似ているだけに紛らわしいです。
AI機能が徐々に充実。2025年後半には本領発揮!?
今後はWeb会議ツール「Teams」でのスーパー解像度や、ストレージ・OneDrive内のファイルに対して高度な検索が可能になるなどのAI機能が実装されると報じられています。
今回話をお聞きしたビジネス書作家の戸田覚さんによれば、「マイクロソフトは今後、あらゆるAI処理をNPUに任せることでPC全体を高速化する狙いがあり、2025年後半にはPC操作が飛躍的に効率化される」とのこと。
たとえば、ネット接続しての翻訳はChatGPTなどでも数秒〜数分はかかりますが、英語の文書を開いた瞬間に翻訳が完了したらすごく便利ですよね。
こうした今後のPCの利用シーンの変化を予想すると、現時点では実用的なAI機能が少なくても、「Copilot+ PC」を購入する価値は十分にあります。しかも、現在発売されているWindows PCの多くはすでに「Copilot+ PC」に移行済み。
あくまで自分にとってベストなPCを選ぶ、と意識しておけば間違いありません。
40TOPSの要件を前提にさまざまな機能・サービスの開発が進んでいます。2025年後半に花開くでしょう。