価値ある「フィルム一眼」
ひとつの時代の終わり

キヤノンは2018年6月5日、同社最後のフィルムカメラ「EOSー1v」の販売を終了しました。販売終了といっても、長いこと在庫僅少扱いだったため工場生産はかなり以前に終了し、細々と売り続けて在庫が払底したという状況だと思われます。

キヤノン:EOSー1v:カメラ

キヤノン
EOSー1v

お探しの方は中古を発掘するしか手はありません。もっとも、中古市場ではすでに価格が高騰中のようです。

(※価格.comより)

価格ドットコムの価格推移グラフを見ても、生産終了の知らせが届いてからぐんぐん平均価格が上昇しているのがわかります。

これで、本格的なフィルムカメラを製造しているのはニコンとライカのみとなってしまいました。ニコンも新製品開発の動きは見られず、実質的には継続して新製品を送り出しているのはライカだけです。

ライカ:M7:カメラ

ライカ
M7
実勢価格:72万円

35㎜フィルムは別名「ライカ判」とも呼ばれ、ライカカメラとともに世界的に普及した経緯があります。そして同社は世界最後のフィルムカメラメーカーになるかもしれません。ライカに始まりライカで終わる、という結末になるんでしょうか。

ニコン:F6:カメラ

ニコン
F6
実勢価格:25万908円

販売が終了したEOSー1vやニコンの現行機「F6」はハイエンド一眼レフカメラであり、その実、半導体がふんだんに使われたデジタル度の高いフィルムカメラです。

EOSー1vに至っては45点の多点オートフォーカス、10コマの連写速度を誇っていました。45点といえば現行品のデジタル一眼レフのEOS 80Dと同じ(もちろん同じ45点でも80Dのそれは中身も性能も別物ですが)。つまり、EOSー1vはカメラ任せでちゃんと撮れるフィルムカメラだったということです。

確かにフィルムは廃れかかっていますが、インスタグラムに象徴されるようにフィルム独特の発色に憧れを持つ写真愛好家は多いですし、フィルムの発色をデジタルで再現しようとする富士フィルムのミラーレス「Xシリーズ」には根強い人気があります。

EOSー1vとニコン F6はそのハイエンド機特有の高性能ゆえ、みんなが大好きなフィルムの発色でスナップ、ポートレートから果てはスポーツ写真までどんな被写体でも確実に撮れます。そこにこの2機種の価値があるんです。

ライカでの望遠撮影は原理上極めて難しいですし、オートフォーカスは搭載されていません。ニコンF6の販売が終われば、フィルム写真の世界に大きな穴があくことになるでしょう。

EOSー1v販売終了のニュースを受け、キヤノンに現存するEOSー1vの作例写真を提供してもらおうと試みましたが、提供できる画像が残っていないとのこと。フィルム時代を知らない編集担当は虚をつかれた思いだったようです。

データに残らない往年の写真のあり方ともいえるフィルム時代の名残りを、思わぬ形で感じることができました。その気になればコピーし放題のデジタル時代しか知らない世代にとって、“画像が残っていない”なんてあり得ないことだからです。

フィルムの文化は形を
変えて生き残り続ける

フィルムカメラといえば、世界的なチェキブームでインスタントカメラこそ息を吹き返しましたが、それはファッションやSNSなど既存のカメラとは異なるカルチャーでの話。

確かにフィルムカメラを手に取るカメラ女子やカメラ男子は増えているようですが、大手カメラ店の売り場担当者に取材したところ、35㎜フィルムや120㎜フィルムの売れ行きは低迷したままだといいます。

富士フィルムもどんどんフィルムのラインナップを縮小しています。ラインナップを縮小してなんとか1製品あたりの販売数量を確保しようという撤退戦を強いられているのかもしれません。

一方、海外では明るい話題がないわけではありません。富士フィルムと並ぶ世界的なフィルム大手コダックが、代表的な製品「エクタクローム」の2018年中の再販売開始を明言しています。また、クラウドファンディングではフィルム一眼レフを再開発しようというプロジェクトも存在します。

「フィルムのハイエンド一眼レフ」はもはや風前の灯ですが、フィルム写真そのものは細々と、でも確実に生き永らえていくことでしょう。