ソニーから自由に移動できるシアターシステムが登場!
「シアターシステム」と聞くと、大きめのスピーカーをいくつも部屋中に配置する大げさなイメージが強く、そんな場所をとれる部屋は限られるため、非常にハードルが高そうに感じます。
しかし、2023年7月に発売されたソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」は違うんです。
ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」
- ソニーポータブルシアターシステム HT-AX7
- 実勢価格: ¥60,000〜
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手軽に運べる大きさ
リアスピーカーは片手で持てるほどコンパクトなので、自由に移動できます。本体(フロントスピーカー)上に乗せれば、自動で充電されるので手軽です。
ベッドの上でも音に包まれる感を楽しめます。
フル充電で約30時間再生できる!
充電は、本体の下部にあるUSB-C端子で行います。USB-PD対応なので、充電時間は約4時間(リアスピーカーは約4.5時間)。フル充電で約30時間稼働します。
ソニー独自の立体音響技術とは?
ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」では「サウンドフィールドエフェクト」のオン/オフで、2つのサウンドが体験できます。
オンにすると独自技術の「360 Spatial Sound Mapping」により、ファントムスピーカーを生成。自分のすぐ近くの周囲から音が聞こえてくるので、映画でもその場にいるような臨場感が味わえます。
部屋を囲むようにスピーカーを配置して、本体のボタンで「サウンドフィールドエフェクト」をオフにすれば、音が部屋中に広がります。
自分の周囲よりも広い範囲、部屋全体から聞こえるようになるので、BGMに向いています。
以上のことから、ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」はかなり凄そうですが、実際はどうなのでしょうか。
本当にそんな立体音場を体験でき、おすすめ家電といえるのか、以前に『家電批評』でテストをしてベストバイに選ばれた、空間オーディオ製品と聴き比べてみました。
ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」の検証方法は?
『家電批評』編集部で実際にソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」を購入し、音の専門家2名と共に検証を行いました。
本体を正面に配置し、リアスピーカーは背後の左右に配置。スマホから映画や音楽の音声をストリーミング再生し、音質や立体感を評価しました。
特に音場の立体感は、過去にベストバイとなった空間オーディオ製品であるJBLのサウンドバー「Bar 1000」や、ソノスのスピーカー「Era 300」とも聴き比べました。
それでは、ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」の実力を見ていきましょう。
ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」の音質を検証
映画館とは違うもののサラウンド感はあり!
映画館のように違う音が別の方向から聞こえてくるということはないものの、複数のスピーカーを配置しているので、空間的な音は実現できています。
テレビと組み合わせても違和感はない
再生するのは左右2チャンネルのステレオ音源なので、音の方向までは再現できません。
しかし、テレビと組み合わせても問題ない音質で、リアスピーカーの鳴り方も違和感ありません。臨場感も十分です。
ベストバイの他の空間オーディオ製品と比較
ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」と、JBLのサウンドバー「Bar 1000」とソノスのスピーカー「Era 300」の3製品で音質を比較しました。順に結果を紹介します。
ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」
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低音〜高音の質【評価:合格】
低音はやや物足りませんが、音量を上げればバランスよく聞こえます。中音もやや物足りなさはありますが、映画内のセリフは明確に聞き取れます。
高音はやや薄めですが抜けがよく、アクション映画でもしっかり聞かせてくれます。
解像度/レスポンス【評価:合格】
情報量はさほど多くありませんが、問題ないレベルといえます。十分な音量も取れ、大音量で聞いても破綻がありません。
サウンドフィールドエフェクトをオフにして音楽を小音量で流しても、スマートスピーカー程度の音はしっかり出ます。
空間表現【評価:合格】
音の方向までは再現できませんが、サラウンド感は出て音に包まれている感じはあります。
テレビの映像と組み合わせても問題ない音で、激しいアクション映画にも最適。リアスピーカーの聞こえ方も自然です。
ソノス「Era 300」
- ソノスSonos Era 300
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低音〜高音の質【評価:良好】
最も低い音までは伸びませんが、量感があるので迫力ある低音が楽しめます。映画内のセリフもよく聞き取れるので、中音もなかなか良好です。
高音に関しては、ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」よりレンジは広いものの、抜けはイマイチ。映画より音楽向きです。
解像度/レスポンス【評価:良好】
解像度はソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」より高く、ワンボディながらしっかり鳴ります。
大音量にすると迫力のサウンドになりますが、低~中低音がやや多すぎるように感じます。小音量にしても十分迫力あるサウンドですが、やはり低音過多な印象です。
空間表現【評価:微妙】
検証時、天井の高さや部屋の広さもあって各スピーカーの反射効果が弱かったせいか、空間的な広がりはあまり感じられませんでした。
スピーカーの前面にのみ音場が展開されている感じで、残念ながらサラウンド感はあまりありません。
JBL「Bar 1000」
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低音〜高音の質【評価:優秀】
サブウーファー付きで超低域を支えてくれるため、低域の量感は絶大。自然な感じでド迫力の低音を再生できます。中音にも厚みがあり、サウンドバーとしては申し分ありません。
高音も抜けがよくメリハリのある音で、バランスも優秀です。
解像度/レスポンス【評価:優秀】
解像度はかなり高く、分離もいい。細かいニュアンスまできちんと再生しています。大音量にするとサブウーファーの効き目が絶大で、映画館並みの迫力が出せます。
一方、極端に小音量にすると、ややバランスが崩れて低音が多くなります
空間表現【評価:優秀】
サウンドバー左右の先端を外してリアスピーカーとして置けるため、広い空間をステージにできます。
サウンドバーでこれ以上のサラウンド感は出せないのでは? と思えるレベルです。部屋のサイズの影響を受けにくいのも優秀でした。
ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」の使い勝手を検証
アプリ管理【評価:優秀】マルチペアリング対応で同時に複数デバイスと接続できる
本体には最低限のボタンしかなく、その他の機能はBluetooth接続したスマホアプリで管理。マルチペアリングに対応しているので、複数のデバイスに登録できます。
ちなみに、Bluetooth機能付きのテレビと直接接続することも可能なので、家庭用ゲーム機でも立体的な音でプレイできます。
自由度【評価:優秀】どこにでも持ち運べて大勢でも楽しめる
持ち運びしやすいサイズと重さで、本体もワイヤレスなので設置の自由度が高いのが魅力。
ベッドの周りに配置して自分の周りだけで楽しむこともできる一方、部屋全体を囲むように配置すれば大人数でも楽しめます。ただし、空間を計測して自動調節する機能はないため、前後のバランス調節等は手作業です。
持ち運びやすいサイズかつ、設置の自由度も高い点が最大の魅力です。
アプリ操作【評価:優秀】簡単で初期設定もラクラク
本体にボタンがないリアレベルや低音レベルもアプリで設定が可能。音源となる機器の切り替えもプルダウンメニューから簡単に行えます。
本体の電源を入れてアプリを起動するとソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」が検出されるので、スマホを本体に近付けて音が鳴ることを確認。そのままペアリングに移ります。
電源【評価:良好】リアスピーカーを持ち上げると自動で電源がオンに!
電源がオフの状態でも、リアスピーカーを取り外せば自動で電源が入る仕様。個別に電源を入れる必要がないので、手軽に使い始められます。
なお、アプリで「Bluetoothスタンバイ」をオンにしておけば、アプリや接続したテレビから電源をオンにすることもできます。
ただし、使い込んでいくと気になる粗も。リアスピーカーは向きを気にせず、載せれば充電されますが、いつのまにかズレていて充電がゼロに……なんてこともあるので気をつけましょう。
リアスピーカーを載せれば自動充電されるのも優秀。でも、ちょっと外れやすいです。
コーデック【評価:微妙】対応するのはSBCとAACのみ
対応するBluetoothコーデックはSBCとAACのみ。このため、元がハイレゾ音源でも転送時にダウンコンバートされてしまいます。ソニーが開発した高音質コーデック「LDAC」にも非対応です。
どちらも遅延が発生する形式なのでリアルタイム性の高いゲームでは気になるかも……。
対応機器【評価:微妙】Bluetoothのみで有線は使えない
ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」に搭載されている端子は充電用のUSB-Cポートだけで、サウンド入力端子は一切ありません。
接続はBluetoothのみなので、音源として使えるのは主にスマホやタブレットなどの機器のみ。また、Bluetooth接続なので、当然Dolby Atmosは非対応です。
リアスピーカーはどこに置くと聴きやすい?
一般的にフロントスピーカーは「耳の高さ」、サラウンド用のリアスピーカーは「耳より高い位置」が最適とされています。高さを出すことで上下方向の立体感を強調できるため、特にフロントスピーカーから距離がない場合は、高い位置に置くと効果的です。
また、背面に壁がある場合は壁に近付ることで音が反射するので、さらに立体感が増します。なお、本製品では聞く位置から1〜1.2m以内にリアスピーカーを置くのが効果的です。
ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」検証のまとめ
ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」
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以上、ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」の検証レビューでした。
今回、いろいろと検証してみた結論、確かに立体的な音場に包まれる感じはあります。しかも、これだけ手軽にこの体験ができるのであれば、十分おもしろい製品です。低音はやや弱いものの、迫力のあるサウンドで映画も楽しむことができます。
とはいえ、やはり映画館のようにはいきません。
映画館との決定的な違いは、スピーカーの数と音のチャンネル数。映画館ではスピーカーをいくつも使い、それぞれの方向から最適なチャンネルの音を再生しています。これにより、音の方向まで再現しています。
一方、本製品はスピーカーは3つあるものの、音源はL/Rの2チャンネルのみ。実際に3つのスピーカーを前後に置くので立体感は出るものの、音の方向までは再現できません。
このため、「映画館に似た体験」が限界ですし、本格的なサウンドバーにも劣ります。ただし、誤解しないでほしいのですが、本製品に対して否定的なわけではありません。
これだけ手軽で音も悪くなく、聴く楽しさもあります。そもそもがスマホやタブレット向け製品ということと、映画館とは方式が違うということを理解して選ぶなら全然アリ。
難点をいうならば、価格があまり手頃でない点。この価格なら、せめてハイレゾ対応は欲しいところです。
とはいえ、スマホ&タブレット向けのスピーカーとしては十分楽しいので、気になった人はぜひチェックしてみてください。
空間オーディオ製品のおすすめは?
最後に、空間オーディオの基本とおすすめ製品を紹介します。
そもそも空間オーディオとは?
「空間オーディオ」とは、複数のスピーカーを用意できない環境でも、擬似的に立体的な音場を作り出す技術のこと。大きく2つのタイプがあり、音源自体に立体音響データを含むタイプと、音源自体に立体音響データを含まないステレオ音源のタイプがあります。
1:音源に立体音響データを含むタイプ
音源自体に立体音響データを含むタイプは、音がその位置情報とともに多チャンネルに分けられており、対応機器で対応音源を再生した場合に立体感が再現されます。
Dolby Atmos
映画や動画配信でよく見かける「Dolby Atmos」では、音とその位置情報が同時に記録されています。この情報を利用して、立体的な音場を作り出しています。
Appleの空間オーディオ
Appleは「Dolby Atmos」をベースに、ヘッドホン等のモーションセンサーを使って頭の動きを検知。音を動きに合わせることで立体感の再現度を向上させています。
Beatsのワイヤレスヘッドホン、「Beats Studio Pro」にも対応しています。
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ソニーの360 Reality Audio
ソニーは「MPEG-H 3D Audio」形式を採用。スマホアプリで自分の耳を撮影し、そこから擬似的に個人の耳の特性(HRTF)を算出。これをヘッドホンに反映し、立体感を再現しています。
なお、「PS5」も「Tempest 3Dオーディオ」という立体オーディオ技術に対応しています。
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音源自体に立体音響データを含むタイプの空間オーディオのまとめ
- Dolby AtmosとMPEG-H 3D Audioの2つがある
- メーカーごとに立体感の再現方法が異なる
- 再生機器や利用アプリがある程度限定される
2:ステレオ音源のタイプ
空間オーディオの2つめのタイプが、立体音響データを音源内に含まないステレオ音源のタイプ。音源としてはL・Rの2チャンネルのみですが、ソフトウェアで立体オーディオ化することで立体感を表現しています。
今回レビューしたソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」もそうですが、実はiOSにも同様の機能が搭載されています。
例1:SHUREの空間オーディオモード
SHUREも新製品の「AONIC 50(第2世代)」に独自開発した「空間オーディオモード」を初採用。原音を大事にしつつ、音場を広げる方向性で「音楽」「シネマ」「ポッドキャスト」の3つのモードを採用しています。
シュア「AONIC 50 Gen 2(第2世代)」
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例2:ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」
ソニー「ポータブルシアターシステム HT-AX7」が扱えるのは、LとRの2チャンネルを持ったステレオサウンドまで。これを3つのスピーカーで再生することで、擬似的に立体的な音場を作り出しています。
音源自体に立体音響データを含まないタイプの空間オーディオのまとめ
- ステレオ音源をソフトウェア上で立体化
- 立体感は出るものの、音の方向感は甘い
- メーカーごとに空間オーディオの定義が異なる
もっとも映画館に近い体験を味わえるのはJBL「Bar 1000」
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- 総合評価
今回比較した3製品のなかで、最も映画館に近い体験ができたのはDolby Atmos対応のサウンドバー、JBLの「Bar 1000」でした。
サブウーファーから出る迫力の重低音は別格で、15基のスピーカーを搭載した7.1.4チャンネルの立体感は次元が違います。分離できるリアスピーカーも効果的です。
- 幅
- 1194mm(サウンドバー本体)、305mm(サブウーファー)
- 奥行
- 125mm(サウンドバー本体)、305mm(サブウーファー)
- 高さ
- 56mm(サウンドバー本体)、440.4mm(サブウーファー)
- 重量
- 6.5kg(サウンドバー本体)、10kg(サブウーファー)
- 型番
- BAR 1000
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音に指向性はないものの、コンパクトなシステムながらサラウンド感はあります。