見守りGPSってなに?
スマホには、衛星の電波を使って自分の居場所を特定する、GPS機能が搭載されているのはご存知の方も多いはず。
大手キャリアでは、この機能を使った家族の見守りサービスも提供していて(有料)、画面に表示されるマップで見守り対象者の居場所を確認できるようになっています。
ざっくり言うと見守りGPSは、スマホからこのサービスだけを抜き出したものなんです。
スマホよりはるかに小さな端末には、スマホと同じく携帯通信用のSIMが内蔵されていて、GPSから取得した位置情報を数分ごとに自ら発信します。
その情報を受け取った人、つまり見守る側はスマホの専用アプリを介して、いつでも対象者の居場所や移動経路を確認できます。
さらに、指定エリアに出入りしたら通知をする、乗り物に乗ったら通知をする、トランシーバーのようにメッセージをやりとりする、といった独自機能を備えた製品もあります。
ちなみに、今回の見守りGPS比較検証を担当したライター・編集者の岡野氏は、キャリアの見守りサービスと見守りGPSのメリット・デメリットを次のように語っています。
見守りGPSの選び方のポイントは?
選び方のポイント1:位置の正確さ
実は、見守りGPSの位置情報はGPSだけでなく、GNSS(GPSもココに含まれます)という複数の衛星を使った測位システムやWi-Fi、携帯基地局なども使って測位されています。
普通に考えれば、たくさんの情報から位置を割り出すほうが高精度な気がしますが、実際に使ってみると、必ずしもそうとはいえなそうです。
一番重要な部分ですが、購入前に試すのも難しいので、できるだけ口コミなどを参考に、位置に誤差がないかを確認するようにしましょう。
選び方のポイント2:更新頻度
機種によって、マップ上の位置情報が更新される頻度が異なります。
多くの見守りGPSは、更新頻度を優先するモードとバッテリー持ちを優先するモードの2つを備えており、今回試した2製品ではどちらも更新頻度優先で最短1〜2分間隔と、リアルタイムに近い更新頻度。
ただし、実際に使ってみると、この頻度で更新されない場合もあるため、位置の正確さと同様、こちらもスペックだけでなく口コミなどを参考にするのがベターです。
選び方のポイント3:バッテリーの持ち
初期には3〜4日でバッテリーが切れるものもありましたが、バッテリーの大容量化や通信の省電力化などによって、現在販売されている製品は短くても1週間程度は持つように進化しています。
バッテリー持ちを優先するモードのほか、本体に動きがないときにバッテリー消費を抑えられる製品もあります。
基本的に忘れないように頻繁に充電するのが望ましいですが、充電回数が多いと煩わしいと感じる人は、このあたりも要チェックです。
選び方のポイント4:機能
製品によってどのようなシーンでスマホへ通知を送るかといった機能に違いがあるほか、見守りGPS本体からスマホへ現在位置を送ったり、本体とスマホで双方向に音声をやりとりできたりと機能に差があります。
また、マップに表示される情報や見やすさなども異なるため、ホームページや動画サイトで機能を確認するのも忘れずに。
選び方のポイント5:利用料金
以前は、本体さえ買えば一定期間無料で使用できる“買い切り”タイプもありましたが、現在販売されている製品の多くは本体の購入金額に月額利用料がかかります(キャンペーン等で利用開始から一定期間無料のものはあり)。
調査時点では本体価格は4000〜8000円台、月額利用料は500〜700円台が多くなっていますが、コスパ重視の人はできるだけ安いものを選びたいところです。
最新見守りGPS2製品を過去ベストバイと徹底比較!
これまで弊誌『家電批評』で行ってきた見守りGPSのテストでベストバイだったのは、2021年に発売された「みもりGPS」(ドリームエリア)の第2世代モデルでした。ただ、現在は完売状態(次回2023年12月頃入荷予定)。
そのため、最新製品の中からこれに代わるものとして白羽の矢を立てたのが、+Styleの「まもサーチ3」とビーサイズの「BoTトーク」。
今回はこの2製品をみもりと比べてみました。
テスト1:位置情報の精度と更新頻度
外出中の見守りで一番重要なのは「どこにいるか」が正確にわかることです。
万が一捜索が必要になった場合も、位置が大きくずれていたのでは話になりません。
また、移動をできるだけリアルタイムで追えるような更新頻度の多さも重要。
そこで、テスト製品2台とみもりの合計3台を持って移動しながら、以下のポイントでチェックを行いました。
なお、各項目は星5段階で評価。参考値としてみもりの評価も記載しています。
- 住宅街・公園(屋外)……街中の比較的開けた場所を歩いたときの位置情報の正確さ
- 高層ビル群(屋内外)……GPSの電波が届きにくい高層ビル群を歩いたときの位置情報の正確さ
- 駅・空港(屋内)……GPSの電波が届きにくい屋内の施設を歩いたときの位置情報の正確さ
- 徒歩移動……徒歩移動したときの更新頻度
- 電車移動……電車移動したときの更新頻度
- 地下鉄移動……GPSの電波が届きにくい地下鉄移動したときの位置情報と更新頻度
テスト2:機能
今回は位置情報の正確さと更新頻度の多さをメインに評価していますが、画面の見やすさやオススメの機能、逆に気になった点なども合わせて紹介します。
こちらが新製品と比較する過去ベストバイのみもり!
- ドリームエリアみもりGPS
- 検証時価格: ¥8,580〜
※月額748円
- 住宅街・公園(野外)
- 高層ビル群(屋内外)
- 駅・空港(屋内)
- 徒歩移動
- 電車移動
- 地下鉄移動
- 付加機能
さぁベストバイは「BoTトーク」と「まもサーチ3」のどちらが獲得するのか!?
それでは気になる検証結果を見ていきましょう!
「BoTトーク」がベストバイ! 位置の正確さが決め手でした
- ビーサイズBoTトーク
- 検証時価格: ¥5,280〜
※月額528円(GPSプラン)または月額748円(GPS&トークプラン)
- 住宅街・公園(屋外)
- 高層ビル群(屋内外)
- 駅・空港(屋内)
- 徒歩移動
- 電車移動
- 地下鉄移動
- 付加機能
見守りGPSが今ほど多くなかった2017年から参入し、日本一のユーザー数を誇る人気シリーズが「GPS BoT」。
その最新モデルの「BoTトーク」は、スマホと見守りGPS本体で、双方向に音声メッセージをやりとりできる機能が最大の魅力です。
- 幅
- 50mm
- 奥行
- 50mm
- 高さ
- 21mm
- 重量
- 39g
- 測定方法
- GNSS(GPS/みちびきQZSS/BeiDou/Galileo/SBAS)、アシストGPS(A-GPS)、クラウド測位(Wi-Fi/携帯基地局)、モーションAI(加速度/ジャイロ)
- 通信方法
- ドコモ LTE-M
- 稼働時間
- 最大1カ月強(GPSプラン)、 最大2週間強(GPS&トークプラン)
今回の見守りGPS頂上決戦を制したのはビーサイズ「BoTトーク」でした!
テストでは、頻度優先モードにしても位置情報の更新に時間がかかる印象があったのですが、実際には「みもり」や「まもサーチ3」と同等。
また、位置の精度も高く、屋内での位置表示も高精度で実際にいる場所にかなり近い場所を示してくれます。
さらに、ずれているポイントを示した場合に「この位置が不正確であることを報告」できるのも好印象でした。
地下鉄では他の製品同様に、まったく機能しなくなりましたが、地下鉄から地上に出たときに一番早く位置情報を取得したのは本製品だけです。
屋内外問わず位置の精度は高いので、子どもの寄り道チェックや出かけた先で迷子になってしまったときの捜索用に便利です。
また、いろいろな場所にお出かけする高齢の親に持たせたり、突拍子もないところに行ってしまう認知症のひとり歩き(徘徊)対策に使ったりするのもおすすめです。
位置精度テスト①:住宅街・公園(屋外)
星評価:★★★★★
BoTトーク(写真左側)もみもり(写真右側)も、通ったルートをほぼ完璧にトレースしていてどちらも優秀でした。
また、次に紹介するまもサーチ3の場合、駅に到着後も少し離れた場所を示していましたが、BoTトークはきちんと駅の上にポイントが来ていました。
位置精度テスト②:高層ビル群(屋内外)
星評価:★★★★☆
広場(画面真ん中の緑の部分)を横切った位置は、みもりのほうが正確でしたが、画面上部のほうの軌跡はBoTトークのほうが正しい軌跡を描いていました。
というわけで勝負はドロー。まもサーチと同等の「良好」評価としました。
位置精度テスト③:駅・空港(屋内)
星評価:★★★★★
駅の左側にある道路は実際には渡っていないので、みもりよりBoTトークのほうがルートが正確。画面真ん中の通路もただ真っ直ぐ歩いただけなので、飛びの少ないBoTトークのほうが優秀でした。
写真のアイコンは次の移動のために改札をくぐったあとですが、みもりはここでも微妙に改札の外を表示。このスポットはBoTトークの圧勝です。
パッと見は似ていますが、空港内(画面右側の建物、BoTトークは見切れています……)での位置はBoTトークのほうが優秀でした。
また、商業施設(画面左側の建物)への移動中にどちらも通路の外に出てしまいましたが、商業施設内を歩いたルートは、より奥まで進んでいるBoTトークのほうが正確です。
位置精度テスト④:徒歩移動
星評価:★★★★☆
BoTトークの更新頻度はみもりとほぼ同レベル。移動速度の遅い徒歩だとかなり詳細に移動経路がわかります。
位置精度テスト⑤:電車移動
星評価:★★★★☆
電車移動の軌跡も、BoTトークとみもりではほとんど差がありませんでした。次に紹介するまもサーチ3よりもかなり正確に線路の上を辿っています。
位置精度テスト⑥:地下鉄移動
星評価:★★☆☆☆
今回試したどの製品も地下鉄の駅構内や移動中には位置情報を取得できませんでした。
ただ、BoTトークやみもりは、地上に出てすぐに位置情報を取得。その点は次に紹介するまもサーチ3よりも優れていました。
機能
星評価:★★★★☆
通常のGPSプラン(月額528円)に220円プラスしてGPS&トークプランに変更すれば、トランシーバーのように見守りGPS本体とスマホ間で音声メッセージのやりとりが可能。
スマホからメッセージを送信する場合、着信と同時にメッセージを自動再生するか、ベルだけ鳴らして見守り対象に再生してもらうか、選択することもできます。
BoTトークでもうひとつ特徴的なのがAIによる行動範囲の学習機能です。
学習するまでに1カ月程度かかるようで、テスト期間内に試すことはできませんでしたが、普段の行動範囲外に行くとスマホへ通知が来るそう。防犯用途でかなり使えそうです。
▼前回ベストバイ「みもりGPS」との比較
移動を先読み!? 更新速度を重視なら「まもサーチ3」
- プラススタイルまもサーチ3
- 検証時価格: ¥4,980〜
※月額528円または年額5500円
- 住宅街・公園(野外)
- 高層ビル群(屋内外)
- 駅・空港(屋内)
- 徒歩移動
- 電車移動
- 地下鉄移動
- 付加機能
スマートホームデバイスを多数販売する+Styleが手がける見守りGPS。
画面上にマップが大きく表示されるので見やすさは抜群です。また、位置情報を示すポイントに時間だけでなく日にちが表示されるのもまもサーチだけ。これも地味に助かります。
- 幅
- 49mm
- 奥行
- 49mm
- 高さ
- 15.5mm
- 重量
- 39g
- 測定方法
- GNSS(GPS / みちびき QZSS / BDS/ GLONASS)、 Wi-Fi、 携帯基地局
- 通信方法
- LTE-M(Cat.M1)
- 稼働時間
- 最大6週間(頻度優先モード) 、最大2カ月間(バッテリー持ち優先モード)
惜しくも、見守りGPS頂上決戦に敗れてしまった「まもサーチ3」。
テストでは、「みもり」よりも早く位置を更新するシーンがたびたび見られたほか、高速の電車移動などでは実際の位置よりも先の位置を示すことも。大きくズレていればデメリットですが、きちんと向かっている方向を示していたため位置の“先読み”ととらえました。
ただ一方で、頻度優先(1〜2分)なのに位置情報がまったく更新されないことがあり、特に地下やトンネルから出たあとで、最大10分以上位置情報が更新されないことも。
また、位置情報の精度に関しては少しざっくりした印象を受けます。駅などではポイントが少しズレることもあり、位置情報の取得頻度に関しても、頻度優先にしてもほかより少なめです。
とはいえ、おおよその移動経路と目的地に着いたことはわかるので、子どもの登下校や高齢者のお出かけなどには十分使えます。コストもほかの製品より安くすむので、試しに見守りGPSを使ってみたいという人におすすめです。
位置精度テスト①:住宅街・公園(屋外)
星評価:★★★★☆
実際には川の左岸沿いを北に進み、その先の公園を突っ切ってから左折し、住宅街を通って駅に向かいました。
まもサーチ3(写真左側)は大きく外れてはいませんが、川の対岸に飛んでしまっているのと、駅に到着後も位置が少しずれていたのでやや減点。一方、みもり(写真右側)はかなり正確です。
位置精度テスト②:高層ビル群(屋内外)
星評価:★★★★☆
GPSの電波が届きにくいといわれる高層ビル群。ここでは、画面の右側に表示されている縦長のビル内を真っ直ぐ南下し、画面真ん中の広場(緑色の部分)を横切って左側のビル群に移り、ビルに出たり入ったりを繰り返しながら、北へ向かって歩きました。
実際には広場を四角く囲むような軌跡になるはずで、その点ではまもサーチ3のほうが正確でした。ただし、広場を横切った位置としては、みもりのほうが正確だったため、勝負はドロー。
位置精度テスト③:駅・空港(屋内)
星評価:★★★★☆
駅の左端のホームから、真ん中の通路を通って右端の出口を出て、画面中央の改札まで戻ってくるルート。
どちらもざっくりルートはわかりますが、駅の左側にある道路を横切っていたり、通路でも実際に行っていない場所にポイントが飛んだりしています。
モノレールで空港に行き、一度ターミナル(画面右端の建物)に出てから近くの商業施設(画面左側の建物)に移るルート。
まもサーチ3はターミナルから商業施設に渡る通路の移動もしっかり表示してくれましたが、みもりは通路の外側に出てしまっているのがやや残念。また、みもりは空港内の軌跡も若干ずれています。
位置精度テスト④:徒歩移動
星評価:★★★☆☆
どちらも更新頻度を優先するモードに設定していますが、位置情報を取得したポイントの数を見てもわかるとおり、まもサーチ3は少し大雑把。たまにルートを先読みして、向かっている先にポイントを打ってくれることもあり、その位置も正しいのですが、詳細に移動経路を確認したい人には少し心許ないでしょう。
位置精度テスト⑤:電車移動
星評価:★★★☆☆
徒歩移動と同様、まもサーチ3の位置情報の取得頻度はみもりと比べてかなり少なめ。
ただし、移動経路はだいたい把握できますし、電車での移動をいち早くキャッチしてくれたり、電車が駅に到着する前に先回りして駅にポイントを打ってくれたりすることも。そのあたりも加味して「合格」にしています。
位置精度テスト⑥:地下鉄移動
星評価:★☆☆☆☆
地下鉄は今回のテストの最難関。実際には画面左下の駅から真っ直ぐ東に向かい、直角に曲がるような形で北側の駅(アイコンのある位置)へ向かっているのですが、地下に入った最初の駅から地上に出た目的地の駅まで、両者とも移動中は無反応。
移動の軌跡が画面左上から右上に真っ直ぐ伸びているのがその証拠です。
しかも、アイコンの時間を見るとわかりますが、まもサーチ3は地上に出たあとに位置情報を取得するのがかなり遅いです。
電車での移動でも、トンネルや地下に入ったあとに更新が止まるような場面もあったので、地下はかなり弱い結果に。
機能
星評価:★★★☆☆
機能はかなりシンプルですが、緊急事態に本体のボタンを長押しして見守る人のスマホにアラートを出したり、指定したエリアへの出入りを検知して通知をくれたりと、基本的な機能は備えています。
▼前回ベストバイ「みもりGPS」との比較
【まとめ】見守りGPS入門向けのまもサーチ3と使い込みたい派のBoTトーク
テスト結果を見てみると、まもサーチはどちらかというと見守りGPS入門用でゆるい見守り向き。もっと使い込みたい人はBoTトークがおすすめです。
ちなみに、ベンチマークとして使用したみもりは、2021年の発売とちょっと古めですが、最新モデルと比較してもかなり優秀です。
しかも、スマホから音声メッセージを送れ、見守りGPS本体からアラートを出すことも可能。
「声かけ」「連れ去り」「わいせつ」といった詳細な情報がわかる不審者情報マップ(簡易なものはまもサーチにも搭載)のほか、子どもが学校にいるときは音声を再生しないようにする機能も。
また、乗り物移動を検知したり、不審者情報のあるエリアに出入りしたりすると通知を送ってくれるなど、機能が豊富な点も魅力。
現在は完売中ですが、次回は12月頃再入荷予定(モデルチェンジするのかは不明)とのことなので、気になった人は要チェックです。
キャリアの見守りサービスは、スマホ専用アプリではなくブラウザで操作するWebアプリ。動きがもっさりしていて正直使いづらいので、個人的には見守りGPSをオススメします。ただし、月額料金は見守りGPSよりキャリアのほうが安いので、ランニングコストを少しでも抑えたい人はそちらを検討してみるのもいいでしょう。