品質も値段も優秀な「安くて良い家電」はどれ?
半導体不足によるデジタル家電の品薄、パナソニックやバルミューダの家電製品値上げ表明と、お財布を直撃する話題の多い昨今。
そこで、本音の家電ガイド『家電批評』では、コスパに優れた逸品を探すことに。また、話題の最新製品も辛口ジャッジ。そんなテストを重ねて見つけた「安くて良い家電」を紹介します。
今回は、ユニークなデザインのスピーカー、aiwa「Butterfly Audio」を徹底検証。ふれこみのように、映画館のような音が楽しめるのでしょうか? 音質や使い勝手などを専門家とチェックしてみました。
設計が新発想のスピーカー「Butterfly Audio」
aiwa
Butterfly Audio
HPB-SW40
実勢価格:2万1780円
サイズ・重量:W330×D180×H190mm・約360g
連続再生時間:約20時間
Bluetoothバージョン:5.0
コーデック:SBC、AAC、aptX、aptX LL
名前のとおり、蝶のようなユニークなデザインのaiwa「Butterfly Audio HPB-SW40」。
なんだこれは!? と思ってしまうインパクトある形状は、100mmの大口径スピーカーを限りなく耳に近づけたため。
これは重低音を確保しながらも放出される音のエネルギーを最小限に抑えられる(=家族や近隣への迷惑にならない)、音の濁りの原因となる天井や壁への反響を抑えられる(=高音質化)といった効果を狙ったものだと言います。
この結果、メーカーが主張している「自宅がまるで映画館やコンサートホールに」「重低音と立体感ある音で没入体験」を実現できるのだそう。また、耳をふさがないというのもウリにしています。
特徴1:まさに「ショルダースピーカー」
類似の製品である「ネックスピーカー」はネックバンド部分にスピーカーがあるので、耳と距離がありますが、本機はスピーカーが耳のそばに位置しています。
特徴2:操作パーツはバンドの先端
バンドの左側のつまみを左右にひねって音量調節を、右側のボタンを押すと低音が6段階で増幅できます。
ところが音量調節のつまみは硬いうえ反応にラグがあり、BASSの調節は現在のステップが耳でしか判断できません。操作性は「要改善」です。
特徴3:前後左右に角度調節できる
スピーカーの位置は前後と左右に調節することが可能で、ユーザーそれぞれに合わせたセッティングができます。ただ、スピーカーの高さは固定されているので、首が短い人や頭が小さい人では耳の高さの位置で固定することが難しいという指摘も試聴テストで上がりました。
「Butterfly Audio」で動画鑑賞は楽しくなる?
圧倒的な臨場感や迫力のある重低音を感じられるとメーカーは主張し、「自宅がまるで映画館」と謳っていますが、果たして本当なのでしょうか?
そこで、音の専門家3人に実際に試聴してもらい、aiwa「Butterfly Audio」を検証を実施。その結果、音質や装着において、さまざまな課題が見つかりました。
ここからは、検証でわかった課題を解説していきます。
課題1:位置決めが難しい
音場が非常にシビアなスピーカーで、スピーカーの角度や、左右の開き具合によって音の聞こえ方が大きく変わります。そのため、バランスよく聞こえる位置が狭く、耳との間隔を手探りで見極めるのも難しいです。
また、肩にスピーカーが固定されるので、顔を少し動かすだけで音場がズレてしまいます。耳を塞がないのはメリットのようですが、体勢や顔の位置が動くと本製品のベスト音質を発揮できなくなってしまいます。
首の動きに対して音が激しく反応する。体を静止させないといけないので映画には厳しい……。
ちなみに、顔を左右に動かすとスピーカーの音が薄まり、周りの人と会話できます。便利かもしれませんが、音が激変するということでもあります。
今回の試聴でわかった装着のコツは、以下のとおりです。
▼装着のコツ
- 左右の角度を均等に
- 音楽なら耳より前にセットしてボーカルの音を前に出す
- アニメは耳より後ろにしてサラウンド感を出す
音楽の場合、スピーカーを前寄りにセットすると左右の音像に一体感がでます。指をあてて左右の間隔も確認したいです。
課題2:構造上、低音を自然に増幅できない
音質面では低音のクオリティが大きな課題。音の輪郭が曖昧に聞こえがちで音の方向感や距離感を把握しづらく、音楽ではドラムなどが不自然に聞こえがち。低音そのものも映画のアクションシーンなどではもの足りません。
普通のスピーカーの場合、スピーカーユニットが筐体に密閉されているのでスピーカーユニット本来の性能が発揮され、低音をしっかり出すことができます。
しかしaiwa「Butterfly Audio」は、一般的なヘッドホンのユニットが50mm程度に対し、100mmと大きめ。しかしヘッドホンのように耳に密着しているわけでもなく、スピーカーのように箱があるわけでもないので低音を出すことが構造的に難しいんです。
BASS機能で迫力は増すものの、不自然になる
BASSをONにすると低音を強くできますが音はこもりがちで不自然。BASSを強くすると不自然さも強調されてしまいます。重低音がふんだんに入り、音の方向感も作り込まれている実写映画のアクションシーンなどの視聴では力不足でした。
BASS機能で量感を補えますが、低音のレスポンスが損なわれてダブついてしまいます。
接続は断然aptX/aptX LLがいい
本機のコーデックはSBCとaptX、aptX LLの3種類があり、送信機で変更可能です。
aptXにすると高域の解像度が上がり、バランスも向上。SBCの痩せ細っていた高域が肉付けされた感じになります。またaptX LLにすることで遅延がほぼなくなります。
課題3:ネックスピーカーのほうが使いやすい
JBL
SoundGear BTA
実勢価格:1万8800円
雑誌『家電批評』の過去ベストにも選ばれ、ネックスピーカーでも音質の良いJBL「SoundGear BTA」と聴き比べました。
aiwa「Butterfly Audio」のメリットはスピーカー位置が高いので、包まれる感じはしないものの空間感があること。一方でBASS使用時に音割れしやすいことが問題です。
使い勝手ではスピーカーと耳に距離があるぶん、ネックスピーカーJBL「SoundGear BTA」のほうが顔の角度や向きの許容範囲が広めで扱いやすく感じました。
ベストポジションなら総合的にはJBL「SoundGear BTA」と同程度の体験。
結論:専門家としては「オススメしづらい」
【総合評価:C】
今回の検証では、スピーカーの音質と位置調整の難しさから、「褒めるところが見つからない(折原さん)」など厳しい意見が相次ぎました。
唯一ポジティブな意見が出たのはアニメを見たとき。アニメでは音質の弱点が目立ちづらく、本機は一定の役目を果たします。しかし、「自宅がまるで映画館」と言えるには音質のアップや装着方法の改良が必須。次回作に期待したいです。
音質は“そこそこのスピーカー”。包まれる感覚ではなくスピーカーの間に挟み込まれる感覚。立体感もあまり感じられません。
アニメの戦闘シーンなど「作られた音」なら低音のキレが悪くても迫力を出せるのでいいかも!
低音の解像力に乏しく歪んでいるしユニット自体が共振してしまっている。何より操作性が残念すぎます。
以上、ユニークなデザインのスピーカー、aiwa「Butterfly Audio HPB-SW40」の徹底検証でした。
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ピーキーですね。特に左右に首を動かした時の違和感が大きい。