全モデル機能は豊富も 音質には差が出ました
今回は、11万円台以下の4モデルを対象に音質をテストしました。採点は3万円台、8万円台それぞれのランキングと同様、サウンドプロデューサーの大澤大輔氏、東京音研放送サービスの原田裕弘氏に協力いただき、下記の7項目で採点。合計点の高い順からランキングにしました。
高音(10点)
中音の解像度(10点)
低音(10点)
ダイナミクス(10点)
奥行き感(20点)
広がり(20点)
情報量(20点)
結果、全モデルを通して、操作性の良さや機能面の充実を感じました。一方で、音質についてはモデル間で差が出ました。値段と音質はある程度比例はするものの、値段に見合っているかどうかは気をつけて選ぶ必要がありそうです。
それではランキングをご覧ください。
[1位]プロをもうならせる音質 マルチに使えるプレーヤー
アイリバー
Astell&Kern
KANN
購入価格:9万9800円
サイズ・質量:W71.23×H115.8×D25.6mm・278g
再生周波数帯域:20Hz~70kHz(±0.075dB)
S/N比:110dB
歪み率:0.004%
ストレージ:内蔵64GB、microSDXC
モニター:4.0型タッチパネル
DAC:旭化成 VERITA AK4490
アンプ:非公開
Astell&Kern のAKシリーズとは異なる新ラインのプレイヤーで、6月に発売されたばかりの新製品です。ポータブル、据え置き、パソコンと全方位で高性能を目指したポータブルプレイヤーとしてはかなりの大柄となってしまっています。ただし、台形状に側面がカットされているためホールディングは決して悪くありません。
音域とダイナミクスの得点がすべて8点を超えていることに注目です。音質の土台となる部分が優れているからこそ、解像度や奥行き感もハイレベルに仕上がっています。「素晴らしい出来で性能的には文句はありません。本当にいい音してましたよ」と原田さん。
USB-DACとしてもDSDネイティブ再生が可能です。
MicroSDに加えフルサイズのSDカードも使用できます。
ヘッドホンとライン出力双方でバランス、アンバランス出力に対応しています。
ホームオーディオをかなり意識しており、据え置きタイプに相当する強力なアンプを搭載しています。また、出力端子を合計4つも装備しており、イヤホンから大型のスピーカーまで何でも接続できます。USB端子も充電用とDAC用を分ける念の入れようです。
[2位]ストイックなまでの 使い勝手にプライドを感じます
Luxury&Precision
L5 Pro
購入価格:6万9800円
サイズ・質量:W63×H123×D16.9mm・195g
再生周波数帯域:20Hz~70kHz(±0.075dB)
S/N比:110dB
歪み率:0.0025%
ストレージ:32GB、microSDXC
モニター:3.5型タッチパネル
DAC:旭化成 VERITA AK4490
アンプ:1812A
独特の操作性と割り切った機能が特徴的。物足りなくも思えますが、これはこれで筋が1本通っていると思わせる出来です。動作はキビキビしており本機の操作に慣れれば快適に使えそうです。
バランス駆動にも対応しませんが、ワイド感たっぷりの音質なので、バランス駆動はそもそも不要なのかもしれません。クラシックやジャズ好きは是非試聴してみるべき1台です。
一つ一つの楽器を捉えられるとまではいきませんが大編成のオーケストラのように「情報量が極めて多い楽曲でもうまく再生できている」と原田さん。L5 Proの方がKANNよりもやや音の広がりに優れていました。とくに、中音の解像度と音の広がりは全機種中最高得点をマークしました。
USB-DACとして使用する際は低遅延モードを選択できるなど、設定が充実しています。
フィルターが選べます。こういうマニアックな機能はちゃんと搭載しています。
音楽の再生方法はフォルダ、楽曲、アーティスト、アルバムだけで、スクロールはできません。UPボタンとDOWNボタンをタップします。
このように、メニューは相当シンプルでプレイリスト機能すらありません。音楽はCDやレコードのようにアルバム単位で聞くべきという開発者のメッセージなのでしょうか。また、Bluetoothやアップコンバートといった流行の機能も搭載していません。
[3位]スマホながら音質第一設計 「ハイレゾ」を気軽に携帯できます
オンキヨー
GRANBEAT
DP-CMX1
購入価格:6万7798円
サイズ:W72×H142.3×D11.9mm・234g
再生周波数帯域:20 Hz~80 kHz
S/N比:115 dB以上
歪率:0.01 % 以下
ストレージ:内蔵128GB、microSD×1
モニター:5.0型タッチパネル
DAC:ESS ES9018C2M ×2
アンプ:ESS SABRE 9601K ×2
文字通りいつでもどこでも音楽を高音質で楽しめる1台。DP-X1Aのスマホ版といったモデルで、スマホにしては分厚すぎ、重すぎですが、バランス駆動やアップコンバートといった特徴をそのまま受け継ぎ、オーディオ最優先の設計が貫かれています。
これが他社のハイレゾ対応スマホとの根本的な違いで、まさに、スマホとしては最高の音質を達成していると言えます。また、OSとしてAndroid 6.0を搭載しています。
原田さんは「音に良い意味で派手さがない」とチューニングを評価。一方、大澤さんは「DP-X1Aより音が少し遅くその分、解像度が低下する」と指摘しています。カメラやLTE通信など音楽再生とは無関係な機能が多い分だけ本機の方が音質を追求するのが難しかったのかもしれません。
AppleMusicやAmazon Musicのデータ通信が実質無料になるBIGLOBE SIMのエンタメフリーオプションを活用すると、高音質スマホの強みを最大限発揮することができます。
4位: [4位] 機能面は充実も
音質は期待外れの結果です
The BIT
audio-opus #3
購入価格:9万9800円
サイズ:W76×H114×D18.3mm・220g
再生波数帯域:10Hz~70kHz(±0.3dB)
S/N比:114db
歪率:0.0009%
ストレージ:内蔵64GB、microSD×1
モニター:4.0型タッチパネル
DAC:Burr-Brown PCM1792A
今年の春に発売された新製品。「自然なアナログフィール」をうたう製品ですが、試聴テストでは奮わない結果となってしまいました。ただし、Spotifyが利用できたり、USB-DACとしてもDSDネイティブ再生が可能など機能面は充実しています。また、タッチパネルの反応もよく再生画面もわかりやすいのが特徴です。
側面や背面は滑りにくいようにローレット加工されているので手にした際に安心感があります。OSはAndroid 5.1をカスタマイズしたものです。GooglePlayには非対応ですが、手動でアプリを導入可能です(動作保証外)。
高価格帯のモデルとしては音質のチューニングに疑問を感じざるを得ません。「中音域に寄っていてややタイト」(原田さん)「少し平坦で奥行き感に欠ける」(大澤さん)とハイレゾの魅力である立体感が不足しています。その上、大音量では高音域が刺さることもあり、もっとフラットな特性が欲しいところです。
Spotifyがあらかじめインストールされています。Opus#3のAndroidはアプリのスイッチボタンを省略しているので、Spotifyアプリと音楽プレイヤーを切り替えるには設定画面を毎回開かなければならず、正直面倒です。
以上、ハイレゾプレーヤーランキングU11万円編でした。さすがにこの辺りのクラスとなると、プロ顔負けの音質を誇るモデルがあります。最上の音を求める人はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。