AV機器 「可聴帯域」超える音域がハイレゾの立体的な音質の秘密です

音楽の楽しみ方はいろいろありますが、音楽そのもののパワーを引き出すには音質の向上が近道です。ハイレゾプレイヤーは安い機種なら1万円台から購入でき、低予算で始められることもありスマホからのステップアップとして徐々に人気が高まっています。

しかし、ハイレゾプレイヤーはスマホより本当に高音質なのでしょうか。音質をオーディオ独特の情緒的な言葉遣いで語られてもいまひとつピンとこない。そこで、プロの協力のもとハイレゾプレイヤーであるカイン N3とiPhone 7の音の出方を調べました。

「可聴帯域」超える音域がハイレゾの立体的な音質の秘密です イメージ

ハイレゾプレイヤーでテスト音(24bit/96kHzのホワイトノイズ)を再生。プレイヤーのイヤホンジャックから出た音を録音して波形を起こしています。また、録音には業務用のオーディオインターフェースを使用しています。※iPhone 7では再生可能な上限となる24bit/48kHzのホワイトノイズを使用しました。

そして波形を比較したのが下のグラフです。

AV機器 グラフを見ると一目瞭然iPhoneは超高音域がガタ落ちします

iPhone 7はCDの音域までで頭打ちでした

ハイレゾプレーヤーは超高音質まで再生できます イメージ

ハイレゾプレーヤーは超高音質まで再生できます

 イメージ

グラフの縦軸が音量レベル(dB)、横軸は音の高さを周波数(Hz)で表しています。ひと目でわかるように、ハイレゾプレイヤーの方が超高音域まで均一な音量で再生できています。

では、ハイレゾプレーヤーが超高音域まで再生できるのはなぜでしょうか。

 イメージ2

音の高さは周波数(1秒間の空気の振動数)で決まりますが、ある周波数帯域をデジタル化するには2倍の周波数でサンプリングする必要があります。CDのサンプリング周波数は44.1kHzなので人間の可聴帯域をデジタル化できるという訳です。

上の図は、上がサンプリング周波数が低い場合のグラフ、下がサンプリング周波数が高い場合のグラフですが、サンプリング周波数が高くなると、よりアナログの波形に近いかたちでデジタル化が可能になります。そして、サンプリング周波数が上がれば上がるほど、必然的に超高音域まで再生できるようになるのです。

AV機器 ハイレゾが再生するのは聞こえない音? いえいえ実は…

ところで、人間が聴き取れる「可聴帯域」はだいたい低音は20Hzから高音は2万Hz前後と言われていて、CDのサンプリング周波数44.1kHzは可聴帯域をカバーできるように定められています。とすると、「3万、4万Hzもの超音波領域まで再生できる意味なんかないじゃないか」と疑問を持つと思います。

しかし、これは決して無駄ではありません。96kHzや192kHzものサンプリング周波数に対応するDACを搭載するハイレゾプレイヤーにとって、CDの44.1kHzは楽勝の音域。「ハイレゾプレイヤーは高音域に余裕を感じる、一杯一杯になっていないのがハイレゾプレイヤーの一番の利点」とプロは言います。この余裕がハイレゾプレイヤーが高音質に聴こえるひとつの理由になっているのです。

ハイレゾが再生するのは聞こえない音? いえいえ実は… イメージ

また、ハイレゾ音源を再生できるメリットはほかにもいくつかあります。そのひとつが奥行き感が向上することです。これにはビット深度が関わっています。CD(16ビット)からハイレゾ(24ビット)になると音の大小を256倍きめ細かく表現できるので、ハイレゾ音源はCDより小さな音まで再現できます。

人間の耳は大きな音ほど手前に、小さな音ほど遠くに感じるので、奥行き感が向上するという仕組みです。このように、ハイレゾプレイヤーが高音質という主張にはちゃんと根拠があるのです。

以上、ハイレゾプレーヤーがスマホより高音質な理由を解説しました。選ぶ機種によって音質に差はありますが、ハイレゾプレーヤーならワンランク上の音域を楽しむことができます。