高いコスパが狙える 8万円以下の価格帯をテスト
前回のアンダー3万円モデルでは、音質に奥行きや広がりといった、ハイレゾらしさが感じられないモデルも見受けられました。そこで、今回は8万円以下のモデルをテスト。前回と同様、サウンドプロデューサーの大澤大輔氏、東京音研放送サービスの原田裕弘氏に協力いただき、下記の7項目で採点。合計点の高い順からランキングにしました。
高音(10点)
中音の解像度(10点)
低音(10点)
ダイナミクス(10点)
奥行き感(20点)
広がり(20点)
情報量(20点)
それでは早速、ランキングの発表です。
[1位]10万円クラスに迫る 精緻なサウンドがBEST!
オンキヨー
DP-X1A
購入価格:5万2511円
サイズ・質量:W75.9×H129×D12.7mm・205g
再生周波数帯域:20 Hz~8万Hz
S/N比:115dB以上
歪率:0.006%以下
ストレージ:内蔵64GB、microSDXC×2
モニター:4.7型タッチパネル
DAC:ESS社製 ES9018K2M×2
アンプ:ESS社製 SABRE 9601 K×2
今回一位に輝いたのは、オンキヨーのDP-X1A
DACとアンプはデュアル搭載でバランス駆動も可能な設計です。兄弟機で実売価格がより安いパイオニアXDP‐300Rと迷う人もいると思いますが、識者2人とも本機の方を高く評価しました。
また、Android 5.1を搭載。Android標準のミュージックアプリとは別に独自のハイレゾ用アプリを搭載します。なお、ボディのエッジは角張っており傷がつきやすそうなので、ケースを使用したほうが良さそうです。
情報量、つまり解像感は奥行きや広がりといった空間表現の前提になる要素ですが、音を精緻に鳴らせるからこそ広がりや奥行き感の点数も伸びています。「惜しいのは低音部で中音や高音に比べてわずかに余韻がに速く消えてしまうこと」だと大澤さん。ここが改善されれば倍の価値があるでしょう。
多くのハイレゾプレイヤー同様、USB端子からポータブルアンプ(ポタアン)に接続可能。DP-X1AでDSDを再生するとPCMに変換されてしまいますが、DSD対応のポタアンに接続すると、DSDネイティブ再生やCD音源からDSDへのアップコンバート再生ができます。
Androidを搭載しているためApple Musicなどの音楽配信サービス、YouTubeなども楽しめます。また、端末内でe-onkyo Musicからハイレゾ音源をダウンロード購入できるので、Apple Musicで試し聴きして気に入ったらハイレゾ購入といった使い方も簡単にできます。
[2位]初心者にもオススメの 安定した機能性が強みです
アイリバー
Astell&Kern AK70
購入価格:4万8918円
サイズ:W60.3xH96.8.2xD13mm・132g
再生周波数帯域:20Hz~20kHz(±0.75dB)
S/N比:116dB
歪率:0.0008%
ストレージ:内蔵64GB、micoSDXC×1
モニター:3.3型タッチパネル
DAC:シーラス・ロジック CS4398
アンプ:非公表
ハイレゾDAP界の定番ブランドAstell&Kernエントリーモデル。下位機種とはいえバランス駆動やDSDネイティブ再生など機能は充実。ボディのつくりも高級感があります。ブラックやゴールドなど6つものカラーバリエーションを展開しています。
奥行き感や情報量といった得点がU3万円台クラスとは明らかに違います。原田さんは出来は良いものの「大編成のオーケストラは荷が重い」とも指摘しました。長い音が連鎖して積み重なっていくオーケストラをしっかり再生するのは、ポピュラーソングより難しいということです。
パソコンに接続してUSB-DACとしても活用できるので、パソコンでのハイレゾ再生にも貢献します。ただ、プレイヤー単体では24bit/192kHzまでネイティブ再生できますが、USB-DACとしては24bit/96kHzまでとなるのが少々残念ではあります。
[3位]ドンシャリがやや過度も 操作性は抜群です
パイオニア
XDP-300R
購入価格:4万6514円
サイズ・質量;W75.9×H128.9×D12.7mm・200g
再生周波数帯域:20 Hz~80,000 Hz
S/N比:115 dB以上
歪率:0.006%以下
ストレージ:内蔵32GB、microSDXC×2
モニター:4.7型タッチパネル
DAC:ESS ES9018K2M×2
アンプ:ESS SABRE 9601 K×2
DP-X1Aのパイオニア版となります。実売価格はこちらが安いので手頃なAndroid対応機としてオススメ。Androidバージョンは5.1で、DP-X1Aと同じです。ボリュームダイヤルはやや華奢に感じます。
低音と高音を強調するドンシャリ気味な音作りが特徴です。このドンシャリについて「中音域が抜けると人間の耳はサウンドがちょっと広がったように錯覚する」と大澤さん。しかも、こうした音作りには中音域が抜けているため、低音や高音もシャキッと鳴らない弊害があるとも言います。
上側にスワイプすると、楽曲の再生順を並べ替えたりプレイリストに楽曲を追加できます。操作性も快適です。
4位: [4位]ソニーらしいシャリ感
たっぷり入る大容量も優秀です
ソニー
Walkman
NW-ZX100
実勢価格:7万2230円
サイズ:W54.4×H120.1×D15.4mm・145g
再生周波数帯域:非公開
S/N比:非公開
歪率:非公開
ストレージ:内蔵128GB、micoSDXC×1
モニター:3.0型
DAC:非公開
アンプ:ソニーS-Master HX
128GBとmicoSDカードが必要ないほど大容量の内蔵ストレージを搭載します。DSDにも対応するものの、PCM変換再生となります。また、CDやMP3をアップコンバートする機能やLDAC対応のBluetoothも搭載するハイスペック機です。
大澤さんも原田さんも中音域はやや弱いと指摘していて、得点にも表れています。ただ、それが「10万円以下のソニーらしいサウンド」を作っていると大澤さんは前向きに評価しています。同じドンシャリ傾向でもXDP-300Rよりチューニングは上手そうです。
NW-A30シリーズ同様、対応するイヤホン、ヘッドホンの組み合わせでノイズキャンセルを利用できます。電車や航空機を利用する際には重宝すします。ハイレゾプレイヤーでは珍しいソニーならではの機能です。
4位: [4位]画面デザインは秀逸も
音質は意見が分かれるところ
コウォン
PLENUE M
購入価格:4万9000円
サイズ:W64.5×H114.3×D13.4mm・170g
再生周波数帯域:非公開
S/N比:120dB
歪率:0.0007%
ストレージ:内蔵64GB、microSDXC
モニター:3.7型タッチパネル
DAC:Burr-Brown製 PCM1795
画面にはレベルメーターを表示でき「思わず惹かれてしまう」と識者にも好評で、さらにスワイプすると各種機能へ瞬時にアクセスでき便利です。また、PLENUEの特徴であるBBE提供の膨大なEQや強力な音質カスタマイズ機能もしっかり搭載しています。なお、DSDはPCM変換再生です。
識者間で評価が割れました。原田さんはより高価な機種と比べたとき「カクンとレベルが落ちた」ように感じたといいます。一方、大澤さんは情報量はやや少ないものの、かなりの低音までしっかり定義されているため、それが土台となって奥行きが増していると分析します。
USB-DACとして使用するとAk70と同様に24bit/96kHzまでの対応となります。プレイヤー単体では192kHzまで対応しているだけに、ちょっと惜しい部分でした。
6位: [6位]音楽管理機能は優れるも
肝心の音質はもう一歩です
フィーオ
FiiO X5 3rd generation
購入価格:4万5163円
サイズ:W66.2×H114×D14.8mm・186g
再生周波数帯域:5Hz~55kHz
S/N比:115dB以下
歪率:0.003%以下
ストレージ:内蔵32GB、microSD×2
DAC:旭化成エレクトロニクス社製 AK4490EN ×2
FiiOシリーズの中堅機。OSはAndroid5.1を採用しており、バランス駆動が可能でデュアルSDカードスロットを装備しています。価格的にも機能的にもパイオニアXDP-300Rがライバルと言えそうですが、USB-DACが使える本機が有利でしょうか。
DAPとして十分な音質ですが、ハイレゾ感に乏しいという残念な評価になってしまいました。中音域では解像度がやや甘いことと、ドンシャリ気味のチューニングが相まって立体感を損ねてしまっています。DACを2基搭載するなど凝った設計なだけに残念です。
Pure"Music"モード
Androidモード
動作するアプリを音楽アプリに限定する「Pure Music モード」と、自由にアプリを使えるAndroidモードを搭載。オーディオ専用機とAndroid機を使い分けられます。
以上、ハイレゾプレーヤーランキング、アンダー8万円編でした。結果にもあるように、かならずしも高価格=高音質ということではなさそうです。ランキングを参考に、高コスパの一台を選んでください。