ホラー映画の肝は“演出のセンス”!?
古くは19世紀から制作されているホラー映画。「怖いもの見たさ」という言葉があるように、後に後悔すると分かりつつもつい気になって見てしまう中毒性があります。
ホラー映画と一口に言っても、実はさまざまなジャンルに分かれています。殺人鬼による残虐シーンが身の毛もよだつスラッシャーホラー、精神状態が原因となり引き起こされる恐怖を描いたサイコホラー、悪魔や幽霊を題材としたオカルトホラーなど、作品によって“怖さ”もさまざまです。
また、恐怖心より面白さが際立つバカホラーやパロディ要素が強い作品も数多く展開され、こだわり抜かれた演出に監督のセンスが光ります。
そこで今回は、作家や漫画原作など幅広く活躍する架神恭介氏がおすすめホラー映画を厳選。おすすめポイントについても熱く語ってもらいました! ホラー映画が苦手な女性でも、楽しめる作品が見つかるかもしれません。
それでは、おすすめホラー映画ランキングの発表です!
HOUSE
HOUSE
監督:大林宣彦
キャスト:池上季実子、大場久美子、松原愛、神保美喜 他
公開年:1977年
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架神恭介 氏のおすすめポイント
女子高生たちが、夏休みにお泊りに行ったお化け屋敷で全滅する。それだけの話なのだが、特筆すべきは本作で描かれる女子高生たちのとてつもない可愛らしさである。現実の女子高生にあるような悩みや嫉妬感情、コンプレックス、恋愛感情のもつれなどが全く描かれず(一点だけ家庭内の問題が描かれるが)、彼女たちは非現実的なまでに仲良く、明るく、元気でかわいい。
私はこれを「女子高生のイデア」と呼んでいるが、われわれが「女子高生」と聞いて想像する時の、ポジティブな要素のみを煮出したような完璧な女子高生像が本作には現出している。そんな天上的存在である女子高生たちが、大林宣彦監督の変態的毒牙に掛かり、キッチュでエキセントリックな怪奇現象によってワチャワチャしてる間に次々と死んでいく。
結果だけ見れば明確に惨劇であるのだが、表現の軽さとインチキさにより悲壮感は全く感じられず、むしろ「社会の汚泥に塗れる前にみんな死んで良かったね」という倒錯的な感情すら芽生えてくる。青春真っ盛りの高校生の、それも夏休みという最高到達点において、彼女たちは死と怪奇の世界へと永遠に取り込まれるのだ。
死霊のはらわた3/キャプテン・スーパーマーケット
死霊のはらわた3/キャプテン・スーパーマーケット
監督:サム・ライミ
キャスト:ブルース・キャンベル、エンベス・デイヴィッツ 他
公開年:1993年
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架神恭介 氏のおすすめポイント
本作は単体で見ても十分に楽しめるが、できれば1、2、3とシリーズの順を追って見て頂きたい。本作『3』は「キャプテン・スーパーマーケット」というふざけた邦題からも分かる通り、かなりコメディ色が強く……もっと言えばドリフ的である。
主人公のアッシュと一緒にドリフのようなコントを続ける死霊たちを見ていると、「おかしいな……1の頃はあんなに死霊が怖かったのに」という気持ちになるだろう。そもそも山小屋ホラーをやっていた2のラストから、タイムスリップして中世に行く時点で、ホラーとしてはだいぶどうかしている。
『REC』などもそうだが、ホラーはシリーズを重ねていくと、あるタイミングでとてつもなく楽しい方向に異常進化を遂げることがあり、本作もそういった作品の一つである。
怖いかと言われると全く怖くはないが、1の頃は犠牲者であった主人公アッシュが、3になるとすっかりヒーロー然として、持ち前のチャランポランさも過激に進化し、見ていて楽しく愛らしいキャラクターへと成長する。見終わった後、心が温かくなる幸せなホラー映画である。
貞子vs伽椰子
貞子vs伽椰子
監督:白石晃士
キャスト:山本美月、玉城ティナ 他
公開年:2016年
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架神恭介 氏のおすすめポイント
この手のVSシリーズは企画からしてそもそも無茶苦茶であり、作り手はあの手この手を駆使して頑張って成立させるものだが、本作の完成度の高さは驚異的である。
設定に多少の調整を加えつつも、『リング』『呪怨』どちらの雰囲気もきちんと提供し、エンターテイメントとしてバランス良く成り立たせている。「化け物(貞子)には化け物(伽椰子)をぶつけんだよ!」という名台詞が本作のコンセプトを明確かつ端的に表しているだろう。
両作品を活かしながらも綺麗にまとめ上げたというだけで、白石監督の職人的手腕を高く評価できるが、さらに特筆すべきは、本作には監督の独自の世界観もちゃっかり忍ばされていることだ。
その挿入はさりげなく、『リング』ファンも『呪怨』ファンの視聴も邪魔することはないが、白石監督のファンであればハッとさせられるし、ラストの描写にも膝を打つことになる。本作は貞子と伽椰子という二人のクリーチャーを描いた物語ではないのだ。実はより巨大でおぞましい世界を描いている。
これ以上の解説は本記事の性質上、不適切なので中止するが、ともかく、本作は借りてきた貞子お嬢様と伽椰子姫様の接待映画などではない。貞子と伽椰子を用いた、白石監督の野心に満ちたオリジナル作品である。
4位: ビヨンド
ビヨンド
監督:ルチオ・フルチ
キャスト:カトリオーナ・マッコール、デヴィッド・ウォーベック 他
公開年:1981年
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架神恭介 氏のおすすめポイント
イタリア映画。ルシオ・フルチ監督の「地獄の門三部作」の一つ。フルチのホラー映画は「残酷描写をやることしか考えておらず、ストーリーなどどうでも良く、設定破綻・ツッコミどころ満載だが、とにかくグロ描写・ゴア描写が多くて汚らしい」といった評価がされることが多い。今回、この記事の執筆にあたり改めて見直してみたが概ねその通りである。
しかし、そのツッコミどころ満載のグロ描写が、趣味の良いBGMの力もあってだんだんクセになりはじめ、「明らかにおかしいけど、眼球がむごたらしく破壊されるし、血もたくさん出てるから、まあいいか」などと思うようになってくる。
フルチ節が脳に馴染んでくるとでも言うべきか。そのあたりをなんとなく飲み込んできたあたりで、今度は作品が唐突にゾンビ映画になるので面食らうだろうが、細かいことを気にしていてはいけない。本作の最大の見所はやはりラストシーンであろう。おそらく、初めて見た人はキョトンとして、全く意味が分からないと思う。
しかし一方で、「なんだか分からんが、すごいものを見てしまった」という感覚を覚える人もいるはずだ。論理の階段を二段飛ばしして突如現れる異世界はストーリー破綻と紙一重だが、ギリギリで大成功しているものと私には思われる。
私見であるが、ホラー映画のカタルシスの一つに「世界観の拡張」というものがあると私は考えていて、本作のラストがまさにそれである。小さな世界を描いた末に最後の最後でドカンとデカい世界を描くと、どうも人間はカタルシスを感じるものらしい。
3位の『貞子vs伽椰子』も次の5位の『残穢』もそれなので、私はこの手のカタルシスが大好物のようだ。
5位: 残穢
残穢
監督:中村義洋
キャスト:竹内結子、橋本愛、滝藤賢一、佐々木蔵之介 他
公開年:2016年
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架神恭介 氏のおすすめポイント
「探偵系ホラー」という言葉がある。あるというか、私が作った造語なのだが、「ちょっとした事件や怪奇現象を探っていくと、巨大な怪異にぶち当たる」といった作品群を指す言葉だ。その探索過程では図書館で過去の新聞記事に当たったり、役所で関係書類を参照したり、民俗学者の知見を引き出したり、地域の古老に過去話を聞いたりする。
そういった「探偵系ホラー」の完成形とも言うべき作品が本作『残穢』であり、怪奇現象の謎に迫るための着実かつ堅実な調査過程こそが本作の醍醐味である。ホラー映画にはミステリとしての側面があるためだ。堅実な調査により紐解かれていく事実の連鎖にわれわれの心は踊らされる。
そして、もう一つ本作の特徴として、主人公が「事件の当事者」ではなく、完全な好事家として事件に関わっていくという点がある。主人公はわざわざ首を突っ込んでるだけなので、いつでも逃げられる。
話が進んでいくと好事家連中がどんどん増えていき、大学のオカルト研究会みたいなノリで大の大人たちが怪奇現象に揃って首を突っ込んでいくのだが、同時に複数のオカルト話が接続していき、初期の想像を超えた、巨大な怪異の全貌へと行き着くことになる。
主人公はいつでも逃げられる立場で事件にかかわっていたが、実は巨大な呪いネットワークは既に日本中に網を張っており、呪いは主人公どころかわれわれのすぐ側にまで忍び寄っていたのである。
……最後に余談であるが、好事家的な立場から怪奇現象に首を突っ込んでいく主人公の行動が、クトゥルフ神話TRPGの探索パートのようであるという論者もいて、そういった層がそういった視点で本作を見てもきっと楽しめるだろう。
6位: キャビン
キャビン
監督:ドリュー・ゴダード
キャスト:クリステン・コノリー、クリス・ヘムズワース、アンナ・ハッチソン 他
公開年:2012年(日本は2013年)
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架神恭介 氏のおすすめポイント
本作は山小屋ホラーである。後は、とにかく見て欲しい。ホラー映画を語る上で、おそらく今後、避けては通れない作品であろう。
一点だけ軽微な話をすると、スラッシャー系のホラー映画においては、マリファナ喫煙者やセックスをしている若者、湖で裸で泳ぐ女子などが優先して殺されるという「お約束」があるが、本作の登場人物の一人はこれでもかという程にマリファナを吸いまくりながら登場する。
7位: REC
REC
監督:ジャウマ・バラゲロ、パコ・プラサ
キャスト:マヌエラ・ベラスコ、フェラン・テラッサ 他
公開年:2007年(日本は2008年)
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架神恭介 氏のおすすめポイント
POV(手持ちカメラ)形式のゾンビ映画。ホラー映画を見過ぎていると、だんだん「怖い/怖くない」という評価軸を見失いがちになるが、本作はきちんと怖い。モキュメンタリーによるパニック描写のクオリティが高いためだ。スペイン発のオリジナル版とハリウッドリメイク版があり、ハリウッド版が悪いわけではないが、どちらも見れるならオリジナル版から見るのが良いだろう。
なお、『REC3』では「もう三作品目なのに、いつまでもPOVやってられっかよ!」と言わんばかりに途中で手持ちカメラを投げ壊す。ロックである。
8位: ゾンビ
ゾンビ
監督:ジョージ・A・ロメロ
キャスト:デビッド・エンゲ、ケン・フォリー、スコット・H・ライニガー 他
公開年:1978年(日本は1979年)
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架神恭介 氏のおすすめポイント
原題は『ドーン・オブ・ザ・デッド』。ザック・スナイダーのリメイク版『ドーン・オブ・ザ・デッド』もあるのでややこしいが、ここで紹介するのはロメロ版だ。
本作の特徴はゾンビの弱さで、たった数人の主人公たちが完全に安全地帯を築ける程度に対応できてしまう。ゾンビはいわば天災のような位置付けであり、人類側のがんばりである程度なんとかなってしまう存在なのだが、そのようにして安全が手に入ると、今度はそれを狙ってくる人間が現れる。
ゾンビ禍は人間のがんばりで対応できるが、そのがんばりを突き崩して台無しにするのも人間なのだ。そこにゾンビの意志など存在せず、ゾンビはいわば舞台装置に過ぎない。
『ゾンビ』は大量消費社会に対する皮肉だという意見がよく見られるが、個人的にはあまりそういう感覚は受けないし、たぶんロメロも特に考えてなかったと思う。だが、社会性の高い作品であることは間違いない。
9位: 呪怨
呪怨
監督:清水崇
キャスト:柳ユーレイ、栗山千明、三輪ひとみ 他
公開年:2003年
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架神恭介 氏のおすすめポイント
国民的アイドルである伽椰子が大活躍するシリーズ。オリジナルビデオ版と映画版があるが、どちらも面白い。
本作の特徴はエピソードがランダムにカットアップされている点だ。不穏なエピソードに不気味な気持ちにさせられるが、単体ではよく分からない。そういったよく分からないエピソードがいくつか続くので、時系列やエピソード間の繋がり、キャラクターの把握などに苦労するだろうが、それらを把握しようと脳みそを使う負担が心地よく、だんだんと全体像が鮮明になっていくにつれ、一種のアハ体験をすることになる。
また、伽椰子は「家に入ってきた人しか呪わない」というルールをある程度しっかり守る律儀な悪霊であるが、逆に入ってきさえすればもう何でもアリで、時空間を歪めたり、アメリカに出張したり、やりたい放題である。当然、家の中でも事件が発生するので警察官などが職務で家に入ったりするのだが、彼らも分け隔てなく呪う。
「そんなに見境なく呪ったら、流石に家の異常性がバレて、入居者がいなくなったり取り壊されたりするのでは?」
「持続可能な呪い生活のために呪う相手はもっと選んだ方が良いのでは?」
つい、そんなことを思ったりもするが、そこは伽椰子はブレない。黒史郎氏による小説版『貞子vs伽椰子』においては、家に入ってきたテレビクルー数十人を片っ端から呪い殺していた。
なお、冒頭で「伽椰子が大活躍する」と書いたが、正確には『呪怨』シリーズは、呪われた家とそこから派生する穢れの話なので、シリーズ作品全てに伽椰子が出てくるわけではない。伽椰子が全く登場しないNetflixドラマ版『呪怨』も素晴らしい作品である。
10位: エイリアン2
エイリアン2
監督:ジェームズ・キャメロン
キャスト:シガニー・ウィーバー、マイケル・ビーン、ランス・ヘンリクセン 他
公開年:1986年
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架神恭介 氏のおすすめポイント
ロクな装備も武装もないままにエイリアン一匹に立ち向かった初代に対して、『2』では宇宙海兵隊がフル装備でエイリアンに立ち向かう。
そんだけ対抗手段を固めていれば怖くない気もするが、ガチガチに武装したタフな海兵隊員たちが、エイリアンの奇襲を受けてバタバタ死んでパニックに陥っていく前半の描写はむしろめちゃくちゃ怖い。
11位: ショーン・オブ・ザ・デッド
ショーン・オブ・ザ・デッド
監督:エドガー・ライト
キャスト:サイモン・ペッグ、ニック・フロスト、ケイト・アシュフィールド 他
公開年:2004年(日本は2019年)
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架神恭介 氏のおすすめポイント
コメディ系ゾンビ映画では最もクオリティの高い作品であろう。QUEENの『Don't Stop Me Now』をバックにゾンビを囲んで棒で叩くシーンは最高だ。
12位: 悪魔のいけにえ
悪魔のいけにえ
監督:トビー・フーパー
キャスト:マリリン・バーンズ、アレン・ダンジガー、ポール・A・パーテイン 他
公開年:1974年
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架神恭介 氏のおすすめポイント
スラッシャー映画の金字塔。レザーフェイスという名物殺人鬼を生み出した作品でもある。
被害者の殺害前に溜めて溜めて恐怖を煽ったりすることなく、殺人鬼登場から即殺すスピード感や、身体障害者のキャラクターに対して一切なんの躊躇もなく、活躍も描かず殺害するダイバーシティ感覚がすごい。このスピード感や容赦の無さが、共感性を隔絶した殺人鬼を演出しているのだろう。
そして、そこまでレザーフェイスをクソヤバく描いておきながら、彼は殺人鬼一家の中では一番の小物であるのだ。その殺人鬼一家の中では曲がりながりにも家族愛的なものが描かれたりするのが、またロクでもない。
最終盤で、犠牲者を必死に追いかける殺人鬼たちが通りすがりのトラックに轢かれる展開も、複雑な感情を惹起してエモい。
13位: サイコ
サイコ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
キャスト:アンソニー・パーキンス、ジャネット・リー、ヴェラ・マイルズ 他
公開年:1960年
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架神恭介 氏のおすすめポイント
大金を横領した女子社員の逃走劇というクライム・サスペンスのノリで前半が進むが、大金の存在とは全く関係なく殺人事件が発生するのがすごく怖い。ホラーとしては古典の部類だが、今見ても十分に面白い。
14位: ノロイ
ノロイ
監督:白石晃士
キャスト:松本まりか、アンガールズ 他
公開年:2005年
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架神恭介 氏のおすすめポイント
『貞子vs伽椰子』の白石晃士監督作品。POV形式の探偵系ホラー。
テレビの超能力実験特番や心霊スポット突撃番組、ロフトプラスワンでのオカルト系トークショーなどの、ライトでいかがわしいコンテンツの中に少しずつ「オカルト的真実」を仕込んでいき、調査によってそれらが接続することで巨大な怪異に行き当たるという構成が巧み。
「いかがわしいコンテンツ」の作り込みやそれっぽさも高レベルで、それらが身近であるだけに、「いつもヘラヘラ笑いながら接しているあのコンテンツにもホンモノの怪異の一端が潜んでいるのかも……」という感覚にさせられる。登場する「有能霊能力者」の「有能さ」の描き方もユニークだ。
15位: 新感染 ファイナル・エクスプレス
新感染 ファイナル・エクスプレス
監督:ヨン・サンホ
キャスト:コン・ユ、チョン・ユミ、マ・ドンソク 他
公開年:2016年(日本は2017年)
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架神恭介 氏のおすすめポイント
ゾンビの脅威と同時に人間のエゴイズムや醜さを描くのはゾンビ映画の基本であるが、新幹線という閉鎖空間を舞台に描かれる本作は、豊富なキャラクターを元にその基本を丁寧かつしっかりと描き切っている。
そして、人間の醜悪さをたっぷりと描くがゆえに、その中でも仄かに垣間見える人間の善性に希望を抱いたり、マ・ドンソクの異様なカッコよさに打ちのめされるのである。
前半を半分見終わった時点で、映画を一本見終えたかのように錯覚するほどにアイデアが凝縮された濃い作品でもある。
16位: Not Found 外伝 いま、霊に会いにゆきます
Not Found 外伝 いま、霊に会いにゆきます
監督:古賀奏一郎
キャスト:杉本笑美 他
公開年:2014年
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架神恭介 氏のおすすめポイント
自称幽霊の男を取材し、男に「演技指導」などしつつ心霊ビデオをでっち上げるというふざけたプロットだが、驚くことに後半はちゃんと怖い。「無害、もしくは愛嬌すら感じる怪奇現象が、実はガチでやばい」というのはホラー作劇の一つの類型であるが、本作はそれが見事に決まっている。
どのタイミングから彼らは呪われていたのか。もし、あの場面で別の選択をしたらどうなっていたのか。色んなことを考えて、見終わった後にもまだまだ怖くなってくる。
17位: ブレインデッド
ブレインデッド
監督:ピーター・ジャクソン
キャスト:ティモシー・バルム、エリザベス・ムーディ、ダイアナ・ペニャルヴァー 他
公開年:1992年(日本は1993年)
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架神恭介 氏のおすすめポイント
血みどろドバドバが行き過ぎて、一周回って血に対する嫌悪感が消滅するすごいゾンビ映画。カンフーでゾンビに立ち向かう神父や、ゾンビ同士でニャンニャンして生まれたゾンビベビーなど見どころたくさん。
ちなみに監督は『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン。
18位: バタリアン
バタリアン
監督:ダン・オバノン
キャスト:クルー・ギャラガー、ジェームズ・カレン 他
公開年:1985年(日本は1986年)
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架神恭介 氏のおすすめポイント
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のパロディ作品らしいが、コメディという触れ込みに油断して見ると意外と怖くてビビる。
特筆すべきはゾンビの圧倒的強さで、『ゾンビ(ロメロ版ドーン・オブ・ザ・デッド)』に描かれる「がんばればなんとかなる程度の強さ」のゾンビに対して、バタリアンのゾンビは本当に強くて、ロメロのゾンビなら倒せる攻撃でも全然倒せない。
おそらくは「ゾンビのくせに異様に強いんだけど!」というパロディなのであろうが、しかも彼らは知恵まで備えていて計略も使うので、かなりの絶望感がある。
そんなクソ強いゾンビたちだが、なにせ知能があって会話が可能なので、彼らの苦しみまで作中で発話されており、「倒せない上に本人は苦しいとか最悪だな」という、とても嫌な気持ちにさせられる。オチも絶望的なバッドエンドで、怖さだけで言うと実はゾンビ映画の中でもトップクラスではなかろうか。
なお、世間的な評価は低いが、ゾンビが若干弱くなりジュブナイル風味が付与された『バタリアン2』も私は結構好きだ。
19位: ミスト
ミスト
監督:フランク・ダラボン
キャスト:トーマス・ジェーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ローリー・ホールデン 他
公開年:2007年(日本は2008年)
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架神恭介 氏のおすすめポイント
パニックホラー、サバイバルホラーの名作。オチは賛否両論あるが、持論では「バッドエンドこそホラーの華」である。
20位: ソドムの市
ソドムの市
監督:高橋洋
キャスト:浦井崇、小嶺麗奈、中原翔子 他
公開年:2004年
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架神恭介 氏のおすすめポイント
パゾリーニではなく高橋洋の方の『ソドムの市』なので注意。マルキ・ド・サドの『ソドム百二十日』とは全く関係なく、パゾリーニの『ソドムの市』と時代劇の『座頭市』を引っ掛けた、変なギャグセンスのタイトルである。個人的には好きなのだが、評価の分かれそうな作風なので20位としておいた。
タイトルの段階で明確に分かるとおり、実際の内容も異様にチープな映像・演出を意図的に行いつつ、軽薄なパロディを連発し、スカム的な味わいを作り出している。この味わいに乗れるか乗れないかでまず分かれるのだが(これに乗れたから「偉い」というものでもないだろう)、全体に通底する輪廻と因果応報、時代を超えた呪いを孕む世界観の表現が直截的ではないため、そこでも躓く可能性がある。
楽しみ方は『ビヨンド』に近く、『ビヨンド』が表面的なグロ描写でエンタメ性を確保しつつ最終的に壮大な世界観を提示したのに対し、『ソドムの市』ではスカム的な味わいをエンタメ性としつつ、同様に最終的には独自の世界観を描いている。
要するに、全体的にスカム風味な上に普通には終わらないので、そういうのに耐性がある人にだけオススメできる作品だ。
もっと映画を楽しみたいなら
以上、架神恭介氏によるおすすめホラー映画ランキングでした。
恐怖感情は本来は負の感情です。しかし、それをエンタメとして、ハラハラドキドキを楽しむのがホラー映画の醍醐味といえます。もっとホラー映画を楽しみたいなと感じた方へ、その方法をお教えします。
1:自分が楽しみたいジャンルを選ぶ
先述の通り、ホラー映画はさまざまなジャンルに分かれています。スラッシャーホラー・サイコホラー、オカルトホラーなど、多岐にわたります。さらに、邦画か洋画かでも好みが分かれます。東洋と西洋の文化的側面や恐怖感情の違いが、ホラー映画にも顕著に表れているのです。自分が怖いと感じるのは、Jホラーに代表されるような陰鬱な雰囲気が漂う「心霊」なのか、はたまたグロテスクで赤い血が流れるような「悪魔やモンスターたち」なのかをしっかりと選別しましょう。
2:深夜に一人でヘッドホンを付けて怖さ倍増
時間帯は、"あの世"に通じる時間とされる「丑の刻」に相当する午前1時から午前3時の間がいいでしょう。鏡を傍に置いたり、カーテンを全開にして窓に自分が映るようにして、映ってはいけないものが映りそうな状況を自ら作り出し、恐怖の世界をどっぷり浸ることで恐怖が倍増するようにしましょう。
また、360.lifeでは他にもVODおすすめランキング記事も公開中ですので、こちらも合わせてご覧ください!
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おわりに
いかがでしたか? スクロールするごとに見えてくる映画のジャケット写真にも思わずドキッとしてしまった方もいるかもしれません。
ご紹介した映画の中にはシリーズが展開されている作品も多いため、あわせて見るのもおすすめです。1作品では細かく触れられなかった物語や別のキャラクターの視点などが展開され、作品やキャラクターのより深い理解につながるでしょう。
怖いのが苦手という方も、たまにはあえて恐怖心やドキドキ感が止まらないホラー映画を見て、刺激のある時間をお楽しみください!
本作はもはや怖いとか怖くないとかそういう次元ではない。見終わった後、とてつもなく幸せな気持ちになってしまう。そんなホラー映画である。