3万円台でも実力差はハッキリ プロが7台で聴き比べました
ハイレゾプレーヤーもハイスペックモデルからエントリーモデルと、価格差がハッキリしてきました。そこで、今回は3万円台以下のモデルを対象に音質をテスト。音質テストではすでにおなじみ、サウンドプロデューサーの大澤大輔氏、東京音研放送サービスの原田裕弘氏に聴き比べてもらいました。
試聴テストでは大澤さんがスタジオで使用している据え置きのDACの音質を100点の基準としました。つまりプロクオリティのサウンドにどこまでハイレゾプレイヤーが迫っているかを採点するテストです。
まずはパソコンに接続した業務用のDACであるBenhmark Media Systems DAC1で試聴曲を再生しました。
次にハイレゾプレイヤーで試聴。試聴は原田さんは高価格帯から大澤さんは低価格帯からはじめました。
評価をつけにくい時は再び業務用のシステムを聞き直して基準を明確化にします。こうして公平な評価を目指しました。
また、大澤さん、原田さんの試聴曲は傾向がかなり異なります。つまり、二人とも高評価な機種はオールマイティな力をもつということ。自分の好みと視聴リストを照らし合わせて、各プレイヤーの評価を読み込んでください。
大澤さんの試聴テスト
ブルーノ・マーズ「24K Magic」(R&B)
アート・ブレイキー 「MOSAIC」(ジャズ)
マイケルジャクソン「Black or White」のシングルver.(ポップス)
ドクター・ドレー「Let's Get High」(ヒップホップ)
エアロスミス「Sweet Emotion」(ロック)
原田さんの試聴テスト
マンハッタン・ジャズ・クインテット「スウィングしなけりゃ意味ないね」(ジャズ)
ボンジョビ「Livin' on A Player」(ロック)
マイルス・デイヴィス「Tutu」(ポップ・ジャズ)
ノラ・ジョーンズ「スリーピング・ワイルド」(ポップス)
マーラー「交響曲第8番 変ホ長調 」(クラシック)
それではランキングの発表です。
[1位]力強い中低音は ワンランク上の価格帯に匹敵!
パイオニア
Private XDP-30R
実勢価格:2万4532円
サイズ・質量:W63×H94×D15mm・120g
再生周波数帯域/20~8万Hz
S/N比:115dB以上
歪率:0.006%以下
ストレージ:内蔵16GB+microS
2013年に合併したオンキヨー&パイオニアから今年の春に2位で紹介する「DP-S1」とともにデビューしました。価格帯は入門クラスで操作もいたってシンプルですが、上位機種「XDP-300R」も対応しないDSDネイティブ再生が可能などオーディオマニアでも十分楽しめる懐の深いプレイヤーに仕上がっています。
ただし、操作性はもう一歩欲しいところです。たとえば、再生や巻き戻しをスマホからコントロールできる機能。本体を鞄に仕舞いっぱなしにできて便利そう……ですが、アプリ上ではアルバムやプレイリストの選択ができないため結局鞄から取り出す羽目になります。今後の改善に期待です。
音の骨格となる中音域の解像度はU3万円でDP-S1とともに最高得点。大澤さんはローミッド(中音と低音の間)の音に適度なパワーと解像感があり、それが奥行き感につながったと分析しました。解像力の高いイヤホンとの相性もよいため、情報量もハイエンド機並みと採点しています。
イヤホン出力はバランス駆動が可能。対応するイヤホンならステレオ感が向上します。
さらに、好みのサウンドに調整できる機能が充実しています。
まず、アップサンプリングに対応。アップサンプリングとはテレビにおける4Kアプコンのようなものです。
さらに解像感とクリアさを追求した設定も可能です。フィルターを「シャープ」にロックレンジアジャストを「ナロー」側に寄せる(寄せすぎると音飛びする)と高精細さを重視した音色になります。
このように、音の輪郭を調整するデジタルフィルターや微細なノイズを低減できるロックレンジアジャストメントなど、イコライザーに頼らない細かな音質調整が可能です。わずかな音の変化を聴き比べる"通な楽しみ方"ができます。
[2位]XDP-30Rの兄弟機 好みで選びましょう
オンキヨー
rubato DP-S1
実勢価格:2万4305円
サイズ・質量:W63×H94×D15mm・130g
再生周波数帯域:20~8万Hz
S/N比:115dB以上
歪率:0.006%以下
ストレージ:内蔵16GB+microSDXC×2(最大400GB)
モニター:2.4型タッチパネル
DAC:ES9018C2M×2
機能や仕様はパイオニアのXDP-30Rと同一でバランス駆動ももちろん可能です。両機種とも頻繁にファームウェアが更新されており、7月には曲名やアーティスト名の文字化けといった問題が解消しました。
DACやアンプも含め内部構造が同一なので音質もXDP-30Rに似ているが、わずかな差異もあります。原田さんいわく「DP-S1のほうは中音の出方が大人しい」とのこと。オンキヨーは低音から高音までフラットに近い特性です。といっても真っ平らというわけではなく「ほんの少しミドル寄り」とは大澤さんの弁。
大量のハイレゾファイルを保存できるデュアルSDスロットはオンキヨー&パイオニアのDAPの特色のひとつです。
[3位]操作性に少し難ありも 音質は平均以上です
シャンリン
M2s
実勢価格:1万9907円
サイズ・質量:W53×H85.6×D14.5mm・約100g
再生周波数帯域:20~2万Hz
S/N比:108dB以上
歪率:0.03%以下
ストレージ:microSD(最大256GB)
モニター:3.0型
DAC:旭化成AK4490EQ
アンプ:テキサスインスツルメンツ TPA6120
低価格でもDSDネイティブ再生、32bit/384kHzまで再生可能という高スペックです。SHANLINGは30年近い歴史をもつ中国では有名なメーカー。XDP-30Rよりさらに小型で携帯性抜群です。
音質こそオンキヨー&パイオニア陣営にはやや劣りますが、USB-DAC対応は大きな強みです。課題は独特な操作性で、ボリュームボタンと戻るボタンの組み合わせでメニューの選択と移動を行います。ボリュームボタンは押し込むことができ、再生画面で押し込むとリピートやシャッフルなどのサブメニューが展開される仕組みが正直面倒です。
音の広がりや奥行き感がiPhoneよりしっかり感じ取れたものの識者ふたりとも中音の解像力はDP-S1に比べ劣ると評価しました。とはいえ、エントリークラスのハイレゾプレイヤーとしては十分合格点と言えます。DP-S1やXDP-30Rにあるアップサンコンバート機能は搭載していません。
パソコンとUSB接続すると、パソコンのハイレゾファイルを本機を介して高音質で再生可能。USB-DAC時は画面に「24bit/192kHZ」といったファイル情報が表示されます。
4位: [4位]操作性は優秀ですが
中音域に弱みありです
ソニー
Walkman
NW-A30シリーズ
実勢価格:1万9187円(A35)
サイズ・質量:W54.8×H97.3×D10.7mm・98g
ストレージ:16、32、64GB+microSDXC
モニター:3.1型タッチパネル
ハイレゾ対応ウォークマンの入門機。このクラスでは高い知名度から人気のモデルです。ハイレゾ対応イヤホンの同梱モデルやストレージ容量の違いにより4モデルが展開されています。
ハイレゾ非対応の下位機種NW-S10と比べるとボディの素材、アナログ基板、コンデンサーなどしっかりオーディオよりに設計されているのが特徴。スワイプでホーム画面、再生画面、ライブラリ画面を行き来できるなど操作性はこのクラスでは最も良好です。DSDも変換再生できアップサンプリングも可能など機能面も充実しており、なかなか侮れない一台です。
「これは立派だと思う」「なかなかいい」と識者ふたりとも第一印象はポジティブで、ソニーの旧世代の機種より音質の改善を感じたといいます。入門機としては十分合格ラインです。
ただし、聴き込んでみると中音域の解像が少し甘く「悪い意味でソニーらしい」(大澤さん)と物足りない部分がありました。
5位: [5位]ハイレゾらしさは不足も
値段以上の音質です
カイン
N3 DAP
実勢価格:1万9980円
サイズ・質量:W54×H100×D13mm・約93g
再生周波数帯域:5~5万Hz(±2dB)
S/N比:108dB
歪率:0.03%
ストレージ:microSD(最大256GB・内蔵ナシ)
モニター:2.4インチ
中国メーカーらしく機能はてんこ盛り。内蔵ストレージは非搭載ですが、microSDカードに加えUSBメモリを接続できるので容量を大きく拡張できます。DACは旭化成の高級モデルでDSDネイティブ再生が可能です。
テストしたもう1台の1万円台Fiio X1 2ndより高得点で1万円台のベストバイです。タッチパネルではありませんが、独立したメニューボタンがあるため操作性もなかなか良好。音質、操作性、使い勝手、どれをとってもFiiO X1 2ndより一枚上手です。
「高音質の業務用CDプレイヤーとなら互角」と大澤さん。つまり、CD品質まではかなり高い再現性を持っており値段を考えればかなり優秀ということです。もっとも、ハイレゾらしい立体感(とくに奥行き)にやや乏しいのでハイレゾファイルもCDプレイヤー的な出音になる……ともいえます。
6位: [6位]1万円台では納得できる機能
立体感はないものの良音です
フィーオ
FiioX1
2nd generation
実勢価格:1万4890円
サイズ・質量:W55.5.×H97×D12mm・102g
再生周波数帯域:非公表
S/N比:113dB以下
歪率:0.003%以下
ストレージ:内蔵ナシ、microSDXC×1
フィーオはハイレゾプレイヤーのなかでも老舗的なブランドで幅広いラインナップを展開。本機は一番エントリー向けのモデルです。機能はシンプルですが、Bluetoothイヤホンやヘッドホンの接続は可能です。
ハイレゾファイルを再生するだけのごくシンプルなプレイヤーですが、オールアルミニウムの外装は安っぽくなく好印象。一方で、iPodを思わせるタッチホイールはデザイン上のアクセントになっていますが、肝心の操作性がイマイチでスクロールを狙った場所で止められないことがあります。
ハイレゾらしいサウンドの立体感は感じられませんが、低音域?高音域までバランスよく鳴らしてくれるため、単なるオーディオプレイヤーとしては十分なクオリティ。iPhoneと聴き比べると高音部の再生力に余裕が感じられます。ハイレゾ対応のDACを搭載してる恩恵です。
7位: [7位]バッテリーやEQ機能は合格点も
音質にハイレゾ感は感じられません
コウォン
PLENUE D
実勢価格:2万3325円
サイズ・質量:W53.1×H77.2×D14.9mm・94g
再生周波数帯域/非公表
S/N比:123dB以下
歪率:0.004%以下
ストレージ:内蔵32GB+microSDXC×1
モニター:2.8型タッチパネル
DAC:非公表
アンプ:非公表
スクエアな外見が特徴的。大きさのわりにタッチパネルは広く、画面内の文字やボタンも大きくタッチしやすいです。操作性は良いといえます。最小サイズなのにバッテリーの持ちがよく外出のお供には重宝します。
音質面では残念な結果となりましたが、大変よくもつバッテリーや豊富なEQを楽しめるなど音質以外ではみるべきところもあります。EQは楽器用のエフェクターで知られるBBEが提供しており、カスタマイズ力は随一。楽曲にマッチするプレイセットを探すだけでもなかなか楽しめます。
ソフトウェアキーボードで楽曲検索もできますが、英語とハングルのみなのが惜しいところです。
デジタルオーディオプレーヤーとしてみると大きな欠点はなく「間違いなく合格」と原田さん。しかし、大澤さんは「これならiPhone 7のほうが上かもしれない」と指摘。スマホから乗り換えても音質向上のメリットは得にくそうです。
以上、3万円以下のハイレゾプレーヤーランキングでした。1位と2位は音質も操作性も価格以上の価値がある名機でした。音にもお財布にもこだわる人に、ぜひおすすめしたいです。