「澤 円」さんとは?
株式会社圓窓 代表取締役 澤 円(さわ まどか)さん
元・日本マイクロソフト業務執行役員で、現在はビジネスコンサルタント、スピーカー、著者、大学教員として活動。マイクロソフト在籍中から「メタ思考」や自己成長、リーダーシップに関する独自の視点を提唱し、多くのビジネスパーソンに影響を与え続けている。
会社での自分と本来の自分を切り離す
── 11月号の雑誌『MONOQLO』では、「30代以降の会社員のモヤモヤを解消するには」について特集しています。澤さんは、そんなときこそ「メタ思考」にシフトするのがよいと提唱されています。では、「メタ思考」とはそもそも何でしょうか?
澤さん:みんな自分のすべてを会社に預けてしまいがちなんです。だから仕事で失敗したりすると、まるで自分が全否定されたような気持ちになってしまったり、「自分の人生は敗北だ!」と、極端な思考でいっぱいになってしまったりする人がいるんですよ。
でも、たとえ失敗したとしても、長い目で見るとそれほど大きな失敗じゃないし、仕事を失敗したことで怒られてしまうこともあるのかもしれないけれど、怒られたのはその仕事の結果についてであって、自分の人格について否定されたわけじゃないですよね。
── たしかにそうです。上司に怒られると、自分はなんてダメな人間なんだろうって思って落ち込んでしまいがちですね。。
澤さん:そんなときこそ「メタ思考」を使うと、無駄に傷つくこともなく、自分が本来やるべきことが見えてきますよ。僕は「エイリアス」という言葉を使っているんですが、本来「エイリアス」とは「別名」とか「リンク機能」っていう意味ですよね。
そんなふうに、会社にいる自分や仕事をしている自分は、自分本体から生まれた、その役割をこなしているエイリアス=「分身」として捉えるんです。
すると「会社で仕事をしている自分のエイリアス」が否定されたところで、それは「仕事のやり方」に対する間違いは指摘されたのかもしれないけれど、自分本来の人格を否定されたわけではないのだと考えることができます。かなり気持ちがラクになってくると思いませんか?
── そう感じます! ちなみに、30代以降何となく同じことの繰り返しでマンネリになるといったモヤモヤを抱えている人もいるといいます。
澤さん:それはきっと、メタ思考ができていない証拠で、会社から与えられた仕事だけただやっているから今の仕事がつまらないように感じているんですよ。自分の仕事というものを多角的に見ることができていない。
仕事って何のためにするのかを俯瞰で見ると、上司と呼ばれる立場の人間のためではなく、会社に尽くすためでもなく、社会に貢献するためですよね。そのために今やれることはないのかを探したほうがいいと思うんです。
実はボクは上司って言葉が苦手なんですよね〜。「上」とかいう字が入ってるからおかしくなる気がします。なので、「マネージャー」って言葉を使いますね。
話を戻すと、「悩んでいる」というのは一番くだらない状態。一歩も進んでない状態だと思うので、まず行動するのが先です。何をしたらいいのかわからないなら、とりあえず手近なところから動いてみればいいんです。うまくいかなくてもそれは失敗ではなく、そういうこともあるんだなと学びとしてアップデートできたらいいですね。
いずれにせよ、やろうと思っていたけど先延ばしにしていたこととか何でもいいですが「いつかやろう」と思っていると、そのいつかは来ないので、自分から行動していかないと。
── でも、仕事が忙しいとなかなか時間が取れないですよね。
澤さん:時間がないというのは、行動できない自分に対する言い訳のひとつです。例えば1日のスケジュールを見直して、本当に自分が出なきゃいけない会議なのかを検討してみる。すると、意外と時間って作れちゃったりするんですよ。
── 「自分は必要ないと思うので、会議には出ません」と言うのも勇気がいるというか……。
澤さん:それは「マネージャーに怒られるかもしれない」と、起きてもいないことを心配しているからですよね。もっと言うと、マネージャーを怒らせないようにしたら、自分の人生はよくなるのかという話なんですよ。マネージャーが怒ったら人生が破綻しちゃうのかな? きっと、大したことないと思うんですよ。だから、思い切って一回怒らせてみたらいいんです。
さっきも言ったように会社に尽くすのではなく、社会に尽くすのが本筋。なのに、「誰かに怒られないようにするのが仕事」だと思っているなら、その意識が間違っているんです。もし自分に顧客がいるんだったら、その人をハッピーにすることが仕事であって、誰かの言うことに従うことは仕事ではないんですね。これは、明確に切り分けておいたほうがいいかなと思います。
誰かに媚を売る必要なんてありません。だって、なんだか負けた感じがしませんか? 誰かに媚を売るということは、自分の人生を相手に渡してしまっている状態だと思うんですよ。わざわざ嫌われるようなことはしませんが、マネージャーは媚を売る対象ではなく、役割はあれどお互いに対等なパートナーだと思っています。
── なるほど! ちなみに、転職をするべきか否か、迷う人が多いのもこの世代だそうです。
澤さん:会社はあくまで社会に貢献するための手段なんです。そして物を作る、サービスを提供するなど、どのように社会に貢献するのかによって会社の選択肢が違ってくるというわけ。
その選択肢が、どうしても自分に合わないなと思ったら転職するという方法もある。でも、こうした思考がないまま転職をしても結局は同じ結果になると思います。
目の前の仕事に集中すれば結果はついてくる
── 澤さんご自身も、若い頃は大変苦労されたからこそ、今の考えに至ったんですよね。
澤さん:僕も、ある日突然雷に打たれたようにメタ思考ができるようになったわけではありません。もがいている中で、ジワジワとすべてのものが繋がっていった感じです。当時は、とにかく目の前の仕事を夢中でやっていました。実はとても嫌なマネージャーがいたのですが、彼のことは置いておいて目の前のお客さんをハッピーにするために必死に仕事をしたら、結果がついてきたんです。目の前のことをやっていたら運が回ってくるんだなと思いましたね。
── 行動したことが結果に結びついたという良い例ですね。
澤さん:マネージャーからどう思われるかより、顧客をハッピーにするのが大事なんですよ。そのために、合わないと思った人を遠ざけることが必要なときもあるんじゃないかなと思います。だって嫌なマネージャーがいたとして、相手に変わってもらうのはまず不可能。他人をコントロールすることはできません。ただ、自分をコントロールすることはできるのだから、そのマネージャーを無視して自分の仕事に集中するのがいいです。
反対に、コラボしたらいいことが起こりそうな人に積極的にアプローチするのもいい。そうやって、ひとつ上から見ることでやれることが変わってくるんです。合わないものを全部排除するのはちょっと大人げないんじゃないかと思いますが、少なくともベストのパフォーマンスが出せない状況で仕事をするのは、ビジネスパーソンとしてダメですよね。
上司だからといって決して偉いわけではない
── 得手不得手にかかわらず、部下のマネジメントをしなければならない状況になる人もいますが、部下とはどうコミュニケーションをとればいいのでしょうか?
澤さん:「部下」って言葉も曲者ですね。「下」なんて文字が入ってますし。ボクはメンバーと呼んでるのですが、まずメンバーは自分より下の立場だと考えないほうがいいですね。上下ではなく、自分の役割は学級委員長のようなものだと意識することが大切です。
学級委員長って、別に偉いというわけではないですよね。生徒のうちの1人が、その役割を担っているだけ。ただの役割分担。なんならジャンケンで決まるくらいのものなんです。自分が上、メンバーは下だと思うから、自分のほうが優れていなければいけないんじゃないかと意識しすぎてコミュニケーションを取りづらくなっちゃうんですよ。
日本企業の多くは、マネージメントの立場になると必然的に給料が多くなったりする構造なので、より自分のほうが偉いんだ、責任を持たなければいけないんだと考えてしまいがちなんですが、やっぱりひとつの役割だと認識してどんどん頼っていくほうが、コミュニケーションがうまくいくんじゃないかと思います。
── なるほど! それはどの立場であってもなるべく目線を合わせるのがいいということでしょうか。
澤さん:目線は違うんです。組織の構造を海水浴場で例えると、メンバーは海水浴客の視点で、砂浜を歩いたり海に入って細かいところまで見えます。マネージャーは監視塔の視点で、普段はみんなの様子全体を見ているけど、必要に応じて塔から降りて、プレイヤーとして海に入ることもできます。
そして、経営者は飛行機の視点。だから、海水浴場全体を見つつも、隣の海水浴場も見えるし、雷が近づいてきたら監視塔に伝えて、海水浴客にアナウンスすることで危険を回避することができる。
監視塔の人、つまりマネージャーが持ち場を離れてずっと海水浴客であるプレーヤーに混ざっていると、雷雲がきているという連絡が滞ってしまうんです。
── そう考えると、上下ではなく役割分担だということがよくわかります。
澤さん:マネージャーの仕事は、みんなの様子を見て、必要に応じて相談にのることに尽きると思います。つまり、メンバーの相談にのらないということは、それだけでハラスメントだとも言えるかもしれませんね。仕事を放棄しているということです。だから、マネージャーの立場こそメタ的に自分を認識したほうがよくて、話しかけやすい表情を作れているかを意識したいですね。
そもそもメタ思考って何?
メタ思考:「視点」を変えることで自分の考え方や行動を見直すこと
インタビューにも出てきた「メタ思考」。もう少し整理してみましょう。
メタ思考とは、物事の表面的な部分にとらわれず、より広い視野から全体を見渡し、状況を判断する思考法です。視野が広がることで問題の本質がわかり、ラクな気持ちで生きられるようになります。
例えば、会社で働いていると、つい他者と自分を比較してストレスを感じることも。そこでメタ思考を取り入れると、会社という小さな枠の中で考えるのではなく、社会という大きな広場にいる自分の立ち位置を客観的に把握することができるようになり、自分がいかに小さい場所でちょっとした差に過敏になっているかに気づくことができます。
ひとつの価値観に縛られず、より自由に生きられるようになるでしょう!
視点を変化してみると……
<メタ思考で考え方がこう見直される!>
1:上司の顔色が気にならなくなる!
2:仕事のミスを引きずらなくなる!
3:同僚のマウントが気にならない!
4:部下より優れている必要はない!
代表的なメタ思考
1:社会をハッピーにするために働く。会社はその手段にすぎない
2:失敗ではなく、学びとしてアップデート
3:周りはコントロールできないから、自分の力を100%出すことに集中する
4:自分は上司じゃない。強いて言えば学級委員長
澤さんが仕事でフル活用する道具2選
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操作の煩わしさが解消された!
プレゼンテーションをする際にスライドの切り替えでけっこうもたつくことがあるんですが、これを使えばiPadやノートパソコンの画面などの共有や切り替えが簡単。プレゼンテーションに集中できます。(澤さん)
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簡単なメモが本格的な画像に!
マイクロソフト「Copilot+ PC Surface Pro」は、Copilot機能をさらに強化したものがローカルでついているPC。クラウドにつながずオフラインで文章や画像の作成が可能です。音声で対話もできます。
パソコンを買うときはスペックを重視します。
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打率10割の生き方なんてしていません(笑)。