電子レンジには3つのタイプがあります
一口に電子レンジといっても、さまざまなタイプがあります。商品レビューに入る前に、基礎知識として解説していきます。
オーブンレンジ
温める機能のほか、オーブン機能も備えたレンジ。
例)パナソニック「NE-FS3A」、シャープ「RE-WF」シリーズ、東芝「ER-W18」など
スチームオーブンレンジ(過熱水蒸気オーブンレンジ)
オーブンレンジのうち、水蒸気を発生させて調理できるもの
例)パナソニック「Bistro」シリーズ、シャープ「ヘルシオ」シリーズ、東芝「ER-XD」シリーズ
単機能レンジ
温め(解凍)機能のみを備えたレンジ
例)パナソニック「NE-FL」、シャープ「RE-T171」、東芝「ER-WS17」など
スペースの兼ね合いでレンジ機能もオーブン機能も1台でまかないたいという人はオーブンレンジやスチームオーブンレンジを選ぶでしょうし、「レンジ機能しか使わない」「食材の温めはレンジで、パンはトースターで焼く」といった具合に、調理家電を使い分けている人は、単機能レンジが選択肢に入るでしょう。
単機能電子レンジの選び方は?
単機能電子レンジは、大きく分けて「ターンテーブル」タイプと「フラットテーブル」タイプに分けられます。
予算を抑えたいならターンテーブル
庫内に回転台と皿がついており、マイクロ波が一定方向から照射されるため、食品を回転させながら加熱する仕組みになっています。大きめの弁当を温める際、容器が庫内で引っかかってきちんと回転できなかったりすると、加熱ムラが起こりがちです。お手入れの際は皿を取り外す手間もかかりますが、リーズナブルに購入できるため、予算を抑えたい人にオススメです。
少ない加熱ムラでメンテがラクならフラットテーブル
庫内の加熱台に直接食品(容器)を乗せて使用します。マイクロ波を拡散させて加熱することで、全体に熱が行き渡りやすく加熱ムラが少ないのが特徴。「ターンテーブル」タイプと比べると価格は高めですが、庫内のスペースを広く使えて、庫内がフラットなため拭き取りもラクちんです。
新発売の単機能電子レンジ3商品をテスト!
ズラリと並ぶのは、2022年10月以降に発売されたの単機能電子レンジ3商品です。
- ツインバード「センサー付フラット電子レンジ DR-F282B」(画像上)実勢価格:2万7800円
- 東芝ライフスタイル「東芝単機能レンジ ER-XS23」(画像左下)実勢価格:4万2800円前後
- シロカ「おりょうりレンジ SX-23D152」(画像右下)実勢価格:2万9700円
単機能レンジは1万円を切るお手頃価格のものも多い中、これらはすべてフラットテーブルタイプで、価格3万円前後と、ちょっとお高めなラインナップとなっています。
オーブン機能は無し・温め機能に全振りしているとなると、均一に温めてくれて、使い勝手の良い製品が望ましいですよね。
そこで今回は、料理研究家の桃世真弓さんとLDK編集部で、単機能電子レンジ3商品の実力を徹底検証してみました!
テスト項目1:ムラなく加熱できるか?
庫内にギリギリ入る大きさのタッパー容器に、底から約1cmの高さになる量(約500g)の卵白液を入れ、500W×6分、1000W×計6分の条件で加熱。サーモカメラで温度の様子を撮影し、加熱ムラの度合いをチェックしました。
上記は、過去に行ったレンジの加熱ムラ検証での画像です。白(Sp1)→80℃以上、赤(Sp2)→70℃、オレンジ(Sp3)→60℃、緑(Sp4)→50℃、青(Sp5)→40℃を示しています。
テスト項目2:お弁当の温め
コンビニののり弁当(白身魚フライ、ちくわの磯辺揚げ、コロッケ、ごはん)を、オートの温め機能を使ってフタをしたまま加熱。加熱後の弁当を試食し、温まり過ぎていないか、冷たい箇所はないかなどを確認しました。
おかずとごはんにまんべんなく火が通っているかチェックしました。揚げ物は加熱しすぎると油っぽくなったり、水分が抜けて固くなってしまうので、加熱が足りないものより過加熱になっているものを厳しめに採点しました。
お弁当の規定の温め時間は、500W・1分50秒です。各製品のオート加熱にかかった時間も調べました。
テスト項目3:ひき肉の解凍
100gの冷凍ひき肉を解凍し、真上と断面をサーモカメラで撮影。加熱後の温度を測って加熱の偏りを調べるとともに、実際に触ってみて、ほぐれやすさなどをチェックしました。
表面が焼け過ぎていたり、凍っている箇所がないかどうか調べました。
テスト項目4:便利な機能性か?
手軽さという観点からオートメニューが充実しているもの、調理に使用するという観点から手動で細かな設定が可能なものを高評価としました。
レシピブックの有無も評価に加えました。
テスト項目5:使い勝手は良いか?
ボタンやダイヤル操作のしやすさ、液晶表示の見やすさ、扉開閉のしやすさなどをチェックし、使い勝手の良さを総合的に評価しました。
いずれも庫内がターンテーブルではなくフラットテーブルのため、掃除はしやすいです!
以上を踏まえて、さっそく単機能電子レンジ最新3製品のテスト結果を見てみましょう!
シンプルに使えるツインバード「センサー付フラット電子レンジ」 がベストバイ!
ツインバード
センサー付フラット電子レンジ DR-F282B
実勢価格:2万7800円
サイズ:W460×D350×H275mm(本体)
重量:9kg(本体)
庫内有効寸法:W315×D330×H195mm
電源:AC100V、50/60Hz共用(ヘルツフリー)
消費電力:1420W
レンジ出力:1000W、900W、600W、500W、200W、100W
メニューモード:あたため、解凍、飲みもの、冷凍食品
コード長:1.4m
▼テスト結果
総合評価 | 卵白の 加熱ムラ |
お弁当 の温め |
ひき肉 の解凍 |
機能性 | 使い勝手 |
A | A | A+ | A | A | B |
単機能電子レンジのベストバイに輝いたのは、シンプルなボタン操作で、オート機能も優秀だったツインバード「センサー付フラット電子レンジ」です!
▼卵白の加熱ムラ
庫内の奥側がしっかり加熱される傾向。500W加熱時は白身が生状態の箇所が多いですが、1000W加熱時は、他2機種と比べて加熱ムラが少なくA評価となりました。
▼お弁当の温め
「あたため」メニューの中モードでスタートしたところ、加熱にかかった時間は1分43秒と、ほぼ規定時間通りという結果に!
全体的によく温まり、水分が飛びすぎることなく、おかずもごはんもふっくらした食感を保っていました。
白身魚はややぬるめですが、タルタルソースのトロッと加減はそのまま。コロッケはホックリ、ちくわはもちもちだけど歯切れが良く、ごはんもホッカホカ。熱すぎず、絶妙な仕上がりです!
▼ひき肉の解凍
「解凍」の中モードで加熱したところ、かかった時間は5分30秒。端はやや過加熱気味になっているものの、凍っている箇所は見受けられませんでした。
箸でほぐす必要はありますが、凍ってはいないので、炒めものなどの加熱調理に使うぶんには問題ありません。
▼使い勝手
液晶の文字が大きくて見やすく、ボタン・ダイヤルは4箇所のみで感覚的に操作できます。
手動で温めたい時は、「レンジ」ボタンを押して出力ワット数を選択し、ダイヤルを回して時間設定、ダイヤル中央部のスタートボタンを押せば加熱開始。自動で温めたい時は、「メニュー」ボタンでモードを選択し、ダイヤルを回して仕上がり温度を「弱」「中」「強」で調節、ダイヤル中央部のスタートボタンを押すという流れになります。
扉を閉めるとデフォルトで「あたため」メニューの状態になっているので、「あたため」の場合は仕上がり温度の選択からスタートできます。
メニュー選択から決定までの動線が明快で、初めてでもスムーズに操作できました。
フチの部分がマットな素材のため、指紋や汚れが目立ちにくくて○。
シロカ「おりょうりレンジ」は「やさしい解凍」機能が秀逸でした!
シロカ
おりょうりレンジ SX-23D152
実勢価格:2万9700円
サイズ:W49.5×D37.6×H30.2cm(本体)
重量:9.8kg(本体)
加熱室有効寸法:W33.5×D33.2×H22.9cm
庫内容量:23L
電源:交流100V、50/60Hz共用(ヘルツフリー)
消費電力:1400W
レンジ出力:1000W、600W、500W、200W相当、100W相当
自動メニュー数:54
コード長:1.5m
▼テスト結果
総合評価 | 卵白の 加熱ムラ |
お弁当 の温め |
ひき肉 の解凍 |
機能性 | 使い勝手 |
B | A | D | A+ | A | D |
自動調理から好みの温めまで幅広く対応したシロカ「おりょうりレンジ」。中でも驚かされたのは、独自の解凍機能「やさしさ解凍」です。
▼ひき肉の解凍
「やさしさ解凍」のひき肉/薄切り肉用の「設定3」にし、ひき肉の量を100gにセット。出力はデフォルトの5段階中の3にしたまま解凍したところ、かかった時間は8分15秒でした。
室温より低い14℃程度に解凍されており、温度ムラはほぼ無し。断面温度も表面とほぼ変わりなく、綺麗にムラなく仕上がっています。
少し触っただけでホロホロとほぐれて、常温のひき肉とほぼ同じ状態に戻っていました。これなら、餃子やハンバーグなど、ひき肉をこねる料理にも解凍後すぐに使えますね。
▼卵白の加熱ムラ
500W加熱時は中心部分がドーナッツ状に加熱されますが、他2機種と比べて加熱ムラは少なめ。1000W加熱時は緑〜黄領域がなくなり、中心は過加熱気味ですが、全体が加熱されました。
▼機能性
説明書の他に、オートメニューで作れる料理のレシピブックも付属。カラーで見やすく、メイン料理から副菜、デザートまで幅広いメニューが載っています。それぞれ1つの耐熱容器で調理が完結する点も◎。
調理に必要な容器のサイズや、目安の加熱時間も載っています。料理のモチベーションがアップしそうですね。
▼お弁当の温め
「自動あたため」で、仕上がりを5段階中の3段階(中)に設定して加熱したところ、所要時間は4分6秒と、規定時間の倍以上に。加熱されすぎて容器が変形し、揚げ物は固く、ごはんもポソポソになってしまいました。
ちなみに、仕上がりを5段階中の1段階(弱)に設定して新しい弁当を加熱したところ、所要時間は3分34秒と、こちらも時間がかかりました。(中)に設定した時よりは柔らかいものの、揚げ物の衣と具材が分離し、グニッとした食感になりました。
食べ物をオートで温める際は加熱されすぎてしまう傾向にあるようなので、弱めに設定して、途中で温まり具合を確認したほうが良さそうです。
▼使い勝手
扉の持ち手が出っ張っているため、左側に配置されているボタンを押そうとするとちょっと邪魔でした。また、扉の開閉音が大きい点も気になりました。
扉全体が鏡面になっていて指紋が目立つため、こまめな手入れが必要そうです。
「東芝単機能レンジ ER-XS23」は縦開きで静かに開閉できた
東芝ライフスタイル
東芝単機能レンジ ER-XS23
実勢価格:4万2800円前後
サイズ:W468×D386×H337mm(本体)
重量:14kg(本体)
庫内有効寸法:W368×D310×H198mm
庫内容量:23L
電源:AC100V、50/60Hz共用(ヘルツフリー)
消費電力:1400W
レンジ出力:1000W、600W、500W、200W相当
メニュー:あたため、牛乳、解凍、お好み温度
コード長:1.5m
カラー:ホワイト、ブラック
※以下のリンク先はブラックです。検証にはホワイトを使用しています。
▼テスト結果
総合評価 | 卵白の 加熱ムラ |
お弁当 の温め |
ひき肉 の解凍 |
機能性 | 使い勝手 |
B | B | B | B | B | B |
ビッグサイズの東芝ライフスタイル「単機能レンジ ER-XS23」の実力はいかに……。
▼卵白の加熱ムラ
500W・1000Wいずれも、中心部分が過加熱で外側は生状態になり、加熱ムラが目立ちました。
狭い範囲であればパワフルに加熱できそうです。
▼お弁当のあたため
あたためボタンを押して加熱をスタート(※)。所要時間は1分13秒と、規定時間よりも短めでした。※メーカ指定の使用方法ではありません。お弁当は、手動レンジでのあたためを推奨しています。
全体的にほんのり温かくなっていますが、白身魚とちくわはやや冷たく感じました。
加熱後すぐに食べないと冷めちゃうぐらいの温かさですが、猫舌なら美味しくいただけそうな感じ。温度をやや強めに設定すると良さそうです。
▼ひき肉の解凍
「3.解凍」を選んでデフォルトの標準モードのまま加熱スタートし、2分45秒で終了。ひき肉を真上からみると中央が凍っており、包丁を入れる際もサクッと切れる半解凍状態になりました。
さらに標準よりも2段階強い(強め 2)で新たなひき肉ブロックを加熱したところ、3分18秒かかりました。
標準の表面温度は-0.4℃、断面温度は-2.3℃。(強め 2)の表面温度は10.4℃、断面温度は-0.8℃でした。いずれもひき肉は凍っていました。
オートでの解凍は難しそうですね。200Wで様子を見ながら加熱したほうがいいかもしれません。
▼機能性
-10℃〜85℃まで5℃刻みで好みの温度に設定できるのは、「東芝単機能レンジ ER-XS23」ならでは。バターを柔らかくしたり、ベビーフードの温めにも重宝しそうです。
説明書に記載のレシピには、ワット数と加熱時間が明記されています。
▼使い勝手
今回唯一の縦開きタイプで、開閉音が静かな点は◎。両手で容器を掴んで物を取り出す際に扉に手が引っかかりにくいです。
液晶の表示が細かく、ボタンがたくさんあるので操作はやや煩雑に感じました。
飲み物の温め機能もチェック
採点には加えませんが、各機種で水200mlを温めた時の温度と加熱時間をまとめてみました。
東芝ライフスタイル「東芝単機能レンジ ER-XS23」
コップを庫内中央に置き、600Wで1分30秒加熱:16.3℃→61.6℃
シロカ「おりょうりレンジ SX-23D152」
コップを庫内中央に置いて「飲み物」ボタンを押下し、ダイヤルを回してお茶/コーヒの「8-1」(1杯分)を選択
5段階中3段階目(中)で加熱:15.6℃→47.4℃(所要時間は1分20秒)
5段階中5段階目(強)で加熱:14.0℃→59.5℃(所要時間は1分40秒)
ツインバード「センサー付フラット電子レンジ DR-F282B」
コップを右奥に置き、「メニュー」を2回押して「飲みもの」を表示
(中)で加熱:15.0℃→48.6℃(所要時間は約50秒)
(強)で加熱:14.5℃→57.0℃(所要時間は約50秒)
1、2杯分温かい飲み物がほしい時、電気ケトルより手軽で良いかもしれませんね。
単機能レンジは4人家族より一人&二人暮らし向けです
最後に、今回検証した単機能電子レンジ3商品の特徴を振り返ってみましょう!
アレコレ考えずに“おまかせ”で使うならツインバード「センサー付フラット電子レンジ DR-F282B」!
ツインバード
センサー付フラット電子レンジ DR-F282B
実勢価格:2万7800円
▼テスト結果
総合評価 | 卵白の 加熱ムラ |
お弁当 の温め |
ひき肉 の解凍 |
機能性 | 使い勝手 |
A | A | A+ | A | A | B |
ツインバード「センサー付フラット電子レンジ DR-F282B」は、オート加熱が優秀! お弁当の温めも、ひき肉の解凍も、自分で細かく設定せずともスピーディーにちょうど良く仕上げてくれました。コンパクトで場所をとらないので、一人暮らし世帯にもオススメです。
解凍と電子レンジ調理にとことんこだわるなら シロカ「おりょうりレンジ SX-23D152」
シロカ
おりょうりレンジ SX-23D152
実勢価格:2万9700円
▼テスト結果
総合評価 | 卵白の 加熱ムラ |
お弁当 の温め |
ひき肉 の解凍 |
機能性 | 使い勝手 |
B | A | D | A+ | A | D |
シロカ「おりょうりレンジ SX-23D152」は、54ものオートメニューを搭載。材料を用意すれば、あとはレンジが温度を自動で調節しながら加熱してくれるので、毎日の料理がグッとラクになりそうです。ひき肉の解凍機能もピカイチなので、「まとめて冷凍派」の人は見逃し厳禁!
ベビーフードなど細かい温度調整が必要なら東芝ライフスタイル「
東芝単機能レンジ ER-XS23」
東芝ライフスタイル
東芝単機能レンジ ER-XS23
実勢価格:4万2800円前後
▼テスト結果
総合評価 | 卵白の 加熱ムラ |
お弁当 の温め |
ひき肉 の解凍 |
機能性 | 使い勝手 |
B | B | B | B | B | B |
仕上がり温度を5℃刻みで設定できる東芝ライフ「スタイル東芝単機能レンジ ER-XS23」は、ベビーフードの温めなど、好みの温度に細かく調節して使いたい人にオススメ。庫内を広々使えるのも魅力です。
以上、単機能電子レンジの新商品レビューでした。
機種によって得意とする使い方は異なるので、ぜひご自身のライフスタイルと照らし合わせつつ、購入の参考にしてみてくださいね。
過去の検証では、緑や青色部分が多く加熱が不十分な製品が見受けられましたが、今回検証した3製品では全体的に温度が高く、以前よりも加熱ムラが改善されているようでした。