AV機器そもそもゲーミングイヤホンに必要な性能って?

そもそもゲーミングイヤホンに必要な性能って? イメージ

映像のない音楽リスニングと異なり、ゲーミング用途では音声の遅延は致命的

そのため、一般的なワイヤレスイヤホンではデバイスとの接続にBluetoothが使われますが、ゲーミングイヤホンではより低遅延なUSBワイヤレスでの接続が必須になります。

また、一般的なゲーミングイヤホンで想定されているのは「Apex」のようなFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)での使用。そうなると、繊細な音を聞き取ったり“足音のする場所”を瞬時に判断するための正確な定位感も必須で、音楽リスニングとは異なったサウンドバランスや空間表現が求められます。

さらに、ゲームへの没入感を高めたい人や、少しの音も聞き漏らしたくないという人には遮音性の高さも重要な要素ですが、一般的なワイヤレスイヤホンにあるようなANC(アクティブノイズキャンセリング)機能を搭載すると、バッテリー消費を早めるのが難点でした。

これらのことから、今までワイヤレスイヤホンをゲーミング用途に使うという選択肢はほとんどなかったわけですが、ここに颯爽と登場したのがG FITSです。

AV機器簡単な操作で自分だけのイヤホンを作れる「G FITS」の実力は?

簡単な操作で自分だけのイヤホンを作れる「G FITS」の実力は? イメージ

ロジクール
ロジクール G FITS 完全ワイヤレス ゲーミング イヤホン
実勢価格:3万5750円

サイズ:W35×D22.8×H24.5mm・7.2g(イヤホン部・左右それぞれ)
接続方式:USBワイヤレス(LIGHTSPEED)、Bluetooth 5.2
再生時間:USBワイヤレス接続時7時間、Bluetooth接続時10時間(いずれもマイクミュートの場合)
防水性能:IPX4(イヤホン部のみ)

2023年4月に発売された「G FITS」は、ロジクールのゲーミングブランド「ロジクール G」では初となる完全ワイヤレスイヤホン。

簡単な操作で自分だけのイヤホンを作れる「G FITS」の実力は? イメージ2
簡単な操作で自分だけのイヤホンを作れる「G FITS」の実力は? イメージ3

ゲーミングイヤホン的な特徴としては、ロジクールのUSBワイヤレス技術「LIGHTSPEED」により、ゲームのプレイに影響を与える音声遅延を最小限に抑えられるほか、スマホゲームや動画視聴時に便利なBluetooth接続「低遅延ゲームモード」や、音楽リスニングに使いやすいBluetooth接続を、用途に応じて使い分けられます。

また、同名の専用アプリ「G FITS」を使えば、「FPSモード」「MOBA/RPGモード」「話し言葉モード」「低音ブーストモード」といったプリセットモードから、ゲームに合わせて音質の調整も可能。

ゲーム中のボイスチャットや音声通話では、左右のイヤホン両方に搭載されたビームフォーミングマイクによって自分の声を相手にクリアに届けられるといいます。

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これに加え、ゲーミング・音楽両用を標榜し、ロジクール傘下のオーディオブランド「Ultimate Ears」(以下UE)の技術が用いられたという音質のよさも気になるところ。

ですが、本製品最大の特徴は、何と言っても“イヤーピースが自分の耳の形に合わせて変形する”ことです。

AV機器 耳の形に変化する「LIGHTFORM」とは?

耳の形に変化する「LIGHTFORM」とは? イメージ

少し詳しく説明すると、G FITSには、ロジクールの「LIGHTFORM」という特許技術が採用されています。

この技術は、ジェル入りのイヤーピースを耳に装着した状態でイヤホン内蔵のLEDを照射すると、紫外線と熱でチップが硬化、60秒でユーザーの耳の形に固定されるというもの。

つまり、オーダーメイドのカスタムIEM(インイヤーモニター)のような自分だけのイヤホンを、超お手軽に作れちゃうんです。

これまでにない魅力が詰まっていそうなG FITSですが、お値段は3万円超えと、音楽用の高級ワイヤレスイヤホン並み。

果たしてこれは安いのか、高いのかを徹底的にチェックしました。

AV機器オーディオ&ビジュアルライターと『家電批評』編集部で徹底検証しました!

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今回は、オーディオ&ビジュアルライターの折原一也さんと「家電批評」編集部で、G FITSをテスト

以下の項目に対し「優秀・良好・合格・微妙・難あり・不合格」の6段階で評価を行いました。

評価項目1:装着感

LIGHTFORMで成形後のイヤホンの装着感を評価

評価項目2:遮音性

LIGHTFORMで成形後のイヤホンを装着中の遮音性を評価

評価項目3:操作と機能性

イヤホン本体とアプリの操作感や、イコライザーなどの各種機能をチェック

評価項目4:音質(音楽)

音楽リスニング用のワイヤレスイヤホンと比較したときにどれくらいのレベルにあるのかをチェック

評価項目5:音質(ゲーム)

PCとSwitchそれぞれのゲームで、サウンドバランスや空間表現を重点的に確認。遅延に関する評価もココ

評価項目6:マイク

USBワイヤレス接続時のマイクの音声品質を、Zoomからの音声でチェック

評価項目7:通話音

マイクと同じくZoom中に聞こえる音の評価

AV機器テスト1:LIGHTFORMの設定や操作は簡単? 機能は?


結果:細かく調整できるイコライザーが便利!

開封後、LIGHTFORMの順番は以下です。

結果:細かく調整できるイコライザーが便利! イメージ

①開封して

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②端末とG FITSをペアリング

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③G FITSを耳に装着し

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④アプリ操作で成形プロセス開始

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⑤耳内へのLED照射開始

LIGHTFORMの成形は一度失敗するとやり直せないため、ミスするのは怖いものの、設定時のナビはしっかりしているので、迷うことはありません

設定の流れとしては、まず密封されたイヤホンをパッケージから取り出し、ケースに入れてスマホとBluetooth接続。

次にイヤホンを耳に装着し、アプリで成形をスタートさせたら、イヤホンを指で押さえます。

するとLEDが点灯し、じわ〜っと耳が温かくなってくるのでそのまま1分待機。

たったこれだけで成形は完了。想像以上に簡単でした

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アプリの操作性は全体的に良好ですが、タップ操作が成功しているのかミスしているのか、ややわかりづらいのは気になりました。

また、機器の切り替えやイコライザーのモード切り替えや、一部イヤホン側に割り当てられない機能があり、スマートフォンなどの外部機器を利用しなければならない点にも注意が必要です。

結果:細かく調整できるイコライザーが便利! イメージ7
結果:細かく調整できるイコライザーが便利! イメージ8

また、機能としてはパラメトリックイコライザーを採用しているのも特徴。

グラフィックイコライザーに比べて調整幅が数値でわかりづらいデメリットはありますが、編集できるポイントが5つと比較的多いことや、ポイントを自由に動かして直感的に音質調整をできる点が魅力です。

ポイント間の周波数がどうなっているかもわかりやすく、音質を細かく調整したい人に向いています。

なお、プリセットされているモードの波形をカスタマイズすることもできますが、標準モードの「Gシグネチャー」だけカスタマイズできないのは謎です。

AV機器テスト2:LIGHTFORMカスタム後の装着感・遮音性は?


結果:遮音性は完全ワイヤレスイヤホンではトップクラス!

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折原さんと編集部員の2名が試したLIGHTFORM後のイヤーピースを比べてみると、明らかに形状が異なっており、しっかりその人の耳の形になっていることがわかりました。

そのおかげで、G FITSを無造作に着けたときのフィット感は抜群

長時間使用しても疲れる心配が少ないのはうれしいポイントです。

また、耳栓のようにスキマがなくなるので、完全ワイヤレスイヤホンのなかでは遮音性もトップクラスでした。

折原一也 氏
オーディオ&ビジュアルライター
折原一也 氏 のコメント

ただし、イヤモニのように周囲の音が完全に聞こえなくなるわけではありません。周囲の音はこもった感じで聞こえますし、鼓膜を通した自分の声が聞こえづらくなる一方で、骨伝導で聞こえる自分の声は大きく響きます。

AV機器テスト3:ゲームと音楽の音質はいい?

結果:ゲームファンにもオーディオファンにもオススメできるレベル!

結果:ゲームファンにもオーディオファンにもオススメできるレベル! イメージ
結果:ゲームファンにもオーディオファンにもオススメできるレベル! イメージ2

USBワイヤレス接続を使用したPCゲームのサウンドは、音の定位や広がり感が非常に優秀

FPSでは靴が土を踏むときの足音や金属を踏むときの足音が立っていて聞きやすく、抜けのない素直な音のおかげで前後左右の位置関係もしっかりわかります

立体的な足場などでは、下方の音がやや弱く感じられましたが、頭上の音はきちんと再現されていました。

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任天堂Switchでも試しましたが、音の傾向はPCゲームと同様で、本体内蔵のスピーカーよりも臨場感が大幅にアップ。

また、ゲーム内で視点をグリグリ変えるたびリアルに音の向きも変化します。音がするべきところからきちんと聞こえてきました。

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なお、USBワイヤレスで接続した際にはPCゲーム、Switchともに遅延はまったく感じませんでした(Bluetoothだと特に音の立ち上がりに遅延を感じました)。

折原一也 氏
オーディオ&ビジュアルライター
折原一也 氏 のコメント

サラウンドなどを使わずに正確に定位感を出すことによって、ゲームらしい空間の広がりを誇張なく感じられます。また、周囲が多少うるさくても足音が聞きやすくしてあるなど、よくチューニングされているなと感心しました。

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さらに、Bluetooth接続で試した音楽リスニングも高評価でした。

ゲーミングイヤホンということもあり、高音域が少しシャカシャカし、低音域のはっきりした輪郭を感じるドンシャリ寄りの音ですが、サウンドバランスが秀逸。

全帯域にわたって抜けがない点もよくできています。

また、意図的な臨場感を出さずに音の定位感がいいのもポイント。

ボーカルも「誇張感はないものの情報量が多く、高域も伸びやか」(折原さん)で、オーディオファンが使用しても問題ない実力を備えています。ゲームも音楽も一つのイヤホンで楽しみたい人にはうってつけです。

折原一也 氏
オーディオ&ビジュアルライター
折原一也 氏 のコメント

オーディオ的な厳しい評価をすれば、より細かい音が聞こえてほしいですし、高音域のシャカシャカした部分ももう少し抑えたいところですが、それでも3万円前後の音楽リスニング用ワイヤレスイヤホンと同等の実力はありそうです。

AV機器テスト4:マイクの性能や通話中の音も高品質?

結果:マイクはヘッドセットと比べるとかなり物足りない

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マイクはPCに左右両方のイヤホンにビームフォーミングマイクを搭載しているのが一つのウリでもありますが、実際に使用してみると話し始めの約1〜2秒程度はこもった音

そこからマイクのノイズキャンセルが効き出すのか、急に音がシャープになるため違和感を感じます。

また、ノイズキャンセルを効かせた音も声がシャープすぎて微妙な音質でした。

なお、ボイスチャットや通話中の音に関しては十分クリアで、音楽リスニング用と比べても遜色ありません。

折原一也 氏
オーディオ&ビジュアルライター
折原一也 氏 のコメント

マイクの音質だけでいえば、一般的なワイヤレスイヤホンレベルなのですが、ゲーミングヘッドセットのマイクのように、近くで声を拾っているような音には遠く及ばず。もう少し性能を向上してほしいというのが率直な感想です。

AV機器テスト結果とアピールポイント総まとめ!

テスト結果とアピールポイント総まとめ! イメージ

ロジクール
ロジクール G FITS 完全ワイヤレス ゲーミング イヤホン
実勢価格:3万5750円

サイズ:W35×D22.8×H24.5mm・7.2g(イヤホン部・左右それぞれ)
接続方式:USBワイヤレス(LIGHTSPEED)、Bluetooth 5.2
再生時間:USBワイヤレス接続時 7時間、Bluetooth接続時 10時間(いずれもマイクミュートの場合)
防水性能:IPX4(イヤホン部のみ)

▼テスト結果

総合評価 音質(音楽) 音質(ゲーム) マイク 通話音 装着感 操作と機能性 遮音性
A 優秀 優秀 微妙 良好 優秀 良好 優秀

最後にG FITSのよかった点と残念だった点をまとめました。

▼よかった点

  • ゲームの音質は文句なしで臨場感もアップ
  • ゲームだけでなく音楽も高音質に聴ける
  • USBワイヤレス接続で遅延もなし
  • 自分だけのイヤホンという特別感がある
  • フィット感抜群で長時間の使用でも疲れにくい
  • 音質調整の自由度が高い

▼残念だった点

  • LIGHTFORMでミスが許されない(失敗するとイヤーピース買い直し)
  • 3万円超えのワイヤレスイヤホンなのにANCなし
  • 本体側に割り当てられない操作がある
  • PC用アプリがなく、PC接続時の音質調整もスマホ等で行う必要あり
  • ヘッドセットに比べて再生時間が短い
  • マイクの性能が微妙

以上、G FITSのレビューをお届けしました。

G FITSは、どうしてもイヤーピースが変形する近未来感に目がいってしまいますが、なかなかどうして、イヤホン自体の音質も素晴らしい一台でした。

特に、音楽リスニングでもしっかり使える点は、ほかにはないストロングポイント

これまでゲーミング用に重たいヘッドセットをガマンして使っていたり、有線ケーブルでの接続で煩わしさを感じていたりした人はもちろん、妥協のない音質でゲームも音楽もどっちも楽しみたいという人は、買い替えを検討してみてもいいかもしれません。

きっとお値段以上の価値を感じられますよ。