Kiss Mで買うべきはズーム&単焦点のダブルキット
ミラーレス人気の中、入門向けとしてもっとも売れているのが、キヤノンEOS Mシリーズの「EOS Kiss M」です。
長年、キャノンの一眼レフ「EOS Kiss」は世界一売れている一眼レフカメラです。一眼レフの中ではかなり小型軽量の部類なのですが、毎日持ち歩くにはやはり大きさが気になります。そこで、小型なミラーレス「EOS Mシリーズ」に一眼レフの「Kiss」ブランドを名乗らせたのが、この「EOS Kiss M」なんです。
キヤノン
EOS Kiss M
実勢価格:6万5540円
サイズ:W116.3×H88.1×D58.7mm
重量:約387g(ブラック)、約390g(ホワイト)
撮像素子:CMOSセンサー、約2410万画素
EVF:倍率非公表、約236万ドット
液晶:約104万ドット、チルト式(タッチパネル)
そんな使いやすいKiss Mですが、一眼レフのEOS Kissシリーズとは根本的にファインダーが異なります。そして、それ以上にレンズの本数が違います。一眼レフのEOS用純正レンズは50本以上ありますが、EOS M用は6本しかありません。
そこでKiss Mは4種類のレンズキットが販売されています。その中でオススメなのは、単焦点レンズとズームレンズ が本体とセットになったダブルレンズキットです。ボカせる単焦点と広角に強いズームがあれば、スマホとの違いを実感することができます。
キヤノン
EOS Kiss M・ダブルレンズキット
実勢価格:9万1334円
買う前に、利き目が左の人はちょっとご注意ください
Kiss Mの使い勝手の良さは、スマホスタイル派かカメラスタイル派かで変わってくるんです。
本機は右手の親指を使ってタッチパネルでAFエリアを操作しながら撮影できるのが特徴です。スマホスタイルでの撮影は、液晶を見ながらタッチパネルで操作できてとても快適に使いこなすことができます。
一方、ファインダーを覗いて撮影するカメラスタイルの場合、左目でファインダーを覗く人は、AFエリアを操作する右手の親指と鼻がぶつかってしまい使いにくいという弱点があります。
カメラスタイルでの撮影が多く、左が利き目だという場合は、使い勝手をよくチェックしてから購入してくださいね。
Kiss M以外ならこちらがおすすめです
カメラ好きの人なら、EOS Mシリーズの上位機種、「EOS M5」が買いです。性能はKiss Mに負ける部分もありますが、ファインダー撮影時の操作性では断然こちらが上です。
キヤノン
EOS M5
実勢価格:7万8400円
サイズ:W115.6×H89.2×D60.6mm
重量:約427g
撮像素子:CMOSセンサー、約2420万画素
Kiss Mが高くて手が出せないという人は、EOS M100という選択肢もあります。ファインダーを省略したシンプルなモデルで、タッチパネルでの操作を前提としています。Kiss Mの下位互換で連写性能などは劣りますが、タッチ操作でAFは快適に決まり、何よりレンズ込みで5万円台という安さが魅力です。
キヤノン
EOS M100 EF-M15-45 IS STM レンズキット
実勢価格:5万3021円
サイズ:W108.2×H67.1×D35.1mm
重量:約302g
撮像素子:CMOSセンサー、約2420万画素
以上、EOS Mシリーズの選び方でした。次は、機能面をチェックしていきましょう。
タッチ&ドラッグAFで素早く快適に使えます!
Kiss Mの機能で優れているところは「タッチ&ドラッグAF」です。
思い通りの写真を撮るには、素早くエリアを移動する必要があります。一眼レフ、ミラーレスともに、上位機種と下位機種の大きな差の1つが、AFエリア(ピントを合わせる位置)の移動を素早く行えるかどうかです。上位機種は専用のジョイスティックなどを搭載していますが、下位機種は小さな十字ボタンでしか操作できず、シャッターチャンスを逃してしまいがちです。
ところが、EOS Kiss MやEOS M5には、EVF(電子ビューファインダー)を覗きながら親指で液晶をタッチ操作しAFエリアを指定できる「タッチ&ドラッグAF」があるので、素早い操作が可能なんです。
親指を液晶の上で動かすとAFエリアが指の動きに沿って移動するので、素早くエリアを移動できます。このAFエリアの移動は、EOS 5D Mark IVなどの上位機種より快適に感じるほど優れています。
タッチ&ドラッグAFは、親指を動かす液晶の範囲を細かく指定することができます。まずは位置指定方法を「絶対位置」、タッチ領域を「右下」に設定して試してみると、動きをつかみやすいと思います。
ただし、そんなにも便利なタッチ&ドラッグAFなのですが、ご注意いただきたいのが左目が利き目の方なんです。先ほどの選び方でもふれましたが、タッチ&ドラッグAFの快適さを感じられるのは、利き目が右目の場合に限ります。
左目でEVFを覗くと、どうしても右手の親指と鼻がぶつかってしまいます。左手の親指で使うこともできますが、左手はレンズを支えたりズームをコントロールしたりするので、液晶を快適に操作するのは難しいです。そのため、利き目が左目でEVFで撮影するという人には、EOS Kiss Mはあまり向いていないのです。
[利き目を確認する方法]
自分の利き目がわからないという人は、まず人差し指を顔の前に立てて、両目で位置を確認してください。次に片目を順番につぶって左右の目でそれぞれ人差し指の位置を確認し、両目で見たときと位置が変わらない方が利き目です。
「いいね!」がもらえそうな見栄えのいい写真が作れます
優れている機能の2つめは「クリエイティブアシスト」機能です。
撮影前に明るさや色合い、ボケ具合などを決められる「クリエイティブアシスト」は便利な機能ですが、撮影する前に設定が間に合わないことも多いと思います。そこでオススメなのが、RAWで撮影してからクリエイティブアシストで仕上げるという方法。これなら見栄えの良い写真を手軽に作れます。
まず、記録画質を「C-RAW」に設定します。カメラに自動転送させたい場合は、JPEGも選んで両方を記録する設定にしておくと良いです。
被写体に応じたピクチャースタイルも選択しておきます。たとえば人物撮影をなら「ポートレート」を選んでおくだけで血色の良い肌色で撮影できます。
そして、撮影後に「Qボタン」を押すとクリエイティブアシストを呼び出せます。撮ったものをベースに、明るさやコントラストを調整しましょう。
もちろん良いところばかりではなくデメリットもあります
機能面で長所の多いKiss Mですが、やはり短所もありますのでここで挙げておきたいと思います。
まず、手ブレ補正が弱点です。ミラーレスの手ブレ補正はイメージセンサーを動かして補正する「ボディ内手ブレ補正」が主流。ですが、キヤノンとニコンは一眼レフと同様の「レンズ内手ブレ補正」から脱却できていません。
ボディ内方式は全部のレンズで手ブレを補正できるなどメリットの多い方式で、初心者に人気のオリンパスは、低価格な機種にも手ブレ補正を組み込んでいます。なお、EOS Kiss Mには「デュアルセンシングIS」という改良版のレンズ内手ブレ補正を導入していますが、対応するレンズは3本だけに留まっています。
そのほか、サイレント撮影も今一歩です。子どもの寝顔やペットの撮影時に大活躍する、シャッター音を一切出さないサイレント撮影ですが、絞り優先やシャッタースピード優先モードでは使えません。また、モバイルバッテリーで充電できないという仕様も、使いづらい点です。
では最後に、実際の使い勝手をチェックしてみましょう。
まるでiPhoneで撮影しているよう!スマホにカンタン自動転送
実際に撮影してみると、Kiss Mは普段スマホで写真を撮り慣れている人が使いやすく感じる工夫が見られます。とくに、撮影前に明るさや色合い、ボケ具合などを決められる「クリエイティブアシスト」は秀逸。フルオートの状態で画面の筆のアイコンをタップすると、自在な絵づくりができます。
調整できるのは背景のボケ具合(レンズの絞り)、明るさ、コントラスト、鮮やかさ、色合い、モノクロと多岐に渡ります。また好みの設定を保存しておけます。
まさにスマホのカメラアプリそのもののような画面ですよね。ほかのEOS Mシリーズにも搭載されていますが、Kiss Mの画面がもっともスマホに近く使いやすいです。これなら普段スマホカメラしか使っていない人も、数分触ればマスターできるはずです。
iPhoneだとタップでピントを合わせて、シャッターアイコンを押すという2ステップですが、Kiss M含め最近のミラーレスは1ステップ。被写体をタップした瞬間、ピントが合ってシャッターも切られるタッチAFを利用できます。とくにKiss MはAFが速いので、素早く撮影可能です。
また、Wi-FiとBluetoothを設定しておくと撮った画像をスマホに自動転送してくれます。ただし、カメラの近くにスマホがないといけないので、スマホはポケットなどに入れておくと良いでしょう。
高速連写はすごいけど持続時間が3秒程度しかありません
Kiss Mは入門機としてはトップクラスの高速連写ができます。7.4コマ/秒で動く被写体にピントを合わせながら撮影でき、スポーツシーンの撮影でも活躍してくれそうなのですが、実は連写を始めてから3秒程度で連写ができなくなってしまうんです…。
そのため、このようにゴールシーンを狙って少し前から連写を始めたら、ゴールの瞬間が撮れてないという悲しい結果にもなりかねません。
写真家の園部大輔さんも「連写するタイミングが難しいです」と語ります。
ただしAF性能は素晴らしく、園部さんも「想像以上の動体追尾性能でしっかりと被写体を追います。想定外の遮蔽物などがない場所では、同クラスの一眼レフと同等以上の性能です」と分析。連写のタイミングさえ間違わなければ、ゴールシーンをきれいに収めることができそうです。
ちなみに、連写中にピンぼけしてしまうという場合は、AFを「サーボ」で連写するのが良いです。特にEOS Mシリーズでは、いきなりシャッターを切らずに半押し状態で被写体をしばらく追って、カメラに被写体を認識させておくのがコツです。
一方、背景をしっかりボカして撮りたいならおすすめしたいレンズがあります。
キヤノン
EF50mm F1.8 STM
実勢価格:1万4270円
(※写真はEF50mm F1.8 STMです)
キヤノン
EF-EOS M
実勢価格:9890円
大きく背景をボカすなら、先ほど「選び方」のところでおすすめしたダブルレンズキットより、こちらのマウントアダプター「EF-EOS M」を取り付けて、豊富な一眼レフ用の明るいレンズから選ぶのが正解です。
中でも「EF50mm F1.8 STM」は「撒き餌レンズ」として名高いレンズ。EOS Mに装着すると望遠寄りになるので、背景をボカして人物やペットの顔を印象的に撮るのにちょうど良いです。ただし、AFは遅めです。
暗い場所での撮影はソニーが一枚ウワテでした
暗い場所での撮影はどうでしょうか。Kiss Mは画像処理エンジンをDIGIC 8へ一新し、高感度画質が向上していると言います。たしかにISO3200から上の感度領域では上位機種の「EOS M5」よりKiss Mのほうが、きれいに解像感を保ちながらノイズを抑えられていました。でも、DIGIC 7搭載の一眼レフ「EOS Kiss X9i」とはほぼ同等だったため、DIGIC 8で高感度の画質が向上したとは言い切れません。
そこで、Kiss Mと同じセンサーサイズの「α6500」と比べてみました。
ソニー
α6500
実勢価格:11万6800円
こちらは、ISO6400でテスト用の素材を撮影したものの比較です。
ISO6400撮影したものの比較では、α6500の方がきれいな画質となっています。試したところ、ISO3200~6400まではα6500のほうがより優れていました。高感度画質については残念ながらもう一歩というところでした。
人気のミラーレス、Kiss Mについてご紹介しました。弱点もありますが、自分の使い方に合っている人にとってはとても優秀なミラーレスといえます。一度試してみてはいかがでしょうか。
次回連載2回目は、フルサイズのミラーレス、ソニー「α7シリーズ」についてお届けします!