「今年はついに手ごたえがあった!」滝音に直撃インタビュー
※インビューは決勝進出者発表前に実施したものです。
――今年のM-1は無事に準決勝に進出しましたね。
――素人目線ですが、準々決勝までは危なげない印象でした。
そう言っていただけると嬉しいですね。実はこれまでのM-1の中でもダントツに手ごたえを感じています。
――例年にはない感じで?
初めて準決勝に進出した2020年は手ごたえもそこまで感じず、キングオブコントでも決勝まで行けたので、そのせいかもと。その翌年は前年より手ごたえがあったのに、なぜか準決勝に行けなくて。それが今年はしっかりかみ合っていて、お互いにそれは感じてたと思うんやけども。
俺はいつも出場してネタをやるたびに〝行った〟と思ってたで。
えー、そうなん?
ただ、行ったと思いながら行けない年が続いたので、今年も期待せんとこと。
1回戦はシードで2回戦からでしたが、そこからあたしは「今年は行けるんちゃう?」って言ってたよな。
確かに言ってたな。
これまでのM-1は、なんというかM-1のためのくだりを無理やり入れていたなと。ウケることはウケるんやけど、こちらが笑ってほしいところとお客さんの笑いにズレがあったというか。
――そこがかみ合ったと。
実は3回戦と準々決勝の間は、めっちゃパフォーマンスが悪かったんですよ。もう芸人になって過去イチというくらいに。これはM-1とか抜きにしても、下がったパフォーマンスを上げていかないと今後に響くなという。まだ良くなったわけではないと思うんですが、そう戒めたのが良かったのか、準々決勝がすごく満足できる漫才になったんです。これまでの賞レースで考えてもそう思わんかった?
俺はもともと自分で納得いくことはないんですけど、今年は確かに失敗してないとは思った。 ちょっとした間違いはあったけどもね。
――間違いですか?
3回戦で友達から彼女を紹介してもらうネタをやったんですが、なぜか舞台に上がった瞬間に緊張してしまい、ネタの入りで言うセリフを間違ってしまいました。あの瞬間をアップで見れたなら、めちゃめちゃ足が震えていたと思います。その後の2〜3くだりは、セリフを言っているだけ(苦笑)。
冷静さを取り戻すための時間だったろうと(笑)。
あの3回戦は初めての東京会場だったんですけど、大阪と比べると〝重かった〟んですよ。それが緊張の原因かもしれません。
ちなみにキングオブコントで決勝に行ったときも、アッキーはネタを飛ばしているんです。むしろアクシデントがあったほうがイイ結果が出るんじゃないか(笑)。
タイムリーエラーになってないだけで、運が良いだけ(笑)
――滝音は今年で9回目のM-1ですが、今と昔で変わったなと感じていることはありますか?
以前はコアというか、寄席でウケへんようなやつが受け入れられる場所という感じやったけど、最近は寄席でウケるようなネタも受け入れてくれる印象です。例えば、昨年優勝した令和ロマンも、そこまで尖ってなかったような。もちろんトップバッターやし、いろいろ計算してるんやろうけども。コアだから勝てるというわけではなくなっている気はします。
学生お笑いも増えていたり、アマチュアも積極的に参加したりして、間口が広がっていることが影響しているんかも。
そういえば、最初にM-1に出場したときはめっちゃスベったよな。当時は動画配信サービスの「GYAO!」で出場者のネタが見れたんやけど、ウチのおかんが俺らのネタを見て「ない!」って一刀両断してきました(笑)。
「出場すんのやめとき」って言われましたから。まあ、その翌年も3回戦で落ちたんですけど。
ただ確実に知名度は上がったから、ありがたい大会です。
そうやね。そのおかげで飯を食えているのは間違いないから。何かの形で恩返しできたらとは思っています。
――ちなみにお2人はどうやってネタを作っているんですか?
いまは2人で作ってますよ。
アッキーがある程度作ってきたやつでやるときもあるし、あたしが持ってきたやつでやるときもあるし。
――滝音の漫才といえば、笑いのツボをくすぐるワードですよね。あれはワードが先なのか、ネタに合わせて考えているのか。どっちなんだろうと思っていて。
それもいろんなパターンがあって、ワードが先のこともあれば、ネタのくだりに合わせて作ることもあって、いろいろですね。
例えば、先ほど話した3回戦のネタで「彼女とLINEをしてたら既読が5も付いたのに返信なくて」「グループLINEかい」というボケとツッコミがあって。その前に嫌われるLINEをしておいたほうがいいかもと思い「お疲れぴょん吉」というメッセージを送るのどう?と。そのとき、さすけが即座に「ど根性ガエル化現象みたいな?」と返して、それめっちゃええやんと。
――共同作業なんですね。
どちらがどうと厳密に決めないで作っているのでラクなんです。
ゲームの「パワプロ」の「サクセスモード」でチームを作っている感じ。お互いに作ってきた選手を合わせて、1つの強いチームを作るという形で。このポジションが弱そうや、だったら作ろうかみたいな。ただ、俺の〝選手〟があまり使われてないときは寂しいけども(苦笑)。
東京進出を果たして変わったことは?
――お2人は同期ではありませんが、どういう経緯でコンビを組むことになったんですか?
アッキーはNSCでも主席に近くて、卒業1年目から劇場のメンバーという優秀な先輩でした。ただ、わりとすぐにコンビを解散して、そこから誰とも組んでいませんでした。そのときに出会って「いろんな人から誘われるんじゃないですか?」と聞いたら「いや、あんまり誘われへん」と。そのやりとりの1週間後にあたしが相方から解散しようと言われて、すぐに連絡しました。
――秋定さんにピンときていた?
というか、お笑いやりたくて芸人になったから、少しでもお笑いを止めたくなかったという感じですね。
俺のほうは年内に相方ができへんかったらお笑いをやめようと思ってたんです。当時27歳くらいでギリギリやったし。
それで、あたしが誘ったのが12月だったんよね。
そうそう。それならあと1回くらい、コンビを組んでみようと。
――絶妙なタイミングですね。
ただ、当時のさすけは「SK-2」という売れるわけないコンビ名でやっていたり、100円ショップで買ったハットをかぶっていたり、一人称も「あたし」やし、こいつダメやろと思っていました
そう考えると、よく組んでくれたよなー。
ネタ合わせくらいならいいかと思って会ってみたら、ネタが面白かったんでまあいいかなと。
――そして現在に至るわけですね。
ただ最初はしんどくて、レギュラーなんて全くなかったです
なんにもなかったな。バイトをやめたのも3〜4年前やし。
はじめはボケとツッコミも逆だったし。ある作家さんにお互いの良さを消し合っていると指摘されて、変えてみたらネタもわりとすぐできてウケるように。それがなければ解散していたかも。
――ここ最近は、大阪の芸人さんが東京進出することが増えました。滝音さんも今年、東京に出てきましたが、何かきっかけは?
これは完全にあたしから言い出したことですね。あたしは芸人仲間と「ジュースごくごく倶楽部」というバンドを組んでいるんですが、そのメンバー全員が東京に住むことになったんです。そのバンドのライブが東京で月1回あって、大阪の仕事やネタ作りなどを並行していくのは絶対に無理やなと思って。それで昨年、アッキーに「すぐにでも東京に行きたい」と相談したんです
それも話し合いというより説得に近くて、「東京行くから」みたいな。
アッキーは「すぐは無理や」と言うから「来年やったらいい?」と。それで渋々OKしてくれました
――東京進出はもともと考えていたことなんですか?
俺はテレビが好きで出演したいというのがあって、もともとは東京に行きたいとは思ってたんです。ただ、俺たちが漫才だけで飯を食えるようになってからメンバーだったよしもと漫才劇場にほとんど還元していない状態。これまでただ助けてもらっていただけで離れるのはどうなのかなと。
それは確かにそうやと。
あと、吉本でもニッポンの社長やロングコートダディ、マユリカが東京に進出して、漫才劇場に中心コンビがいなくなると。そこの大阪の仕事が俺らに回ってくるんじゃないかとも思い、それで箔をつけてからでもええやんと思っていました。
実際、やりたい仕事はほとんどできたもんな。劇場のカンバンやって。アッキーは大ファンのオリックス・バファローズのファン感謝祭でMCの仕事を任せてもらったり、その1年間でいろんな仕事ができました。
滝音の考えるこれからの展開
――昨年は全国ツアーを開催しましたが、今年はどうでしょう?
あれは正直しんどいですよ。
あたしら、ホンマに自分の意思で単独ライブをやろうと思ったことなんて、過去に1回くらいしかありませんから。やるならこだわりたいし、ポスターとか音楽とかまで。なので、どうしても大変になるのがわかるんです。
大阪時代に「ヨシモト∞ホール」から「単独ライブやりませんか?」というお誘いを受けたことがあって。ただ、メンバーだった漫才劇場でも3年くらい単独をやってなくて「∞ホール」でやるのもなと思い、両方でやることにしたんです。ただ自分で決めたことやし、「終わったら休めるわ」とモチベーションを上げてたんですけど、その開始前に吉本興業の社員さんから「単独やりません?」という別件を振られて。
もう無理やもんな。
さすがに、それを聞いた瞬間にひざと手を床につけて「無理です」と。社員さんは事情を知らなかったので、ものすごく失礼なことをしましたが、無理でした。
まあ、良かれと思って言ってくれたはずやけども……。
ただ、ホンマに「ごめんなさい、無理です……」と震える声が出ました(苦笑)。
――そちらにいらっしゃるマネージャーさんが微妙な表情に。
ホンマにマネージャーが有能すぎるから、そのおかげもあってお仕事をたくさんいただけるというか、あたしらのケツをしっかり叩いてくれるんですよ。普段は新ネタライブや主催ライブなんてせえへんのですが、それでやらせていただきまして。そしたら、その日のうちに「次のやつ入れます」と。そんなの言われなやれへん。
普通にさぼるから。
――では、滝音の今後の目標は?
長期的な目標というか夢みたいなもので言うと、アッキーがテレビで売れてコンビの知名度も高まりつつ、あたしは劇場の出番だけあるのが理想です。
ふーん、そんなことを考えてたとは知らんかった。
ラクして稼ぎたいとかではなく、あたしは芸人気質じゃないんです。テレビにバンバン出演して売れたいというよりも、ネタを作っているのが一番楽しい。舞台で人と違うことをやるとか、誰も言ったことのないワードやセリフを言いたいというのが芯にあるんです。なので、相方がテレビでガンガン売れてくれるのが一番いいなと思っています。
俺はテレビに出たいとか、それでチヤホヤされたいという思いがあります。お笑いと全く関係のない情報番組なんかも、普通に楽しそうだし、オファーが来たら出演します。あとは、もうちょっとだけ収入があったら嬉しいというのもありますね。
収入増やしたいんや?
たくさんというわけじゃなく、あと少し欲しいくらい。ただ、そのためにガツガツという感じでもなくて、今の感じを維持したままで増えてくれたらいいなと。
それは確かに。ずっとこのままで仕事を続けていくのが一番の目標かもしれん
――テレビの頂点を獲るみたいなことは全く思わないですか?
俺にテレビの頂点は無理です。
無理やなぁ。このままを崩さず行けるならいいけども(笑)。
なんというか、今の社会はみんな頑張りすぎやと思うけど、そんなに頑張らんでもと。ほどほどに頑張りながら、人生を楽しみたいのが滝音の目標やね。
――今後の滝音にも注目ですね。今日はありがとうございました!
ありがとうございます。
去年とおととしは準々決勝で敗退したので、とりあえず一安心です。