専門家も嫉妬する「スマート望遠鏡」という最強アイテム
天体望遠鏡は聞いたことがあるけど、「スマート望遠鏡」って一体何がスゴいのかわからないですよね。実は、知識不足も有識者の不在も一気に解消してくれるのが強み。その実力は専門家が「ズルい!」と驚くほどの実力です。
まだまだ製品数が少ないですが、今回はヴァオニス「VESPREA Ⅱ」とZWO「Seestar S50」の2製品の実力を「家電批評」編集部が星空のもと徹底的に解説します!
「スマート望遠鏡」とは一体なに?
Point1:はじめてでも銀河が撮れるのが「スマート望遠鏡」
「スマート望遠鏡」のスゴさは、専門的な知識が一切必要ないこと。本来、夜空見上げて肉眼では見えにくい天体を探すのも、それを綺麗に撮影するのも知識と技術が必要です。
今回の検証テストでは初心者の編集部員がM51・子持ち銀河(りょうけん座の銀河-距離2800万光年)を撮影にチャレンジしたところ、こんなにキレイに撮影することができました。「スマート望遠鏡」があれば何も知らない素人でも観測・撮影がすぐにできるんです。
Point2:一般的な望遠鏡よりも小型で組み立て不要!
組み立てると成人男性の背丈ほどにもなる一般的な望遠鏡と比べ、「スマート望遠鏡」はかなり小型で軽量。組み立ても三脚を取り付けるだけなので、手間がかからず収納時のスペースもかなり省スペースです。
Point3:操作はすべてスマホかタブレットで行います
ZWO「Seestar」
ZWO
「Seestar」
ヴァオニス「Singularity by Vaonis」
ヴァオニス
「Singularity by Vaonis」
専用のアプリをインストールして操作します。スマホよりも画面の大きいタブレットの方が見やすくておすすめです。
Point4:星を探す→撮影→合成までほぼ自動です!
STEP1:星を探す
STEP2:GPSで現在地を把握
STEP3:選んだ星を自動で探す
スマホ・タブレットとWi-Fiに接続することでGPSにより現在地を把握。その情報を基に指定した天体を自動導入(※)&追尾して観測をスタートします。
※目当ての天体を望遠鏡の視界に入れること
STEP4:撮影して合成
STEP5:同じ写真を何枚も撮る
STEP6:合成してより繊細に!
天体写真では撮影した画像を何枚も合成(スタック)して写真を繊細にする手法が用いられます。その合成をリアルタイムで行える「ライブスタック」に対応しています。
Point5:望遠鏡としての光学スペックは2製品とも実は同等です
そもそも口径や焦点距離って何?
口径………レンズそのものの大きさ(直径)のこと。大きいほど淡い天体までよく見えます。
焦点距離…短いと写る範囲が広がり、長いと範囲が狭くなって被写体が大きくなります。
口径比……焦点距離と口径から計算される数。数値が低いほど光を取り入れる量が増えます。
ヴァオニス「VESPERA Ⅱ」とZWO「Seestar S50」は価格にかなり差がありますが、望遠鏡としての性能を表す光学スペックは、なんとどちらも同じ。ただ、ヴァオニス「VESPERA Ⅱ」の方がイメージセンサーのサイズが大きいためより広範囲を一度に撮影できます。
また、レンズには大きなセンサーに対応するため贅沢な光学系が採用されています。
Point6:天体の検索機能はどちらもかなり優秀!
星図から観測したい天体を探して選択、そのまま観測を開始できます。視覚的にわかりやすいので、星の名前などの知識がなくても検索が簡単です。
場所と日時を指定すれば、それに応じた観測プランを作成可能。どの時間帯に何が見えるのかが一覧で表示されるうえ、おすすめまで提案してくれます。
Point7:実は住宅街でも活躍できます!
望遠鏡を直接覗き込むのではなく「スマート望遠鏡」のように撮影した天体映像をほぼリアルタイムで眺めることを「電視観望」といいます。電視観望は夜空が多少明るくても可能なので、クオリティは下がるものの住宅街でもそこそこ楽しめます。
また、専用のフィルターを用いて上の写真のような太陽の黒点を観察・撮影でき、遠出せずとも活躍できるんです。
※写真出典:https://store.seestar.com/ja/products/seestar-s50
天体写真がカンタン&高画質で撮影できるヴァオニス「VESPERA Ⅱ」
ヴァオニス「VESPERA Ⅱ」
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専門家が「ズルい!」と連呼するほど高機能
ヴァオニス「VESPERA Ⅱ」の特筆すべき点は「モザイクモード」という、リアルタイムで隣接するエリアを撮影した複数の画像を繋ぎ合わせる機能を搭載していることです。これにより、さらに広範囲で高精細な天体写真を撮影できます。
約30万円とかなり高額に感じますが、同様の撮影をする場合、望遠鏡にカメラ、画像編集ソフトをそろえる必要があるため、それらが必要なく天文専門誌に掲載されるレベルの撮影がカンタンにできてしまいます。
- 幅
- 200mm
- 奥行
- 90mm
- 高さ
- 480mm
- 重量
- 5kg(三脚を除く)
- 口径
- 50mm
- 焦点距離
- 250mm
- 口径比
- 1:5 (F5)
- レンズ構成
- 4群4枚
- センサー画素数
- 3840×2160(8.3メガピクセル)
- センサーサイズ
- 11.2×6.3mm(画素ピッチ2.9μm)
- バッテリー動作時間
- 4時間(内蔵)
- 機能
- オートフォーカス、自動観測、モザイクモード、太陽観測
- 型番
- VA0011
検証1:機能性編
接続はかなりスムーズで起動時にストレスがありません。観測は開始までやや時間がかかりますが、以降は全て自動なので、別のことをしながら待っているだけでOK。
検証2:撮影編
アプリから観測したい天体を選択。観測開始時に「モザイクモード」を選ぶと、その天体周辺にある他の天体も表示されるので、撮影したい範囲が枠内に収まるように操作します。
撮影が開始されると初めは角などが欠けた状態で表示されますが、時間の経過とともにどんどん合成されて欠けた範囲が埋まっていきます。45分〜1時間ほどで欠けはなくなります。
たった45分でセンサーサイズを超えた高解像度で綺麗な天体写真を撮影できます。
検証3:付属品
三脚は別売りのものを購入、またはドイツネジタイプで耐荷重5kg以上の三脚の用意が必要です。車で運ぶことを考えると専用ケースも欲しくなりますが、こちらも別売りでかなり微妙です。
手軽に始めたいなら脅威のコスパのZWO「Seestar S50」
ZWO「Seestar S50」
- ZWOSeestar S50
- 検証時価格: ¥86,700〜
コスパ良しで手軽に天体観測が始められる
天体写真用カメラやスマートデバイス、天体撮影用アクセサリーを提供している中国の「ZWO」。カメラやデバイスを製作してきた経験をフル動員し、コストをかなり抑えて開発されているのが特徴です。
30万円級とほぼ同じことがたった8万円ほどでできてしまう驚きのコスパ。ヴァオニス「VESPERA Ⅱ」より画質は落ちるものの星雲の色調をしっかりと捉えられ、ヒーター内蔵で結露対策もバッチリです。
標準アクセサリーも充実しており、手軽に天体観察を始められます。
- 幅
- 142mm
- 奥行
- 129mm
- 高さ
- 257mm
- 重量
- 2.5kg(三脚を除く)
- 口径
- 50mm
- 焦点距離
- 250mm
- 口径比
- 1:5 (F5)
- レンズ構成
- 3群3枚
- センサー画素数
- 1920×1080(2.1メガピクセル)
- センサーサイズ
- 5.6×3.2mm(画素ピッチ2.9μm)
- バッテリー動作時間
- 6時間(約)
- 機能
- オートフォーカス、自動観測、太陽観測
検証1:機能性編
深夜まで続けることもある天体の観察では望遠鏡の結露対策が必須。本製品は内部にヒーターが備え付けなので別途対策を用意する必要がありません。
検証2:撮影編
アプリがおすすめする天体を簡単に撮影できます。星雲の色調をしっかりと捉えた仕上がりで、時間をかければかけるほど精細な写真になります。
20分で赤色をしっかりと表現できています。
検証3:コスパ編
今回一緒に検証したヴァオニス「VESPERA Ⅱ」と比較するとモザイクモード以外できることはほとんどヴァオニス「VESPERA Ⅱ」と同じ。30万円級とほぼ同じことがたった8万円でできてしまいます!
【まとめ】どちらも高性能! コスパで選んでもOK
ヴァオニス「VESPERA Ⅱ」(約30万円)とZWO「Seestar S50」(約8万円)で価格の開きがかなりありますが、どちらの製品もA評価と性能がかなり高いのでどちらも天体観望をしっかりと楽しめます。
ヴァオニス「VESPERA Ⅱ」は唯一無二の「モザイクモード」を搭載しており、角などの欠けた範囲を合成してどんどん埋めていってくれます。画像ソフトやカメラなど必要なく高繊細な撮影をすることが可能です。
ただ、コスパや手軽さを考えるのであればZWO「Seestar S50」がおすすめ。初心者用の天体望遠鏡でも5万円ほどするものが、スペックや付属品を考えても+3万円で購入できるのでコスパの良さはダントツです。
今年の夏は「スマート望遠鏡」を相棒に天体観測に出かけてみるのはいかがでしょうか?
その日初めて望遠鏡(Seestar S50)を触って、初めて撮った写真がこちら。知識ゼロでもキレイに撮れました!