ベストバイ常連の「ホットクック」にライバル登場
出かける前に食材をセットしておけば、帰宅時においしいごはんができあがっている。そんな“ほったらかしの自動調理”を8年前から実現しているのがシャープのホットクックです。
最近ではホットクックに似た自動調理鍋も増えてきましたが、検証してみるとホットクックはやはり優秀。雑誌『家電批評』の検証でも、ベストバイの常連でした。
そんな中、圧力や炒めなどホットクックにはない機能を搭載してパナソニックが新規参入。これは比較しないわけには行きません。
そこで今回は、シャープ「ヘルシオ ホットクック KN-HW24G」とパナソニック「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」の比較検証レビューをお届けします。
「自動調理鍋」と「電気圧力鍋」はどう違う?
検証の前に、そもそも「自動調理鍋」と「電気圧力鍋」はどう違うのか?という点を確認しておきましょう。
電気圧力鍋は一定以上の圧力をかけて調理するので食材の火の通りが早く、時短につながるのが大きな特長。その一方、途中でかき混ぜなければいけないなど自動化の面では不利でした。
自動調理鍋は調理時間は長めですが、かき混ぜ機能があり、完全自動調理が可能な機種も多くあります。
自動調理鍋と電気圧力鍋の違い
かき混ぜ機能 | 圧力機能 | 完全自動調理 | 予約調理 | 調理時間 | 参入メーカー | |
自動調理鍋 | あり | なし | 多くの機種が対応 | 可能な機種が多い | 長め | 少ない |
電気圧力鍋 | なし | あり | 非対応が多い | 非対応が多い | 短め | 多い |
シャープ「ヘルシオホットクック」とパナソニック「オートクッカー ビストロ」の特徴
自動調理鍋と電気圧力鍋の違いをふまえたところで、今回検証する2製品の特徴を見てみましょう。まずはシャープ「ヘルシオ ホットクック」です。
シャープ「ヘルシオホットクック KN-HW24G」
シャープ
ヘルシオ ホットクック
KN-HW24G
実勢価格:¥48,500
サイズ・重量:W345×D305×H256・約5.8kg
シャープ「ヘルシオホットクック KN-HW24G」は、センサー付きのかき混ぜユニット(まぜ技ユニット)で完全自動調理ができるのが特徴です。
2つの羽根が回り、満べんなくかき混ぜます。負荷センサーで食材の量や柔らかさを推測して混ぜる力を制御する仕組みです。
パーツは全5点
- 1 内鍋
- 2 まぜ技ユニット
- 3 つゆ受け
- 4 内ぶた
- 5 蒸しトレイ
取り外し可能なパーツは5個で、とくに内鍋、内ぶたは軽め。つゆ受けはふたを開けたときに水滴を受けてくれるので便利でした。まぜ技ユニットは、さらに分解可能です。
パナソニック「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」
パナソニック
オートクッカー ビストロ
NF-AC1000
実勢価格:¥88,000
サイズ・重量:W333×D336×H260mm・約8.2kg
続いて、パナソニック「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」です。こちらは圧力をかけながら、食材もかき混ぜます。時短と自動の両狙いが特徴です。
羽根は内なべの中心にセット。鍋底からかき混ぜ、鍋をゆすったような動きを食材に与えることで“炒め”を再現します。
パーツは全4点
- 1 内ふた
- 2 内なべ
- 3 羽根
- 4 蒸し板
パーツは4個で、内なべ、内ふたはしっかりとした重さがあります。羽根はフックの様になっており、内なべの中心にある突起に合わせて簡単に着脱可能です。
その他のスペックの比較はこちら!
ホットクックはレシピとラインナップの多さ、オートクッカービストロは多機能さが特徴です。
消費電力 | メニュー | 保温 | 調理方法 | クラウド | ラインナップ | |
ホットクック | 800W | 本体自動メニュー133 (予約可能42)/クラウド込みで580 |
最大12時間 | 煮る/無水/低温/蒸す/ つぶす/泡立て/ 2段調理(蒸す+煮る) |
COCORO KITCHEN (Wi-Fi接続) |
容量別の3ライン |
オートクッカー ビストロ | 1290W (切では800W) |
本体搭載自動メニュー25 (うち予約可能12)/クラウドで追加配信 |
最大12時間 | 煮る/圧力/無水/炒め/ 低温/蒸す/つぶす |
キッチンポケットアプリ (WI-Fi接続・アプリ必須) |
1モデル |
おいしさの検証:公式レシピの料理を作って比較
それでは、実際に料理を作って検証です。まずはそれぞれの公式レシピで作った6つの料理を、おいしさで比較しました。
調理の流れはどちらも同じで、レシピもクラウドから追加可能。操作は炊飯器に似た安心感のある「ホットクック」に対し、「オートクッカービストロ」はデジタル製品のようなシンプルさで若い世代をより意識していそうな印象です。
なお、それぞれの料理の調理時間は鍋に食材を投入してから、完成までにかかった時間の実測例となります。
1:ポークカレー
ホットクック(おいしさ:微妙/簡単さ:微妙)
- 調理時間:68分
- 材料8種類
- 無水・完全自動
1:食材をセット
2:レシピを選ぶ
3:調理開始
4:完成
ホットクックのウリでもある無水調理を活用したカレーです。じゃがいものおいしさは◎ですが、材料の「生姜、にんにく適量」に戸惑いました。普段カレーに入れない食材は、分量を示してほしいところ。
玉ねぎ2個のみじん切りが大変なわりに、仕上がりに甘みやコクがいま一歩。手間に対しておいしさが見合っていません。炒めが足りないような青臭さが、玉ねぎから感じられたように思います。
なお、ホットクックのカレーはビーフカレーのほうが一般的な材料と調理手順ですが、今回は筆者も編集部も東京在住ということで、関東圏でポピュラーなポークカレーをカレーの代表例として取り上げました。
オートクッカー ビストロ(おいしさ:優秀/簡単さ:優秀)
- 調理時間:37分
- 材料6種類
- 完全自動
1:食材をセット
2:レシピを選ぶ
3:調理開始
4:完成
水を使う一般的なレシピで、切って入れるだけの簡単調理です。圧力をかけないので薄切り肉を使用。じゃがいもは滑らかでにんじんは柔らかく、ルウは濃度のある仕上がりになりました。おうちカレーのお手本のようなおいしさです。
2:ポテトサラダ
ホットクック(おいしさ:良好/簡単さ:良好)
- 調理時間:26分
- 材料:9種類
- ほぼ自動調理
材料と水を入れるだけの簡単調理。強力な潰し機能でにんじんも一緒に潰します。最後にマヨネーズなどを手動で混ぜるだけと、ビストロよりも手間は少なめ。食感は滑らかで、昔ながらの素朴なおいしさのポテサラです。
オートクッカー ビストロ(おいしさ:優秀/簡単さ:許容範囲)
- 調理時間:35分
- 材料:10種類
- 一部手動調理
コンソメで下味を付ける巧みなレシピ。いものごろっとした感じの残る崩れ具合も、見た目も◎です。自動化されたのはマッシュまでですが、酸味と深みと後にひく旨さがあり、デパ地下のような今風の味付けに仕上がりました。
3:ビーフシチュー(ルー不使用)
ホットクック(おいしさ:良好/簡単さ:やや微妙)
- 調理時間:87分
- 材料:15種類
- 一部手動調理
ビーフシチューのレシピは、どちらの製品もルーを使う/使わないの2パターンがあります。こだわりあるレシピを試してみようという意図のもと、ルーを使わないレシピで比較しました。
肉をワインで炒めてからホットクックに入れますが、このひと手間のメリットがあまり感じられませんでした。野菜多めのファミリー向けの仕上がりで、家族みんなで食べられるおいしさです。
オートクッカー ビストロ(おいしさ:良好/簡単さ:合格)
- 調理時間:102分
- 材料:21種類
- 圧力・一部手動調理
ココアや唐辛子などこだわりの食材を使ったレシピは、少し甘めですが大人な味付け。大きく切った肉も豪快で満足度が高く、にんじんも柔らかで、お店のような高級感のある一品です。圧力調理ですが時間はかかります。
4:角煮
ホットクック(おいしさ:優秀/簡単さ:許容範囲)
- 調理時間:142分
- 材料:10種類
- 一部手動調理
ホットクックは茹でこぼし(肉を洗う)の手間こそありますが、できあがりを食べると絶対必要な工程だと感じます。肉の部分は柔らかさ、ふっくらさはビストロを超えています。そして脂も甘い。お肉の味がしっかり感じられました。
なお、ニンニクの匂いはちょっと気になりましたが、これは好みの問題でしょう。
オートクッカー ビストロ(おいしさ:とても良好/簡単さ:とても良好)
- 調理時間:113分
- 材料:10種類
- 圧力・ほぼ自動調理
圧力調理。食材などを入れたら途中ではちみつを入れるだけと調理そのものはホットクックより簡単。肉の食感は良好ですが、やはりホットクックと比べると多少パサつきます。
しかし、それを味付けでカバーしており、やや濃いめの味付けはお酒に合います。
5:肉じゃが
ホットクック(おいしさ:良好/簡単さ:良好)
- 調理時間:34分
- 材料:8種類
- 無水・完全自動調理
調理は簡単。味付けの醤油がやや強めですが、じゃがいもがホクホクとなめらかで美味しく仕上がりました。出来上がりは汁気が多い印象でした。
オートクッカー ビストロ(おいしさ:良好/簡単さ:良好)
- 調理時間:39分
- 材料:10種類
- 完全自動調理
「ホットクック」と同じく調理は簡単。じゃがいもがホクホクしてなめらかで、お肉も美味しいです。こちらは汁が多すぎず、バランスよく仕上がりました。
6:独自機能の比較
ホットクック【2段調理】(おいしさ:優秀/簡単さ:優秀)
- 調理時間:23分
- 材料:10種類
- 完全自動調理
ホットクックの独自機能(2段調理)を使い、牛丼の具とナムルを作りました。公式レシピをアレンジし、下段で牛肉と野菜を煮て、その蒸気で上段のもやしとにんじんを蒸してナムルを調理。牛丼はおいしく、ナムルもさっぱりした味です。20分で2品できるのは便利です。
オートクッカー ビストロ【炒め】(おいしさ:良好/簡単さ:優秀)
- 調理時間:10分
- 材料:9種類
- 完全自動調理
「オートクッカー ビストロ」の独自機能でチャーハンを作りました。ご飯に卵を混ぜてから鍋に投入します。
やや油っぽさのあるしっとり系の炒飯ですが、電気調理とは思えないパラパラさ。冷めないうちに食べたほうがおいしいので、お弁当には不向きかもしれません。ガスでの調理には及びませんが、約10分でチャーハン2人分が完成するのは実用的です。
使用感の検証:使い勝手の良さを比較
自動調理鍋はおいしさはもちろんですが、使いやすさも重要。洗いやすさやアナウンスのわかりやすさをチェックしました。
パーツの使いやすさは?
取り外しできるパーツは「ホットクック」のほうが軽量で、凹凸も少なく洗いやすいです。ただし、今回の検証では調理工程全体の洗い物の多さなどで「片付けやすさ」の評価が下がってしまいました。
一方の「オートクッカー ビストロ」は羽根が単純で洗いやすいものの、やや重ため。また、内なべの突起部分の付け根についた汚れを落としづらいのが気になります。
なお、食洗機への対応は、「ホットクック」は内鍋以外のパーツが対応、「オートクッカー ビストロ」は全パーツ非対応です。
ホットクック:細かいところまで配慮を感じるつくり
取り外し可能なつゆ受けのおかげで、ふたなどに蒸着したお湯が溜まりにくい構造が優秀。
内鍋は薄くて軽く、汚れを落としやすい構造です。内ぶたも軽量でした。
オートクッカー ビストロ:細かい部分があと一歩
蒸気からのお湯がふたの内側などに溜まります。開けた際にお湯が手に当たりそう……。
圧力調理時は吹きこぼれ防止のためタオルをかけますが、不要なほうがうれしいです。
音声や表示のガイドは?:「ホットクック」はしゃべる、「ビストロ」は静か
ホットクック:残り時間などを音声で知らせてくれる
「ホットクック」は音声と液晶画面で状況や時間を教えてくれます。残り時間や完成5分前などは音声でアナウンス。キッチンを離れてほったらかし調理をしていると便利です(有料で人気声優の音声に変更することも可能)。
なおホットクックには音声広告などを受信する機能があるため、ときどき宣伝が流れますが、本体メニューの「お役立ち情報配信設定」で受信を止められます。
オートクッカー ビストロ:残り時間は液晶表示
「オートクッカー ビストロ」は音で知らせてくれ、液晶画面では残り時間をカウントダウン(1分刻みの表示)。途中で手を加える場合のタイミングは、残り時間と交互に表示されます。
完成後は保温表示に切り替わり、カウントアップされます。
レシピはどっちが使いやすい?
自動調理鍋の公式レシピも仕上がりを決める重要ポイントです。両製品のレシピを比べてみると、材料や調味料、切り方などから、「ホットクック」はファミリー、「オートクッカー ビストロ」は自宅でお店気分が味わえる食卓がイメージできます。
また、分量の変更はメニューによりますが、どちらも2〜6人分の間で可能です。
レシピの完成度としては「オートクッカー ビストロ」のほうが上ですが、予約調理は「ホットクック」のほうが幅広く対応していて、それぞれに長所があります。
ホットクック:レシピにカロリー表記あり
ホットクックのレシピはカロリー表記があり、健康に気を使うユーザーには嬉しい配慮。また切り方はシンプルな書き方ですが、わかりやすいです。
オートクッカー ビストロ:レシピにカロリー表記なし
ビストロはカロリー表記がないですが、満足度が高いレシピ。スマホアプリで減塩に調整できるメニューもあります。切り方にcmを添えるのは親切ですが、長さなのか幅なのかわかりにくい面も。
シャープ「ヘルシオ ホットクック」とパナソニック「オートクッカー ビストロ」の検証まとめ
今回の検証では、使い勝手では先駆者のシャープ「ヘルシオ ホットクック」がやや優りますが、自動調理に大切な予約調理や保温、クラウドからのレシピ追加といった基本機能は両者同レベル。
そのため、調理の簡単さやおいしさのわずかな差を争う展開となりました。
その結果、僅差でベストバイに輝いたのがパナソニック「オートクッカー ビストロ」です。圧力調理が可能という機能面というより、調理手順や味付けに大きな弱点がなく、レシピ通りに調理すれば誰でも簡単においしくできることを家電批評では高く評価しました。
また、調理の簡単さや片付けの容易さは、下ごしらえから洗い物までは調理工程全般を各レシピごとにジャッジしましたが、今回試したレシピでは、パナソニック「オートクッカー ビストロ」のほうが手間が少ない傾向にあったことも勝因です(そのため、どんなレシピを試すかで評価がある程度変わります)。
ただし、先行していたシャープ「ヘルシオホットクック KN-HW24G」のほうがレシピの数は圧倒的に豊富で予約できる料理も多いため、予約を重視する人はホットクックを選んだほうが満足度が高いかもしれません。
最後に、それぞれの製品の買うべき理由と見送る理由をまとめました。自分にどちらが合っているか、参考にしてみてくださいね。
パナソニック「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」
パナソニック
オートクッカー ビストロ
NF-AC1000
実勢価格:¥88,000
サイズ・重量:W333×D336×H260mm・約8.2kg
▼テスト結果
- 簡単さ :4.2/5点
- おいしさ :4.4/5点
- 片付けやすさ:3.5/5点
- レシピ数・質:3.0/5点
- 総合評価:3.8/5点
買うべき理由
公式レシピの完成度の高さ! 誰でも相当おいしく作ることができます。
見送るべき理由
蒸気問題など改良を求めたい点も。レシピ数の少なさも課題の1つです。
シャープ「ヘルシオホットクック KN-HW24G」
シャープ
ヘルシオ ホットクック
KN-HW24G
実勢価格:¥48,500
サイズ・重量:W345×D305×H256・約5.8kg
▼テスト結果
- 簡単さ :3.4/5点
- おいしさ :4.0/5点
- 片付けやすさ:3.2/5点
- レシピ数・質:4.0/5点
- 総合評価:3.6/5点
買うべき理由
食材に負担をかけないゆっくり調理でおいしい仕上がり。レシピ数や予約調理の充実度も魅力。
見送るべき理由
圧力機能はないため時短は望めません。レシピの質は改善の余地があります。
以上、シャープ「ホットクック」とパナソニック「オートクッカービストロ」の比較検証でした。僅差となった点差の通り、どちらも本当にハイレベルで、検証や撮影の現場がかつてないほど盛り上がった今回の検証。
いずれも優秀なのでおすすめですが、「簡単・おいしい」がよりハイレベルな「オートクッカー ビストロ」を新ベストバイに決定しました。とはいえ、両者の今後の進化にますます期待しています!
電気調理鍋の売れ筋ランキングもチェック!
電気調理鍋のAmazon・楽天の売れ筋ランキングは、以下のリンクからご確認ください。
分量の変更はホットクックが自動でビストロは選択が必要です。ただしビストロはレシピが分量ごとに分かれていて安心感がありますね。