Appleの最新モデルはどう進化している? 買ってOK?
2023年に入ってAppleが新製品を一気に発売しました。
それも、従来モデルのプロセッサーを強化するような「正常進化」のモデルだけでなく、5年ぶりに世代交代したスピーカーや、シリーズ初の上位モデルが登場した「Mac mini」など、攻めてきたラインナップなのです。
そこで、雑誌『家電批評』が専門家とともに、Appleの新製品を徹底調査。オススメできる仕上がりなのか、どこまで進化したのか検証しました。
Appleの新製品を選ぶ前に知っておくべきことは?
レビューを紹介する前に、Appleの新製品を選ぶ際に重要なポイントをお伝えします。
新製品のポイント1:Mac各製品の立ち位置をチェック
まずは、製品名が似ていてややこしいMacの立ち位置をチェックしておきましょう。
ノート型のシリーズは14インチと16インチのApple「MacBook Pro」がハイエンド、Apple「MacBook Pro」の13インチとApple「MacBook Air」がエントリーモデルという位置づけです。
一方、デスクトップ型はいつの間にかモニター別売の製品が大半になり、プロセッサが古く性能面では最も低いApple「iMac」をApple「Mac mini」でサンドイッチするという、わかりづらい構成になっています。
新製品のポイント2:「M2」とか「M2 Pro」って何?
20年後期以降に発売されたMacにはApple自社開発のプロセッサ「Apple Silicon」が搭載されています。iPhoneで長年使われる「A」シリーズプロセッサをパソコン用に高性能化したものです。
低消費電力や高性能なグラフィック処理などのメリットの一方、メモリやストレージの増設が一切できなくなる、端子数がプロセッサで決まってしまうなど悩ましい問題も抱えており、Macを選ぶ重要ポイントなのです。
Mシリーズにはさまざまな派生モデルがありますが、Windows PCのように「低性能だが拡張性は高い」「CPUは遅いがメモリだけ大容量」といったモデルは存在しません。
Mac miniから「M2」「M2 Pro」搭載モデルが登場
モニターやキーボード・マウスが付属せず、低価格の小型デスクトップとして人気のApple「Mac mini」。その新製品が2023年2月3日に登場しました。
2020年11月発売のM1搭載モデルと外見はまったく一緒ですが、新モデルは「M2」「M2 Pro」を搭載。しかも、前モデルは7万9800円から9万2800円に値上げされたにもかかわらず、新モデルは最安で8万4800円と値下がりしています。これは大注目ですね。
そこで今回はApple「Mac mini M2 搭載モデル」とApple「Mac mini M2 Pro 搭載モデル」がおすすめなのか、実力をチェック。それぞれの違いや、旧モデルと比較したレビューを紹介します。
Apple「Mac mini M2」
Apple「Mac mini M2 搭載モデル」
Apple
Mac mini M2 搭載モデル
実勢価格:8万4800円〜
サイズ:W19.7×D19.7×H3.58cm・1.18kg
▼通常構成(CPU/8コア、GPU/10コア)
- 8GBメモリ・256GB SSD:8万4800円
- 8GBメモリ・512GB SSD:11万2800円
▼おすすめ構成(CPU/8コア、GPU/10コア)
- 16GBメモリ・1TB SSD:16万8800円
▼最大構成(CPU/8コア、GPU/10コア、10ギガビットEthernet)
- 24GBメモリ・2TB SSD:26万6800円
Apple「Mac mini M2」は安くなりましたが、拡張性がやや不満な下位モデルです。
Apple「Mac mini M2 Pro 搭載モデル」
Apple
Mac mini M2 Pro 搭載モデル
実勢価格:18万4800円〜
サイズ:W19.7×D19.7×H3.58cm・1.28kg
▼通常構成(CPU/8コア、GPU/10コア)
- 16GBメモリ・512GB SSD:18万4800円
▼おすすめ構成(CPU/12コア、GPU/19コア)
- 16GBメモリ・1TB SSD:25万4800円
▼最大構成(CPU/12コア、GPU/19コア、10ギガビットEthernet)
- 32GBメモリ・8TB SSD:63万2800円
Apple「Mac mini M2 Pro」は性能と拡張性で勝る上位モデル。「M2 Pro」搭載モデルなら、トリプルディスプレイや最大240Hzのゲーミングモニターにも対応できます。
「M2版」と「M2 Pro版」では外部モニターの扱いが全然違う
店頭販売モデルは、Apple「Mac mini M2」がストレージ容量違いで2製品、そこにApple「Mac mini M2 Pro」を足した3通りです。
Apple「Mac mini M2」の2製品はストレージ容量の差だけですが、Apple「Mac mini M2」とApple「Mac mini M2 Pro」ではチップ以外にも差があります。
Apple「Mac mini M2 Pro」はメモリやストレージの最大容量が大きく、Thunderboltのポート数も倍の4つ。Apple「Mac mini M2 搭載モデル」は最大2台ですが、Apple「Mac mini M2 Pro」は最大3台のモニターに出力できます。
新「Mac mini」の性能をプロと検証
続いては、Apple「Mac mini M2」とApple「Mac mini M2 Pro」の性能はどうなのか、4Kのプロモーション映像で動画編集検証を実施。2020年11月発売の「Mac mini M1世代」、2022年3月に発売された上位製品「Mac Studio」とも比較しました。
検証方法
カメラマン・動画編集者の橋詰さんが業務で作成した3分34秒のPVをAdobe Premiereで編集しました。
なお、旧製品のApple「Mac mini M1」は8コアCPU・8コアGPUで16GBメモリを搭載。新製品のApple「Mac mini M2」は8コアCPU・10コアGPUで8GBメモリを搭載。
同じく新製品のApple「Mac mini M2 Pro」は12コアCPU・19コアGPUで16GBメモリを搭載。チップがアップグレード(+4万2000円)されており、標準より高性能です。
そして、Apple「Mac Studio M1 Max」は10コアCPU・24コアGPUで、32GBメモリ搭載の最小構成です。
検証結果:10万円以下のPCで、何ができるのか?
ベンチマークではApple「Mac mini M2(8コア)」はApple「Mac mini M1(8コア)」の約1.2倍の性能で、Apple「Mac mini M2 Pro(12コア)」はさらにその1.7倍ほど高性能。
実際に動画編集作業を行ってみると、Apple「Mac mini M2」は8GBメモリのせいか、やや動作が重めでした。しかし、10万円以下の価格を考えれば十分すぎるほど優秀です。
なお、16GBメモリのApple「Mac mini M2 Pro」ではまるでストレスを感じませんでした。
それでは、検証結果をもっと詳しく見ていきましょう。
検証1:4K動画マルチ編集
検証方法
4K動画を複数トラック読み込み、編集作業の快適さを検証。容量を軽くしたプロキシ映像(※)でも検証しました。
※プロキシ映像:動画編集作業は動画の容量に大きく影響されます。このため、大容量の動画を扱う際は作業をスムーズに行うため、編集用に容量を小さくした代理ファイルを使います。これがプロキシ映像です。
「Mac mini(M1)」【検証結果:良好】
4Kフル画質では2トラックの同時編集でもスムーズにプレビュー再生されます。ミディアム画質のプロキシ映像なら、9トラックまでいけます。
「Mac mini(M2)」【検証結果:合格】
8GBメモリのせいか快適に作業できるのは4Kフル画質だと1トラックのみ。プロキシ映像なら、9トラックまで快適に作業できました。
「Mac mini(M2 Pro)」【検証結果:優秀】
4Kフル画質で3トラックまで同時に編集しても作業もプレビューも快適。プロキシ映像だと今回の最大数、15トラックでも快適でした。
「Mac Studio(M1 Max)」【検証結果:優秀】
4Kフル画質では3トラックまでの同時編集でもリアルタイムに反映されます。プロキシ映像だと15トラックの同時作業でも余裕です。
検証2:動画のシーク
検証方法
複数トラックのプレビューを並べたり、レイヤーを重ねた状態で動画のシークを行い、その快適さを検証しました。
「Mac mini(M1)」【検証結果:合格】
シークバーを動かしたところ、動画のプレビューに多少のラグを感じます。とはいえ、問題なく作業できるレベルです。
「Mac mini(M2)」【検証結果:合格】
4K映像だとプレビューの反映に多少のラグを感じます。ただし、通常の使用に問題はありません。フルHDの動画なら快適そうです。
「Mac mini(M2 Pro)」【検証結果:優秀】
シークバーを動かしてもラグは感じず、スムーズに反映されます。作業をしていてストレスを感じることはほぼないでしょう。
「Mac Studio(M1 Max)」【検証結果:優秀】
正直すごい。シークバーの動きにプレビューがスムーズに反映され、レイヤーを重ねたり、複数の4Kトラックを置いても快適です。
検証3:色調補正
検証方法
動画に色調補正フィルタをかけ、パラメータの変更にどの程度リアルタイムで反映されるかを検証しました。
「Mac mini(M1)」【検証結果:良好】
色調補正のフィルターをかけ、バーやグラフを動かしてパラメータを変更しても、プレビューやLumetriスコープ(※)に問題なく反映されます。
※Lumetriスコープ:表示中のフレームの色合いや、明るさのバランスを確認できる「Adobe Premiere」のグラフ表示機能。色調補正を行うと、補正に応じてグラフ表示も変化します。
「Mac mini(M2)」【検証結果:良好】
色調補正の変更が、問題なくプレビューやLumetriスコープに反映されます。8GBメモリですが、ここでは影響は見受けられません。
「Mac mini(M2 Pro)」【検証結果:優秀】
色調補正の変更が、スムーズにプレビューやLumetriスコープに反映されます。作業をしていてストレスをまったく感じません。
「Mac Studio(M1 Max)」【検証結果:優秀】
Apple「Mac mini(M2 Pro)」同様、色調補正の変更はスムーズにプレビューやLumetriスコープに反映されます。作業時にストレスを感じることはないでしょう。
検証4:4K映像の書き出し
検証方法
高品質4K動画(可変ビットレート・ターゲット80Mbps・H264形式)への書き出し時間を計測しました。
「Mac mini(M1)」【検証結果:合格】
- 3分54秒21
「Mac mini(M2)」【検証結果:良好】
- 2分37秒05
「Mac mini(M2 Pro)」【検証結果:良好】
- 2分14秒18
「Mac Studio(M1 Max)」【検証結果:優秀】
- 1分19秒77
結論:明確に性能アップした「M2 Pro」がおすすめ
以上、Apple「Mac mini M2 搭載モデル」とApple「Mac mini M2 Pro 搭載モデル」の検証レビューでした。
今回行った動画編集検証では、圧倒的にApple「Mac mini M2 Pro」がオススメ。ただし、「Mac mini M1 Pro」との性能差というよりは、コア数の差が大きく出ている印象です。
12コアCPUの「Mac mini M2 Pro」なら、最小構成の「Mac Studio」にも匹敵します。とはいえ、チップやメモリをアップグレードすると、Mac Studio」並みの価格になるのが悩みどころ。ポート数など、拡張性を目的に買うのなら最小構成でもいいでしょう。
なお、高負荷な作業はせず、フルHD動画の編集をたまに行う程度なら、最小構成の「Mac mini M2」でも十分です。
最後に、それぞれのよかった点と残念だった点をまとめてお伝えします。
Apple「Mac mini M2」
Apple
Mac mini M2 搭載モデル
実勢価格:8万4800円〜
サイズ:W19.7×D19.7×H3.58cm・1.18kg
総合評価:3.6/5点
▼よかった点
- 最小構成の価格が安い
- 高負荷な作業をしないなら最小構成でも十分な性能
- アップグレードしても「M2 Pro」より安く上がる
▼残念だった点
- Thunderboltポートが少ない
- モニター対応が60Hzまで
- SSDの読み書きが遅め
- アップグレードの幅が少ない
特に重い作業がないなら、最小構成のApple「Mac mini M2」でも十分すぎます。
Apple「Mac mini M2 Pro」
Apple
Mac mini M2 Pro 搭載モデル
実勢価格:18万4800円〜
サイズ:W19.7×D19.7×H3.58cm・1.28kg
総合評価:4.2/5点
▼よかった点
- 「M1 Max」にもひけを取らないほどパワフル
- SSDの読み書き速度がM2モデルよりも高速
- モニター3台に出力が可能
▼残念だった点
- グラフィックスのベンチマークは「Mac Studio」の方が上
- アップグレードすると「Mac Studio」と価格差がわずか
Apple「Mac mini M2 Pro」は、高負荷の作業をたまに行うという人におすすめです。
使い勝手なら「Mac Studio」の最安モデルもアリ
Apple
Mac Studio
実勢価格:27万8800円〜(M1 Maxモデル)、55万8800円〜(M1 Ultraモデル)
サイズ・重量:W197×D197×H95mm・2.7 kg(M1 Max)、3.6 kg(M1 Ultra)
Wi-Fi:IEEE 802.11ax/a/b/g/n/ac
Bluetooth:Bluetooth 5.0
デスクトップモデルとしては、Apple「Mac Studio」という選択肢も。最小構成は32GBメモリ、512GB SSDで27万円台と同容量のメモリ・SSDにカスタムしたM2 Pro版Mac miniよりやや高額。しかし、前面のSDカードスロットやUSB-Cポートが便利です。
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M1でもメモリが16GBあると、比較的安定して作業できます。4K動画の編集をするなら、M2でも8GBメモリでは厳しそうです。