写真Lサイズでも約80万画素で十分画素数が多い=キレイではない
画素数とは、画像の細かさを表した数値のこと。たとえば、写真プリントで一般的なL判サイズのプリントに必要な画素数の目安は約80万画素。さらにサイズを上げて、A4でプリントしたとしても約400万画素、A3サイズでも約800万画素あれば十分といわれています。
2000万画素クラスが当たり前のなか、カメラの性能にそこまで高画素が必要ないことがわかります。拡大して細部を細かく確認したいとか、肌の質感がどうとか、カメラマニアでもない限り、基本的に画素数は2000万画素も必要ないんです。ではなぜ、高画素化するのでしょうか?
iPhoneは1200万画素と「低画素」でもキレイなんです
高画素であることの主なメリットは、①一般ユーザーへのわかりやすさ(数字が大きいと良く見える)②デジタルズーム。①はわかるとして、②はデジタルであるがゆえのジレンマともいえます。
たとえば、一眼レフならレンズを交換すれば済む話ですが、スマホの場合レンズが一体になっていて交換できません。それゆえ、画像の一部を切り出して拡大しなければズームすることができず、このとき画素数が小さいとズーム画像が粗くなってしまい、ズーム倍率も小さくなってしまうのです。
こうした理由から、ある程度画素数を上げるメリットがあることはわかります。しかし、裏を返せば「高画素」=「高画質」とはならないことがわかります。
iPhoneの優れている点は、おそらくそれらを理解した上で、むやみやたらと画素数を上げないところにあるような気がします。メインカメラは1200万画素で、あくまでも写真がユーザーにとって「キレイ」と感じられるかどうかを最優先に考えて作られているのでしょう。
Apple
iPhone 7
一括価格:7万2800円(税別)~
容量:32GB、128GB、256GB
サイズ:W67.1×H138.3×D7.1mm
重量:138g
ディスプレイ:4.7インチ
それでは、iPhoneが低画素でも「キレイ」に撮れる3つの理由に迫ります!
理由1:色の再現やコントラストを最低限の画素数で忠実に表現しているから
1つ目の理由は「低画素」でも色の再現性やコントラストが忠実だから。原理的にはカメラの心臓部であるイメージセンサー(撮像素子とも呼ばれる)のサイズが同じなら、画素数が小さい方が1画素あたりの面積が大きくなるので、色の再現性やコントラストといった点で有利です。また、低画素だと解像感が下がると思うかもしれませんが、意外とそうとも言い切れない結果でした。
プロのカメラマンにご協力いただき、実際に検証してみたところ、全く問題ないばかりか、むしろ予想以上に解像されていたことに驚きました。
写真の一部を拡大しても文字が認識できるほど、描画されていました。
理由2:人間の記憶と印象に寄せてうまく画像処理しているから
2つ目の理由は画像処理がうまいこと。スマホやコンデジなど本体が小さい場合、特に画像処理エンジンの機能が重要不可欠になってきますが、そもそも本体が小さいため、センサーもレンズも大きくできません。
結果、光を取り込める量にも制限が出るので、デジタル処理でめざす写真に仕上げるのがこの部分。センサーとこの画像処理エンジンの連携がとても重要で、各社のカメラに関する考え方が反映されやすいです。
たとえば、iPhone7とソニーのXperia X Compactで撮影した夕日の写真を比べてみると……。
iPhoneの方が夕焼けの赤味が強く出ているのがわかりますが、これはどちらが良いというより、めざす色の方向性の違い。
Xperiaの方が見た目の印象より空の青さが強く出ていて、忠実な色を再現していますが、逆にiPhoneは記憶色に近く見た目の印象に近いです。これが、多くの人がiPhoneの写真をキレイと感じる大きな要素となっています。
理由3:レンズ性能が良くハレーションが抑えられているから
3つ目の理由がレンズ。高画質な写真に仕上げるには、最初に光を取り込むレンズの性能が高い必要があります。特に今回検証してわかったのが、レンズの歪みの少なさ。さらに、逆光時でのハレーションと呼ばれるレンズ内で発生する乱反射が抑えられているので、太陽や夕焼けなど光が強く入り込む写真に向いています。
以上の3つの理由はカメラでは当たり前の話ですが、実現しているのは皮肉にもカメラメーカーではないアップル。iPhoneが支持される理由はこういった所にあるのかもしれません。