※情報は『家電批評』2020年9月号掲載時のものです。商品が現在販売していない場合もあります。
人気のハンディファンもいいけれど、弱点はあります!
汗をかきやすい日本の夏。エアコンがないところで過ごす際は参ってしまいますよね。
ハンディファンの人気は年々高まっており、今年も新モデルが登場しています。特にフランフランの「フレ ハンディファン」は、風量がアップしたのにより静かになっており、家電批評7月号でもベストバイとなりました。
フランフラン
フレ ハンディファン 2020年モデル
実勢価格:1980円
サイズ・重量:W103×H218×D37mm(本体)・178g
充電時間:約4時間
連続運転:約2~9時間
首の角度を変えるなどの機能はありませんが、確かな作りと性能で勝負しています。ボタンの使い心地もスムーズで、わかりやすいので手軽に使えます。
ほどよい厚みでしっかりした作りなので、スタンドに置いて使っても安定感があります。
ちなみに、ハンディファンのランキングは別記事で紹介しているので、興味がある方はぜひご覧下さい。
しかし、ハンディファンは基本的に手で持って使うため、片手が塞がってしまいます。また、涼しいのは風が当たっている部分だけで、顔に直接風が当たるのを嫌う人もいます。
そこで、新たに注目度が上がっているのが「ベルトファン」「ファン付きウェア」です。
ベルトファンやファン付きウェアの注目度がアップ!
ハンディファンの進化版ともいえる製品が「ベルトファン」です。ファンを回して風を送るという機能性は一緒ですが、その名のとおりベルトにつけて使うファンで、風は真上に吹き上がります。
ベルトにつけることで両手が自由になるだけでなく、服の内側に風を送ることができます。服の中を風が循環するので、ハンディファンよりも冷却効果が高く、より涼しさがアップします。
さらに、同じメリットをもつ製品として「ファン付きウェア」があり、こちらも人気・需要ともに高まっています。特にファン付きウェアには、風以外を利用する新製品も登場しています。
注目度が上がっているこの2ジャンル、どの程度の冷却効果があるのか? そしてどの製品が本当に涼しいのか? ガチでテストしてみました!
注目の製品をサーモグラフィ・風量・稼動音で比較!
今回はベルトファン5製品とファン付きウェア3製品に関して、サーモグラフィ・風量・稼動音の3つのテストを行いました。
カラダの表面温度は、まずテスト前にサーモグラフィで撮影。その後、製品を装着して通常の速度で3分間階段を上り下りしました。
この軽い運動の後、再びサーモグラフィで撮影してテストの前後で温度変化を比較しました。なお、ベルトファンは腰の中央、真後ろの位置に装着しています。
風量は製品から20cmの位置で測定しました。なお、ファン付きウェアの一部は風を利用していないので、この製品に関しては風量は計測できませんでした。
稼動音はベルトファンは腰から耳までの距離、ファン付きウェアは20cmの位置で測定しています。
結果からいうと、ベルトファンには製品間で結構性能差があることがわかりました。なお、当然の結果ですが、風量に比例して稼動音も大きくなります。
また、ファン付きウェアはどれもベルトファンより冷却効果が高く、温度変化の数値以上に涼しいと感じました。
それでは、ベルトファン、ファン付きウェアの順にテスト結果とおすすめ製品を見ていきましょう。
【ベルトファン】しっかりした作りのiFanがおすすめ!
ベルトファンのおすすめは、エレスの「iFan BodyBlow」です。風は控えめですが作りがしっかりしており、全体のバランスが最もいいのがこの製品でした。
エレス
iFan BodyBlow
実勢価格:2480円
サイズ・重量:W85×H100×D50mm・約210g
運転モード:弱・中・強
バッテリー容量:4000mAh
充電時間:約3時間
連続運転:約3.5~15時間
ボタンは1つで製品上部に付いており、電源のオン/オフ時は長押しして使います。運転中にボタンを押すことで、弱→中→強と風量を変えることができます。なお、充電はmicroUSBでケーブルは付属しています。
ベルトホルダー部分はクリップタイプなので、厚めの生地でもしっかり固定できます。
服の中に風を送るので、ベルトに装着してから上着をかぶせて使います。
上着がめくれ上がらないよう固定できますが、マグネットなので上着を傷めません。なお、かぶせる服の固定にマグネットを使っているのはこの製品だけでした。
今回テストした製品の中では風は控えめな方で、風量と稼動音の計測値は以下の通りです。
エレス「iFan BodyBlow」の風量と稼動音
- モード: 弱: 中: 強
- 風量(m/s): 2.2: 3.3: 4.5
- 稼動音(dB): 48.5: 56.9: 65.4
サーモグラフィでの計測では、胸側はほとんど変化がありません。
しかし、背中側は風が直接当たる腰部分だけでなく、全体的に温度が下がっているのがわかります。
温度変化としては-3℃と風量が弱めなのでそれなりですが、その分静かなので音を気にせずに使えます。
【ベルトファン】暑がりなら風量が強いUrhomyもアリ!
「iFan BodyBlow」はよく出来ているけど、風量が物足りない……。そんな暑がりの人におすすめなのが、Urhomyの「Portable fan W920」です。見た目のゴツさを気にしないなら、涼しさはこれが一番でした。
Urhomy
Portable fan W920
実勢価格:4599円
サイズ・重量:W97×H122×D58mm・333g
運転モード:弱・中・強
バッテリー容量:8000mAh
充電時間:約2時間
連続運転:約2~6時間
ボタンは1つで、押す度に弱→中→強→オフと切り替わります。充電端子はmicroUSBだけでなく、USB Type-Cも用意されています。ちなみに、付属ケーブルはUSB Type-A - microUSBとなります。
ベルトホルダー部分はフックタイプなので、厚めのベルトではやや装着しにくさがあります。
腰に装着するとかなりの存在感で、重さも感じます。
風が強いためか、上着の固定にはサスペンダーのホック型金具を採用しています。なので、かなりしっかり固定できます。
大きめで重さもありますが、最も風が強かったのがこの製品です。なお、風量が強いので必然的に稼動音が最も大きかったのもこの製品です。
Urhomy「Portable fan W920」の風量と稼動音
- モード: 弱: 中: 強
- 風量(m/s): 5.1: 6.1: 7.0
- 稼動音(dB): 69.1: 73.3: 77.6
サーモグラフィでの計測では、胸側はやはりほとんど変化がありませんでした。重さのせいか、ちょっと温度が上がっているようにも見えます。
背中側は風が当たっている腰部分を中心に、広範囲で温度が下がっています。
温度変化は-4℃で、ベルトファンの中では最も温度が下がっています。本体も大きく音も大きいので、自宅で使うにはいいかも知れません。
【ベルトファン】残りの3製品は悪くはないけど特長もなし
ベルトファンの残り3製品ですが、2製品は可もなく不可もなくで、1製品は風が弱くてあまり効果が感じられません。なお、この3製品は中華系OEM製品で、別ブランド名で同製品が多数販売されています。
風も音も可もなく不可もないAokeou「腰掛け小型ファン YJ-514A」
Aokeou
腰掛け小型ファン YJ-514A
実勢価格:2850円
サイズ・重量:W80×H109×D49mm・220g
運転モード:弱・中・強
バッテリー容量:4000mAh
充電時間:約3~4時間
連続運転:約3.3~16時間
ボタンは1つで、押す度に弱→中→強→オフと切り替わります。充電端子はmicroUSBとUSB Type-Cが用意されており、出力用のUSB Type-A端子もあるので、モバイルバッテリーとしても使えます。ケーブルはUSB Type-A - microUSBが付属しています。
ベルトホルダー部分はフックタイプなので、やはり厚めのベルトではやや装着しにくさがあります。
他のベルトファン同様に腰に装着し、上着を被せて使用します。
上着の固定は2ヵ所のフックの隙間に挟むだけなので、厚みがあるとやや使いづらいでしょう。生地を傷める心配もあります。
風量も稼動音も先に紹介した2製品の中間といった感じで、これといった特長はありません。
Aokeou「腰掛け小型ファン YJ-514A」の風量と稼動音
- モード: 弱: 中: 強
- 風量(m/s): 2.8: 4.2: 5.4
- 稼動音(dB): 54.0: 65.2: 66.8
サーモグラフィでの計測では、胸側はやはりほとんど変化なしです。若干温度が下がっているようにも見えますが、風が胸側まで回り込んでいる感じはないので、ベルトファンの効果というよりは時間経過での温度変化でしょう。
背中側は風が直接当たる腰部分を中心に、温度が下がっているのがわかります。
温度変化は-3℃といったところですが、同じ温度変化なら作りがしっかりした「iFan BodyBlow」の方がおすすめです。
冷却効果はやはりそこそこのTowkka「腰掛け小型ファン G20」
Towkka
腰掛け小型ファン G20
実勢価格:1699円
サイズ・重量:W77×H101×D36mm・170g
運転モード:弱・中・強
バッテリー容量:4000mAh
充電時間:約3~4時間
連続運転:約3.3~15時間
ボタンは1つで、押す度に弱→中→強→オフと切り替わります。充電端子はmicroUSBが側面に付いており、ケーブルも付属しています。
ベルトホルダー部分はフックタイプなので、厚めのベルトではやや装着しにくさがあります。
他のベルトファンと同じく腰に装着し、上着を被せて使用します。なお、同じ形状で一回り大きく、バッテリーが600mAhの製品も販売されています。
上着の固定は2ヵ所のフックの隙間に挟む方式です。
風量は上の「YJ-514A」より若干弱いのですが、強モードの稼動音はこちらの方が大きい数値でした。
Towkka「腰掛け小型ファン G20」の風量と稼動音
- モード: 弱: 中: 強
- 風量(m/s): 2.6: 3.6: 5.1
- 稼動音(dB): 54.8: 63.0: 67.6
サーモグラフィでの計測では、胸側はこれまでの製品同様、ほとんど変化ありません。
背中側は広い範囲で温度が下がっていますが、形状が対称でないためか動いているうちに斜めになってしまっているのが分かります。
温度変化は-3℃といった感じですが、上の「YJ-514A」よりは温度が下がった範囲がやや狭い印象です。
スリムで静かだけど風量も弱いSimpeak「腰ベルトファン F22」
Simpeak
腰ベルトファン F22
実勢価格:1299円
サイズ・重量:W85×H130×D45mm・158g
運転モード:弱・中・強
バッテリー容量:2000mAh
連続運転:約3~10時間
ボタンは側面に1つで、押す度に弱→中→強→オフと切り替わります。底面の充電端子はmicroUSBで、出力用のUSB Type-A端子も装備しています。ケーブルも付属しています。
ベルトホルダー部分はフックタイプなので、厚めのベルトではやや装着しにくさがあります。
他のベルトファンよりもスリムでバッテリーも小さいのですが、装着したサイズ感はさほど変わりません。
上着の固定はファンの中央部分にあるフックの隙間に挟む方式です。
今回の5台の中では稼動音が一番静かですが、風量も一番弱いので冷却効果は低めです
Simpeak「腰ベルトファン F22」の風量と稼動音
- モード: 弱: 中: 強
- 風量(m/s): 1.5: 2.4: 3.1
- 稼動音(dB): 46.7: 52.5: 57.5
サーモグラフィでの計測では、胸側はこれまでの製品と同じくほとんど変化ありません。
背中側は範囲は狭いものの、それなりに温度は下がっています。
温度変化は最も冷えている部分でギリギリ-3℃といった感じです。
続きまして、ファン付きウェアのテスト結果を見てみましょう。
【ファン付きウェア】ワークマンのファン付きウェアなら前にも風が回り込みます
服の中に風を入れるというベルトファンと同じコンセプトで、より効果が高いのがファンが付いたファン付きウェア(電動ファン付きウェア)です。もともと建築現場作業などの熱中症対策として普及しましたが、いまでは普段使いできる製品も増えてきました。
作業着・作業服にとどまらない人気を集めているメーカー、ワークマンでもレジャー向けのファン付きウェアを販売しています。
ワークマン
Wind Core シェルジャケット WZ1100
実勢価格:3900円
サイズ:M・L・LL・3L
カラー:ブラック・レッド・イエロー・ブルー
抗菌防臭加工素材を使用した長袖ジャケット。ジャケット単品では安いのですが、ファンとバッテリーがそれぞれ別売りとなります。ファンやバッテリーは数種類販売されていますが、同じWind Coreシリーズでそろえればサイズがピッタリ合います。
ワークマン
Wind Core ファン・ケーブル・ファンカバー セット
実勢価格:3900円
ワークマン
Wind Core バッテリー10Vセット
実勢価格:7980円
なお、バッテリーは8Vで4900円のハーフバッテリーセットも販売されています。
ファンは固定用の枠を回して外し、ジャケットの外側から装着します。固定用の枠は内側からジャケットを挟んで固定します。
バッテリーはジャケットの内ポケットに収納します。バッテリーには電源と風量調節のボタンが付いており、ジャケットを着たまま操作できます。
ファンは左右両側の斜め後ろについており、背中側だけでなく胸側にも風が循環します。ピッタリではなく、風が循環するよう多少余裕をもったサイズを選ぶのがポイントです。
ファン付きウェアの風量と稼動音は以下の通りですが、ベルトファンと比べると風が弱いわりに音は大きめです。なお、10Vバッテリーでは運転モードは3段階ではなく4段階となります。
ワークマン「Wind Core シェルジャケット WZ1100」の風量と稼動音
- モード: 弱: 中: 強: 最強
- 風量(m/s): 1.3: 2.0: 2.1: 2.5
- 稼動音(dB): 56.8: 63.9: 68.1: 70.7
サーモグラフィでの計測では、胸側も温度が下がっているのが分かります。
背中側も全体的に温度は下がっていますが風自体は強くないので、部分的に極端に温度が下がるという感じではありません。
温度変化は-4℃といったところで、数字だけ見るとベルトファンと大差はありません。しかし、風量自体は弱めですが、ファンから全方向に風が出て服の中を循環するので、ベルトファンよりもはるかに涼しく感じます。ただし、長袖のジャケットだとなかなか腕まで風はこないためか、腕は暑く感じます。
【ファン付きウェア】首の後ろをピンポイントで冷やすソニー「REON POCKET」
こちらはなんとソニーの製品。「REON POCKET」は接触部分を冷やしたり温めたりできるソニーのウェアラブルサーモデバイスです。
ソニー
REON POCKET
実勢価格:1万6500円
サイズ・重量:W54×H20×D116mm・89g
使用温度範囲:5~40℃
運転モード:マニュアル・オート・マイモード
充電時間:約2.5時間
連続運転:レベル最大で約2.5時間
本体には電源ボタンと充電ポートのみで、モードの切り替えや温度調節は専用アプリで行います。
なお、専用インナーは別売りで1着1980円となります。専用インナーは白とベージュの2色で、S・M・Lの3サイズが販売されています。
半袖の専用インナーの首元には本体がピッタリ収まるサイズのポケットがあり、ここに本体を装着して使用します。
本体を装着したインナーを着ると冷却部分が首の後ろに直接当たり、排気口が窓部分に露出するようになっています。
REON POCKETの稼動音は以下の通りです。なお、ファンも付いていますが、風でカラダを冷やすためではなく本体の排気用なので風量は計測していません。
ソニー「REON POCKET」の稼動音
- モード: 弱: 中: 強
- 稼動音(dB): 56.8: 63.9: 68.1
サーモグラフィでの計測では、全体的には温度変化はほとんどありません。
背中側では本体の、冷却部分が直接当たっている部分だけが極端に温度が下がっています。
部分的にではありますが、温度変化は-5℃。しかし、カラダ全体を冷やしてはいないのにファン付きウェアよりもさらに涼しく感じます。
【ファン付きウェア】冷たさが別次元のサンコー「水冷クール ベストLite」
サンコー「水冷クール ベストLite」はベストタイプの製品。内側に管が走っており、ポンプで水を循環させる水冷ベストです。電源をオンにした直後にすぐ冷たいと感じるほどの効果で、氷を使えばさらに冷却効果が高まります。
サンコー
水冷クール ベストLite
実勢価格:1万6800円
サイズ・重量:本体:約W260×H400×D40mm・約760g バッテリー:W68×H16×D135mm・215g
運転モード:強・弱・エコモード
バッテリー容量:10000mAh
充電時間:約4時間
連続運転:最大約30時間
背面側のファスナーを開けると、中には水用のタンクが入っています。
このタンクの中に水を入れて使います。
タンクには氷を入れることもでき、氷を使うことでさらに冷却効果が高まります。
バッテリーは胸側のポケットに入れます。付属のバッテリー以外に、一般的なモバイルバッテリーも利用できます。
これで準備は完了。服の上からベストを装着します。
後ろから見るとベストというよりリュックのようなデザイン。なお、ケーブルの中間にスイッチがあるので、着たまま操作できます。
稼動音は以下の通りで、数値で見ると思ったよりも静かです。ただし、モーターが耳に近いせいか、数値以上に音は大きく感じます。
サンコー「水冷クール ベストLite」の稼動音
- モード: 弱: 強
- 稼動音(dB): 44.1: 52.4
電源をオンにした直後にすぐ冷たく感じるほどの冷却効果で、氷水を使うと屋内では逆に寒いくらいです。サーモグラフィで見ると、管の構造がわかるほど温度が下がっています。
背中側も管の構造がくっきり分かります。管部分だけでなく、カラダ全体の温度も低下しています。
温度変化はなんと-8℃。中の水がぬるくなっても水を替えたり、氷を追加すればすぐに冷たさが復活します。
人気のハンディファンよりも冷却効果が高いベルトファン&ファン付きウェアの実力テスト、いかがでしたでしょうか? まだまだ暑い日が続き、残暑も厳しそうな夏。少しでも涼しく快適に過ごすため、今回紹介した製品をぜひ活用してみてください。