歯を守ってパフォーマンスも向上! スポーツ用マウスピースの効果とは
格闘技をしている人にはなじみ深い、スポーツ用マウスピース。ただしあまりスポーツをしていない一般の人にはちょっと縁遠いかもしれません。
マウスピースは、ボクシングやキックボクシング、空手レスリング、柔道などコンタクト系のスポーツでは必須で、パンチなどの衝撃から歯や腔内を守る働きをします。
さらにマウスピースは格闘技以外のスポーツでも重宝されています。
ラグビー、バスケット、サッカーをはじめ、ゴルフやテニス、卓球、スノボやスキー、サーフィンなど、多くの競技で欠かせないアイテムになっています。
このようなスポーツではマウスピースの噛みしめ効果により最大限のパフォーマンスを発揮でき、また集中力を持続させることができると言われています。
では、なぜマウスピースを着けるとパフォーマンスが向上するのでしょうか? ここで“スポーツと歯の関係”を見てみましょう。
一流アスリートほど噛む力が強い! バランス感覚と歯の意外な関係性
日本口腔保険協会によれば、スポーツ選手は一般人より噛む力が強く、とくにボート競技やライフル射撃の選手は普通の人の3倍近くの咬合力(噛む力)があるといいます。
またあのイチローは、なんと1日5回歯磨きを行って歯を大切にしているといいます。一流アスリートは歯を、そして噛む力を大切にしているわけです。
さらに歯は、スポーツにおけるバランス感覚と密接な関係があります。実はしっかりとした歯の噛み合わせは頭の位置を固定し、腰の位置も安定させるため、バランス感覚を向上させます。
このように、歯はスポーツ選手にとって命。スポーツ用マウスピースは強い噛みしめによる損傷である咬耗(こうもう)の予防や顎関節の保護、そして顎の安定により身体バランスとパフォーマンスを向上させてくれます。
なお、マウスピースという名前以外にマウスガードという名前がありますが、この2つは全く同じ。前者はスポーツ選手、後者は医療関係者がよく使う名称です。
スポーツ用マウスピースには どんな種類がある?
スポーツ用のマウスピースの中でも、いくつかのタイプがあります。どんなものか見てみましょう。
タイプ1:市販のマウスピース
市販のスポーツ用マウスピースには、大きく2種類あります。
ひとつは「ボイル&バイトタイプ」。これは熱で変形する素材をお湯で柔らかくして、口の中で成型するマウスピースです。
ボイル&バイトタイプは成型の手間がありますが、フィット感が抜群です。
そしてもうひとつが「シェルライナータイプ」。シリコンゴムをシェル(型) に注入して、口の中に入れて固めて内層を作ります。
この2種類ですが、ボイル&バイトタイプは成型の手間がありますが、価格が比較的安いので、現在の主流になっています。一方、シェルライナータイプは価格が高く、厚みや噛み合わせの調整が難しいというデメリットがあります。
タイプ2:歯科で作るマウスピース
こちらは、歯科で歯型を取って作るカスタムメイドのマウスピースです。市販のものより歯にぴったりと合わせることができます。ただし製作に時間がかかり、価格は1万から1万5000円程度かかります。
今回は市販で安価なものということで、自分で成型するボイル&バイトタイプを中心にピックアップ&ランキングを行いました。
では次に、選び方を見てみましょう。
スポーツ用マウスピースを 正しく選ぶためのポイント
通販サイトでスポーツ用マウスピースを検索すると、さまざまな商品が出てきてどれを選んでいいのか迷ってしまいます。
そこで板谷氏に、選び方のポイントを解説してもらいました。
ポイント1:成型のしやすさ[配点:25点]
今回ランキングの中心となるボイル&バイトタイプは熱湯に浸けて素材を柔らかくし、歯に装着して成型を行いますが、初心者にはちょっと難しいとのこと。
そこで、成型のしやすさを採点ポイントとしました。板谷氏がすべての商品を自分の歯に合わせて成型し、詳細にチェックしました。
なお、成型時のお湯の温度は商品によって異なるため、温度計で正確に計りながら説明書どおりに成型を行いました。
成型や微調整は1階ではなかなかうまくできないことが多いです。その場合、再度お湯に浸して成型を行いますが、何回目で完成したか、回数も記録しました。
ポイント2:フィット感[配点:25点]
マウスピースはフィット感も大事な点です。成型と微調整が完了した後で、以下のポイントでフィット感をチェックしました。
[フィット感のチェック]
・外れにくいかどうか?
・歯にぴったりとくっつくかどうか?
しっかりと歯に密着しているかどうか。動いても外れることはないか。実際に動いてみて確かめてみました。
ポイント3:噛み心地[配点:25点]
噛み心地が良いかどうかは非常に重要です。これがいまひとつだと、運動に集中することができません。板谷氏に実際に装着して確かめてもらいました。
歯に合わせて完成しても、噛み心地が悪くては良いマウスピースとは言えません。そこで今回は完成後、何度か噛みしめてチェックしてみました。
ポイント4:コスパ[配点:25点]
スポーツ用マウスピースは1000円以下で買えるものから3000円以上するものまで価格に開きがあります。そこで今回は完成したものが値段に見合っているかどうか、板谷氏とスタッフで協議して採点しました。
マウスピース初心者が ネットで買うときの注意点
ネットで購入する場合の注意ポイントを、板谷氏に聞いてみました。
ポイント1:用途に合ったマウスピースか必ずチェック
マウスピースによっては、「野球専用」のように用途が限定されているものがあります。推奨スポーツが記載されている場合が多いので、自分が行うスポーツに合ったマウスピースなのか必ずチェックしましょう。
こちらは野球専用マウスピースです。
ダンノ(DANNO)
ティースガード(マウスピース) D-7121
実勢価格:2090円
形状が他の物とは大きく異なりますね。買うときはしっかり説明書きを確認しましょう。
ポイント2:最初は2個入りなど安価なものがおすすめ
「初心者の場合、成型に失敗することも少なくありません」と板谷氏。うまくいかない場合は何度もお湯に浸してしまい、柔らかくなり過ぎて成型できなくなったということも多いそうです。
そこで初心者の場合、最初はそれほど高くないものを選ぶとよいでしょう。
G&S
マウスピース マウスガード 専用ケース付き 2個セット
実勢価格:790円
2個セットならなお良し。1個失敗しても、もうひとつあればやり直せます。高価なものは成型に慣れてきてから購入するとよいでしょう。
それではスポーツ用マウスピース8製品、ランキングのスタートです!
柔らかくてフィット感バツグン! オーラルマート
オーラルマート(Oral Mart)
スポーツマウスガード ストラップ付
実勢価格:999円
素材:BPAフリー、ラテックスフリー、フタル酸エステルフリー
カラー:8色
日本語解説書:あり
個数:1個
専用ケース:付属
▼テスト結果
成型のしやすさ:24/25点
フィット感 :24/25点
噛み心地 :24/25点
コスパ :24/25点
総合評価 :96/100点
今回の1位獲得はオーラルマート。ストラップ付きの便利なマウスピースです。
推奨スポーツはフラグフットボール、 空手、ラクロス、ホッケー、フットボール 、ラグビー 、ローラーゲーム、マーシャルアーツ、MMA用と記されています。BPAフリー 100%の医療グレードの素材を使用しています。
マウスガードを沸騰したお湯の中に40秒間放置します。
取り出して1秒間冷水煮つけ、口に入れて成形します。なお専用ケースは細かな穴が開いており、通気性に優れ良い感じです。
1回目では成型できず、2回目で完成しました。内側が柔らかく、歯茎にぴったりとくっつきます。外れにくく、優れた商品だと思いました。フィット感では商品中ナンバーワンでした。
正確な熱成形ができる SHOCKDOCTOR
SHOCKDOCTOR(ショックドクター)
マウスガード スーパーフィット アダルト(13才以上)
実勢価格:2376円
素材:PCL、EVA、TPR(ラテックスフリー)
カラー:5色
日本語解説書:あり
個数:1個
専用ケース:なし
▼テスト結果
成型のしやすさ:24/35点
フィット感 :24/35点
噛み心地 :23/25点
コスパ :22/25点
総合評価 :93/100点
2位は「SHOCKDOCTOR」です。ラグビーなどマウスガード義務化スポーツ以外にも、バスケットボールや野球などにもおすすめと記載されています。
簡単で正確な熱成形が可能で、歯に密着し快適なフィット感を実現。詳細な解説書付きで初心者でも成型しやすいモデルです。
65℃の比較的低い温度のお湯に30秒浸してから成型を行いました。1回目ではフィット感がいまひとつで、2回目に完成しました。
「型が硬いので格闘技向きではないですね」と板谷氏。表示の通りラグビーやバスケットボールなどのスポーツ向きと言えます。
フィット感はかなり良いのですが、噛み心地がいまひとつですね。ただ成型は比較的やりやすかったと思います。
独自のモールド材使用 衝撃をうまく分散するlo-bloo
lo-bloo
Slick Professional 二重密度マウスガード
実勢価格:2555円
素材:BPAフリー、ラテックスフリー、フタル酸エステルフリー
カラー:6色
日本語解説書:なし
個数:1個
専用ケース:付属(ソフトケース)
▼テスト結果
成型のしやすさ:24/35点
フィット感 :23/35点
噛み心地 :23/25点
コスパ :22/25点
総合評価 :92/100点
3位は「Lo Bloo」。武術オリンピックチームにより開発され、アスリートにより性能が試験されたという商品です。Lo Bloo独自のモールド材を使用して、歯や歯茎との接触面を最大限にすることで、衝撃を均等に分散させてくれます。
推奨スポーツの記載はありませんでしたが、レビューではキックボクシング用に購入した人が星5を付けていました。
成型は沸騰したばかりのお湯につけて、お湯を切り上あごに合わせる、と意外に簡単。
成型は1回目でほぼ完成間近。2回目で完璧になりました。
成型時は柔らかく、しっかりと歯茎までくっつきます。比較的成型しやすい商品だと言えますね。その分フィット感も申し分なしです。噛み心地は2位商品と同じ感じですね。
4位: 成型も簡単でコスパも良好
初心者に最適なG&S
G&S
マウスピース マウスガード 専用ケース付き 2個セット
実勢価格:790円
材質:シリコン
日本語解説書:あり
カラー:4色
個数:2個
専用ケース:付属
▼テスト結果
成型のしやすさ:25/35点
フィット感 :22/35点
噛み心地 :21/25点
コスパ :23/25点
総合評価 :91/100点
4位は「G&S 」です。今回最安値でしかも2個入り。成型に失敗してももう1個があるという点でまさに初心者向けの決定版です。
対象スポーツは格闘技を始め、スポーツ全般と表示されています。
今回もっとも成型が簡単で、なんと1回目で完成しました。成型は約80~90℃のお湯で柔らかくしてから取り出し、お湯を切って少し冷ました後成形します。その後冷水に10~20秒つけて完成。最後にハサミで余分な部分をカットします。
格安の割にフィット感も良く、激しい動きでも外れることがありません。厚さもちょうどよいので違和感なくスポーツに集中することができます。
格安商品なので期待していなかったのですが、意外でした。成型も簡単でフィット感、噛みしめ感も申し分なし。初心者で成型に慣れていない人にはとくにおすすめですね。
5位: 板谷氏御用達! 各種性能は
申し分がないSHOCK DOCTOR
SHOCK DOCTOR(ショックドクター)
大人用マウスガード スモーク 5100A
実勢価格:1210円
材質:EVA、TPRラテックスフリー
日本語解説書:あり
カラー:1色
個数:1個
専用ケース:別売り
▼テスト結果
成型のしやすさ:23/35点
フィット感 :23/35点
噛み心地 :22/25点
コスパ :22/25点
総合評価 :90/100点
5位は「SHOCK DOCTOR」の5100A 。板谷氏がふだん使用しているのがこの商品です。
マウスピースは奥まで覆うと舌の根元に当たり、「吐き気」を感じることがありますが、この商品はやや短い設計になっていてそうした状況は起きにくくなっています。
なお推奨スポーツの表記はとくにありませんでした。
90℃のお湯に12秒間浸し、取り出して1~2秒間水で冷やします。その後説明に沿って形成します。
成型は意外に難しく3回目で成功。噛み心地やフィット感は全く問題がありませんでした。
普段使っているマウスピースですが、他と比べるとやや成型の難しさを感じました。しかし噛み心地やフィット感は平均以上で、初心者にもベテランにもおすすめできます。
6位: 成型はやや難しい
良くも悪くも無難なWinning
ウイニング(Winning)
マウスピース クリア F-3
実勢価格:1841円
材質:EVA
カラー:クリアー、ホワイト他
日本語解説書:あり
個数:1個
専用ケース:なし
▼テスト結果
成型のしやすさ:21/35点
フィット感 :22/35点
噛み心地 :22/25点
コスパ :23/25点
総合評価 :88/100点
「ウイニング」は格闘技、ラグビーなどのスポーツ用、筋力トレーニング時の歯の保護、歯ぎしり防止などの用途が推奨されている商品です。
80℃程度のお湯に1分間ぐらいつけます。取り出して水気を切り、柔らかいうちに上の歯にかぶせて成型します。
1回目では調整できず。2回目でなんとか成型に成功しました。他商品と比べて成型しにくい印象がありました。
やや成型に手間取った商品でした。噛み心地やフィット感は無難な感じ。良くも悪くも平均的な商品だと言えるでしょう。
7位: 2個入りで初心者にオススメ
成型はやや難しいSukudon
Sukudon
マウスピース マウスガード 2個セット
実勢価格:799円
材質:EVA
カラー:4色
日本語解説書:あり
個数:2個
専用ケース:あり
▼テスト結果
成型のしやすさ:21/35点
フィット感 :21/35点
噛み心地 :21/25点
コスパ :23/25点
総合評価 :86/100点
「Sukudon」のマウスピースは、推奨スポーツとしてボクシング、テコンドー、空手、バスケット、サッカー、ラグビーなどが挙げられています。2個セットなので成型に失敗しても安心です。
80~90℃のお湯に10~15秒ほど浸けおきます。取り出してすぐに口に入れ、しっかりと噛んで、その後水に浸けて完成。余分な部分をカットします。
実証では1回目で完成せず、2回目で成功しました。
コスパに優れた商品です。成型のやりやすさや噛み心地、フィット感は平均的。こちらも4位商品と同じく2個入りなので、初心者におすすめです。
8位: 価格は安いが成型が難しい
使用者が多いワールドチャンプ
ワールドチャンプ
マウスピース クリアー
実勢価格:910円
材質:口腔専用ゴム
カラー:1色
日本語解説書:なし
個数:1個
専用ケース:付属
▼テスト結果
成型のしやすさ:19/35点
フィット感 :19/35点
噛み心地 :20/25点
コスパ :22/25点
総合評価 :80/100点
「ワールドチャンプ 」の推奨スポーツは空手総合格闘技、テコンドーなど。板谷氏によればジムでよく見かける商品だと言います。2個入りではないですが、比較的安価な商品です。
沸騰したお湯に30秒浸け、冷水に1秒浸します。その後口に入れて成型します。1、2回で成型が完了せず、3回目でやっと完成しました。
成型が難しく、完成後のフィット感・噛み心地もいまひとつでした。とはいえ安いので、初心者が使うのには良いかもしれません。
いびき防止用として使える 医療目的のマウスピースもあります
最後に、スポーツ用以外のマウスピースを紹介します。睡眠時無呼吸症候群の治療法として使われるものや、いびき防止用、そして歯を矯正するために使うこともあります。
たとえば睡眠時無呼吸症治療のマウスピースは、舌が喉奥に下がりにくいように受け口ぎみに作られるなど、スポーツ用と形状が異なります。
Joyear
いびき防止グッズ
舌用マウスピース
実勢価格:1599円
購入する場合はこの点に気を付けて、自分の目的に合ったものを選ぶ必要があります。
マウスピースは安全性を重視 自分の歯にフィットすることが大切
以上、スポーツ用マウスピース8製品をご紹介しました。今回のランキングには入っていませんが、検証した中には、成型後に口に入れると非常に硬く、もし割れた場合には危険と思われるものもありました。
マウスピースは口の中に入れるため安全なものでなければなりません。今回の8製品も、しっかりと自分の歯にフィットした状態に成形して使用してください。
板谷一樹氏が所属する
GRABAKA 東中野ジムのご紹介
今回監修をしていただいた板谷一樹氏が所属するのGRABAKA 東中野ジムのご紹介です!
GRABAKAは、2000年にチームを結成。2001年にGRABAKAのリーダー 菊田早苗がアブダビコンバット世界大会で優勝
寝技世界一になったのを皮切りに勢いづくと、同年9月にパンクラスライトヘビー級王者に。2002年12月に東京中野区にGRABAKAジムを設立。パンクラス、PRIDEなどに多くの選手を送り込み、チャンピオンを輩出してきました。
また、近年の格闘技フィットネスブームで女性にも人気。一般向けのジムとして、キックフィットネスや柔術部門もあり、現役プロ選手が丁寧に楽しく指導しています。
同ジムではパーソナルトレーニングも行っています。詳しくは下記のHPをご覧ください!
https://www.grabaka.com/#about
本格的に格闘技を行いたい人や、市販のものではなかなか歯にフィットしないという人は歯科で作ってもらうとよいでしょう。