BBQに向いている炭の選び方
食材の旨みを引き出す立役者である“炭”。炎が昇る薪に比べて、火力が安定し食材を焦がす失敗も少ないといえます。
しかし、ひと口に炭といっても、その種類によって特徴もさまざま。
値段が高いか安いか、火つきが良いか悪いか。食材を上手く焼けるかなど、しっかりと特徴を踏まえた上で選ぶようにしましょう。
そこで代表的な5つの炭の特徴をまとめました。
これらをしっかりと把握しておけば、「テキトーに買ったけど、全然使えない…」なんて悲劇に見舞われずに済みます。
着火加工成型炭:着火剤付きで“点火がラク”な初心者向け

初心者に最もオススメの炭といっても過言ではない着火加工成型炭。オガクズやコーヒーガラ、ヤシガラなどを固めて炭化させた炭です。着火剤を染み込ませた製品もあり、短時間で火をつけることができます。
しかも、木炭のように爆ぜないので安全性も万全。
ただし、見方によってデメリットも存在します。注目すべき炭なので、もう少し掘り下げていきましょう。
着火加工成型炭のデメリット:湿気ると性能がガクンと落ちる…
着火加工成型炭は、湿気ると着火剤成分だけが燃えて、炭に火がつかないこともあるので、保管には十分注意が必要。
他の炭と比べて高価なものではありますが、商品1パックは使い切りだと考えるのが得策です。
着火加工成型炭のデメリット:着火直後に焼くと肉にニオイがつく…
着火加工成型炭は、着火直後に炎が上がります。これは着火剤が燃えているだけなので、炎が収まるまで食材は乗せないようにしましょう。
この状態で乗せてしまうと、着火剤のニオイが食材に移り、臭くなってしまいます。
これらのデメリットを踏まえた上で使うのであれば、初心者にもっともオススメな炭だといえます。
豆炭:食材が臭くなるのでダッチオーブン向き

豆炭とは、無煙炭などの石炭を主成分としたものを指します。食材に臭いが移るので、バーベキューよりもダッチオーブン料理向き。
ただし、豆炭型でも木炭粉を主な素材としている炭は直火利用できます。事前確認し、購入しましょう。
黒炭:炭といえばコレ“汎用性は最強”です

ナラやクヌギなどの広葉樹を窯に詰めて点火し、密封して消火した炭。「炭といえばコレ!」な定番です。煙が少なく刺激臭が少ないので、家の中でも使用可能です。
火つきが良く、火力調整がしやすいというメリットはありますが、燃焼時間が短いので、複数のグリルを使ったり、大人数のバーベキューの場合は、余裕を持った量を準備する必要があります。
備長炭:ビキナーには難しい日本料理の匠の炭

主にウバメガシ材を窯で焼き、灰をまぶして消火した「白炭」。火力と火持ちは優秀ですが、高価で着火が非常に難しいという特徴があります。
これからバーベキュー本格デビューしたいという初心者にはオススメできない炭です。
マングローブ炭:柔らかく火つきも良いがニオイに注意

熱帯の樹木・マングローブ製の炭。価格も安めで火つきも良いですが、多少のニオイや炎が立ち上がることがあります。完全に火が落ち着いてからバーベキューをはじめましょう。
6種類の炭を実際にテスト
炭の火起こしは難易度が高く、慣れやテクニックが必要。真夏のキャンプとなれば、炎天下での火起こしとなり、暑さと熱さで体力が削られてしまいます…。
今回の検証では、すぐに火が着き燃焼時間が長いバーベキューに最適な炭を探すべく、Amazonなどで人気の6種類の炭をピックアップ。

アウトドア道具に精通する編集者・風間拓さんの監修のもと、実際にキャンプ場での長時間にわたる燃焼テストを行いました。
最強の炭を探すべく、行ったテスト内容は以下の2項目です。
【検証①:着火時間】バーナーで熱した際の着火時間を測定

選抜した炭に対し、バーナーによる最大火力の炎を当て、表面全体の色が白くなった着火の瞬間を目視で確認。所要時間をストップウォッチで計測しました。
▼検証に使用したバーナーはこちらです

SOTO
フィールドチャッカーVI
ST-417
実勢価格:5184円
重量:390g(本体のみ)
火口径:直径25mm
燃焼時間:約1.3時間(ST-760使用時)/約1.5時間(ST-700使用時)
使用燃料:SOTO製品専用容器(CB缶)
【検証②:温度変化】赤外線温度計で10分毎に炭の温度を測定

炭の表面全体の色が白くなった着火の瞬間を目視してから、10分毎に炭の表面温度を赤外線温度計で測定。1時間における温度変化の推移をチェックしました。
バーベキュー用炭のおすすめランキング
雑誌「MONOQLO」がアウトドアのプロと一緒にバーベキュー用炭の比較検証を実際に行ったところ、1位はロゴスの「エコココロゴス ミニラウンドストーブ4」でした。2位はKINGSFORDの「チャコールブリケット」でした。
| 商品 | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
ロゴス エコココロゴス ミニラウンドストーブ4
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|
600g |
ヤシガラ |
着火加工成型炭 |
|||
KINGSFORDチャコールブリケット
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|
8.43kg |
木材 |
豆炭 |
|||
山善キャンパーズコレクション 厳選木炭
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|
5kg |
マングローブ |
マングローブ炭 |
|||
Weber Weberブリケット
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|
5kg |
ココナッツ殼 |
豆炭 |
|||
炭魂大黒オガ備長炭
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|
10kg |
オガクズ(杉) |
備長炭 |
|||
豊栄土佐備長炭
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|
2kg |
ウバメガシ |
備長炭 |
【1位】ロゴス「エコココロゴス ミニラウンドストーブ4」
- ロゴス エコココロゴス ミニラウンドストーブ4
- 最安価格: ¥880〜
- 着火しやすさ
- 燃焼時間
- 内容量
- 600g
- 直径
- 7.5cm(炭1個のサイズ)
- 奥行
- 3.5cm(炭1個のサイズ)
- 素材
- ヤシガラ
- タイプ
- 着火加工成型炭
- 型番
- 83100104
【着火時間は?】バーナーの強い炎なら18秒で着火完了

[着火時間:18秒]
バーナーを当てると、みるみるうちに白くなり、わずか18秒で完全に着火しました。
【温度変化は?】短時間で高温状態! 待たずに調理可能に

[最高温度:548.2℃]
約10分後に500℃付近まで温度は上昇。その後も上がり続け、1時間後でも500℃以上をキープするという好成績をマークしました。
着火が速く、最高温度を長く持続するため、ストレスフリーにバーベキューを楽しむことができます。火起こしに慣れていない初心者には、ぜひオススメしたい一品。
ただし、前述の通り、着火直後の火による食材へのニオイ移りにはご注意を。立ち上がる炎が落ち着いてから、バーベキューを開始しましょう。
【2位】KINGSFORD「チャコールブリケット」
- KINGSFORDチャコールブリケット
- 最安価格: ¥2,640〜
- 着火しやすさ
- 燃焼時間
- 内容量
- 8.43kg
- 原産国
- アメリカ
- 素材
- 木材
- タイプ
- 豆炭
- 型番
- 32103
【着火時間は?】表面全体にすぐ熱が周り、素早く着火

[着火時間:1分29秒]
バーナーの火を炭に当ててから、1分前後で白く色が変わりはじめ、スピーディーに着火できました。
【温度変化は?】すぐ高温になるが、30分後から低下

[最高温度:541.4℃]
完全着火から10分で400℃を超えました。その後540℃まで上昇しましたが、30分後から温度はなだらかに下がっていく結果に。
バーベキューの最中も定期的な炭の追加の手間が発生しそうな製品だといえます。
【3位】山善「キャンパーズコレクション 厳選木炭」
- 山善キャンパーズコレクション 厳選木炭
- 検証時価格: ¥898〜
- 着火しやすさ
- 燃焼時間
- 内容量
- 5kg
- 原産国
- インドネシア
- 素材
- マングローブ
- タイプ
- マングローブ炭
【着火時間は?】安くてもハイレベルな着火性能!

[着火時間:2分26秒]
炭の表面全体が白く変わるまで2分26秒と早く、ストレスを感じさせない優秀な着火性を顕示しました。
【温度変化は?】燃焼時間短めなので炭追加は必須

【最高温度:525.3℃】
着火後から30分を過ぎた時点で、徐々に温度が下がり始めます。こまめな炭の追加が必要な点はしっかりと把握しておきましょう。
【4位】Weber「Weberブリケット」
- Weber Weberブリケット
- 最安価格: ¥1,990〜
- 着火しやすさ
- 燃焼時間
- 内容量
- 5kg
- 原材料
- オーガニック100%
- 素材
- ココナッツ殼
- タイプ
- 豆炭
- 型番
- 18486
【着火時間は?】着火3分は問題のないスピード!

【着火時間:3分11秒】
全体に火が回ったのは3分少々と比較的早め。コンパクトなので、小さなコンロでも使いやすいです。
【温度変化は?】最高温度が低くて火持ちもやや短め…

【最高温度:504.6℃】
温度上昇は早いが、最高温度が約500℃と比較的低め。燃焼時間も短めでした。
【5位】炭魂「大黒オガ備長炭」
- 炭魂大黒オガ備長炭
- 最安価格: ¥2,904〜
- 着火しやすさ
- 燃焼時間
- 内容量
- 10kg
- 原材料
- 無添加自然原料
- 素材
- オガクズ(杉)
- タイプ
- 備長炭
- 型番
- 1121
【着火時間は?】なかなか全体に火が行き渡らず…

【着火時間:6分7秒】
炭自体が大きめでバーナーの炎を当て続けてもなかなか変色せず、着火まで6分もかかってしまう残念な結果に…。
【温度変化は?】高温になるまでかなりの時間が…

【最高温度:533.1℃】
400℃を超えたのが20分後とかなり遅めでしたが、1時間後も高温状態をキープできていたのは評価できるポイントです。
まさに備長炭ならではの結果だといえるでしょう。
【6位】豊栄「土佐備長炭」
- 豊栄土佐備長炭
- 最安価格: ¥3,980〜
- 着火しやすさ
- 燃焼時間
- 内容量
- 2kg
- 素材
- ウバメガシ
- タイプ
- 備長炭
【着火時間は?】とにかく着火しなくてイライラ

【着火時間:7分25秒】
バーナーの強力な炎でもなかなか着火せず、炭の表面が白く変色するまでに7分以上かかってしまいまいた。火起こしにはある程度のコツを覚える必要があるといえますね。
【温度変化は?】さすが備長炭! 高温になれば長持ち

【最高温度:521.1℃】
豊栄も5位の炭魂と同じく備長炭なので、温度の上昇はかなり遅めでした。高温になってからの冷めにくさが特徴です。
“BBQは炭火焼き”が美味い理由

バーベキュー炭ランキングや炭選びの基礎知識をご紹介する前に、改めて炭火焼きで食べる肉はなぜ美味いのかと真剣に向き合ってみました。すると、そこには科学的な理由があったんです。
炭は燃える際に、遠赤外線と近赤外線という電磁波を同時発生させます。
遠赤外線は食材に当たることで、肉の表面を香ばしく焼き上げ、近赤外線は電子レンジのように、肉を中から熱して旨みを引き出してくれるのです。
しかも、炭火焼きには、ガスで焼く時のような水蒸気が発生しません。なので、食材の表面は湿らず、カリッと焼き上がります。
遠赤外線で外側「カリッ!」、近赤外線で内側「ジュワッ!」これが、炭火焼きで食べるバーベキューが美味い理由だったんです。
準備する炭の量の目安を解説
バーベキューの最中に炭がなくなったら大変です。炭の購入の際は、種類だけでなく量にも細心の注意を払いましょう。
家族4人なら3~4kg準備 豆炭ならその倍が必要
バーベキューに使用する炭の量の目安は、黒炭やマングローブ炭などの自然木の炭の場合、4人家族で1台のグリルを使用する設定で考えれば、3~4kgが安全。
1人につき1kg以上の計算で準備をすれば、足りなくなることはありません。
ただし、オガクズや炭の粉から作った豆炭の場合、黒炭の倍の量が必要になるのでご注意ください。
余った炭はしっかりと乾燥できる状態での保管を心がけましょう。そうすれば次回のバーベキューで使用することができます。ただし、前項で触れた着火加工成型炭の場合、湿気ると性能が著しく下がるので注意が必要です。
[総合評価]最速18秒で着火 ロゴスが“最強の炭”に決定!
人気のバーベキュー炭6製品を検証した結果、ロゴスは「マッチで火がつく」というキャッチコピーの通り、検証では、わずか18秒という短時間で火起こしが完了し、文句なしの第1位に!

[第1位]ロゴス
エコココロゴス
ミニラウンドストーブ4
実勢価格:669円
着火してからすぐに高温となり、その状態も長く続くため、スムーズかつ快適にバーベキューを楽しむことができます。
着火加工成型炭のデメリットである、火を付けた直後のニオイさえ対処できれば、非常に使いやすく初心者にはオススメな炭です。

[第2位]KINGSFORD
チャコールブリケット
実勢価格:2780円
※楽天のリンク先は、3.62㎏の販売ページになります
2位から4位までの着火性は合格点。しかし、高温になるのは早いものの、温度が下降し始める時間も早いことは注意すべきポイント。こまめに炭を追加していく必要があります。

炭魂
大黒オガ備長炭
実勢価格:2138円
5位の炭魂と6位の豊栄は、バーナーの強力な炎でもなかなか着火しない備長炭なので、初心者には少し扱いにくいかもしれません。しかし、一度温度が上がりきると高温状態を長くキープできるため、大勢で長時間のバーベキューをするときには有効な炭といえます。
続いて、本記事の最後は番外編として、後片付けがラクになる着火前の裏ワザを伝授します。
炭の後始末をラクにする方法は?
バーベキューの後始末は、とにかく大変…。

とくに網についた消火後の炭はボロボロと崩れやすく、グリルの底に付着すると取れにくいのが悩みです。
でも、ご安心ください。着火前のひと手間で、面倒な後始末がグッとラクになるんです。

それが着火前にグリルの底にアルミホイルを敷く方法。
バーベキューが終わったら、敷いておいたアルミホイルで炭を包み込むだけ。包んだ炭はご自宅に持って帰るか、キャンプ場などのルールに則って処分しましょう。お気に入りのグリルもこの裏ワザで長持ちさせることができますよ。
以上、選抜したバーベキューの炭6製品のランキングと炭選びに役立つ基礎知識のご紹介でした。

近年のスタンダードといえる着火加工成型炭の実力がわかったと同時に、同じ備長炭であっても、材料によって着火時間や温度変化に違いが出ることが発見できたのは大きな収穫でした。
ここでご紹介した商品やノウハウをぜひご参考に、アウトドアシーズンを思いきり楽しんでください!











炎を当ててから十数秒で燃焼状態になります。これなら初心者さんでも簡単に火起こしできますね。