AV機器ソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」の注目の理由とは?

スピーカーでじっくり音楽を楽しみたいけれど大きな音は出せない……そんな悩みを抱える音楽ファンにとってヘッドホンは魅力的なアイテム。

しかし、ヘッドホンには「圧迫感」や「蒸れ」という問題があります。

そこで、選択肢に入るのが開放型のヘッドホン。蒸れにくく、装着感が軽いというれしい特性があるからです。

「開放型」のヘッドホンとは?「密閉型」との違いとは?

音漏れが少なく、ノイキャンも組み込める「密閉型」ヘッドホンが現在の主流。屋外など多彩なシーンで活用できます。一方、「開放型」は盛大に音漏れするため、自宅など限られた場所でしか使えません。しかし、音質や空間表現を追求しやすく、快適な装着感を得やすいことから、高級モデルを中心に人気があります。

「開放型」のヘッドホンとは?「密閉型」との違いとは? イメージ
原田裕弘 氏
東京音研放送サービス代表
原田裕弘 氏 のコメント

密閉型は音のエネルギーが耳に集中しますが、開放型は音が集中しすぎずエネルギーが広がりに変わるようなイメージ。これが開放型ならではの気持ちよさにつながります。

ゴン川野 氏
オーディオライター
ゴン川野 氏 のコメント

ヘッドホンのドライバーは空気を振動させて音をつくりだします。開放型のほうがドライバーの動きを妨げないので、解像感などを向上させやすく、音質面で有利なんです。

実はこのところ、開放型の新製品が相次いで登場しています。なかでも注目なのがソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」です。

AV機器ソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」

  • ソニーモニターヘッドホン MDR-MV1
  • 実勢価格: ¥40,412

※重量はケーブルを含まない。

総合評価: 4.58

総合評価
 4.58

現在のヘッドホンは「アクティブノイズキャンセリング」を採用した「密閉型」が主流です。

ところが、ここにきて「開放型」に注目が集まっています。その代表例がソニー(SONY)の「モニターヘッドホン MDR-MV1」

ソニーによると「立体音響などの制作に適したクリエイター向け」ですが、オーディオファンも大注目しています。

モニタータイプのヘッドホンは、スタジオで何時間も使い続ける前提で設計されています。

つまり、開放型かつモニターであるソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」は、アルバムを通して聴くなど、長時間音楽に没頭するには最適なはずなんです。

おすすめポイント
  1. 長時間装着しても疲れない快適さ
  2. 音楽も動画も高音質
がっかりポイント
  1. ワイヤレスを求める人には不向き
  2. 低音重視の人には物足りない
重量
223g(ケーブルを含まず)
型番
MDR-MV1

左右が一目瞭然

左右が一目瞭然 イメージ

「L」「R」が色分けされており、装着時に迷いません。Professionalのシールがソニー製モニターの証です。

有線接続のヘッドホン

有線接続のヘッドホン イメージ

接続ケーブルはφ6.3mmのステレオ標準プラグ付き。付属のアダプターで一般的なφ3.5mmに変換できます。

ふかふかのイヤーパッド

ふかふかのイヤーパッド イメージ

イヤーパッドは交換可能。「同社の密閉型モニターヘッドホンより上質」(原田さん)とプロからも好評でした。

「モニターヘッドホン」と「リスニングヘッドホン」の違いは?

モニターヘッドホン」は、楽器演奏や音楽制作などコンテンツ制作で使われます

サウンドを構成する音をひとつひとつ正確かつ分析的に聞ける音質、長時間装着できる軽さ、酷使できる耐久性や修理しやすさなどが求められます。

一方、「リスニングヘッドホン」は音楽を楽しく美しいサウンドで鑑賞するために設計されています

メーカーや製品ごとに目指す音質が異なり、モニターに近いものから低音重視など明確な個性があるものまでさまざまです。

AV機器ソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」のテスト方法は?

ソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」の装着感や音質をプロとテストしました。

その特徴をつかむために、リスニング用の開放型ヘッドホンの名機として知られる、ゼンハイザー「HD600」シリーズの最新作、ゼンハイザー「HD660 S2」、ノイキャン搭載のワイヤレスヘッドホン(密閉型)の代表例であるソニー「WH-1000XM5」とも装着感や音質を比較。

なお、試聴にはFiiO製のデジタルオーディオプレーヤー「M11S」「M15S」を使用しました。

ゼンハイザー「HD660 S2」

  • ゼンハイザーHD 660S2
  • 実勢価格: ¥96,800

ソニー「WH-1000XM5」

  • ソニーWH-1000XM5
  • 実勢価格: ¥41,570

それでは、テスト結果を順に解説していきます。

AV機器テスト結果は?

装着感:「MDR-MV1」は1時間付けっぱなしでも不快感なく快適!

ソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」

ソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」 イメージ
  • 評価:優秀

重さは223g。バンドもイヤーパッドもやわらかくふんわりとしています。

ヘッドバンドと左右のパッドの3点でふわっと頭を包むような装着感です。

ソニー「WH-1000XM5」

ソニー「WH-1000XM5」 イメージ
  • 評価:優秀

ノイキャン対応の密閉型ヘッドホンとしては極めて軽い250g。

密閉型のヘッドホンとしては最高レベルの装着感ですが、密閉型なので夏場の蒸れは気になります。

ゼンハイザー「HD660 S2」

ゼンハイザー「HD660 S2」 イメージ
  • 評価:良好

イヤーパッドはソニー「WH-1000XM5」よりかため。耳に密着させる「側圧」が強めです。その代わり、頭頂部への圧は一番少なめ。

長時間使用時の快適さではソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」に劣ります。

音質:「MDR-MV1」は極めて高い解像度で、即実感できる高音質

ソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」

ソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」 イメージ
▼音質の特徴
▼音質の特徴 イメージ
低音〜高音の質【評価:優秀】

「ドラムスの空気が動くフワッとした感じすら出る低音、音量を上げてもシャープさを保ち、とげとげしい部分もない高音」(川野さん)と極めて優秀。ボーカルの質感も男女とも良好です。

解像度/ダイナミックレンジ【評価:優秀】

「ピアノのペダルを踏んだときの音までリアル」(川野さん)と、小さな音まで明瞭なダイナミックレンジの広さと「個々の楽器の音色やアタック感までわかる(原田さん)」という解像度の高さです。

定位/レスポンス【評価:優秀】

この2項目は識者2人とも満点評価。「正確な空間情報を再現する」というソニーの主張が試聴で裏付けられた結果です。

この結果から、動画やゲームにも適していることがわかります。

ゴン川野 氏
オーディオライター
ゴン川野 氏 のコメント

ソニーのヘッドホンは個性のある音作りですが、「MDR-MV1」」はニュートラルでモニターヘッドホンらしい音です。本来相反する、なめらかさと解像度を両立できているのが素晴らしい!

原田裕弘 氏
東京音研放送サービス代表
原田裕弘 氏 のコメント

「MDR-MV1」は解放型のメリットで圧迫感を感じずに迫力のある音楽に集中できました。非純正品ですが、バランスケーブルに替えると音の広がりも音質も変わるので遊びがいもありますよ。

ソニー「WH-1000XM5」

ソニー「WH-1000XM5」 イメージ
▼音質の特徴
▼音質の特徴 イメージ
低音〜高音の質【評価:合格】

今回はFiiOのDAPからLDACコーデックによるBluetooth接続で再生しています。ドンシャリですが、どちらかというと「シャリ」がポイントです。

ゴン川野 氏
オーディオライター
ゴン川野 氏 のコメント

透明感があり、抜けの良い高音。

解像度/ダイナミックレンジ【評価:良好】

LDACで接続しているため、ワイヤレスヘッドホンとは思えない解像度です。

原田裕弘 氏
東京音研放送サービス代表
原田裕弘 氏 のコメント

個々の楽器を認識しやすく、濁りもない。

定位/レスポンス【評価:良好】

どちらの評価項目もソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」には及びませんが、良好なスピード感と定位です。音がもたついたり、楽器やボーカルの位置関係が曖昧になったりはしません。

ゼンハイザー「HD660 S2」

ゼンハイザー「HD660 S2」 イメージ
▼音質の特徴
▼音質の特徴 イメージ
低音〜高音の質【評価:優秀】

「豊かな低域の創出」というメーカーの主張どおり、ソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」を上回る良質な低音域が特徴。

ベースなど低音域の楽器の響きが極めてリアル。好みは別れますが、音色の美しさはソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」に勝ります。

解像度/ダイナミックレンジ【評価:良好】

解像度とダイナミックレンジはソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」にはわずかに及ばず、「MV1と比べると個々の音がひと塊になりやすい印象」(原田さん)。

ただし、解像度が高すぎない分「歌声に艶や色気がある」(川野さん)とのことでした。

定位/レスポンス【評価:良好】

ボーカルがセンターにはっきりと定位し、音の立ち上がりや減衰も速く好印象です。

ただ、識者2名の評価はソニー「WH-1000XM5」と同水準でした。再生機器が力不足だった可能性があります。

AV機器ソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」の検証まとめ

ソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」

  • ソニーモニターヘッドホン MDR-MV1
  • 実勢価格: ¥40,412

※重量はケーブルを含まない。

総合評価: 4.58

総合評価
 4.58

以上、ソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」の検証結果でした。

ソニー「モニターヘッドホン MDR-MV1」 イメージ

本機は期待どおり、極めて優秀なヘッドホンでした。

お気に入りの音楽や映画の世界に没入でき、空間表現に優れるヘッドホンなのでライブ盤との相性は抜群。目を閉じてコンサートの情景を思い浮かべたくなります。

原田裕弘 氏
東京音研放送サービス代表
原田裕弘 氏 のコメント

これは欲しくなりますねぇ。

ゴン川野 氏
オーディオライター
ゴン川野 氏 のコメント

この高解像度はダイナミックドライバーとしての限界に到達しているのでは?

密閉型のソニー「WH-1000XM5」と比べて一瞬でわかるのが広がりや楽器の定位の良さ。響きや残響が伸びやかかつキレもいい。動画を観ると効果音の位置関係がとても明確です。

装着感もモニター型ならではのふんわりしたもので、長時間音楽や映像を楽しむにはまさに最適。

また、24Ωとインピーダンス(※)が低いため、パソコンやスマホでも楽しめる使いやすさも見逃せません。

※インピーダンス:低いほど電流が流れやすく音量を稼ぎやすい。高くなると強力なアンプが必要になります。

さらに、業務用のため保守パーツの長期供給が見込めることも加味すると、6万円近い価格でも“一生モノのヘッドホン”として買う価値は十分あります。自宅用として最高の選択になるでしょう。圧倒的な広がりと装着感で、音楽に没頭したい人におすすめです! 

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