フルサイズをグッと身近にした立役者的存在のソニー「α7」
ミラーレス人気が高まる中、フルサイズのミラーレスとしてもっともオススメなのが、ソニーの「α7」です。
ソニー
α7 Ⅲ
実勢価格:22万2800円
サイズ:約W126.9×H95.6×D73.7mm
重量:約650g
撮像素子:35mmフルサイズ、ExmorR CMOSセンサー、約2420万画素
EVF:約0.78倍、XGA解像度
液晶:92万ドット、チルト式(タッチパネル)
どんなカメラなのか説明したいと思いますが、その前にフルサイズとはどういうことなのか、解説していきましょう。
フルサイズとは、正確には「35mmフルサイズ」センサーのこと。光を記録するイメージセンサーのサイズの規格で、35mmフィルムの1コマ(24×36mm)と同じサイズという意味です。
身近な35mmフィルムと言えば、使い捨てカメラの「写ルンです」が挙げられます。そもそもフィルム時代は写ルンですから一眼レフまで35mmフィルムが標準でした。それがデジタル時代になると、フルサイズのような大きいイメージセンサーは製造コストの問題などがあり、APS-Cやフォーサーズなどの35mmより小ぶりなセンサーが普及したという経緯があります。
ちなみに、APS-Cも由来はAPSフィルムのシネマ用規格。フィルムは廃れてもセンサーサイズとしてデジタル時代に受け継がれているんです。
フルサイズは高感度画質が得意です
フルサイズのメリットの1つに高感度画質の良さがあります。
上記の写真は、APS-Cのα6500(左)とフルサイズのα7 Ⅲ(右)で、ISO25600で撮影したRAW画像を+2EV明るくしてノイズを目立たせたもの。フルサイズの方が明らかにノイズが少なくなっています。つまり高感度で撮影したあとの、画像編集した際の仕上がりに大きく差が付くということです。
フルサイズを買うなら、最低予算として中古で9万円くらいが目安になります。初代のα7のレンズキットだと、中古価格で9万円強が相場です。
また初心者が扱うなら、α7の第3世代なら問題ないでしょう。EOS Kiss MのようなタッチAFが可能で、ほとんどの写真がα7R Ⅲのオートモードで撮影されたという写真集もあるほどです。
フルサイズにもデメリットは存在し、レンズがでかくて、しかも高価すぎるんです。上記の写真は左がEOS M用の広角ズーム「EF-M11-22mm F4-5.6」で、右がα7用の「FE 16-35mm F4」。ミラーレスだろうと一眼レフだろうと、レンズの大きさはイメージセンサーのサイズに比例します。そのため、α7 Ⅲ用のレンズも大きくて重たくなります。
そして、フルサイズのレンズは価格も高いです。高性能なものだと10万、20万は平気でします。レンズのコスパはニコンやキヤノンの方が良いのが実情です。
最強のフルサイズ入門機ならα7 Ⅲで間違いありません!
さて、フルサイズの説明をしたところで、α7のカメラの話に戻りましょう。
世界初のフルサイズミラーレスα7が2013年に誕生し、そこから第2世代、第3世代と真価を続けてきました。第2世代までは手ブレ補正や動画機能、小型軽量といった一眼レフにはないα7シリーズの良さがありつつ、質の悪いボタンやまったく持たないバッテリーなど、どこか我慢しながら使っていたのが実情でした。
そんな中進化した第3世代は、オートフォーカス性能からボタンの押し心地、バッテリーの持ちなどが格段にブラッシュアップされ、不満が解消されました。そんな第3世代で最安なのが、α7 Ⅲです。
ソニー
α7 Ⅲ
実勢価格:22万2800円
サイズ:約W126.9×H95.6×D73.7mm
重量:約650g
撮像素子:35mmフルサイズ、ExmorR CMOSセンサー、約2420万画素
EVF:約0.78倍、XGA解像度
液晶:92万ドット、チルト式(タッチパネル)
α7 Ⅲのイメージセンサーはフルサイズなうえ、高感度に有利な裏面照射型です。
ベーシック機ながらデュアルカードスロットや毎秒10コマの連写性能、5軸手ブレ補正など機能不足を感じることは少ないでしょう。
先代のα7 Ⅱの操作性はお世辞にも良くありませんでしたが、α7 Ⅲは「まとも」レベルにはなりました。
そんなα7 Ⅲですが、上記で紹介したように非常に高価なカメラです。しかし、フルサイズはそもそもどのメーカーのモデルも高く、新製品としては決して高くない部類に入るんです。
各社の最安フルサイズの価格は以下の通りです。
ニコン
D750
実勢価格:15万6880円
発売:2014年
キヤノン
EOS 6D Mark Ⅱ
実勢価格:17万4988円
発売:2017年
ペンタックス
K-1 Mark Ⅱ
実勢価格:22万6322円
発売:2018年
ニコンやキヤノンのフルサイズとの大きな違いは、ボディのコンパクトさ。ミラーレスだけあってフルサイズ一眼レフより薄く背が低くなっています。量販店に話を聞くと、重くなりがちなフルサイズ機材を少しでも軽量化したいとα7シリーズを求める人は多いそうです。
α7シリーズはバランス型の「無印」、3000~4000万画素に引き上げた高画質モデルの「R」、動画用の「S」に分かれます。連写に特化したα9とほぼ同じデザインで多くのモデルが存在するうえ、旧世代機も現行で売られているので幅広い選択肢があります。
[α9]野生動物やスポーツ撮影などを行うための、プロ用モデルです。
[α7 III]上位モデルのα7R Ⅲと比べると、ややEVFや手ブレ補正の仕様が劣ります。
[α7 II]1世代前なので実勢価格が12万円程度と安いです。手ブレ補正もこのモデルから搭載しています。
α7 Ⅲはスポーツも十分撮れる動体追尾性能があります!
また、α7 Ⅲは10コマ/秒のAF追従連写が可能。スポーツシーンなどシャッター速度を上げるために感度を上げる必要がある場面でも有利です。
テストした写真家の園部さんも「動体追尾性能でもα7 Ⅱとの差を見せつける結果となりました」と語ります。なお、高速で向かってくる被写体にはややピントが遅れるので、下記の設定を行うと良いでしょう。
競馬場でテストした限りだと「被写体追従感度」を「4」に設定すると、連写中のピント抜けが改善されました。この設定を工夫すれば、失敗写真を減らせるはずです。
望遠でスポーツシーンなどを撮るには、非常に高価ですがソニー純正レンズを購入するのがベストです。シグマの超望遠レンズをマウントアダプターで装着してみましたが、連写速度を3コマに落としても、AFが追従できないカットが目立ちました。
ソニー
G MASTER FE 100-400mm/F4.5-5.6 GM OSS
実勢価格:28万2249円
純正ズームレンズなら、向かってくるシーンも…
横方向の移動も…
追いかけるシーンも撮れます。
ちなみに、プロ仕様のα9とα7 Ⅲを比べてみましたが、α9は適切に設定すれば20コマ/秒の猛烈な連写速度でも、ほぼ正確に被写体を追ってくれる驚異的なAF性能を誇っています。ですが、α7 Ⅲにも搭載されているフリッカーレス撮影機能がα9には非搭載など、実はα7 Ⅲに負けている部分もありました。
背景の大きなボケ感もフルサイズの魅力ですと
フルサイズを手にすると、背景を大きくボカして被写体を強調した写真を撮りたくなるもの。印象的になるだけでなく、ごちゃごちゃした背景をうまく誤魔化せるのもメリットなのですが、ただし写真はボケれば良いというわけでもありません。
同じ条件で撮影した場合、フルサイズはボケが大きくなります。上記の構図で、撮影位置を揃えたときに同じ範囲が写るようにAPS-CのEOS Kiss Mには22mmレンズ、フルサイズのα7 Ⅲには35mmレンズを付け、F2.8でそれぞれ撮影しました。
左がフルサイズ、右がAPS-Cの写真です。左の方が、ボケが大きくなっているのがわかります。
フルサイズで手前から奥までピントの合った画像を撮ろうとすると、F値を思い切り大きくするしかありません。その分ISO感度も上がってしまうので、結果的に画質が落ちるなど、マクロはボケすぎていろいろと大変なんです。
なお、ボケの大きさにはさまざまな要因があり、フルサイズに限らずボケを大きくすることは可能です。まず1つ目の方法は、明るいレンズを使うこと。レンズが明るいと大きくボカすことができます。たとえばフルサイズでF2.8のボケ量をマイクロフォーサーズのオリンパスのカメラで得るには、F1.4のレンズで撮影すればOKです。
2つ目の方法は、できるだけ手前にピント位置を持ってくることです。そうするとピント位置から背景までの距離が開くので、背景のボケが大きくなります。
そして3つ目の方法は、望遠レンズを使うことです。広角レンズよりも望遠レンズの方が背景は大きくボケます。F値が暗いズームレンズでも背景のボケを楽しみたいなら、なるべく望遠側で撮影すると良いでしょう。
ちなみに、撮影した写真は最近のα7であれば、スマホに転送可能です。第1世代とα7 ⅡはWi-Fi非搭載ですが、α7R Ⅱやα7 ⅢはWi-Fiを搭載していて、撮影画像を簡単にスマホに送れます。また、第3世代のα7シリーズはスマホから位置情報を取得し、画像に埋め込むこともできます。
フルサイズはカメラ初心者には手が出しづらいジャンルだと思いますが、試してみるとその性能に驚くはず。ぜひ一度試してみてほしいと思います。
次回連載3回目は、α7の弱点「レンズ編」をお送りします!