生駒山のふもとで行われる質実剛健なものづくり
今回取材したのは大阪府大東市にある象印の大阪工場。炊飯器をはじめとした各製品の設計、開発を行う象印の最大拠点です。背後にそびえる生駒山が真面目なものづくりを見守っています。
実は象印は100周年と歴史が長い割に従業員数はグループ全体で約1300人と意外と少ないことに驚きました。少数精鋭の社員たちがアイデアを突き詰めて働いていることがよく伝わります。
生駒山から吹き下ろす風の影響で、取材当日はかなり寒かったです。
工場では毎日約400個の炊飯器が作られ、出荷されていきます。
職人が手作りした内釜などがこの工場に集結。厳しいチェックを受けます。
若手ホープ社員が語るベストバイ製品を作れる理由
編集部 象印が炊飯器の開発で意識しているのはどのような部分でしょうか。
象印マホービン株式会社 第一事業部
サブマネージャー 三嶋一徳氏
三嶋氏 かつて炊飯器のトレンドは「南部鉄器」や「土鍋」など、内釜の素材にこだわった製品づくりにありました。それが今は「炊き分け機能」にシフトし、米銘柄別炊き分け機能などを搭載して全網羅を目指しているのが他社の一般的な戦略のように思います。
そんな中、象印は「わが家炊き」と称して、簡単なアンケートに答えることで、理想の味に少しずつ近づけてくれる機能にこだわりました。どちらがよりユーザーに寄り添った機能であるかはいうまでもありません。
象印マホービン
NW-AA10
実勢価格:6万2781円
サイズ:W305×H245×D400mm
質量:約11kg
炊飯容量:0.09~1L(0.5~5.5合)
炊飯消費電力:1450W
三嶋氏:コンセプトでいえば、シンプルに美味しく炊けるよ、という「美味しさ満足度」にこだわっています。美味しいご飯というのは千差万別なので、よりいろんな方に満足していただけるよう、今後も頑張るだけですね。
編集部:確かに「美味しさ満足度」の高さはテスト結果にも現れていました。象印の炊飯器は媒体カラーの違う家電批評、MONOQLO、LDKという3媒体でいずれもベストバイとなった貴重な製品です。
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編集部 また、象印は炊飯器の他にも、生活家電部門でアマゾンや価格コムといったネット通販でのレビューでユーザーに評価されているケースが多いですよね。
象印マホービン株式会社 第二事業部
生活家電グループ 柳原浩貴氏
柳原氏 例えば炊飯器以外だと、「乾燥機」や「加湿器」でご好評をいただいています。この2つの製品はいずれも、機能的には結構シンプルなんです。単純な商品なんですが、それを突き詰めるためにさまざまな使用状況や条件を想定した試験をクリアしています。その突き詰めた部分が、今までは見えづらかったのが、ユーザーさんのレビューとして徐々に表れてきているのではないでしょうか
象印マホービン
スチーム式加湿器 EE-RM50
実勢価格:2万3400円
確かに、加湿器はいわばポットでお湯を沸かすような構造で、ふとん乾燥機はホースもマットも使用しない、いわば大きなドライヤーのようなもので、象印の製品は一周回って、目利きのユーザーに認めてもらえるシンプルさ。大々的にPRを打ち出すことは少ないものの、ユーザーからじわじわと人気が広まっていくのは良い製品だという証でもあります。
見た目は完全に電気ポットな加湿器。これまでネックだった手入れのしやすさや、シンプルな構造が徐々に受け始めています。もっと部屋に映えるようなデザインにすることも可能ですが、実用性や仕組みのわかりやすさを重視した逆転のアイデアです。
また、それまで主流だったマットやホースを排除し、ワンタッチで簡単に使えるようにした。「ふとん乾燥機」も、同じくベストバイに輝いています。
象印マホービン
ふとん乾燥機 スマートドライ RF-AA20
実勢価格:1万7800円
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取材の中で登場した興味深い同社の考え方として「自分たちは『家電メーカー』とは思っていない」という発言がありました。
三嶋氏 よく弊社の社長が社員に対して言っており、会社のスローガンにも『日常生活発想』というのがあります。やっぱりもともと「マホービン」から始まったメーカーなので、総合家電メーカーとは違うっていうところはあります。
柳原氏 イメージとして、実は何でもかんでも製品を作って出しているわけではなくて。電気圧力鍋の「煮込み自慢」は炊飯器を応用していますし、先ほどの加湿器も電気ポットを応用しています。技術を応用して新しいものを作っていますが、家電のジャンルでいうと結構絞っていますね。社風として、突き詰めていくタイプなんです。
象印マホービン
圧力IHなべ
実勢価格:2万9480円
昨年、便利機能がたくさん備わった2代目が登場した「煮込み自慢」。もともとの炊飯器のノウハウを生かした見た目となっています。
インスタで「ダサい」と言われても品質では常にベストという自信
編集部 最近では生活家電も、バルミューダやダイソンのようなメーカーを筆頭に、デザイン性についても注目されることが増えているかと思います。
柳原氏 インスタグラムなどでも弊社の加湿器を取り上げてくれる方がいますが、たいてい「デザインはダサいけど」と書かれていて(笑)それでも最後には「これが良い」と書いてくれています。この見た目の方が、使いやすいというのがわかりやすく伝わっているんじゃないかと思うんです。そういう意味では、カッコよくはないですけど、案外これでもいいのかなって思います。
三嶋氏 トレンドの機能を全部入れるのが良いかというと、そうではないですよね。マイナーチェンジでも新製品として毎年出していますが、常に僕たちは『これが今年のベスト』と自信を持って送り出しています。過不足ない、ちょうど良い機能が入ったベストバイです。
最後に今後の目標を聞いたところ、三嶋氏は「美味しさ満足度100%を目指したい。煮込み自慢も、他社と市場を盛り上げながらもっとアピールしたいです」とのこと。柳原氏は「生活家電はどれも寝室で活躍するものが多いので、それによって寝室という空間をより良くしていく製品を出せたらなって思います」とのことでした。
とにかく真面目で、地に足のついたものづくり精神が根付いていた象印マホービン。今年もまた、あっと驚く派手さはなくとも「やっぱり象印だな」と、地味ながら感心をしてしまうような新製品と巡り会えることを確信した、今回の取材でした。