おせち料理は、年神様に供え、同じ箸で一緒にいただきます
新年を祝って食べるおせち料理は、もともとは年神様(※)へのお供えの料理で、正月三が日に神様とともにいただく、という意味があります。正式には御節供(おせちく)といい、元日をはじめ季節の節目にお供えしていたのですが、一年でもっとも重要な、正月のお供えだけを御節と呼ぶようにりました。
お重に縁起の良い料理やご馳走を詰めるのが一般的で、正式なのは四段重ね。四の重の「四」は死を連想させるので避け「与の重」と呼びます。五の重も用意することがあり、これには何も詰めないでおき、繁栄する余地があることを表します。
どの段に何を詰めるかは地域により異なりますが、一の重には黒豆、数の子、田作り(ごまめ)の「三つ肴」と、伊達巻き、紅白かまぼこなど「口取り」といわれる料理を詰めます。二の重にはなますなどの酢の物、三の重は縁起の良い海の幸を中心とした焼き物、与の重には煮しめを詰めることが多くなっています。
【※年神様って?】
年神様とは、先祖の霊の集合体のような存在とも、大自然の根源的な生命力とも考えられる存在で、毎年、新しい年の玉(魂)を授けてくれるありがたい神様だとされていました。正月とは年神様をお迎えするセレモニーであり、大掃除や正月飾りなどの年末行事は、年神様を迎える準備だったのです。
【図解! おせち料理】縁起物づくしの意味はこちら!
続いて、おせち料理の代表的なメニューのご紹介です。ふだんは気にせず口にしているかもしれませんが、じつは、ひとつひとつに願いが込められた、縁起物尽くしなんです。
願いを込めていただけば、今年は開運間違いなし!? 代表的なものをご紹介しますので、ぜひご覧ください!
【①田作り】
五穀豊穣を祈願
祝い肴のひとつで「ごまめ」ともいいます。片口鰯の稚魚を干して、醤油風味の飴炊きにしたもの。鰯を肥料にした際、米が多くとれたことから、豊作祈願としていただきます。
【②数の子】
子孫繁栄の願いを込めて
卵の数がひと腹5~10万と多いことになぞらえ、子孫繁栄を願っていただきます。ニシンの子なので、二親(にしん)から多くの子が生まれてめでたいとも。
【③黒豆】
「まめ」に働けますように
まめに(勤勉に)働き、まめに(丈夫に)暮らせることを願っていただきます。黒い色には魔除けの力があるとのいわれも。屠蘇(とそ)で祝う時に用いられる、祝い肴のひとつ。
【④栗きんとん】
お金がたまるかも?
砂糖で煮た栗をさつまいもなどと練り合わせたもの。栗金団と書き、その色から黄金に例えられ、金運を願っていただきます。昔は砂糖が貴重品で、ぜいたくなご馳走でした。
【⑤紅白かまぼこ】
魔除けと神聖さを示します
神様に供える赤米と白米をかたどったもので、赤は魔除け、白は清浄さの象徴。半月に切ったものを紅白に詰め合わせるのが一般的。さまざまな細工かまぼこも使われます。
【⑥伊達巻き】
勉学向上の願いを願って
伊達とは洒落者という意味。派手好みだった武将、伊達政宗にあやかり、華やかさを表すなど諸説あり。巻物にも似ていることから、知識が増えることを願って食べます。
【⑦なます】
お祝いの水引をかたどります
酢の物の代表。正月に用いられるのは、大根とにんじんを合わせた紅白なますで、お祝いに使われる水引をかたどっています。柿なますやイクラなますにすることも。
【⑧鯛】
「めでたい」に通じる魚の王様
福の神、えびす様が鯛を釣り上げる絵が大漁の象徴として描かれ、「めでたい」に通じる縁起物。値打ちの高さから「腐っても鯛」などと言われます。御節には切り身で詰めます。
【⑨えび】
長寿のシンボル。色もポイント
腰が曲がるまで長生きする老人の姿になぞらえ、長寿のシンボルとされます。赤い色も高貴な色とされ、祝い膳には「伊勢えび」が喜ばれます。御節では焼き物が一般的です。
ちなみに、正月は「年男(としおとこ)」といわれる、一家の主人が仕切るというならわしもありました。雑煮を温め、屠蘇や御節をサーブするのは本来、年男の役目。この正月は、奥様へのねぎらいも兼ねて年男ぶりを発揮すれば、家庭もいっそう円満になるはずですよ!