ダイソンから空気清浄機能搭載のノイキャンヘッドホンが登場!
イギリスの家電メーカーで、シンガポールに本拠を置くダイソン。コードレス掃除機やドライヤーが主力ですが、屋内で使う空気清浄機でも実績があるんです。
そんなダイソンが、次は屋外で……という思考で6年もかけて開発したのが、空気清浄ヘッドホン。
空気清浄ヘッドホンとは?
都市の騒音と大気汚染の両方に対処する製品として、つまり、聴覚と呼吸の健康改善を目指して開発したヘッドホンです。中国やインドなど大気汚染が深刻な国はまだまだ多く、意義深そうです。
しかし、本当に実用的なのでしょうか。さらに、SF感さえ漂う奇抜な見た目。好奇の目に耐える価値はあるのでしょうか?
ということで、おすすめの製品なのかプロと検証のうえ、東京でじっくり1週間使い込んだレビューを紹介します。
ダイソン「Dyson Zone(WP01 BB)」
- ダイソンDyson Zone WP01 BB
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空気清浄機が搭載されたノイキャンヘッドホン!
ダイソン「Dyson Zone」は空気清浄機能をヘッドホンに組み込んだ「ウェアラブルパーソナル空気清浄ノイズキャンセリングヘッドホン」とでも形容すべき前代未聞の製品。
装着シーンと約12万円(検証時)という価格でわかる通り、“売れる”タイプではありません。
しかし、量産して販売しているのだから、ハマるシーンはあるはず。
まずは、本製品の特徴を見ていきましょう。
- 幅
- 240mm
- 奥行
- 210mm
- 高さ
- 200mm
- 重量
- 670g
- 型番
- WP01 BB
「非接触型シールド」できれいな空気を口と鼻に放出
フィルターでろ過した空気がシールドへ
フィルターで浄化された空気は「非接触型シールド」に送られます。シールドの鼻や口に被さる部分のメッシュ状のパーツからきれいな空気が放出されるという仕組みです。
外して単独のヘッドホンとしても使用可能
▼シールド使用
▼ヘッドホン単独使用
非接触型シールドは取り外しが可能で、外せば一般的なノイズキャンセリングヘッドホンとして活用できます。
ヘッドホン部のフィルターで空気をろ過
左右のハウジングにはフィルターと吸気ファンが組み込まれており、空気を吸い込んで浄化します。
回して外すと……
フィルターが出現します。
操作性に独自の工夫が施されている
ジョイスティック型コントローラーを搭載するなど、ほかのヘッドホンにはない工夫が見られます。
日常生活にマッチする?
機能だけでなく、周りの反応も気になります。シールドを装着すると奇抜な見た目に……。抵抗感は否めません。
今回は、音質や空気清浄機能や使い勝手をプロとチェックのうえ、本当に実用的なのか、実際に1週間使ってみました。気になることを徹底レビューします!
音声テスト
テスト1:音質はいい?
雑誌『家電批評』で長年イヤホン・ヘッドホンの音質評価を担当しているオーディオライターのゴン川野さん、東京音研放送サービスの原田裕弘さんの2名が米津玄師やダイアナ・クラールを試聴して判定しました。
テスト結果
ダイソンが「可能な限り原音に忠実なリスニング体験を作り出しました」と言う「Dyson Zone」。
派手な外見とは対照的に低音・中音・高音はフラットバランスで落ち着いたサウンドです。同社初の音響製品としては健闘しています。
しかし、編集部と専門家2名の評価ではシュア「AONIC 50」(4万円前後・49.5点)やB&W「PX8」(11万円前後・55点)など、より高解像に聞こえるヘッドホンは他にもあります。
機能面では、マルチポイントに対応していないのも惜しい点です。
音色はシュアの「AONIC 50」に似たモニター系の音色。ボーカルもきれいに再生されて「なかなかやるな!」とは思いました。コーデックの影響もあるかもしれないが、解像度は足りない。
モニターライクなサウンドだが高級機の音質には及ばず
▼音質の評価
音質合計 | 低音域 | 中音域 | 高音域 | ダイナミックレンジ | 解像度 | レスポンス |
41/60点 | 7.0/10点 | 7.0/10点 | 7.5/10点 | 6.5/10点 | 10/15点 | 3.0/5点 |
▼音質の特徴
ダイソン「Dyson Zone」はSBC/AAC/LHDCコーデックに対応。LHDCは日本で普及していないため、AACで試聴しました。
LDACやaptX HDなどメジャーな高品位コーデックに対応していれば、より良い評価になったかもしれません。
イコライザー(EQ)の選択画面。デフォルトはエンハンスドです。手動で調整できる機能はつけるべきでしょう。
操作性は優秀
オーディオジョイスティックは秀逸なアイデア。たとえば下に倒し続ければ、一気に音量を落とせます。
また、左右のイヤーカップを強めに叩くと、ノイズキャンセリングと外音取り込みの切り替えが可能。操作の確実性が高く、誤操作が起きません。
テスト2:ノイズキャンセリング・マイク・外音取り込み機能は優秀?
ノイズキャンセリング性能はAV評論家の折原一也さんと一緒に室内・屋外・地下鉄でテスト。マイクはカフェの喧騒をスピーカーで流しながらテストしました。
テスト結果
ダイソン「Dyson Zone」をウェアラブル空気清浄機として捉えるなら音質よりもノイズキャンセリングや外音取り込みのほうが重要です。
8個のマイクで騒音を秒間38.4万回モニタリングしているそうで、事実ノイズキャンセリングの効果は十分実感できますし、ノイズキャンセリング特有の閉塞感もなく、風切り音のカットもできています。
ただ、ファンが回転するシールドを装着してしまうとノイズキャンセリングをしてもファンの音を消しきれないのがまず残念でした。
音楽を止めるとファンの音がはっきりと聞こえてしまいます。また、地下鉄など、他製品では対処できている騒音をカットしきれないシーンもありました。
地下鉄に乗ってみました。重低音は消せますが「ガー」「カー」と聞こえるような中音域の走行音は常に残るので、他製品と比較すると、騒音低減の性能が不足しているというジャッジです。
通話や外音取り込みが優秀。ノイキャンは十分だが苦手なシーンもある
マイク【評価:優秀】
マイクを通した声を聴くと低めの音域まで拾えており、うるさい場所では騒音をかなりカットできていました。シールドなしのほうが音質が良いです。
外音取り込み【評価:優秀】
トランスペアレンシー(外音取り込み)は優秀。
シールドを外すとヘッドホンを装着してないかのような自然な聞こえ方に。ただし、シールドを装着すると精度がやや落ちます。
ノイズキャンセリング【評価:合格】
ノイズキャンセリングの効果は十分にありますが、うるさいカフェを想定したテストでは人の声が残り気味。
屋外では、車の音もまろやかにはなるものの、消しきれません。地下鉄の騒音も完全には消せません。
騒音の大きさをリアルタイムで確認できるのは面白い
▼路地
▼大通り
装着すると周囲の騒音(点線)と再生音量(実線)を常時計測。うるさすぎる場合は線が赤くなり、聴覚へのダメージを警告してくれます。
空気清浄化テスト
「Dyson Zone」は空気清浄機と同じ仕組みをヘッドホンに搭載
本機で一番注目されるのが空気清浄機能でしょう。空気を吸い込み、フィルターでろ過してキレイな空気を送り出すという基本構造は空気清浄機そのもの。
ただ、HEPAフィルター(※)ではなく静電フィルターを使用すること、花粉やホコリを検知するセンサーを搭載しないことが大きな違いです。
※ HEPAフィルター:0.3ミクロンの粒子を99.97%以上捕集できるなどJISで定められている規格品
一方、排ガスから生成される二酸化窒素などを測定するセンサーの搭載や歩行スピードに応じた送風の自動制御など屋外向けの機能が盛り込まれています。
この製品は空間を清浄する従来の空気清浄機と異なり、一人分の空気を清浄する設計ですが、従来にないタイプの製品のため厳密なテストを行うことが難しく、「一定の空間に充満させた煙やニオイを取り除けるか」という簡易的な検証を行いました。
それでも検証の結果、空気清浄機としての性能を有するのは間違いないと確認できました。
それでは、検証の詳細をご覧ください。
テスト1:空気を吸い込んでろ過できるか検証
スモークマシンを使って0.125㎥の空間に煙を充満させ、ダイソン「Dyson Zone」の送風を“高”に設定。煙を吸い込ませ、ろ過する様子を観察しました。
空気をファンで吸い込み、ろ過できるのかを確かめるため、密閉空間でテストを行いました。
▼開始時
▼40秒後
▼1分20秒後
▼2分後
▼2分40秒後
以上のように、3分ほどでほぼ煙が消失しました。
テスト2:ニオイ対策はできるか検証
同じく0.125㎥の空間に玉ねぎ臭を充満させてダイソン「Dyson Zone」で脱臭できるか、臭気判定士の石川英一さんがチェックしました。ファン設定は“低”で実行。
臭気4.0(強い刺激臭)が5分で3.0、10分で2.5、30分で1.5(玉ねぎ感はない)まで低下し、脱臭効果を確認できました。
狭い空間の強い臭気を小さなフィルターで除去できており、脱臭の点では実用上問題ない空気清浄機能です。
「Dyson Zone」のフィルターの構造は?
イヤーカップに組み込まれたフィルターは2層構造。活性炭フィルターで排気ガスなどに含まれる二酸化窒素などを、静電フィルターで微粒子を捕捉します。
なお、第三者機関のISO規格によるテスト結果によると、「Dyson Zone」の静電フィルターは0.1ミクロンの粒子を99%捕集するとのこと。
花粉にも効き目を期待できる組み合わせですが、アンモニアやホルムアルデヒドは補足できません。
手入れや着脱に工夫も見られる
専用のマスクが付属
非接触型シールドはその名のとおり「非接触」なので隙間があります。隙間をふさぐために、専用マスクが2種類付属しています。
▼FFP2フェイスカバー(使い捨て)
▼コミュニティフェイスカバー(洗濯可能)
「FFP2」は産業用マスクの欧州規格で米国のN95や日本のDS2に近いものです。
マグネット式なので簡単に下げたり外したりできる
シールドは下げられるので外さずに会話や飲食が可能。ヘッドホンは音楽の再生を止める会話モードに自動移行します。
シールドはマグネットを組み込んだパーツを介してヘッドホンとつながっています。シールドを下げるとファンの駆動も自動停止する仕組みです。
シールドは電子部品がないので分解洗浄できる
シールド部分は衛生的に維持できるように、ほこりを掻きだすためのブラシが付属。
全パーツを分解して洗浄可能です。洗浄後は乾かす必要もあり、お手入れはやや面倒(週1回推奨)。樹脂製なので耐久性は気になるところです。
分解は簡単にできました。
1週間使い込んでみたレビュー
電車に乗ったり、渋谷を歩いたり、買い物をしたりといろんなシーンでシールドを装着してみました。東京の中心部で使ったレポとしてお読みください。
シールドを装着すると周囲の目は気になる?
「マッドマックス」「未来人」「やばいやつ来た」……非接触型シールドを装着した編集部員を見たまわりの反応です。やはり、間近で見るとインパクトが強すぎます。
しかし、実際に街に出ても、指を指されたり話しかけられたりすることは皆無です(外音取り込みで聞き耳を立てました)。街中を歩く程度なら数回で慣れるので、「思ったよりも大丈夫」という印象です。もっとも、それはみんなスマホを見ている東京だからかもしれません。
ただし、電車など他人との距離が近い空間では、シールドの装着をためらってしまいました。電車では空いている席に座るより、立って過ごしたくなります。
目を引くのは間違いないので、先進的なファッションとして捉えることも可能でしょうが、心理的抵抗があるのはウェアラブル端末として問題です。
また、シールドが下方視界を塞ぐのも気になりました。階段では外した方が良さそうです。
ちなみに、シールドを持ち運ぶための専用ロゴ入りポーチが付属します。しかし、これに入れたとて、かさばることに変わりはありません。シールドを小さく折りたためるようにするなどの改良が行われるといいのですが……。
▼周囲の反応
- 量販店のレジ……大変緊張しましたが、シールドを下げたままでも不審がられませんでした
- 渋谷の繁華街……スマホを見ている人が多いからか、意外と視線は感じません
- 地下鉄の車内……隣の席がなかなか埋まらず、避けられているのではないかと心配になりました
- エスカレーター……隣り合うエスカレーターから、視線をしばしば感じました……。
そして、670gという重さにはやはり閉口します。
ダイソンの努力はわかるんです。フィルターやファン、各種センサー、バッテリーヘッドホン部の作りの良さを考慮すると、よくぞこの重さに納めたという評価もできます。
しかし検証をした編集部員は、30分くらいの装着で耳や首に疲れを感じていました。
バッテリー持ちも弱点
音楽再生とシールド装着で最大4時間というスペックですが、歩行速度などにあわせて送風量を自動制御するモードでは、そこまで持ちません。でも、音楽だけなら丸一日余裕で再生できます。
空気質は「きれい」判定がほとんどでした
一方、有意義さも実感しています。まず、シールドは非接触なので息苦しさがまったくなく、呼吸はマスクより快適ですし、悪臭を薄める効果も実感しました(送風で唇が乾きがちですが)。
▼「周辺の空気質」の変化
- 大手焼肉チェーン……お店の外の排気口で「やや汚れている」4.3を記録。脱臭効果も実感
- 喫煙可能な喫茶店……隣に喫煙者が座ると0.3から0.8に悪化しましたが「きれい」の範疇
- 編集部……オフィスビルの中なので0.4〜0.6程度で安定していた
- 第一京浜平和島付近……「きれい」判定だが、トラックの多い第一京浜の歩道は2.1まで上昇した
- 動物園……二酸化窒素は低いが、独特のニオイはシールドで軽減を実感できた
何より、自分の行動範囲の空気のきれいさ・汚さをデータとして蓄積できるのは意義深いです。
ダイソンのアプリにはGPSに基づく「地域の空気質」とヘッドホンのセンサーが計測した二酸化窒素に基づくリアルタイムの「周辺の空気質」が表示されます。
▼周辺の空気質
周辺の空気質は0.0から5.0まで0.1刻みでスコアリングされ、0から3.9までが「きれい」と判定されます。
▼地域の空気質
地域の空気質にはPM2.5や花粉も反映されますが、周辺の空気質は排ガスなどの二酸化窒素だけ。
そのため、実際の汚れとスコアに矛盾が生じる場合があり、センサーの拡充が望まれます。
とはいえ、自分や家族の行動範囲の排ガス汚染の傾向を簡単かつ細かく把握できるのは画期的。ランニングが趣味の人や、呼吸器に持病がある人にはなおさらでしょう。
ダイソン「Dyson Zone」検証のまとめ
Dyson Zone(WP01 BB)
- ダイソンDyson Zone WP01 BB
- 実勢価格: ¥62,000〜
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アイテム毎日更新中!楽天市場で見る¥64,490〜
- 総合評価
以上、空気清浄機を搭載したノイキャンヘッドホン、ダイソン「Dyson Zone」の検証レビューでした。
検証を行った2023年6月の東京では、重さを我慢してまで積極的に装着しようとは思えませんでしたが、花粉シーズンに試したいものです。
最後に価格について。コンセプトや機能を考慮すれば価格は理解できますが、高額だからこそ気軽に持ち出せるデザインと重さであって欲しかったと思います。
ちなみに、ダイソンは付属品とカラーが異なる「WP01 BC」も展開。
ダイソン「Dyson Zone(WP01 BC)」
- ダイソンDyson Zone WP01 BC
- 実勢価格: ¥74,580〜
ダイソン「Dyson Zone WP01BC」は直販限定モデルで、持ち運び用のソフトポーチや交換用フィルターなどが付属しています。
気になる人はチェックしてみてください。
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ヘッドホンとしての完成度は思ったより高い。音はややクールで粒立ちを強調するタイプ。シールド装着時もノイズキャンセリングを有効にして再生すれば、ファンの音は気になりませんでした。