全52本すべてをデータ計測し プロによる試聴と合わせて採点!
今回のテストでは、ヘッドホンで音の違いがわかりやすくなる、1万5000円以下という価格に絞ったランキングとしました。前回のイヤホン全50本テストに続き、今回もダミーヘッドによる周波数特性を測定。全52本のヘッドホンを集め、すべてデータ化を行いました。
イヤホンテストと同様、測定データはあくまでも裏付け。3人の音の専門家に依頼し、プロの耳による試聴にてテストを実施。プロのインプレッションをもとに最終的に編集部にて評価付けを行っています。
全52本をすべて試聴
識者とのテスト大会では全52本のヘッドホンをひとつひとつ丁寧にチェック。イヤーパッドの着け心地など細部にわたりテストを行いました。
知っておきたいヘッドホンについての基礎知識
ヘッドホンについて調べていると、「ドンシャリ」や「かまぼこ」、「フラット」などの聞きなれない単語をよく目にするのではないでしょうか?これらの用語は、ヘッドホンが発する周波数の違いによる音質の特徴の差異を表す言葉です。ここからは、知っておくとヘッドホン選びに役立つ基礎知識について説明していきます。
まず、「ドンシャリ」とは高音域と低音域の周波数が強いタイプの音質のことを指します。「ドン」が低い音を、「シャリ」が高い音を表す擬態語を組み合わせ、この名前で呼ばれているのだとか。そのため、ボーカルの声よりもミュージックサウンドを際立たせて聴きたい方や、ロックやヒップホップなどを主に聴きたい方におすすめです。
続いて「かまぼこ」は、中音域を際立たせたサウンドが特徴的。中音域の周波数が盛り上がっている形がかまぼこに似ていることからこう呼ばれています。ボーカルの声やギターやバイオリンなどの弦楽器、ピアノなどの鍵盤楽器をメインに聴きたい、高い音や低い音の刺激で疲れたくないという方におすすめの音質です。
最後に紹介する「フラット」は周波数の強さが均一で高音域、中音域、低音域まんべんなく聴こえます。そのため、実際にライブ演奏に近い感覚で聴くことができます。しかし、エッジやフィードなどの効果はなく、音に味付けを求める方には物足りないかもしれません。
ワイヤレスと有線どちらがいいの?
最近では以前からあった有線タイプのものに加えてワイヤレスタイプのヘッドホンも普及していますが、どちらを買えばいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか?ここからはそれぞれのメリット・デメリットについて紹介していきます。
ワイヤレスヘッドホンのメリット・デメリット
ワイヤレスヘッドホンの最大のメリットは、その名の通りヘッドホン本体とオーディオ機器がBluetoothで繋がっているためにケーブルレスであることです。このおかげで、ケーブルが物に引っかかってしまう、絡まってしまうなどのストレスから解放されます。さらに、オーディオ機器から多少離れたところにいても使用することができるため、行動が自由になるのも魅力の一つ。
しかし、デメリットとしては充電しなければならないことがあげられます。長時間使用する際はバッテリーの残量を注意しておきましょう。
有線ヘッドホンのメリット・デメリット
有線ヘッドホンは、オーディオ機器とヘッドホン本体が繋がっているので充電の必要がなく、映像と音声のズレが起こらないのがメリット。そのため、長時間の使用やゲームや映像を見る際の使用をメインとする方に特におすすめです。
デメリットは先ほどワイヤレスヘッドホンのメリットでも説明したように、ケーブルが絡まってしまったり、何かに引っかかってしまったりと、使用時にストレスがかかってしまう点です。そのため、よりストレスフリーにヘッドホンを使用したい方にはあまりおすすめできません。
まずは全52製品の結果を大公開! 1位は伏兵「SOUNDWARRIOR」
ヘッドホンランキング1位~52位
まずは最重視する、音質評価を「高音」「中音の解像度」「低音」「ダイナミクス」の4項目それぞれ50点満点で採点。加えて製品評価を「装着感」「タッチノイズ」「遮音性」「形状安定」の4項目それぞれ5点満点で採点しました。
ここからは、トップ10に選ばれた製品の詳細なレビューとテスト結果をご紹介します。
すべての音がハッキリ聴こえる まさに真のバランス型といえる1本!
※現在は販売終了、後継機の「SW-HP10s」が販売されています。
購入価格:1万1713円
形式:クローズド・エアー・ダイナミック型
再生周波数帯域:20~20kHz
インピーダンス:40Ω/1kHz
接続ケーブル:丸型コード(2.5m)
質量:280g(コード含む)
アンダー1万5000円ヘッドホン52本の頂点に立ったのはサウンドウォーリア「SW-HP10」。モニターヘッドホンということもあり、低・中・高音域にわたって音圧の差が少ないフラット系の聴こえ方がするタイプです。
楽器や音響機器に当たっても傷つきにくい金属不使用の構造や、十分なフィット感を持たせるため上下で厚みの異なるイヤーパッド、劣化を抑えるナイロン素材のケースシェルなど、ハンドメイドで細部までこだわりが見られます。
実際の試聴でも、超低音から超高音まで全ての音域がはっきりと聴こえると、識者から高い評価を得ました。
音のバランスの要となる 中音域の広がりが優秀
識者から共通して「バランスの取れた音」との評価を得たSW-HP10。一般的にこのようなバランスタイプのヘッドホンは、周波数特性で全音域が同レベルの音圧で波線がほぼ一直線になっているフラット型といわれています。
中音域を中心に拡大した周波数特性のグラフを見てみると、400Hzから3kHzの波高が10dBの幅で収まっており、全体にまとまりのある音を鳴らしていることがわかります。
全高調波歪率のグラフ。上下に大きく変動しているものほど大きく加工され、濁った音の聴こえになってしまう可能性が高いですが、SW-HP10は全音域にわたり波高がおだやか。
とくに中音域から超高音域にかけてひときわその特徴が目立っており、この歪みの少なさがハッキリとした音となります。
音の密度は、ドライバーから出た電気信号の情報をどれだけ多く音に変換できるかを音の帯域ごとに色で表しています。SW-HP10はこの密度が高く、原音をありのままに伝えることができるキャパシティを持っているといえます。
減衰速度は、再生された音がどのような速さで消えていくかを計測したもの。減衰に時間がかかると、次に再生される音と混ざり濁った音像となり、解像度や分離感が失われます。SW-HP10は全音域でキレイに一定の波を描いており、クリアな音を鳴らしていることが読み取れます。
識者も絶賛のバランスの良さ 中音域の広がりで高パフォーマンス
「中音域から高音域にかけてとてもクリアに聴こえ素晴らしいです。さらに全音域で音がのびのびとしており、とても好印象でした」(井川崇さん)と識者も太鼓判を押しました。
「エントリーモデルといわれるヘッドホンで重要なのは中音域の広がりがしっかりしているかということ。しっかりとした音を鳴らすにはまずこの中音域の密度が高く、低音と高音域のバランスが取れているかが前提となります」と原田裕弘さんはいいます。
エントリークラスのヘッドホンでは、バランス良くしっかりと音を出すという、オーディオの“基本のき”といえる能力を満たしていない製品も多く見られた中、SW-HP10に関しては「中音域の質が高く、それぞれの音域が混ざることなくピュアな音を楽しむことができます」(大澤大輔さん)。
モニターならではの飾らない音! プロの現場で基準となったヘッドホン
購入価格:1万6000円
形式:密閉ダイナミック型
再生周波数帯域:5~30000Hz
インピーダンス:63Ω
接続ケーブル:ケーブル長2.5m
質量:約200g(コード含まず)
20年以上にわたり、ミュージシャンやエンジニアにレコーディングスタジオで愛用されているヘッドホン。正確でフラットな再現性は、音の職人のみならずナチュラルな音源を聴きたいユーザーにはうってつけです。
MDR-CD900STは、細かいパーツを個別に購入できるという魅力も。プロがタフに使い込むからこそ存在するこのオプション。パーツやカスタマイズに詳しくなれば、チェーンナップして使うことも可能です。長く使える“タフな相棒”としてもオススメ。
スライダーには長く使っても壊れにくい金属を使用し耐久性は万全。調整機構はクリック感がありフィッティングがしやすいです
頭に馴染みやすいレザーを採用したヘッドバンドは信頼と安心の日本製。プロの雰囲気を醸し出すシックな見た目が目を惹きます。
見事なフラット型が 細かな音をしっかり拾う
MDR-CD900STの実力は中音域の“超”フラットにあります。400?から1.5k?の間がほぼ一直線となっており、この定規で引いたような直線はクリアな音を奏でている証拠。中音域の広がりに優れ、相当のバランス力を備えていることがうかがえます。2~3kHz付近で少し下がっていますが、大澤大輔さんは「この音域は人間が敏感に聴き取ることができるので、この音域をフラットにしてしまうと聴こえに違和感が出ることがあります。あえて音圧を下げたほうが自然な音の聴こえに役立ちます」と、メーカーにより調整されていると指摘。
低音域の出力は抑えめで、必ずしも万能ではない
「中音域の解像度はピカイチですね。音像をリアルに聴かせてくれ、音が立ち上がりやすく音離れも速い。いつも仕事で使っていますが、改めてほかのヘッドホンと聴き比べながら、テスト音源を聴いてみるとその違いが明瞭にわかります。音業界で定番となっているその所以は、中音域の良さにあると再認識しました」とMDR-CD900STの魅力を再確認した井川崇さん。MDR-CD900STは音の密度も周波数特性の出力に沿ってしっかりと高く現れており、音量を上げても破綻せずに低音から高音域までしっかりクリアに鳴ることがわかりました。
ただし実際の聴こえでは、あまり低音域が出ていないというのが識者一同の認識。ミキサーの現場では、低音域の出力が弱いMDR-CD900STの特性を加味しながら音を見ているといいます。モニターヘッドホンとして愛されるMDR-CD900STですが、必ずしも万能ではないことも知っておきましょう。
高密度の中音域がリアルな音を再現 臨場感ある音が聴こえます!
購入価格:7799円
形式:密閉型、40mmドライバーユニット採用
再生周波数帯域:20Hz~20kHz
インピーダンス:85Ω
接続ケーブル:3.5mmと6.3mm径のプラグを備えるターンケーブル
URBANEARSは2009年にスウェーデン・ストックホルムで創業した、ザウンドインダストリー社のハウスブランド。ZINKENはさまざまなライフスタイルにマッチするレトロな形状とカラーバリエーションが特徴です。
アマチュアDJの使用まで想定して開発されており、素早く機材などに接続できるターンケーブルや、音楽を友人とシェアすることが可能な「ZoundPlug」、さらにポータブルプレイヤーに対応するマイクリモコンなど、便利な機能を搭載しています。
全音域にかけて緩やかなフラットを描く周波数特性が特徴。中音域にややへこんだところが見られますが、試聴ではとくに音質に大きな影響はないとのこと。
音の密度も全体にわたりバランス良く出力されており、なかでも中音域の密度は高め。中・高音域にかけて密度が適度に抑えられていることで、自然な音を感じることができます。
「中高域にある音圧が1番強く感じられるピークがありました。しかし耳を突くような聴こえではなく、むしろそれがほかの音域とのバランスを取る役割をしていました」と、特徴を話す井川崇さん。大澤大輔さんも「音楽の芯の部分がしっかりと表現されています。レンジ感もあり、音楽を楽しむヘッドホンとしてオススメといえます」と評価しました。
4位: キビキビした音が鳴り響く!
小さくても満足いく聴き応え
購入価格:1万2497円
形式:密閉ダイナミック型
再生周波数帯域:7~40000Hz
インピーダンス:16Ω
フィリップスのシリーズのなかでもコンパクトな部類に入る製品ですが、小さいながらもしっかりと中音域の土台があり、聴き応えは十分です。さらに解像度が高いので、低音はドッシリと存在感があり、高音は刺さるような音がなく快適な聴き心地。ダイナミックレンジで本格的な高精細サウンドを提供する40㎜ドライバーを搭載します。
家電メーカーらしい使いやすさも魅力的。長時間装着しても快適な着け心地を維持する低反発フォームイヤーパッドや、スリム&軽量かつフラットに折りたたんで旅行などの外出シーンでも簡単に収納できるデザインなど、使用感にも優れています。
周波数特性では中音域で見事な水平線が描かれており、まるでモニターヘッドホンを思わせるようなデータに。低音の300Hz付近から400Kzにかけて音圧が下がっているが、聴こえには影響していないとのこと。
4kHzを中心とした中高音域が非常に高い密度を出しているので、臨場感ある音が楽しめます。
「フィリップスのイヤホン・ヘッドホンには、全体的にマイルドな音の印象を持っていますが『Fidelio F1』はそれとは一線を画しています。中音域がよく出ているからでしょう。音がクリアで肉厚な感触を強く感じますよ」と、原田裕弘さんは話します。ほかのフィリップスの製品では聴こえづらかった音も、このヘッドホンならクリアに聴こえるはずです。
5位: まとまりのある音を出すオープン型
クリアな高音を感じられる
購入価格:1万2096円
形式:オープンエア
再生周波数帯域:20~20000Hz
インピーダンス:32Ω
接続ケーブル:ケーブル長約2.1m
質量:約150g(コード含まず)
音が適度に外部へ放出されることにより音のこもりを防ぎ、抜けの良い音を感じられる開放型ヘッドホン。その特徴を活かした高音はなんともクリアで、密閉型のヘッドホンでは味わえない聴き心地となっています。
イヤーパッドは開放式に多いスポンジ素材を採用。音抜けの良さのほか、耳へのストレス軽減にもつながります。わずかに角度も調整できるポール伸縮で、耳とヘッドホンのフィット感もバッチリ!
低音域から中音域ではゆるやかなカーブを描き、厚みのある安定した音の響きが期待できます。
中高音域に密度が集中しています。密閉型のヘッドホンだと高音が鳴り過ぎて耳につく可能性がありますが「非常に平均的な音の印象を受けました。グラフを見ると中高音がうるさそうですが、実際の聴こえは滑らか。オープン型の特徴によって抑えるところは抑えたヘッドホンですね」と原田裕弘さんはいいます。
ただ、オープン型は構造上、低音は音抜けによる抜けが多いほど、聴こえが減少してしまう特性があります。「中音域が上手くチューニングされており、その部分がアグレッシブに聴こえます。ただ、低音域が多少抜けてしまうかもしれません(大澤大輔さん)」というように、チューニングの良さと好みは別モノ。ロックなど低音がメインとなる音楽ジャンルが好きな人には、もの足りなさを感じてしまう音となるかもしれません。
6位: 小型ながら迫力ある低音サウンド
パワフルさは好みが分かれる
購入価格:8991円
形式:密閉ダイナミック型(オンイヤー)
再生周波数帯域:16Hz~24kHz
インピーダンス:32Ω
接続ケーブル:ケーブル長1.2m(着脱式)
質量:211g(コード含まず)
カラフルなデザインと「AKG」のロゴを大胆にあしらったファッショナブルなボディが特徴的ですが、外観に負けず、ミニヘッドホンでありながら迫力あるサウンドを鳴らします。その秘密はハウジング。大きな構造にすることで、40㎜のドライバーでありながら余裕のある再現力を可能にしています。
取り外し可能なAKG純正リケーブルは、高純度6N-OFCケーブルを導体に採用。信号の伝送ロスや歪みを抑え音楽をリアルに再生します。ボディは折りたためるので、小さいボディがさらにコンパクトに。
低音から高音まで10dBの間に波形が収められており、バランスが取れています。200Hz手前のへこみは低音域を目立たせる意図があるように見える意識的なチューニング。中音域が高密度だからこそなせる技です。
迫力ある低音を可能にしているのが、中音域の密度の高さ。音量を上げても低音が破綻しないのは、音の高い密度で中音域が低音域のバランスを取っているからだと読み解けます。「小さなボディをしていますが、音量を上げても音が破綻せず、低音と高音の両方で迫力のある音を聴けました。元気の良いサウンドが特徴だといえます」と原田裕弘さん。
ただし、パワフルさが売りのため、着圧は強め。とくに低音は顕著で、普段、音量を大きめで聴いている人にとっては、少し聴きづらさを感じてしまうかも。好き嫌いがはっきりするヘッドホンといえるでしょう。
7位: 格安5千円台の高コスパ&高音質
この価格でこの実力はスゴい!
購入価格:5130円
形式:セミオープンエアダイナミック型(オンイヤー)
再生周波数帯域:13Hz~27kHz
インピーダンス:32Ω
接続ケーブル:ケーブル長1.2m、4極プラグ対応スマートホン用マイク付1ボタンリモコン搭載ケーブル
質量:106g(コード含まず)
AKGのYシリーズで、初めてのセミオープンエアタイプのハウジングを採用し、ナチュラルで開放感のあるサウンドを実現。コンパクトなボディでありながら高性能40㎜径ダイナミックドライバーを搭載します。特筆すべきはこのヘッドホンが5千円台だということ。他メーカーのエントリーモデルが1万円・1万5千円前後からスタートしているものが大半であるなか、このヘッドホンは予想以上のパフォーマンスを発揮。「この価格で7位に入る実力を兼ね揃えているのは本当に素晴らしいです。音もバランス良く鳴らしてくれるので、ビギナーにもオススメです」と大澤大輔さん。
106gのボディはYシリーズのヘッドホンで最軽量。さらに収納は小さく折りたたむことができ、持ち運びも簡単です。快適な装着感を実現するソフトタッチのイヤーパッドを採用するほか、歩きながらでもスム-ズに操作ができるスマートホン用マイクも備わっています。
ゆるやかに中高音域まで伸びている周波数特性のグラフは、極端な音の変化が少なく、まとまりのある音が出る傾向を表しています。低音域については200Hz付近は76dBと低い数値でインパクトある音を鳴らすのは難しいといえます。
中高音に密度が集まり低音に向かってゆるやかに低くなり、バランスの取れた音に仕上がっています。圧迫感を軽減したセミオープンエアタイプなので、実際の聴こえも中・高音域に比べると低音域は控え目な印象です。ただ密閉型は音量が大きくなると音が鼓膜に届くまでに濁ってしまう場合がありますが、半開放型は音を適度に外へ逃し、クリアな音質を保つ効果があります。ナチュラルで開放感がある音を聴けるのはこのタイプの強みといえます。
8位: フィリップスらしい
ゆるやかなドンシャリ
購入価格:1万0769円
形式:密閉ダイナミック型
再生周波数帯域:13~23000Hz
インピーダンス:16Ω
質量:238.5g
A1PROは、ややドンシャリ気味ではありますが全体的に上手くまとめられた音を鳴らすのが特徴的なヘッドホン。人間工学に基づいて快適にフィットするイヤーパッド、ソフトで快適なヘッドバンドクッションなど、エンドユ-ザー目線で設計され、細部のつくりにこだわりを持った家電メーカーならではの使いやすさも特徴です。
高性能な40㎜ネオジウムドライバーを搭載。音量が大きくても音が歪まず、安定して迫力のある音を出力します。コイルケーブル採用で、ケーブルが引っ張られる際にパーツにかかる負荷を軽減。タッチノイズや絡まりといったトラブルも抑制します。
中音域がやや低くなっており、軽いドンシャリ型。しかし、極端な音圧の差はないので、うるさいほど低音と高音が鳴るということではなく、ほどよくふたつの音域が強調された音が鳴る傾向といえます。
中音域より中高音域に密度が集まっており、ボーカル音をよく拾う傾向にあります。音量を上げると高音が耳につく可能性がありますが、極端な密度の変化は見られないことから、ほどよく低音と高音の増強を楽しめます。
「フィリプスのマイルドな音はありながら、中音域の密度がしっかりとありますので、ドンシャリがほどよいアクセントになった音が聴けますよ」と原田裕弘さんは説明。井川崇さんは「欲を言えば、もう少し中音域の密度がほしいですね。この密度が高ければ音のリアルさをより細部にわたって感じることができると思います」と中音域の密度が上位に入り込めなかったことを残念がっていました。
9位: 迫力あるサウンドを好む
AKGのDJヘッドホン
購入価格:7400円
形式:密閉型
再生周波数帯域:16Hz~24kHz
インピーダンス:32Ω
接続ケーブル:ケーブル長1.8m、ストレート(OFC)、片出し
質量:200g(コード含まず)
世界的なDJアーティストと共同製作したヘッドホン。超低音と超高音が強調された、派手な音が特徴。軽量で強度に優れた酸化皮膜アルミニウムやガラス繊維強化樹脂を素材に使用し、さまざまなシーンでタフに使えるように設計されています。高性能の大口径ドライバーを採用し、高密度のダンスミュージックも余裕を持って再生できます。
スピーカーハウジングとヘッドバンドとの連結部分には、「3D-Axisメカニズム」を採用。スピーカーハウジングが自在に動くので、片耳でのモニタリングやプレイ中の瞬間的なポジション変更をサポートしてくれます。イヤーパッドは交換が可能で、清潔かつフィット感を失わない仕様となっています。
DJモデルとあって、ほかのAKG製品とは異なり、低音域の響きを強く意識したつくりに仕上がっています。周波数特性の波形は低音と高音の音圧を上げた見事なドンシャリ型。この傾向により、低音域の迫力と高音域のきらびやかさがこのヘッドホンから期待できます。中低音域がガクンと下がっているので、音量を上げると低音と高音に歪みが出る可能性はあります。
密度に関してもほかのAKG製品が全音域にわたってバランス型なのに対し、このヘッドホンは中音域の密度が低く設定されています。これは低音と高音の強調を第一としてつくられているから。「ほかのAKGより派手な印象なので、初めて聴いたときは『これがAKGの音!?』と驚きました。中音域の密度がもう少しあればもっと良い音が出ますよ」と、大澤大輔さんも他のAKG製品との聴こえとの違いを指摘しました。
10位: キレの良い軽快なサウンド!
高品位な音質をワイヤレスで
購入価格:1万3365円
形式:密閉ダイナミック型(オンイヤー)、Bluetoothワイヤレス
再生周波数帯域:17Hz~20kHz
インピーダンス:32Ω
接続ケーブル:ケーブル長1.2m(着脱式)
質量:173g(コード含まず)
AKG・Y45BTは同シリーズ「Y40」のBluetooth搭載モデルです。高品位な音質とコンパクトボディをワイヤレスで楽しむというのがコンセプトで、ハンズフリー通話対応など、スマートホンとの相性は抜群。Bluetooth、NFCのほかに、apt-X、AACにも対応します。
独自の40㎜径ダイナミックドライバーを採用し、173gという軽量・コンパクトを実現。「中音域が強いのでボーカルが前に出てきます。音のバランスやドライバーのつくりも良好。残るはフィット感が合うかが大切です」と原田裕弘さんはいいます。
周波数特性を見ると中高域のなかで1.5kHzと4kHzの2箇所が強調されており、中高音をよく鳴らそうという意図が見えます。低音域は300Hzまで75dBの出力なので、もの足りなさを感じてしまうかもしれません。ただし、実際の聴こえ方では高音域とのバランスが取れているようにも感じられました。
密度の高い中高音域は、女性ボーカルなど、高音域の音をよく拾う傾向にあります。「中高域は聴く人によって強すぎると感じてしまうかも。イコライザでチューニングをすればより聴きやすい音が鳴るかもしれません」と、井川崇さんは分析します。
なお、コンパクトであるぶん、装着感が音の聴こえ方に大きく影響する可能性があります。小さく扱いやすそうだからといって見た目だけで選ぶと、まったく耳にフィットせずに音も満足に聴こえないこともあり得るので、購入前に実機での確認は必須です。