大きなハウジングを生かした丁寧な音づくりが魅力
より高音質で音楽を聴きたい人にとって、重要なのは音を出力するポータブル機器ではないでしょうか。イヤホンは手軽で持ち運びもしやすい機器ですが、ハウジングが小さくしっかり音を聞くにはまだまだです。丁寧で高水準の音づくりをするヘッドホンが、ズバリおすすめです。
しかし、ワイヤレスヘッドホンの最新トレンドは「ノイズキャンセリングヘッドホン」。たしかに騒音をカットしてくれて便利ですが、「ツン」という独特の感覚がして不快に感じている人もいます。
そこで今回はあえてノーマルタイプのヘッドホンに焦点を当て、ノイズキャンセリング機能がついていないからこそできる音づくりを再評価していきたいと思います。
ノイズキャンセリングの有無がヘッドホンの音づくりを変える
ノイズキャンセリングイヤホンは、騒音をカットする性質上、音質のみ追求できるノーマルタイプのヘッドホンとは根本的に音の仕上がりが異なってきます。
一般的にノーマルタイプのヘッドホンの音質が優れていると言われるのは、良いことがある反面、ノイズキャンセルにはその副作用があるからです。耳への独特の感覚、音質には確かに違和感を覚える人もいるんです……。
まずはノーマルタイプのヘッドホンとノイズキャンセリングヘッドホンの特徴を掴んでおきましょう。
▼ノーマルタイプのワイヤレスヘッドホンの特徴
特徴1:音質が良い
特徴2:外音が聞こえる
特徴3:価格が割安
▼ノイズキャンセリングヘッドホンの特徴
特徴1:ノイズをカットしてくれる
特徴2:鼓膜に違和感がある
特徴3:比較的高価
電車や飛行機の中で、また比較的騒音が少ない室内などで音楽を聴く場合などを想定して、自分の行動や嗜好、スタイルにあったほうを選ぶとよいでしょう。
それでは今回の目的であるノーマルタイプのワイヤレスヘッドホンを購入する際、気をつけておきたいポイントをさらに深堀りしていきたいと思います。
ワイヤレスヘッドホンのトレンドは携帯性が優れた「オンイヤー」
ノーマルタイプのヘッドホンは"プラスアルファ"にこだわる必要がないので、純粋に音質を追求できるのが最大の魅力。限られたハウジングサイズのなかに高性能な技術が収められるのが最大の強みで、気になる外音もイヤーパッドを装着した際のフィット感次第では遮音性も高いので、まったく気にならないモデルもあります。
では、次にヘッドホンの主な特徴について説明していきます。
まず、ヘッドホンにはユニットと外部の遮音性の違いによって「密閉型」と「開放型」に分けられます。
▼密閉型の特徴
特徴1:遮音性が高く、周囲の騒音を減少させる
特徴2:外部への音漏れが少ない
特徴3:音がこもりやすく、空間表現は苦手
▼開放型の特徴
特徴1:音質が良い
特徴2:遮音性が低く、音漏れが多い
特徴3:音のこもり感が少なく、自然な広がりで聴くことができる
ヘッドホンの主流はもっぱら「密閉型」で、ワイヤレスヘッドホンも例に漏れずこのタイプです。開放型は、部屋の中で聴くものがほとんどだといえます。
またヘッドホンにはイヤーパッドの種類でも「オーバーイヤー」と「オンイヤー」の2つに分かれます。ポータブル用のヘッドホンをお求めの場合、この2種類で大まかに区別することができます。
▼オーバーイヤーの特徴
特徴1:完全に耳を覆うタイプ
特徴2:密閉状態なので、外部への音漏れが少ない
特徴3:大型で重く、ポータブルだと一手間が必要
▼オンイヤーの特徴
特徴1:耳たぶを抑え込むタイプ
特徴2:遮音性が低く、音漏れが多い
特徴3:小型で軽く、よりポータブル向き
音質を重視するならもちろん「オーバーイヤー」ですが、大きくかさばるため、ワイヤレスヘッドホンで採用している多くは「オンイヤー」がトレンドになっています。
そのうえで、ノーマルタイプのワイヤレスヘッドホンを買ううえで押さえておきたい「音質」「装着感」という2つのポイントを解説します。
【選ぶポイント①:音質】
密閉型のイヤホンがオススメ
電車内など移動中に使用することが多いワイヤレスヘッドホンは、外部音漏れの心配が少ない「密閉型」モデルがほとんどです。確かに音質にこだわれば「開放型」がいいですが、人前で使用することを考えれば当然の選択肢といえましょう。
そのうえで高音・中音・低音がバランス良く出力され、迫力のある音になっているイヤホンが良い音といえます。
【選ぶポイント②:装着感】
最適なポジションにフィットするもの
ポータブルに最適なのは「オンイヤー」タイプ。折りたたんでコンパクトに収納できる「オーバーイヤー」もあるので、遮音性能と携帯性能もしっかり確認しておきたいところ。
また近年は耳にやさしくフィットするイヤーパッドも開発されています。リスニングにベストなポジションで保持できるものを選びましょう。
音のプロと編集部が厳正チェック音質と通信安定性をテスト
さて、ワイヤレスヘッドホンの"いろは"を押さえてきましたが、実際には購入するあたり、使ってみたいところです。しかし、店舗のデモ機で聴いたところで、どれも同じように聴こえがちです。
そこで今回は音のプロであるサウンドプロデューサーの大澤大輔氏と、東京音研放送サービス代表の原田裕弘氏にご協力いただき、「音質」「装着感」「遮音性」を検証してもらいました。
辛口識者による厳正なテストで行ったテスト内容は以下の3項目です。
【検証①:音質】※各20点満点(4項目合計80点満点)
各音域の出力量とバランスの良さが重要
採点方法は音質にこだわるために、「高音域の質」「中音域の質」「低音域の質」を各20点満点。総合的な音の広がりや響きなどを考慮する「ダイナミクス」も20点満点としています。
【検証②:装着感】※10点満点
耳のフィット感と心地よさ
先述したとおり、イヤーパッドの種類は「オーバーイヤー」と「オンイヤー」の2つがあります。それぞれ装着する際に特徴があるので、耳の塞がり具合や圧迫度などを考慮して採点しました。
【検証③:遮音性】※10点満点
騒音と音漏れが唯一の弱点
ノイズキャンセル機能のないワイヤレスヘッドホンは物理的に音を遮ぎるしか方法がありません。「密閉型」「開放型」、また「オーバーイヤー」「オンイヤー」とでは音の漏れ方が変化します。
これら3項目100点満点としてランキング形式で紹介していきます。それでは、ランキングの発表です!
聴覚空間が広く感じられ楽曲の世界観を十分に楽しめる
Jabra
Move Style Edition
実勢価格:1万2682円
今回ベストバイに輝いたのはデンマークのオーディオブランドJabraの「Move Style Edition」 。およそ150年前から消費者用ヘッドホン、業務用ヘッドセット、補聴器などを製造している歴史あるメーカーで、年々その存在感は強まるばかりです。
「Move Style Edition」はトレンドのオンイヤータイプのヘッドホン。独自のデジタルシグナルプロセッサによる明瞭なサウンドを実現しており、「オーバーイヤー」にひけをとりません。中低域の奥行き表現に優れていて、聴感上の空間の広さがあり、曲の世界観を楽しめます。
このクオリティで価格が1万2000円台というのだから、買って損はありません。
音の傾向は中高音がやや多いようですが、古い曲から新しい曲までソツなく聴かせてくれます。
ポテンシャルが高く曲にハマれば化ける
Beats
Solo3 Wireless
実勢価格:2万1404円
※リンク先のカラーは、Amazon:グロスホワイト、楽天:グロスブラックです。
約40時間の長時間再生がウリ。Beatsサウンズも健在のオンイヤーヘッドホンが2位という評価になりました。カラーバリエーションが豊富でファッション性が高いのも人気のひとつです。
気になる音質は、キレがあり、曲によってハマれば化けるヘッドホンといえますが、70年代ロックなどの楽曲だとウィークポイントが露呈しまいました……。
音の迫力はありますが、肉厚さはないのが惜しいところです。ただし、曲によってハマれば化けるヘッドホンといえます。
バランス良好な音色だがスッキリ抜けず惜しい
MASTER & DYNAMIC
MW50+
実勢価格:4万5783円
※Amazonのカラーはシルバー&ブラックです。
アメリカ合衆国・ニューヨークを拠点に展開している「MASTER & DYNAMIC」は2014年に誕生し、高い評価を得ているオーディオブランド。「MW50+」は「MW50」をベースに改良を加えられたモデルで、大きく変更された点はマグネット着脱式のイヤーパッドにオーバーイヤーを追加したことです。はじめから装着されているオンイヤーの2種類を自在に選ぶことができます。
異なるイヤーパッドで音の変化を楽しめるだけでなく、見た目の違いも考えられているのがうれしいところ。
また、付属のケーブルを使って有線接続もできます。値は張りますが、ひとつのヘッドホンで色々な使用方法があり、価格以上の満足度を得られるはずです。
音質はオンイヤーのイヤーパッドで検証したところ、かなりしっかりしたバランスでした。
少し抜けが悪く、スッキリ&インパクトのある音にまではならなかったのが残念です。
4位: 出音は全体的に細めだが
良好なステレオ感が好印象
AKG
Y500 WIRELESS
実勢価格:1万4389円
※楽天のカラーは、ブラックです。
AKGはオーストリアのオーディオブランドで、イヤホンやヘッドホンに定評があります。価格を抑えながら高品質な音を出すことから、コスパを重視しない人のなかにもファンが多いのもうなずけます。
そんなAKGから2018年10月に発売されたオンイヤーヘッドホン「Y500 WIRELESS」。ヘッドホンを外すと自動で一度停止し、再び装着すると自動で再生してくれる「オートプレイ/ポーズ」機能が搭載されています。ハウジングにセンサーが距離を認識してくれるのです。
一方音質はというと、ステレオ感が優れ、音質も良いという評価を得ました。耳のあて方によって音が変化するので、ベストポジションを探る必要があります。
高音をややセーブしている印象ですが、バランスは悪くありません。
5位: フィット感が抜群だけど
無理な音づくりが気になる
Skullcandy
Crusher360
実勢価格:3万6500円
重低音の鳴らせ方に定評のあるSkullcandy。これは「Crusher」シリーズの最上位モデルになります。従来のモデルが搭載していた左右独立型サブウーハーを強化することによって、ヘッドホン内部に独自の振動を生み出し、重低音を楽しめます。
しかし、低音を強くするあまり、立体感を補うために高・低音を無理に持ち上げた印象があります。現に中音にクセがあり、声が変化して聴こえました。
一方、オーバーイヤーなので遮音性も高く、もっちりとしたイヤーパッドが耳に優しいのが特徴です。
L側のイヤーカップを指先でスライドするだけで重低音のレベルが変えられます。徹底的に低音にこだわっています。
6位: 迫力はあるが箱鳴り感大
中音域のボワつきも減点対象に
オーディオテクニカ
ATH-WS660BT
実勢価格:1万2710円
「ATH-WS660BT」はポータブル性を重視したコンパクトボディ設計でありながら、大口径φ53mm「ディープ・モーション」ドライバーを採用したオンイヤーヘッドホンです。
音質は、それなりに迫力はありますが、どの曲を聴いても似た印象になってしまい残念です。中音域で“ホワンホワン”と鳴ってしまいます。
中音域の量が多く、女性ボーカルのJ-POPを聴くと、バックは小さめに聴こえてしまいます。うるさくなるので音量を上げられず、どうにもならないのが残全。
6位: 3000円台でこの音なら
素直に買ってよし!
JVC
HA-S48BT
実勢価格:3798円
※楽天のカラーはホワイトになります。
安っぽい見た目の割にバランスは悪くない。楽しく聴かせてくれます。
気になった有識者が価格を確認したところ、3000円台と聞いて驚いていました。
どの楽曲もオールマイティにそこそこ聴かせてくれるオンイヤーヘッドホンですが、マイナスなのは分離が悪いところ。
8位: 中音の位相が悪く
低音もさみしい
DENON
AH-GC25W
実勢価格:2万2154円
ハイエンドモデル好評の形状記憶フォームをイヤーパッドに採用したオーバーイヤーヘッドホン。有線接続でUSB-DAC機能も搭載しています。
音質は、中音が少なく、中音域が多いのでツンツンと聴こえてしまいます。低音もさみしく、全体的に音が混濁しています。
9位: 低音が強すぎて
全体のバランスも悪い
JAM Audio
BEEN THERE
実勢価格:6480円
JAM Audioはトレンドを意識したユニークなカラーとファッショナブルなデザイン、リーズナブルな価格が特徴です。
音質は、低音を強調しすぎで、バランスを崩しています。全帯域にまんべんなく悪影響を与えています。
[結論]持ち運びもしやすく音も良いJabraは価格もリーズナブル
Jabra
Move Style Edition
実勢価格:1万2682円
今回のノーマルタイプのワイヤレスヘッドホン2019“最強”に輝いたのは、Jabraの「Move Style Edition」に決定しました。
くしくも上位にランクインした製品は、特に小さくて軽いタイプが多く、オンイヤーヘッドホンだったのが興味深いところです。持ち運びに適した時流に即しているヘッドホンといえます。
近年はノイズキャンセリングヘッドホンに押され、なかなか革新的な新製品が登場しませんが、音質は着実に一歩一歩向上しています。一定数ファンがいるノーマルタイプのヘッドホンの存在も忘れないでくださいね。