据え置き4Kプロジェクターは画質を重視!
4Kプロジェクターは安くても10万円以上する高級品が並ぶジャンルですが、4Kテレビのような精細感・色鮮やかな発色を100インチ超えの大画面で堪能できる醍醐味があります。
雑誌『家電批評』ではこれまで、アンカー「Nebula Cosmos Max」をオススメしてきました。しかし、最近登場した製品をテストしたところ、XGIMIのAndroid TVプロジェクターが画質・映像面で非常に優れていると判明したため、新たにベストバイとしてXGIMI「HORIZON Pro」を選出しました。
据え置きタイプのプロジェクターでもっとも重視すべきは、やはり画質でしょう。というのも、機能や操作面の弱点はセットトップボックス(FireTV Stickなど)である程度補うことができるからです。
画質の比較を中心にHORIZON Proのレビューをお送りします。
4Kプロジェクターの新たなベストバイ XGIMI HORIZON Pro
XGIMI
HORIZON Pro
実勢価格:19万7890円
サイズ・重量:W218.4×D136.2×H208.4mm ・2.9kg
ディスプレイチップ:0.47インチDMD
標準解像度:3840×2160
輝度:2200 ANSI ルーメン
テストした4Kプロジェクター
今回は以下の条件でテストする商品を選定しました。プロジェクターではエプソンが著名ですが「EH-TW7000」は発売が2019年といささか時間がたっていること、「EH-LS12000」は40万円以上と高価格なことからエプソン製品は省いています。
4Kプロジェクターの選定条件
- K相当で投影できる性能をもつこと
- 短焦点タイプは除外
- 最新製品(過去にテストしたNebula Cosmos Maxをのぞく)
- 昼間に使うことを考慮して2000ルーメン以上
- 購入しやすさを重視して30万円以下
選定条件により、ピックアップしたのが以上の7製品です。
4K プロジェクターの画質検証方法
各プロジェクターの評価はAV評論家の折原一也氏が担当。
100インチサイズに投影したときの映像品質を、日中にカーテンで遮光した状態を想定した「うす暗い部屋」と完全な暗室状態の「暗い部屋」でチェックしました。うす暗い部屋は標準や明るい部屋用の映像モードで、暗い部屋では映画用の映像モードで投影しています。
チェック用の映像は映像機器の設定や性能のチェック用としてプロやAVファンに親しまれているブルーレイディスク『The Spears & Munsil UHD HDR ベンチマーク』を主に使用。そのほか、映画作品(『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』)でもチェックをしています。
4Kプロジェクター7製品の画質比較
それでは、プロジェクターごとに見え方がどのように違うのか比較写真でみてみましょう。写真はプロジェクターで投影された『The Spears & Munsil UHD HDR ベンチマーク』のHDR映像を高画質なミラーレスカメラで撮影。肉眼に近い画像になるように現場でカメラマンと調整しました。なお、実際には写真として掲載したシーン以外もチェックして画質を評価しています。
Anker Nebula Cosmos Max(画質評価:14/20点)
うす暗い部屋でもそこそこの精細感を感じられ「4K映像らしさ」はでているものの、他機種と比べてみると少し明るさが足りません。暗部は黒浮きが目立ち、沈み込みが全く不十分です。
暗い部屋では色ノリとコントラストは高いものの、赤色が極めて強いことからもわかるとおり、色のバランスが非常にいい加減です。光源ランプの特性からか赤がすごい発色です。
映画コンテンツも視聴してみましたが、暗所部分の黒浮きが気になります。画質は老舗のプロジェクターメーカーの製品には及びません。
Anker Nebula Cosmos Laser 4K(画質評価:18/20点)
「すげーきれい」と折原さんが思わずもらしたほど、「Cosmos Max」と比べると画質が向上しています。その名の通りレーザー光源を使用するのが特徴です。
映画作品では画面全体のフォーカス感、HDRらしい明るさ、メリハリのある色合いなどによるハイレベルな映像表現を楽しめました。
ベンチマーク映像でも、抜群の精細感。暗部も引き締まっています。色のバランスはなかなか良好。輝度も十分でうす暗い部屋でも余裕をもってコンテンツを楽しめるうえ、色のバランスも崩れにくいです。シーンによっては暗室と全く変わりません。
弱点は暗部の階調表現。山岳地帯の映像では暗い部分が潰れ気味でまったく見えません。この暗部の階調表現が苦手な傾向は映画作品でも同様でした。
XGIMI HORIZON Pro(画質評価:19/20点)
「Cosmos Laser 4K」をさらに上まわったのが「HORIZON Pro」です。階調の再現性、色抜けの良さ(特に暗い色の表現)HDR信号の解釈まで極めて優秀。見映えもふくめてが素晴らしい完成度だと言えます。
特にわかりやすいのが山岳地帯の映像。暗部が潰れはせず、照明を消した状態なら山肌の色もしっかり確認でき、HDR映像の再現としては適切です。
また、うす暗い部屋でも色の鮮やかさや深みのおかげで乗り切れるクオリティも持ち合わせています。なお、この機種は結果が良好だったため、うす暗い部屋でも映画向けのモードで視聴しました。
映画作品もチェックしましたが、パリっとた精細感とフォーカス感できれいです。ただ、ベンチマーク映像ほどの暗部階調の良さは感じられませんでした。
BenQ X3000i(画質評価:18/20点)
スペック上は3000ルーメンと最強クラスの明るさですが、肉眼で感じる明るさはレーザー光源に劣っていました。なお、HDR映像を再生する場合は映像モードが「HDR10」「HDR Game」に限定される仕様です。
映画作品の表現はナチュラルに画面全体が明るく高精細さもあり、かなり優秀です(ただし、レーザー光源ほどの凄みはありません)。
AnkerやXGIMIの製品より一見地味に見えるかもしれませんが、ホームシアタープロジェクターらしいナチュラル志向の表現のため、AVファンは満足できるでしょう。グラデーションが破綻していなことも印象的でした。
ベンチマーク映像は画面全体が高解像で色もきれいなものの、やはりレーザー光源を使う製品のキレキレ感には一歩及ばない印象です。
暗い部屋でも山岳地帯のシーンでは階調性が不足してしまいましたが、花のシーンでは赤色の鮮やかさとシャドーの美しさのバランスが完璧でした(注:写真はうす暗い部屋での様子です)。
課題はうす暗い部屋で、明るさに負けてただの地味な発色のプロジェクターになってしまいます。輝度を上げれば明るくはなるものの、色バランスも崩れてしまいます。つまり、昼間にHDR映像を視聴するには設定を詰める必要がありそうです。HDR用の明るい部屋モードが欲しくなります。
BenQ TK700(画質評価:17/20点)
映画作品では上位機種のX3000iと同様にかなりまともな画質で楽しませてくれます。
ただし、HDR映像が「HDR10」固定となる挙動も同じです。暗い部屋で視聴したベンチマーク映像はかなり明るく感じられX3000iよりもクッキリしている印象を受けるほどです。山岳地帯の映像暗部を完全には潰さず、明るい所は飛ばしすぎずないバランスで上手にまとめています(写真だと分かりづらいかもしれません)。
一方、うす暗い部屋では、部屋の明るさに負けてしまいました。しかし、花の鮮やかさはそれなりに表現できていました。一方、暗いシーンは厳しくなります。
ViewSonic PX701-4K (画質評価:17/20点)
3200ルーメンの高輝度スペックを肉眼でも実感できるかなりの明るさです。4Kらしい精細感、フォーカス感を味わえます。伝統的なホームシアター系の表現「想像以上に頑張っている画質」と折原氏も認める実力派。これが10万円以下で購入できるとあっては画質に関するコストパフォーマンスは相当高いです。
なお、Amazonでは高い価格で販売されている(2022年8月時点)ので注意してください。
うす暗い部屋でも標準モードでバッチリ視聴できて色バランスも自然です。ただし、やや黄色に色バランスが偏っているようにも見受けられます。山岳地帯の映像は地上の暗めの部分も潰れていません。
ただし、映画作品では暗めのシーンで階調が失われていることもありました。
Acer H6800BDa (画質評価:12/20点)
4Kプロジェクターらしいシャープな映像なのですが、映画作品ではが黒色の沈み込みが足りないことが課題と言えます。しかし、ベンチマーク映像を再生すると大きな不満が生じました。
ベンチマーク映像は暗い部屋であっても彩度が低すぎるうえに、色のバランスがグリーンに偏っていました。黒色の締りもあまり良くはありません。退色した写真みたいになってしまいます。
さらに、明るい部屋では輝度が不足するため、さらに表現力が低下してしまいます。「HDRの映像の扱い方を根本的に間違っているのでは」と折原氏が疑問に思うほど残念な結果となりました。
XGIMI「HORIZON Pro」の使い勝手
Android TV搭載プロジェクターとしては優秀な操作性
Android TVの場合「映像を見ながら画質を選ぶ・調整する」というプロジェクターとして当たり前のことができない製品がほとんどです。しかし、XGIMIは視聴中に画質の変更が可能でした。この作り込みは評価できます。
Netflixアプリの挙動に問題があるのは残念
NetflixアプリはGoogle Playからインストール可能です。しかし、ログインして作品を再生しようとするとエラーが出て再生できません。
一応、再生する手立てとして「Netflix-Kodi Edition」を使用する方法があります。
解説サイト:https://glimpse.jp/articles/xgimimogo-review-20200111
Netflix-Kodi Editionにはストリーミングされているデータの詳細を確認できるなど興味深い機能もありますが、操作性やレスポンスが標準的なNetflixとは大きく異なるために使いづらいです。そのため、Apple TVやFireTV Stickなどのセットトップボックスを接続してネットコンテンツを楽しむほうが快適でした。
競合製品との比較
XGIMI「HORIZON Pro」:総合:88点(今回のベストバイ)
▼メリット
- 説明したようにHDR映像の再生が大変優秀
- 遮光カーテンを閉めれば日中でも実用的な輝度
- 使いやすいリモコン
- Android TVを本体に搭載
- デジタル処理による強力な台形補正で良好な設置性
- 中低域の厚みのある迫力あるサウンド
▼デメリット
- Google PlayでインストールできるNetflixアプリは不具合がある
- レンズにズームやシフト機能がない
BenQ「X3000i」:総合:84.5点(正統派の画質が特徴)
※画像はAmazonより
ベンキュー
X3000i
実勢価格:28万7800円
▼メリット
- 伝統的なホームプロジェクターらしい映像表現
- 自動で台形補正が可能
- Android搭載のドングルが付属
- ゲーミングプロジェクターとして使える
- プロジェクターとしての機能とAndroidドングルの機能をうまく使い分けられるリモコン
- レンズはズームできる
▼デメリット
- Android搭載のドングルはNetflix非対応
- オールインワンで完結するには物足りないサウンド
- フォーカスは手動
- HDR信号は映像モードが固定される
Anker「Nebula Cosmos Laser 4K」:総合:81.5点(Anker製品ではベスト)
※画像はAmazonより
アンカー
Nebula Cosmos Laser 4K
実勢価格:24万9000円
▼メリット
- 前モデル(前モデル「Nebula Cosmos Max」)より明確に向上した映像クオリティ
- 高音質なスピーカー(ただし、スピーカーは前モデル「Nebula Cosmos Max」のほうが断然優秀)
- 水平・垂直とも自動で台形補正できる
- Android TV端末を内蔵している
▼デメリット
- Android TV機能を端末に切り出したため、本体と融合していたNebula Cosmos Maxより明確に操作性が低下してしまった(画質調整など)
- 本体天面にある操作パーツが扱いづらい
- レンズにズームやシフト機能がない
アンカー「
Nebula Cosmos Max」:総合:82点(従来のベストバイ)
アンカー
Nebula Cosmos Max
実勢価格:17万9980円
▼メリット
- 音に広がりがあり、臨場感抜群のスピーカー(スピーカーは本機が最優秀)
- Android TVを本体に搭載
- わかりやすい操作性とリモコン
- オートフォーカス対応
- 三脚に設置できるの(設置性は良好)
▼デメリット
- 競合製品と比べてかなりクセの強い画質
- レンズにはズームもシフトも一切ない
- Netflixは非搭載
ベンキュー
「TK700」:総合68.5点(コスパ重視派にはおすすめ)
ベンキュー
TK700
実勢価格:15万1364円
▼メリット
- X3000i並の画質の良さ
- 自動で動く台形補正
- わかりやすい操作性
- ゲームも考慮した映像エンジン
- 購入しやすい価格
- より安い製品より投影距離が短く設置しやすい
▼デメリット
- 映画鑑賞用のスピーカーとしては完全に物足りず合格点以下の水準
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