理想の最終回はコレだ!!
今回トークのテーマに掲げている「理想の最終回」とは、果たしてどんなものなのか。薗部氏、山下氏、木村氏という異色の3名に、自分が理想とする気持ちいい最終回とは何か、思う存分語り合ってもらいました。そのほか、識者おすすめの漫画も要チェック!
最高の最終回とはつまりハッピーエンドなんです。
特に90年代ですね。それだけ、その時代のスピリッツがすごかったということかと!
2位の『編集王』の主人公は、八巻さんがモデルという説もありますからね
私は『風の谷のナウシカ』が1位だってのが、すごく嬉しかったです。逆に言うと、実はナウシカ以外、ほとんど読んだことがありません。MONOQLOは男性誌なので、私とはちょっと意見が分かれてしまったのかもですね
『墨攻』が3位というのもレア! 渋いですね~
因果関係はないと思いますが、送り仮名がない漢字だけのタイトルのものが多いですね。漢字だけのタイトルをつけるといい最終回を迎える。そんなことがあったら怖いですね
アハハ、たしかに漢字が多い!
いい最終回とは何かって考えると……僕にとってはなんと言ってもハッピーエンドです。ベタで申し訳ないんですけど……読み終わって“ああ、みんな幸せになってよかった”と思えるものが好きなんで。話の流れもありますが、群像劇があって、最後はそれぞれがこんな暮らしをしています、幸せに暮らしています、ということがわかるような描かれ方をしているとグッときます
高橋留美子さんの作品は、そういったものが多いですね
ですです。『めぞん一刻』はもちろんですが、『うる星やつら』や『らんま1/2』もいい終わり方をしていると思います
うる星やつら 全34巻
高橋留美子
小学館
「1話目のラムとあたるの鬼ごっこは永遠に続く!? 思わぬ粋な演出をラストにちゃんと入れてくるところがまたズルい」(山下氏)
らんま1/2 全38巻
高橋留美子
小学館
「思い入れのあるキャラの“ラスト感”ある姿に感涙。ギャグ漫画すべての最終回のお手本にしてほしいくらいの出来」(山下氏)
ハッピーエンドがいいって気持ち、めっちゃ共感!
だから、最後に人が死にまくる的な、小劇場の演劇にありがちな感じはあまり好きじゃないですね。『カムイ伝』とかもすごく好きで、これこそがリアリティ!とは思うけど、読後感がいいかと言われると……
読んだあと、幸せな気持ちになりたいですよね
作者のメッセージを伝えきってほしい!
私もアニメを作ったり、漫画を描いたりしているんですが、作品というのは作者の心の中を映した鏡だと思っているんですね。自分の心の中にある善や悪、怒り、悲しみ、喜びがキャラクターとなって現れる。自分の心の中を覗き込むようにして作り出すものだと思うんですが、最終回は自分の中にあるものを全部見せて、最後は“自分は世の中に対してこう思う!”“自分はこう在りたい!”っていうのを言い切ってほしい、というのがあるんですよ
最後はご想像にお任せします、ではなく
作者が飽きて、途中でやめてしまうのではなく
そう、作者が世の中にこれを伝えるために生まれてきたんだってこと、バーン!と言い切ってほしいですね
バクマン
全20巻
大場つぐみ(原作)/小畑健(作画)
集英社
「最高と秋人が願った“漫画としての最高の終わり方”とは!? 最終回には作者とキャラが伝えたかったすべてが詰まってます」(木村氏)
張りまくった伏線を回収してくれるとすっきり!
僕は『それでも町は廻っている』が大好きなんですが、伏線回収の仕方は見事ですよ! 『エリア51』も伏線回収がいいですね。田村由美先生の作品も伏線の回収の仕方が素晴らしい。『BASARA』も『7SEEDS』も完璧なんじゃないかな? 今連載中の『ミステリと言う勿れ』も伏線を張りまくってるんですが、きっと完璧に回収されると思います
エリア51 全15巻
久正人
新潮社
「1話から一貫して、ラストへの道のりが提示され続ける。すべての回が伏線として機能するのが素晴らしい」(薗部氏)
BASARA 全16巻
田村由美
小学館
「少女漫画でここまで壮大な物語は本作以前にはなかったかも。外伝と絡めて伏線が回収されていく」(薗部氏)
7SEEDS 全35巻
田村由美
小学館
「離れ離れの恋人は出会えるのか。誰と誰がカップルになるのか。期待を完全に叶えた上で未来への希望も!」(二平氏)
ミステリと言う勿れ 8巻続刊
田村由美
小学館
「観察力のするどい大学生が、事件の謎を次々解き明かす。田村先生お得意の伏線張り&回収の手腕が実に見事!」(二平氏)
伏線っぽいものがあとで返ってくると、最終回じゃなくてもおお!って思いますよね。旅立った仲間がちゃんと適切な場面で助けに戻ってきてくれたり
『帝一の國』も最高ですよ!政権争いの話で、全員悪役なんじゃ?と思うほどキャラクター全員のアクが強くて。裏切ったり裏切られまくったりするんですが、ラストの人間模様の伏線回収が超泣けるんですよ。本当は悪い人なんていないんだって。1000回読んでも色褪せない最終回です
帝一の國 全14巻
古屋兎丸
集英社
「ジャンプ史上最も性格が悪い(!)利己的な帝一。裏切り裏切られ、人として成長していく姿に超感動!」(木村氏)
僕は仕事柄、自分が好きというよりも“これからきそう”“みんなに読んでほしい”みたいな気持ちから漫画を読むことが多かったので、純粋にこれがいい!っていう話を聞くのは楽しいですね
「最高の最終回」が期待できる大注目漫画はコレだ!
『進撃の巨人』は、終わりが見えてきましたね。まだ4巻くらいしか出ていない頃に『このマンガがすごい!』で1位を獲得したんですが、そのときのインタビューで諌山先生がすでにラストは決まっているっておっしゃってたんですよね。そういうふうに“ラストを決めて走り出す作品”と“作りたい話からはじめちゃう作品”があると思うんです。
進撃の巨人 全33巻
諫山創
講談社
「善にも悪にもなる主人公エレン。このままどうなってしまうの!? とドキドキしてたら最新刊はいい感じ! きれいにまとまりそうで期待が高まります」(木村氏)
『ONE PIECE』も、ラストは決まっているって言いますしね。“ひとつなぎの大秘宝”は、ここまでつむいできた友情という説も出てましたが、そうじゃないと尾田先生がおっしゃっているので、まだまだ先かもしれないですけど期待は高まりますよね
ONE PIECE 98巻続刊
尾田栄一郎
集英社
「“ひとつなぎの大秘宝”=友情、説を作者が完全否定。物語はまだ続くが、納得のいく終わり方になるはず」(薗部氏)
実は私、『進撃の巨人』のアニメの立体機動装置で飛んでいるシーンを見て、アニメーターになろうって決心したくらい好きな作品なんです。主人公のエレンが、善にも悪にもなるっていうのがいいですよね。最新刊はネタバレになるので詳しくは言えませんが、“愛”を感じました。諌山先生のインタビュー記事を読んでいたら、初めの頃はミストエンド(注:フランク・ダラボン監督の映画『ミスト』のような胸糞悪い終わり方)を考えていたらしいのですが、そうじゃないんだ、希望があるのかな、と
あと2巻くらいで終わりそうですね。終わったら少し“進撃ロス”になりそうです(※『MONOQLO』2020年2月号掲載時点)
最終回が読めないかも! お願い、ちゃんと終わらせて~!!
最終回が読めないかも……といえばやっぱり『ガラスの仮面』ですね。作者の美内先生の年齢を考えると、このまま僕たちは見られないかもしれないですね
ガラスの仮面 49巻続刊
美内すずえ
白泉社
「紅天女を最大のテーマに引っ張ること45年。2004年に描き下ろしの新刊42巻が発売、2008年には連載が再開したが、2018年には掲載誌が休刊に…」(薗部氏)
私は一番大好きな『HUNTER×HUNTER』が、ずっと休載なのがツライですね。待ち望みすぎてファンサイトも覗いているんですが、ファンが描いた続きを読んで飢えを凌いでいます。自分が生きているうちに、最終巻を読みたいです
HUNTER×HUNTER
冨樫義博
集英社
「クラピカ編が盛り上がり続きが待たれる中で休載し早2年過ぎ。とはいえ休載も含めファンの熱い気持ちが溢れまくっている作品だと思います」(木村氏)
僕は基本的に長編漫画が苦手なんですよ。特に未完の長編が! 理想的にはなんでもかんでも読みたい気持ちはあるのですが……時間の制約もあるので、基本的には最終巻が出ていて、評判が高い作品を読む。だから僕のような人間にこそ、今回のような企画はいいですね。読みたい作品がいっぱいあったので、読破していきたいと思います
今回のランキングは面白い結果になりましたね。他の媒体では見たことない感じになっています。特徴的なのは、『編集王』、『冬物語』、『ぼくんち』に関わっているのが『ビッグコミックスピリッツ』の八巻和弘さんだということ。さらに小学館の作品が7作も入っていることも特徴的だなと思います