同じU3万円の価格帯でも違いが 現れやすいのは、各パーツの接合部
プレテストとして1周約5kmの皇居を1台ずつ走ってみたところ、思いのほか乗り心地に差があることがわかった。しかし、この乗り心地の差は、一体どこから生まれるものなのか?
そこで、自転車の専門家に伺った。出てきた答えは、折りたたみ自転車の乗り心地の良さは「剛性」にあるということ。
そもそも「剛性」とは力を加えた時の変形のしづらさのことを言う。剛性が低いと上手く力が伝わらず速度が出ない。逆に、高ければ力が伝わりやすく、速くスムーズ進むようになるのだ。
また、折りたたみ自転車において、下記の「3つの剛性」が特に重要で、この差が各モデルごとの乗り心地の差に大きく影響していることもわかった。
まず、乗り心地で一番最初に大切な、「ハンドルの剛性」。これは操作性や安全性に直結し、ハンドルはもちろん、ハンドルの接合部にもガタつきなどがないことが重要だ。
次に、「メインチューブの剛性」。折りたたみ自転車は特性上フレームを折る場合が多く、フレームの接合部の剛性が高くなければ、フラついてしまい乗り心地も最悪となる。
最後に、「クランクの剛性」。クランクとはペダルから伸びている板状のパーツ。この部分に剛性がないと、ペダルを強く踏み込んでも力が伝わらず、進みが悪くなってしまうのだ。
今回は、こうした「3つの剛性」に着目しながら、全体の「剛性」のバランスも評価して、専門家とともに検証を行いランキングを作成している。
ポイント1:走行・操作の安定性に対して最も重要な箇所が、このハンドル部分だ。ハンドルステムを折るタイプやボルトで固定するタイプなど仕様はさまざまだが、接合部に歪みなどがないかよくチェックしよう。
ポイント2:車体の軸となるメインチューブだが、折りたたみ自転車の特性上、ここを折ることが多い。シンプルな構造のため故障は少ないが、粗悪なものは剛性も低く、長期間の使用に耐えられないものもあるので、購入前に確認が必要である。
ポイント3:クランクとは、ペダルから伸びている板状の部分のことを言う。このパーツの剛性がしっかりしていなければ、いくらペダルを踏み込んでも力が逃げてしまい、効率が悪くなってしまう。しっかり踏み込めるかチェックしよう。
1位は「Jeep 2015 JE-206G」 買い物や通勤はコレ1台で間違いなし!
総合1位に輝いたのが、このJeepだ。えっ、自動車メーカーの自転車が1位なのと思われる方もいるかもしれない。しかし、折りたたみ特有の不安定感やバランスの悪さを完全に払拭してくれるのが、このJeepなのだ。
その評価は、テストに参加した専門家をはじめ、試乗した人が口を揃えて言った「乗り心地が良い」という点に凝縮されている。実際に乗ってみると走行時に安定していることはもちろん、他の自転車に比べ、踏み込んだ分をしっかり進んでくれる感覚があるのだ。これについて自転車雑誌ライターの田中さんは「クランクが長い分、踏んだ時にちゃんと力が伝わり、出足も良く大きく進む」と評価している。U3万円というくくりの中では、重量が重いことやVブレーキではないことなど、若干惜しい点もあるものの、日常的な街乗りを考慮すれば、十分な仕様であり、男性の街乗りを使用をしっかり意識して作られていると言える。
ハンドル部分とメインチューブの2カ所を折りたたむだけ。サドルもクイックタイプなので慣れれば約30~40秒でたためる。
Jeep
2015 JE-206G
検証時実勢価格:2万5980円
タイヤサイズ:20インチ
ギア:6段変速
材質:ハイテンスチール
重量:16.8kg
折りたたみサイズ:約680 × 820 × 480 mm
ハンドルが折れるため剛性が弱まりそうに見えるが、非常に頑丈な作りでスピードを出してもブレない。
フロントフォークはストレート。ハンドリング性に優れて、細かな取り回しにも良い。
やや固めでスポーティーな作りのサドルはスピード走行向きと言える。若干滑りやすいことが唯一の難点。
折りたたみのクランクは152mmが多い中、170mmと長く、思い切り踏み込みスピードも出せる作りだ。
車体が重く踏み出しに力がいりそうな印象だが、実際に乗ってみると想像以上に踏み出しが軽く、安定して走行できる。
2位は「Volkswagen VW-206G Beetle] 女性や小柄な人ならVWが一番オススメ
今回検証した中では、検証時の実勢価格2万9000円弱ともっとも高額だったフォルクスワーゲン。見た目は異なるものの、走った感覚は1位のJeepによく似ており、非常に安定感がある。違いの一つは、前輪のフォーク。Jeepとは形が違うため、ハンドルの取り回しが穏やかな印象がある。
また、Jeepのサドルはスピードを意識してやや固めだが、VWのサドルは少し柔らかく、買い物などの街乗りには十分なクッション性だ。識者の義村さんは「Jeepが男性的な作りだとすれば、VWは女性的な作り。1位との差もわずかで、順位が逆でもおかしくない」と評価が高い。
さらに、カゴの装着、メインチューブが低く設計されていることなどから、女性の街乗りをかなり意識して作られており、そのためクランクの長さも女性の体格に合わせ少し短めになっていると分析。女性の利用のしやすさからも家族や夫婦で街乗り中心で使用するならVWがオススメだ。
ハンドル部分とメインチューブの2カ所を折りたたむだけ。サドルもクイックタイプなので慣れれば約30~40秒でたためる。
Volkswagen
VW-206G Beetle
検証時実勢価格:2万8800円
タイヤサイズ:20インチ
ギア:6段変速
材質:ハイテンスチール
重量:16.7kg
折りたたみサイズ:約760 × 820 × 480 mm
ベントフォーク(カーブしている)のため、ハンドルを急に切っても穏やかに反応してくれる。ゆったり街乗りするには最適。
近所への買い物や通勤通学時など、あると何かと便利なカゴが標準搭載されている。
Jeepと同じくチェーンカバーが標準装備。メインチューブも低めに設計されているのでありがたい。
クランクの長さは多くの折りたたみ自転車と同じ152mmで、小柄な女性向きの作りとなっている。
折りたたみにもかかわらずバツグンの安定性があり、低速でも安定して手放し走行することができるほど。
3位は「WACHSEN BA-101 Weiβ」 持ち運びに最適な軽さでレジャーにオススメ!
BA-101の魅力はなんといっても操作性の高さにある。ハンドリングについて「しっかりと曲がりたいところに曲がってくれるのが良いですね。ハンドルを切った時に曲がりすぎたり、曲がらなかったりすることがなく、とてもニュートラルに乗れる自転車です」と自転車ライターの田中さんは説明する。重量は13㎏とテスト車14台中3番目に軽い。この軽さも重量感を感じさせないハンドリングを実現している。
また、ギア比も良好で軽いギアから重いギアまで十分に対応しており、街乗りはもちろんレジャーでも満足のライディング感を味わえる。
WACHSEN
BA-101 Weiβ
検証時実勢価格:2万6800円
タイヤサイズ:20インチ
ギア:6段変速
材質:アルミニウム
重量:13kg
折りたたみサイズ:約640 × 840 × 480 mm
付属品にワイヤーロック・白色LEDライト・着脱式フェンダーがあるのも◎。
フロントにも、クイックなブレーキ操作が可能なVブレーキを採用。
4位: 4位は「My Pallas SC-07」
トップ5にランクインした唯一の1万円台モデル
サスペンションは地面からの衝撃を吸収する反面、ペダルを踏んだ力を若干パワーロスをするというウィークポイントがある。
しかし、SC-07のリアサスペンションは絶妙な固さのため、適度に衝撃を吸収しながらスピードに乗りやすい。
また「フォークがストレートなので、コーナリングは不安でしたが、意外にもスピードを落とさずに曲がれて良いですね。これはフロント部の剛性が高いからでしょう」(義村貞純さん)とコーナリングでも及第点の性能を証明。1万円代モデルながら、押さえるところをしっかりと押さえている。
My Pallas
SC-07
検証時実勢価格:1万3480円
タイヤサイズ:20インチ
ギア:6段変速
材質:スチール
重量:16kg
折りたたみサイズ:約660 × 880 × 400 mm
1万円台のモデルにもかかわらず、前後にはVブレーキを施している。
バランスの良いライディングを実現する程よい固さのリアサスペンション。
5位: 5位は「DOPPELGANGER 202 blackmax」
軽量ボディに7段ギアを搭載しと洗練されたデザインが◎
独特のフォルムが特徴的な202 blackmax。しかし、真の特徴は直線で伸びるスピードにある。テスト車唯一の7段変速ギアと12・1kgの軽さがこれを可能にしているスピードを求める人にはオススメの一品となっている。
DOPPELGANGER
202 blackmax
検証時実勢価格:2万2619円
タイヤサイズ:20インチ
ギア:7段変速
材質:アルミニウム
重量:12.1 kg
折りたたみサイズ:約800 × 640 × 360 mm
6位: オフロード走行をイメージした
ブロックタイヤ装着のレジャー系
テスト車を見て専門家が「おおっ、これは!」と、一番強い印象を受けたのがKZ-100。性能面で優れており、雨の日でもしっかりと止まるVブレーキを採用。多少の悪路でも快適にライディングができるようサスペンションが前後に施されている。
KYUZO
KZ-100
検証時実勢価格:1万7928円
タイヤサイズ:20インチ
ギア:6段変速
材質:スチール
重量:16.5kg
折りたたみサイズ:約730 × 860 × 320 mm
7位: 7位は「TOPONE FS206LL-37-TB」
リアサスとカゴの標準装備で街乗り向け
快適な乗り心地の他に、標準装備が充実している1台。「このバイクには、カゴと鍵が標準で装備されています。それぞれ安くても数千円するので、コスパをよく考えて造られていますね」(専門家)と財布にも優しいバイクとなっている。
TOPONE
FS206LL-37-TB
検証時実勢価格:2万800円
タイヤサイズ:20インチ
ギア:6段変速
材質:スチール
重量:17kg
折りたたみサイズ:約880 × 880 × 560 mm
8位: 8位は「HUMMER FDB206 W-sus」
大柄な男性でも苦にならないサドル高とWサスが魅力
ギアクランクからサドルまで十分な高さがある上に、ハンドルの幅が広いので、大柄な人でも満足して乗れるまさに「大柄対応車」となっている。前後に搭載されたサスも◎だ。
HUMMER
FDB206 W-sus
検証時実勢価格:2万9500円
タイヤサイズ:20インチ
ギア:6段変速
材質:ハイテンスチール
重量:17kg
折りたたみサイズ:約860 × 670 × 390 mm
太すぎず細すぎず、適度な20×2.25サイズはフレームのコンセプトに合ったタイヤ幅となっている。
BMXのような作りのハンドルの接続部分はしっかりとした剛性があり、安定したライディングを実現している。
今回のテストで高い評価を受けたのは、以上の8車種だ。3万円以下でも十分に買う価値のあるモデルが揃った。