浸水や河川の氾濫…… 都市部でも他人事ではありません
8月28日未明から、九州北部を中心に記録的な大雨が襲いました。とくに佐賀県では、佐賀市や佐賀県多久市付近で1時間に120ミリ以上の猛烈な雨を観測。牛津川や松浦川の氾濫、JR佐賀駅の冠水や市街地の浸水など、深刻な被害状況です。
実は「河川や海が近くにない」という地域でも油断は禁物。今回や昨年の西日本豪雨のような雨量であれば、想像よりも水位が上昇したり氾濫する恐れががあります。
一見安全そうな高層マンションも、水害は他人事ではありません。浸水の可能性は低くても、周りが水没すると孤立してしまい、水道が止まってトイレもままならないなどの恐れもあります。
そこで数ある水害対策用品の中でも、外せない重要なグッズの1つが「ライフジャケット」です。
水害から身を守るために 常備したい“ライフジャケット”
ライフジャケットというと、釣りや川遊び、ボートといったアウトドアやレジャーのイメージが強いかもしれませんが、東日本大震災の津波を教訓に防災グッズとして注目されています。
とくに河川などが多く水害の影響を受けやすい地域の場合、これがあるとないとでは大違いで、生死を分けることにもなりかねません。
そんなライフジャケットですが、各社からさまざまなタイプのものが売られています。ここでは、防災グッズとして使えるライフジャケットについて、選び方のほか、7製品を実際に着用して評価しました。
ライフジャケット選びの基本は? まずは3つのポイントを確認!
ライフジャケットを選ぶ際に重要なポイントは、「素材」「形状」「サイズ」の3つです。
[ポイント1:素材]
素材自体が浮かぶ、ウレタン製を選ぶことが重要です。空気を入れて浮力を得るタイプは破れる危険があり、定期的なメンテも必要になるので、できるだけ避けるといいでしょう。
[ポイント2:形状]
身体をしっかり支えてくれる、ジャケットタイプがベスト。ウエストベルト型や首かけ型もありますが、長時間救助を待つことが考慮されていません。
[ポイント3:サイズ]
ライフジャケットは、身体にピッタリとフィットさせることが重要です。とくに子供用はスルリと抜けてしまわない適切なサイズで、股ストッパーがあるものを選ぶといいでしょう。
この3つが、ライフジャケットを選ぶ上で重要なポイントになります。
ライフジャケット7製品を 水害を想定して検証しました
ライフジャケットで重視するべきポイントがわかったところで、Amazon、楽天、防災グッズの通販サイトの人気商品から、ウレタン内蔵タイプをチョイス。実際に装着し、プールを使ってその機能性を検証しました。
採点項目は、「飛び込み」「水面からの高さ」「這い上がり」の3つです。
[チェック1:飛び込み]
「飛び込み」は、高さ40cmからプールにダイブして、高さが安定するまでの秒数を計測しました。
[チェック2:水面からの高さ]
「水面からの高さ」は、被験者の口から水面までの高さを計測。浮力の目安としました。
[チェック3:這い上がり]
「這い上がり」は、ライフジャケットを装着したまま岸へ上がる動作の秒数を計測。動きやすさの目安としました。
上記のテストを防災のプロと被験者の意見を取り入れながら、「機能性」「動きやすさ」「構造」を検証。総合評価を出しました。
なお、今回ご紹介するライフジャケットは防災グッズとしての性能を比較したもので、小型船舶等で着用するためのものではありません。
小型船舶等で使用する場合は、国が安全性を確認した証である「桜マーク」があるライフジャケットを着用してください。詳しくは、国土交通省のライフジャケットの安全基準と技術基準をご覧ください。
それでは、防災用ライフジャケット7製品の評価をご紹介します。
すべての項目で満点獲得! 動きやすさ抜群で頼もしい
YUNTIAN OUTDOORS
大人用 ライフジャケット ホイッスル付き
フロントサイズ調整 フローティングベスト
実勢価格:2059円
ベストバイに選ばれたのは、フロントサイズが調整できるYUNTIAN OUTDOORSのフローティングベストでした。
洋服を着ている被験者の足まで浮かせる浮力は、フィットしたフロントベルトと股ストッパーおかげです。
胴からしっかり浮くので安心感があり、動きやすさも問題ありません。反射板もあり、夜間でも目立ちます。
▼テスト結果はこちら
機能性 :◎
動きやすさ:◎
構造 :◎
「機能性」「動きやすさ」「構造」の全項目が、文句なしの◎。総合評価は「S」を獲得しました!
この股ストッパーのおかげでベストが離れず、水中でも動きやすくなっています。難点はちょっと痛いところ…。
付属のホイッスルを取り出すときも、身体にフィットしたベストは動きを妨げません。サッと取り出せます。
ベルトを締めれば身体にフィット。肩からウェストまでピッタリフィットなのがよくわかります。
また、サイズがS~XXLまであるので、子供から大人まで合う大きさを選べます。
被験者からは、「他の製品と比べて浮いている時の安心感があります」という声も出ました。
サイズ調整がしやすく 体にぴったりフィットします
Vkaiy
救命胴衣 呼び子付け
フローティングベスト
実勢価格:2099円
サイズ調整が楽で、とても着やすい設計の製品です。
水中では動きやすいのですが、浮力がかなり強いです。上手くバランスを取らないと、身体が回転してうつ伏せになってしまうこともありました。
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機能性 :○
動きやすさ:○
構造 :○
「機能性」「動きやすさ」「構造」ともに〇。満点ではありませんが、まんべんなく高評価で、総合評価はAでした。
背中の力を抜くと、くるんと裏返しに。身体を縦にするのもコツがいります。
サイズ調整すれば、身体にとてもフィットします。
S評価の製品同様、肩からウエストまでピッタリフィットしています。
股の食い込みが気になる… 動きやすいけど体型を選びます
キャプテンスタッグ
シーサイド フローティングベスト2
実勢価格:12084円
股ストッパーとフロントのジッパーで、身体にフィットさせるフローティングベストです。
着やすくて浮力も十分。水中での移動も楽にできますが、股への食い込みが痛いです。
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機能性 :○
動きやすさ:◎
構造 :△
「動きやすさ」は高評価ですが、股に食い込む点で「構造」評価がイマイチの結果となりました。総合評価はAですが、体型によってサイズが難しい場合があります。
ストッパーがかなり食い込みます。とくに、仰向けがきついという声が上がりました。
特徴は、丈の短さと股ストッパーです。
ウレタンはコンパクトですが、浮力は十分あります。
動きやすさは評価されましたが、構造に懸念点があるのでご注意ください。
顔を前後でしっかり支える ウレタンボードが特徴
60kgHUSE
リリーフライフジャケット Sサイズ
実勢価格 1万858円
ウレタンボードが特徴的な、60kgHUSE製のライフジャケットです。
前後のウレタンボードが浮いて、顔と身体を支えてくれます。浮力はOKですが、ウエアの伸びがないのでちょっとキツいです。
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機能性 :○
動きやすさ:○
構造 :○
全項目で高評価を得て、総合評価はAでした!
腕を上に上げても、沈み込みはそれほどではありません。でも、ボードに首とあごが当たって、少し痛さを感じました。
ウェアにボードがついている、少し変わった形状。
コンパクトですが、ウレタンボードは厚みがあります。
サイドのひもが締めづらい 着用には2人必要です
ノーブランド
ライフジャケット フローティングベスト/救命胴衣/ライフベスト
フリーサイズ(大人用・子供用)
実勢価格:1404円
ほかの製品よりもリーズナブルな、ノーブランドの救命胴衣です。
フィット感はありませんが、首への負担も少なく上半身はちゃんと浮きます。ただしジャケットのサイドにあるひもは、1人では締められません。着用時は、2人一組であることが求められます。
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機能性 :○
動きやすさ:△
構造 :△
「機能性」は認められましたが、「動きやすさ」と「構造」の評価はイマイチ。総合評価はBでした。
助けを呼ぼうとして手を上げると…残念ながら沈みます。これはちょっと困るかも。
フロントジッパーと同色のひもが、上下にあります。
サイドのひもがネックでした。
一刻を争うときに、ひとりで着られないのが気になります。
フィット感が薄く 小柄な体型だと抜けそう
高階救命器具
小型船舶用救命胴衣 TK-30RS
実勢価格:3264円
軽くて着心地の良い救命胴衣ですが、フィット感が感じられませんでした。
水中では、ライフジャケットだけが浮いてしまう感じがします。小柄な人なら、抜け落ちてしまうかもしれません。
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機能性 :△
動きやすさ:△
構造 :△
評価項目のすべてが、イマイチという結果に。総合評価はBでした。
フィットしないので肩の部分だけ浮いてきて、のどを圧迫します。呼吸がしにくく、苦しくなります。
フロントジッパーと、上下2カ所のひもで着用します。
ジャケットが硬めに作ってあるので、肩が浮いてしまいます。
カンタン着用はうれしいけど 動きにくさが懸念点
オーシャンライフ
小型船舶用救命胴衣
オーシャンC-2型 オレンジ
実勢価格:2980円
小型船舶用の救命胴衣で、フロントジッパーを閉めれば着用可能な手軽さがうれしい製品です。
ただし、サイズの調整ができないので肩がずれてしまい、水に入ると重くなってしまいます。
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機能性 :△
動きやすさ:×
構造 :△
「機能性」と「構造」はまあまあでしたが、「動きやすさ」が×と低評価でした。総合評価はBです。
浮力はあるのですが、とにかく動きにくく、泳いだり潜ったりは不向きです。
固定はフロントジッパーとひもだけ。調整はできません。
ウレタンはちゃんと入っていますが、フィット感がありません。
肩がずれるジャケットは△です。
ほかにもこんなジャケットが! 津波対策用など特殊モデル
そのほか、特殊なジャケットを2つご紹介します。まずは津波対策用の製品で、見た目ほど重くなく、頑丈に作られています。浮力もしっかりあって、上半身は水上に出るほどです。
▼HAMAURE 津波対策用 救命胴衣
HAMAURE
フローティングプロテクター
津波対策用 救命胴衣
実勢価格:3万1000円
首回りのプロテクターで顔が沈む心配もありません。泳ぎにくいのが難点ですが、2人がつかまっても沈まず、抜群の安定感があります。
そしてもう1つ、モンベルが東日本大震災を教訓として開発したジャケットです。
▼モンベルの「浮くっしょん」
モンベル
浮くっしょん(男女兼用)
実勢価格:3908円
普段はクッションとして使い、被災時にはライフジャケットに変身します。小学校などの公共施設にも導入されています。
以上、ライフジャケットの7製品比較+アイデアジャケット2製品の紹介でした。
今回のベスト獲得は2000円以内の製品で、価格と性能は必ずしも比例しない結果に。評価の分かれ目となったのは、サイズ調整と股ストッパーによるフィット感の有無のようです。
身体にフィットしなければ、肝心なときに動きにくかったり、最悪の場合には脱げてしまう危険もあります。購入前、あるいは購入した直後に、一度は試着しておくことをおすすめします。
特殊な形なので事前に試しておくことが大切です。