約50万円越えのアップル「Apple Vision Pro」を体験!
アップルが「革新的な空間コンピュータ」として発表した「Apple Vision Pro」が、ついに米国で発売されました。
以前からそのハイスペックぶりや約50万円というお値段が話題になっていた本製品。いったいどんな体験ができるのか、気になっている人も多いのでは?
今回は一足先に「家電批評」編集部がこの「Apple Vision Pro」に触れる機会を得たので、そのスゴさの一端をリポートします!
検証方法
識者所有の米国版「Apple Vision Pro」(技適未取得機器を用いた実験等の特例制度による特例を申請したもの)を使って、映像や操作性のレビューを行いました。
アップルの新世代デバイスとは?
アップル「Apple Vision Pro」
- アップルApple Vision Pro
- 実勢価格: ¥702,300〜
※実勢価格3499ドル1ドル=151円換算
アップル「Apple Vision Pro」は2023年に発表され2024年の2月にアメリカで発売された新世代のVR・MRデバイスでMeta Quest3など既存の同ジャンルのデバイスより遥かにハイスペックな製品です。
特にそのディスプレイ性能は圧倒的で、従来モデルにはない解像感でこれまであった映像に対する違和感を払拭できるものとなっています。
- 重量
- 600~650g※ライトシーリング、ヘッドバンドの構成により変動
- ストレージ
- 256GB、512GB、1TB
- バッテリー
- 分離型(最大2時間)
- センサー
- LiDAR スキャナー慣性測定ユニット×4、フリッカーセンサー、環境光センサー
- カメラ
- 3Dカメラ、高解像度メイン カメラ×2、ワールドフェーシングトラッキングカメラ×6、アイトラッキングカメラ ×4、TrueDepthカメラ
- ディスプレイ
- 3800×3000(片目)、3386PPI
- プロセッサ
- Apple M2+Apple R1
- リフレッシュレート
- 100Hz(最大)
- OS
- visionOS
- 入力(メイン)
- 手、目、声
各箇所の機能をチェックしてみましょう
スピーカー
両サイドの出っ張った部分にスピーカーを内蔵。空間オーディオやAirPodsでおなじみのダイナミックヘッドトラッキングにも対応します。
カメラ・センサー
合計12台ものカメラを搭載。空間や色、自分のいる位置や表情、視線がどこを向いているのかといったことを、新開発のR1チップでリアルタイムに解析・処理しています。さらに、3Dカメラを使った「空間ビデオ」の撮影も可能です。
ヘッドバンド
伸縮性のある素材で後頭部を押さえるだけの「ソロニットバンド」と、頭頂部と後頭部で本体を固定する「デュアルループバンド」の2種類が同梱されています。接眼部は、ファブリック素材のカバー「ライトシール」で覆います。
バッテリー
頭部にかかる重さを軽減するために、バッテリーは外付けタイプを採用。動画視聴で最大2.5時間駆動します。独自コネクタなので直接モバイルバッテリーは使えませんが、専用バッテリーに給電は可能です。
ディスプレイ
高密度なマイクロ有機ELパネルを採用し、両目で2300万ピクセルを実現したディスプレイ。解像度は片目で4K以上というハイスペックを誇り、現実世界のパススルー映像も違和感なく映し出します。
最も売れているVRデバイス「Meta Quest 3」と比較してみる
製品名 | Meta Quest 3 | Apple Vision Pro |
---|---|---|
価格 (ストレージ容量別) |
128GB:7万4800円 512GB:9万6800円 |
256GB:3499ドル 512GB:3699ドル 1TB:3899ドル |
ディスプレイ | 2064×2208(片目) 1218PPI |
3800×3000(片目) 3386PPI |
プロセッサ | Qualcomm Snapdragon XR2 Gen2 |
Apple M2+Apple R1 |
リフレッシュレート (最大) |
最大120Hz | 最大100Hz |
入力(メイン) | コントローラー、手 | 手、目、声 |
視野角 | 水平110度、垂直96度 | 非公表 |
センサーとカメラ | IRカメラ×4、 RGBカメラ×2、 深度センサー |
3Dカメラ、高解像度メインカメラ×2、 ワールドフェーシングトラッキングカメラ×6、 アイトラッキングカメラ×4、 TrueDepthカメラ、 LiDARスキャナー慣性測定ユニット×4、 フリッカーセンサー、環境光センサー |
バッテリー | 一体型 持続時間:最大平均使用時間2.2時間 |
分離型 持続時間:最大2時間の一般使用 |
重量 | 515g | 600〜650g※ |
Vision Proはディスプレイ性能が圧倒的。やや重いのが気になる点です。
※ライトシール、ヘッドバンドの構成により変動。
脅威の性能を実際に体験!
映像編:驚きの映像美だけではなく、空間の再現力もスゴい!
「Apple Vision Pro」を装着して間もなく、驚いたのがパススルー映像の美しさ。筆者が愛用している「Meta Quest 3」とは比較にならないほどキレイで、ノイズや歪みといった同製品で感じた違和感もありません。
そこに空間があるのをしっかり感じます。空間に浮かぶアイコンやウィンドウの表現も自然。ブラウジング中には画面に近づかなくても小さい文字がハッキリ読める点にも感動しました。
ちなみに、装着中にスマホをいじりましたが、カメラ越しとは思えないほどスマホの文字も歪みなくクッキリ。重さによる疲れやヘッドバンドの締め付けによる痛みを度外視すれば、ずっと着けたまま生活できるのではと思えるほどで、この手のデバイスによくある「酔い」も皆無でした。
MR(現実世界に仮想現実を組み合わせる技術)を体感できるデモムービーもとてもよくできていて迫力がありましたが、写真や映画のリアルさが特筆もの。
なかでも、パノラマ写真は自分を囲むように表示する単純な仕掛けですが、表示した瞬間「うおっ」と声を出してしまうほどです。
超高画質だからパノラマ写真を表示するだけでも楽しい
パノラマ写真を自分の周囲をぐるっと囲むように表示するだけですが、これが感動モノのリアルさ。本当にその場所にいるような感覚に浸れ、AV評論家の本田雅一さんも「今まで日の目を見なかったパノラマ写真の新しい使い方」と評価します。
確かに、スマホのパノラマ撮影機能なんて存在を忘れるぐらい使っていませんでしたが、これを体験すると積極的に撮っていきたいと思えます。
2Dの写真なのに立体的に見えるのがスゴい!
映像だと忘れるほど自然なパススルー
現実世界を映し出すパススルー映像がとにかく自然なのにも驚きます。映像は高精細で立体的。ノイズや手を動かしたときの歪みもなく、装着中に酔うこともありませんでした。
恐竜が飛び出す! 蝶が指にとまる!!
Vision Proにプリインストールされているデモムービーアプリ「Encounter Dinosaurs」では、超リアルな恐竜が画面から飛び出して迫ってくるのにビックリ。
アプリ起動時に登場する蝶に手を伸ばすと、指先にピトッととまってくれる演出もあり、センサーの処理能力のエグさも体感できました。
さすがは空間コンピュータ Macの画面を映せば仕事もできちゃう
映像視聴以外で、最も実益の高そうな使い道は仕事です。表示画面は小さい文字までハッキリ見え、必要に応じてサイズや距離の変更も自由。画面を好きなだけ並べられるのが便利です。
アップルデバイスとの連携も強みで、iPhoneやiPadのアプリを「Apple Vision Pro」で使用できるほか、画面のミラーリングも可能。Macは自動認識するので、空間上のボタンで画面を起動できます。
機能編:さすがアップル! 初めてでも操作しやすい
「Apple Vision Pro」は、操作方法も特徴的です。なんとコントローラーがありません。操作は基本的に視線の動きと手のジェスチャーを組み合わせて行います(一部の操作は声でも可能)。
他社の製品では「Meta Quest 3」なども手を使う操作に対応していますが、感度や操作性の問題で、多くの人はコントローラーをメインに操作しているはず。
それだけに、「Apple Vision Pro」の操作感にはかなり興味があったのですが、結論からいえば、想像以上に快適! 何より、腕を下げた状態で操作できるのがめっちゃラクでした。視線の微妙な移動も判定してくれるので、小さい文字が並ぶ選択肢もきちんと選べます。
一方、少し意識がそれただけで別の選択肢に移動してしまう点は気になりましたが、トラッキング性能の優秀さは明らかです。
機能面では、超リアルなアバター「ペルソナ」は実用性が高そうですし、これまでオンかオフだけだった現実世界と仮想世界の割合を調節できるようにしたのも斬新です。
空間オーディオや空間ビデオなど、まだまだテストでは試せなかった機能もありますが、日本正式版であらためて検証できればと思います。
独特の操作なのに一瞬で慣れる
ほかのXRデバイス(VRやMRの総称)と異なり、コントローラーがない点も「Apple Vision Pro」の新しいところ。MacBookなどと接続すれば物理キーボードやトラックパッドも使えますが、単体で使用する場合の入力には指と目、声を使います。
実際に使ってみるとかなり直感的に操作可能。基本操作は一度レクチャーしてもらえば十分という印象でした。
指同士のタップで決定
何かを決定するときは、親指と人差し指を合わせるようにタップ。写真では手を上に持ち上げていますが、実際には腕をだらんと下げた状態での操作も可能です。ソフトウェアキーボードの文字決定などにも使います。
指でつまんで動かす
ホーム画面やブラウンジング中に画面をスライドしたいときは、親指と人差し指でつまむ動作をします。写真の状態で上下左右に動かすと、画面が動きます。ウィンドウの移動やサイズ変更時もこの動作を使用します。
視線を向ける
アイコンや選択肢を選びたいときは、そこを見るだけ。写真では2段目が選択された状態ですが、視線を上下に動かすと別の選択肢の色が変わります。かなり小さな目の動きにも反応するので、誤動作もしばしばあります。
声で入力
声で文字入力やアプリの起動・終了などができます。検索キーワードを入力する際は、メインの入力方法になりそうです。
ボタン類
本体上部左右のボタンとつまみ(デジタルクラウン)は、以下で紹介するイマーシブモードやスクショ撮影などに使います
ビデオ通話や会議ができる!
「Apple Vision Pro」の初期設定で、自分の顔を登録すると、「ペルソナ」と呼ばれるアバターを作れます。髪型など実際と多少異なる部分は出るものの、完成度はかなり高いです。写真は「Apple Vision Pro」を装着中の本田さんとFaceTime中の画面ですが、「Apple Vision Pro」のカメラが表情を読み取ってペルソナもリアルに動きます。ちなみに、メガネはバーチャルです。
仮想世界と現実の境は自分で決められる
使用中に本体上部のデジタルクラウンを回して、自分の見ている空間をバーチャルに切り替えたり(イマーシブモード)、音量を調節したりできます。写真左は中心だけがバーチャルですが、デジタルクラウンを回していくと、写真右のように全方位がバーチャルに。
なお、バーチャル映像はPCの壁紙のように選択でき、時間帯も変更できます。
結局どーなの? 体験で感じたギモンを専門家に聞いてみました
チェック1:こんな高価なもの一体誰が買うの?
これから何か新しいものを生み出したいと考える人は、後悔しないよう積極的に買うべきです。
まずは普及させることよりも、開発者の創作意欲を高めることを優先したのだと思います。
石川さんが「アップルが培ってきた技術の集大成」、本田さんが「コンピュータと人との関係性を変える新提案」とする「Apple Vision Pro」ですが、2人とも共通していたのは「一般消費者よりも、開発者向けの製品」だということ。ガジェット好きの間ではお祭り状態ですが、すぐ飛びつく必要はなさそうです。
チェック2:Meta Questと比べたらVision Proの圧勝?
7分の1の価格の「Meta Quest 3」で十分な人がほとんどです。
性能面だけ見れば、Questシリーズを凌駕する「Apple Vision Pro」ですが、専門家は「約50万円もして、これだけ色々なものを詰め込めば当然」(本田さん)と冷静。逆に「Meta Quest 3」の性能は値段を考えれば優秀とも。
チェック3:ゲームも楽しめる?
ゲームを遊んでみて感じたのが、アクションゲームの臨場感のなさ。おそらく操作しても触覚フィードバックがないことが原因ですが「必要であればサードパーティがBluetoothコントローラーを出すでしょうし、様々な使い道が見えてくれば、アップルが何かを作る可能性もあります」(本田さん)
「Apple Vision Pro」でFruit Ninjaをプレイ中の画面。手での操作でもプレイに支障はないのですが、フルーツを切ったときに振動がないので、爽快感はイマイチ。ゲームにはあまり力を入れない方針?
チェック4:目が悪くても使えるの?
「Apple Vision Pro」はメガネでの使用は不可。普段メガネの人は、新しくコンタクトレンズを作るか、「Apple Vision Pro」に着脱できる専用インサートレンズを作る必要があります。
本田さんはこのレンズを作ったそうですが、お値段は両目で149ドル(約2.3万円)となかなかの高級品です。
アイトラッキングなどへの影響がないのであれば、汎用性も含めてコンタクトレンズを作るのがよさそう。ただし、本誌編集長のように「コンタクト目に入れるの怖い」という人は除きます。
チェック5:もし今買ったとして日本でどうすれば使える?
日本版がまだ発売されていない今、「やっぱりVision Pro欲しい!」となって購入した場合、そのままでは日本国内では使用できません。というのも、電波法に定められた“技適マーク”が取得されていないから。
技適マーク未取得の機器を使用する場合、総務省へ特例制度の申請が必要です。
申請といっても、実はそれほど難しくはなく、総務省の「電波利用ホームページ」でアカウントを作成し(要マイナンバーカード)、使用する機器の開設届(申請)を提出すればOKです。
ただし、期間が180日で延長不可、使用後に廃止届を出す必要もあります。
チェック6:このタイプが普及すると今後生活はどう変わる?
専門家2名の共通見解は「すぐには何も変わらないけれど、新しいコンピュータとしての可能性は感じる」。ただし、これは現状「Apple Vision Pro」に特化したアプリがなく、アップルもどんなことができるか手探り状態のためだといいます。
一方で、スペースや金額の制約を受けず、好きなだけモニター(画面)を並べられるため、もっと小型化するなど進化していけば、仕事に使う人や移動中に仕事をする人が増えそうとも。
従来のPCのような画面の制約なく、仕事ができるのは大きな変化。飛行機などの移動中に、こうしたもので仕事をする人は増えるかもしれません。
以上、アップルの新世代デバイス「Apple Vision Pro」の体験レビューでした。世界の最先端を体験したい方はぜひ! いま日本で購入できるVRデバイスとして最もおすすめなのはMeta Quest 3のレビューは以下からどうぞ。
一瞬で違う場所に飛んだような錯覚を覚えます。