災害時はカセットボンベ式家庭用発電機が便利
思いがけない災害が発生し、停電や断水など突然ライフラインを絶たれたとき、ある程度自活ができるよう備えをすることはとても大切です。
そこで、家電批評がテストしてきた防災家電の中から、生活環境を向上・充実させるためのアイテムをピックアップ。今回ご紹介するのは、停電が長引いた時に存在感を発揮するカセットボンベで使える家庭用の携帯型発電機です。
携帯型発電機でどんな家電製品が使える?
ガソリン式発電機は燃料の管理が面倒でしたが、カセットボンベ式(インバーター式)発電機なら簡単。業務用だけでなく家庭用にも最適です。
実際に携帯発電機を使ってどのくらい家電製品が動かせるか検証しました。
※検証では撮影のためしっかりと換気したうえで室内に設置していますが、カセットボンベ式の携帯型発電機は必ず屋外で使用してください。
電気ストーブと電気毛布同時使用もOK
冬場には欠かせない暖房器具は、450Wと電気ストーブと45Wの電気毛布を同時に使用しても問題ありませんでした。
電気工具で残骸処理に一役
電気工具を接続すれば災害時に出た残骸処理などでも活躍します。350Wの電動ノコギリを動作。電気工具が使えれば、崩れた家屋の撤去にかける労力を最小限に抑えられます。
テレビで最新情報を入手
アンテナが無事ならテレビも見ることができます。被害の全体像や現状を映像で確認できるテレビは重要なツール。画面サイズで稼働時間が変わります。
正弦波だからガジェット全部使える
出力が大きいので複数のスマホやタブレットを一気に充電できました。
1台あると震災時に大活躍してくれること間違いなしです。なお、発電時は屋外に設置しますが、エンジン音が大きいので周囲の家庭には配慮しましょう。
残念! 500Wでも電子レンジは使えず……
出力が600Wを超える発電機で「電子レンジの500W温めメニュー」を試してみたところ、過負荷表示が点灯してしまいました。その理由は、製品の消費する最大電力「定格消費電力」の数値。実際に使用できるのは、この数値が発電機の出力を超えない製品になります。
上記のレンジの場合は500Wメニューで使用しても、最大1350Wまで電力を消費する可能性があるため、今回の携帯発電機では途中で止まってしまいました。
それでは、検証に使用したおすすめの家庭用発電機2製品を紹介します。
納得の完成度! ニチネン G-cubic G700クレマ KG-071
ニチネン
G-cubic G700クレマ KG-071
実勢価格:10万9780円
サイズ:395×221×345mm・10.4kg
定格電圧:100V(交流)、5V(直流)
定格電流:7A(交流)、合計3.1A(直流)
電圧調整方式:インバータ式
AC最大出力:700W
ニチネン「G-cubic G700クレマ KG-071」は、コンパクトで携帯しやすく、家電のようなデザイン。携帯型発電機に初めてふれる人にも親しみやすくなっています。
検証では電気ストーブを約1時間動作させるなど、十分な実用性でした。もし出力や動作時間に不満がある場合には、2台つなげて定格出力を2倍にできる並列ケーブルや、カセットボンベを4つまで増やして使用時間延長する外付けユニットなど、利便性を高める付属アイテムも販売されています。
また、付属ユニットをつなげることで-5~10℃という低温時にも使用できるのが特徴です。冬場に暖房をつなげたのに発電機が動かない、という心配を減らせます。
2口あるコンセントは最大700Wまで使用できます。USBポートもあるのでスマホも直接充電可能です。
ポイント1:コンパクトで持ち運びやすい
小さめサイズで片手でも持ち運べる重さです。丸みを帯びたデザイン、ポップなカラーリングは室内で保管しておいても違和感がありません。
ポイント2:CO検知機能がある
1m四方のクリアケース内でCOの濃度実験をしたところ、約800ppmになると自動停止しました。
▼テスト内容
【消費電力】
方法:ワットモニターを介して、430W出力カーボンヒーターを接続。発電機始動とともにヒーター片側の電源をオン。発電機が停止したときの時間とワットモニターの消費電力量を記録
カセットボンベ1缶で57分30秒動作。左記の時間で動作音が不安定になり、「過負荷」ランプが点灯したため、停止してカセットボンベを外してみるとカラになっていました。ワットモニターに記録された消費電力は「0.43kWh/4300mA」でした。
【騒音】
方法:側面中央から水平1m箇所の騒音値を測定。「エコモード(負荷がないときは低出力運転)」では無負荷時の騒音値を測定
通常運転時は79.2db、エコモード時は77.9dbと少し小さくなりました。
【波形チェック】
方法:交流電源からの出力波形をオシロスコープで確認
正弦波であったため、パソコンを接続して使用することも可能です。
使い方:スターターを勢いよく引いて発電開始
発電は4ステップ。なお、1手順目のオイルの注入は1度行えばメーカー指定回数は不要です。
1:初回起動時にはネジ止めされているサイドのフタを開けて、エンジンオイルを注入します。オイルは付属します。
2:上部の黒いキャップを外してカセットボンベを取り付けます。カセットボンベは指定ブランドの製品を使用しましょう。
3:本体のスイッチを入れます。停止時には同様のスイッチでエンジンを切ります。
4:チョークを始動位置にしスターターを勢いよく引くとエンジンが始動して発電が開始されます。
長時間発電を実現!山善 DREAMPOWER カセット式インバーター発電機 EIGG-600D
山善
DREAMPOWER カセット式インバーター発電機 EIGG-600D
実勢価格:7万6780円
サイズ:470×270×390mm・約14kg
定格電圧:100V(交流)、12V(直流)
定格電流:6A(交流)、5A(直流)
AC最大出力:600W
山善「DREAMPOWER カセット式インバーター発電機 EIGG-600D」です。KG-071よりひと回り大きいボディで、2缶セットのテストでは約2倍の時間稼働してくれました。
本製品の電力は600Wですが、2台を用意して別売りの並列運転コードでつなぐことで、1200Wまで対応できるようになります。車やバイクのバッテリーの充電にも使える直流バッテリー充電用コードも付属しています。
2口あるコンセントは最大600Wまで使用できます。直流コンセントに専用コードをつなげば、車やバイクのバッテリーにも使えます。
所有している車やバイクのバッテリーに使用できるかは事前に確認しておきましょう。
ポイント:カセットボンベを2缶使用で稼働時間が長い
本体内にカセットボンベを2缶セットして使用するため、稼働時間が長くなります。カセットのブランド指定はありません。
▼テスト内容
【消費電力】
カセットボンベ2缶で1時間58分40秒動作しました。ワットモニターに記録された消費電力は「0.87kWh/8700mA」でした。
【騒音】
通常運転時の騒音は85.7db、エコモード時の騒音は81.4dbでした。
【波形チェック】
オシロスコープで確認したところ正弦波であったため、パソコンを接続して使用することも可能です。
使い方:スターターを引くのに多少コツがいります
1:初回起動時にはネジ止めされているサイドのフタを開けて、エンジンオイルを注入します。オイルは付属します。
2:上部のフタを開けてカセットボンベを2本取り付けます。
3:燃料コックをオンにします。停止時には同様のスイッチでエンジンを切ります。
4:スターターを勢いよく引くとエンジンが始動して発電が開始されます。けっこう重たいので始動にはコツがいりました。
以上、おすすめの家庭用発電機でした。
ニチネンはCO検知機能があるのは安心感があり、山善はカセットボンベを2本取り付けられるため、長時間稼働するのがメリットでした。カセットボンベがあれば発電できるのは、停電時の備えとしては心強い製品。特に暖房が欠かせない冬場の備えとしては頼りになります。
マルチに使える“カセットボンベ”は必携アイテム
今回のテストであらためて感じたのが、カセットボンベの便利さです。カセットコンロがあれば温かい食事をつくることができ、携帯型発電機があれば電気がつくれる、まさに必携の万能アイテムです。
「カセットボンベ」「カセットコンロ」「携帯型発電機」の3点セットで用意しておけば、安心感が高まります。
最後に:CO中毒に要注意
カセットボンベを使用する携帯型発電機は、発電時にCOを排出します。締め切った室内で使用するとCO中毒になる可能性がありますので、必ず屋外に設置して使用してください。
実際に1m四方のアクリルケース内で発電を行いCO濃度を計ったところ、G-cubic G700クレマ KG-071は約30秒で800ppmになり自動停止、DREAMPOWER カセット式インバーター発電機 EIGG-600Dは約50秒で1000ppmになりました。
なお、800ppmは約2時間で失神する濃度になります。
【おまけ】自転車発電装置って役に立つ?
複数の発電機やバッテリーをテストしたなかで、いちばんの発見が自転車発電装置を使えば自転車を漕いだ力でテレビを動かせるだけの電力を発電できるがあるということでした。
被災時には運動不足になりがちですが、その解消にもなるのでまさに一石二鳥です。
有限会社ひのでやエコライフ研究所
自転車発電装置
実勢価格:7万1500円
サイズ:525×385×180mm・約7.5kg
最大出力:100W
5分間の発電量はカセットボンベと互角!
携帯バッテリーの残量を20%の状態にして、5分間で充電できた量を先に紹介した2台の携帯型発電機で比較しました。
- :
- 自転車発電装置: 2%充電
- KG-071: 3%充電
- EIGG-600D: 2%充電
上表のとおり結果は互角と、大健闘でした。自転車発電機なら体力が続くかぎり発電し放題なのはアドバンテージです。
以上、緊急時にあると助かる発電機と自転車発電装置の紹介でした。
大地震や大雨などの災害によってライフラインまで絶たれてしまうような状態では、食事の準備もままならなくなる可能性もあります。被災時にもできるだけ日常と変わらない生活ができるように、ぜひ携帯型発電機を備えを検討してみてください。
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