パソコン 前回の調査では「本体のせいではない」という結論でしたが今回はいかに?

前回のメーカー直撃記事で、同じ質問をぶつけた際の結論は、どのメーカーも総じて、「ルーター本体のせいでだんだん遅くなることはない」でした。対策として、電源オンオフでの再起動が効果的ということも合わせてわかりました。

しかし、そうは言われても、遅くなると感じている以上、納得のいかない部分もあります。そこで今回はもう少し深掘りして質問、かつ、ルーターで気になっていることをまとめて聞いてみることにしました。

パソコン [メーカーへの質問①]ルーターも長く使っていると劣化(遅くなる)しますよね?

どんなものにも寿命はあります。ということで「ルーター本体は劣化しないのか?」素朴な疑問を聞いてみました。

A社回答:「熱や湿気による劣化がありえます」
ハードウェア要素として、発熱による部品の特性変化により電波の送受信に関わる性能が悪化する場合もあります。熱対策が不十分な製品や、仕様を超えるような高温環境での利用、また想定を超える高負荷状態が連続した場合には短時間で劣化・故障に至らなくとも、高温状態にあるということは部品にとってストレスとなりますので、なるべく熱くならないよう使うことが望ましいです。また吸湿による劣化もありますので、水回りや湿度の高い場所では使わないことをお勧めします。ソフトウェアの要因も含め、軽微な劣化であれば再起動で回復するケースもありますので、調子が悪いときはまず再起動をしてみるとよいかもしれません。

B社回答:「機械的な劣化は稀です」
よく聞くお話ですが、実際は機械的な劣化というのは稀です。それよりも、使用しているチャンネルに後から設置された他の機器が使用するチャンネルが重なることで速度低下を引き起こしているケースがほとんどです。その場合、ルーターの電源を入れなおすと自動チャンネル設定により空いているチャンネルに再設定されますので改善が見込めます。

C社回答:「機能面の劣化はありません」
どちらかというと、長期間ご使用の場合、周辺環境や接続する端末で状況が変化することによる影響が考えられます。

D社回答:「機械の劣化というより、発熱の可能性があります」
一般的にルーターは常時電源を入れて使用するため、熱を帯びやすくなります。個体差もありますが、発熱によって実装コンデンサーが熱を持ちパフォーマンスが落ちる可能性はあります。弊社ルーター製品は、排気構造を考慮した設計、基盤構造となっていますが、パフォーマンスを維持して長期期間ご使用になられる場合は、熱の排気を考慮し、弊社ルーターが提供するリブートスケジューラー機能もご活用いただき、ご使用されることを推奨します。

以上を総合すると……

メーカーの結論
「ルーター本体の劣化というより環境で、特に熱による影響はあり。再起動も効果的」


各社共通してみられた回答の要約が上記の通り。使用環境や置き場所によって影響を受けるとのことですが、「それって劣化と言わないの?」と思ってしまいました。「機械的な劣化」と環境による劣化の違いはイマイチわかりませんが、そこまで極端な環境でなければ、劣化はしないということでしょうか。

パソコン [メーカーへの質問②]ルーターの「発熱」で通信スピードに影響は出ますか?

次にぶつけたのが、こちらの質問。先程の回答にもありましたが、「発熱」によってルーターの性能が落ちるかどうか? この回答については、性能が落ちる場合があると答えたのが3社、まったくないと答えたのが1社と、回答がわかれました。

A社回答:「性能が低下する場合があります」
製品仕様を超える高温条件や異常な負荷がかかった際には部品が異常な高温状態となり、機能の停止や電源のダウン、またそこまでではなくとも性能が低下する場合があります。これはCPUや無線LANコントローラ、また内部の電源ICの持つ過温度による故障を避けるための保護機能によるものです。保護機能を持たない部品を使っている場合には即故障に至る可能性もあります。

B社回答:「ルーターも同じように性能が落ちます」
あります。出窓など直射日光の当たる場所や、熱のこもりやすい密閉された場所への設置は避けましょう。

C社回答:「その可能性はありません」
そのようなことはありません。

D社回答:「動作保証の温度以上に極端に高いと落ちます」
動作保証をしている温度以上での利用によって、インターネットがつながりにくくなることや動作が不安定になるなどの事例があり、また、極端に高い温度の場合は、ルーターが落ちる場合があります。

以上を総合すると……

メーカーの結論
「高温の環境で利用すれば、パソコンと同様に性能が低下する可能性あり」


本体が発生させる熱への対策はしてあっても、やはり日なたなどで使うことは想定外ということでしょう。だからといって熱がこもる密閉空間もダメ。ルーターが熱くならないようにするため、置き場所は意外に重要ということです。

パソコン [メーカーへの質問③]箱にある「○人」や「○階建向き」ってどうやって決めてますか?

箱やホームページ、カタログによく書いてある利用人数や家のタイプはどのように決められているのか? その表記は何を根拠にしたものなのかは気になるところです。

A社回答:「当社独自測定による目安として記載」
電波の強度、CPUの性能などを含め当社独自測定による「目安」として記載しております。ただし、お住まいの構造上目安通りとならない場合もあります。

B社回答:「算出検証用の家屋を用意し、そこでの実測結果に基づき目安となる表記」
規格に基づく表現ではないため算出方法は各社で異なると思いますが、当社では算出検証用の家屋を用意し、そこでの実測結果に基づき目安となる表記を決定しています。

C社回答:「人数は4Kテレビの同時使用(実証実験)結果、◯階建はラインナップの違いを提示」
「〇人」は、現在のカタログに記載しています(梱包箱には書いていません)。本カタログに記載している人数の根拠は「4Kテレビの同時使用(実証実験)」結果をもってしております。また、「〇階建」は、各ラインナップの違いを提示するための目安として提示させていただいております。

D社回答:「実際に日本で想定される間取りで試験を行ったうえで表記を公表」
弊社では、製品開発時に様々な状況を想定し、ワイヤレスの実測試験を行っています。しかし、日本の住宅事情とは異なるため、実際に日本で想定される間取りで試験を行ったうえで表記を公表しています。

以上を総合すると……

メーカーの結論
「各社独自の試験結果に基づき、表記」


実は「○階建対応」というのは、統一規格がないため「メーカーが使ったら使えた」ということだとか。

[メーカーへの質問③]箱にある「○人」や「○階建向き」ってどうやって決めてますか? イメージ

あくまで「その間取りで実際に使ってみた」という意味で、絶対的に保証してくれるものではないようです。

ちなみに雪国と南国だと家の作りとかも違いそうですが、それって影響ないんでしょうかね……。いずれにせよ「○階建」は同じメーカーの製品で「2階」よりは「3階」のほうが上くらいの目安でしょう。

パソコン [メーカーへの質問④]ルーターの買い替え時っていつですか?

おそらく多くの人が一度買ったらあまり買い替えないであろうルーター。「こんなことが起こったら買い替え」のような明確な買い替えのサインはあるのでしょうか? そこで、メーカーが考える買い替え時の目安を聞きました。

A社回答:「性能が低下する5年から10年程度で買い替えを」
特に新しい高速な無線LAN規格の対応、また暗号化機能やセキュリティ機能の向上は、買い替えるきっかけとして最も重要かと思います。この他、電波特性の改善、小型化や省エネ性能の向上、DNSサービスやフィルタリングなどの付属機能の追加も、場合によっては買い替えをおすすめするポイントになります。

また、製品の設計や使っている環境にもよりますが、おおよそ5年から10年程度で内部部品経年劣化や寿命の到達により性能の低下や誤動作、機能の停止などが発生する可能性が高くなります。(実際に何年か使用していて、急に動作が不安定になった、速度が遅くなったなど)ある程度の年数が経過したものは買い替えを検討されてもいいかもしれません。

B社回答:「スマホ・タブレットやPCなどを買い替える際にチェック」
スマホ・タブレットやPCなどを買い替える際、対応するWi-Fi規格をチェックしてみましょう。「あれ、うちのルーターはこの規格に対応していないぞ?」と気付いたときがルーター買い替えのタイミングです。意識せず購入した機器が新しい規格に対応しているということは、その規格に対応している親機の価格もきっと手ごろになっているはず。せっかくなので新調した機器が快適に通信できるように環境を整えてみましょう。

C社回答:「新しい無線規格への対応製品が発売されたタイミングで」
一つ目は、無線LANルータの「新しい無線規格」への対応製品が発売されたタイミングです

新規格対応のより無線性能が向上し、今まで以上に快適にご使用いただくことができます。二つ目は、新製品には安心、快適にご利用できる多くの「新機能」が搭載されてきます。カタログなどで製品の特長をご覧いただき、お気に召す機能があれば、買い替えいただくタイミングかと思います。

D社回答:「買い替え時は通信環境の変化」
弊社の統計では、意外にも接続端末が増えたことより、住宅環境が変わった場合や新規回線を導入した場合が大半の購入動機となっていることから、通信環境の変化が買い替え時といえます。また、新規格を搭載した端末をお持ちになった場合やビームフォーミングやMU-MIMO等、新しい技術を搭載したクライアントデバイスをお持ちになった場合も買い替え時の参考になります。

以上を総合すると……

メーカーの結論
「新しい無線規格への対応製品が発売されたタイミングでの買い替えがベスト」


この質問は、まあ想定どおり、新規格あるいは新技術がポイント。また、メーカーAは具体的に「5~10年での経年劣化の可能性」を回答しています。

次世代高速Wi-Fi規格「11ac」は2013年3月に使用できるようになりましたが、従来の11nまでしか対応しないルーターをいまだに使っている人も多いかと思います。そうであれば、そろそろ最新の11ac対応のものに買い替えてもいいかもしれません。

パソコン [メーカーへの質問⑤]都市部の電波混雑、この対策ってありますか?

電波干渉の影響を受けやすい都市部でストレスなく通信するにはどうしたらよいか? 効果的な対策について聞いてみました。

A社回答:「空いているチャネルを確認し、利用チャネルの重なりを避ける」
まずは空いているチャネルを確認し、利用チャネルの重なりを避けることが最も効果的です。アプリなどで確認いただくと、2.4GHzに比べ5GHzは空いていることがわかりますので、まずは5GHzを使用していただければと思います。

また、11n、11acにおいてはチャネル幅を最大ではなく小さめに絞ることにより利用できる周波数の数を増やすことができます。近年は電波が飛びすぎるオーバーリーチというものも問題となっていますので、送信出力の調整が可能な製品であれば許容できる範囲で出力を下げていただくことも、周囲への影響を抑えることができます。ただし、自分自身への対策にはならないため、お互いにこれらの配慮をすることが求められます。(誰か1人ではなく、皆で同じことをする必要があります)

B社回答:「5GHz対応のものに買い替えることが最も有効」
2.4GHz帯は人口密度の高い都市部では常に混雑してしまいがちです。対策としては、チャンネルに余裕のある5GHz帯を活用することです。現行のスマホ・タブレット、PCのほとんどは5GHz帯(11ac・n/a・a)に対応しています。お使いのルーターが2.4GHz帯(11n/g・g・b)にしか対応していない場合は11ac対応製品など5GHz対応のものに買い替えることが最も有効な対策となります。

C社回答:「電波状況により適切なチャネルに移動させて通信を安定させる」
ひとつの対策として、新商品に搭載の 「バンドステアリング」「オートチャネルセレクト」機能が有効と考えます

「バンドステアリング」は、電波状況により「2.4GHz帯→5GHz帯」「5GHz帯→2.4GHz帯」と、自動的に適切な周波数帯に移動させ、通信を安定させる機能です。「オートチャネルセレクト」は、比較的混み合う2.4GHz帯にて、電波状況により「適切なチャネルに移動(例:1ch→11ch)させて」通信を安定させる機能です。

D社回答:「W53、W56チャンネルに対応したルーターやクライアントデバイスを利用するのが有効」
2.4GHz帯は、すでに混雑している帯域であると共に、機器が未対応の場合やDFSによる自動チャンネル変更が発生を避けるため5GHz帯のW52チャンネルも利用が集中するため、なるべくW53、W56チャンネルに対応したルーターやクライアントデバイスを利用するのが有効な対策となります。

以上を総合すると……

メーカーの結論
「2.4Ghzと5Ghzを効率よく切り替えを」


基本的には2.4Ghzと5Ghzの切り替えで対応ですね。自動でやってくれる製品もあるので、混雑の多い地域(接続しようとするとアクセスポイントが大量に出る)にお住まいの方は、買い替える際にはこの辺りにも注目すべきでしょう。

気象レーダーなどとの干渉を防ぐため、そちらを検知した場合、チャンネルを変更する機能も。

[メーカーへの質問⑤]都市部の電波混雑、この対策ってありますか? イメージ

全国20カ所あなたの街にも気象レーダーが。

[メーカーへの質問⑤]都市部の電波混雑、この対策ってありますか? イメージ2

実は、5GHz帯は上の図のように全19チャンネルは区分されます。例えばW52しか対応しないルーターは、36~48の4chしか使えません。

[メーカーへの質問⑤]都市部の電波混雑、この対策ってありますか? イメージ3

上のような全対応の製品と比べると、混雑回避能力が低いということになります。

パソコン [まとめ]遅いと感じたら設置環境を見直して、11ac対応に買い替えましょう

今回はWi-Fiだけでなく、インターネット回線までの「遅い」を「回線」「Wi-Fiルーター設定」「Wi-Fiルーター設置」「ルーター購入」と理由別に解説しました。もしも遅いと感じた場合、まずは使用環境や置き場を見直しを。また、新しい無線規格への対応製品に買い換えるなどの対策を講じましょう。