オイルヒーターのいいところは残し 弱点を解消した第3のヒーター
オイルヒーターの雄デロンギと、いま一番勢いがある家電メーカーバルミューダから、従来の暖房器具とは全く異なるタイプの製品が発売されています。巷では第3のヒーターと言われてまして、見た目はオイルヒーターっぽいですが、オイルヒーターではないんです。
デロンギ
マルチダイナミックヒーター MDH15-BK
実勢価格:3万2500円
バルミューダ
SmartHeater2 Wi-Fiモデル
実勢価格:3万6000円
見た目のクールさだけでポチっとしたくなりますが、そもそも何が第3なのか、まずはそれを確かめましょう。デロンギは、ひたすら暖めるだけの暖炉や石油ストーブが第1世代、暖める・冷める・暖めるを繰り返すエアコンのような暖房器具を第2世代と呼んでいます。そして第3世代は、高い精度で温度を効率的に一定に保つことができる暖房器具だそうです。
一方、バルミューダは、従来のセントラルヒーティング、そしてオイルヒーターに続く、オイルヒーター系の第3世代という位置づけ。
両者の定義をまとめると、第3世代の暖房器具は空気を汚さず、効率的に一定温度を保つことができる「空気を汚さない」暖房器具といえます。
ただ、オイルヒーターをはじめとする輻射式は、暖まるまでに時間がかかったり、電気代が高かったりと、デメリットがありました。第3のヒーターは、オイルヒーターの快適さは残しつつ、デメリットを解消しているのか。今回は、都内のマンションの一室でサーモグラフィーカメラを使って、そこを重点的にテストしました。
壁の一面が窓で外気に面した鉄筋コンクリート造マンション10畳リビングの中央に暖房機器を設置。3箇所(Aソファ側・Bエアコン右の壁面・Cテレビ台)に温湿度計を設置し、30分間の温度と湿度を計測しました。同時にサーモグラフィーカメラを用いて部屋全体を撮影。部屋のどこが暖まっているかを逐一確認しつつ、さらにワットチェッカーで電気料金も同時に調べました。
こちらがテスト開始時のサーモグラフィーの様子です。見るからに寒そうなので、早速暖房テスト開始しましょう。
開始後15分で部屋が快適に デロンギは抜群の立ち上がりの良さ!
まず最初にデロンギマルチダイナミックヒーターからテスト。温度を25℃、モードは晴れ、電力を強(3)に設定。テスト開始時の外気温は16.1℃でした。
消費電力1297W。初めの立ち上がりで、本体の温度も急上昇。写真だとわかりづらいですが、遠いC地点(写真右)の温度も上昇しはじめています。
消費電力1329W。15分の時点で測定3地点の平均温度が0.8℃上昇。サーモでも赤い部分が増えていることがわかります。同時に、体感でも暖かさを感じたのはここからでした。
消費電力891W。温度計測3地点の温度が計測開始時から1℃以上上昇。消費電力がここから安定し始めました。
消費電力899W。本体の消費電力が低く安定しているにもかかわらず部屋の温度はぐんぐん上昇。効率的な運転を行っているのがわかりました。
消費電力の推移はこちらの通り。最初は消費電力が高いですが、20分過ぎからは低く安定しているのがわかります。
各計測地点の温度の推移はこの通り。消費電力が下がった15分以降も温度が上昇していることがわかります。
電力バカ食い暖房にサヨナラ バルミューダは、本当にスマート!!
続いて、バルミューダのSmartHeater2。温度を25℃、モードはM(マニュアル)、表面温度は強に設定。テスト開始時の外気温は17.0℃でした。
消費電力1034W。デロンギよりも消費電力が少ないにも関わらず、きちんと温度計測3地点すべての箇所で部屋温度は上昇しました。
消費電力1155W。サーモ画像をみるとそれほど温度が上昇しているようには見えませんが、部屋温度はしっかり上昇。デロンギ同様、体感での暖かさも感じ始めました。
消費電力548W。部屋全体が青から黄色に変化していることがわかります。消費電力が500W台と省電力ながら安定して部屋温度は上昇しました。
消費電力547W。30分後にはサーモ画像でも部屋全体が暖まっていることがわかります。体感でも部屋のどこにいても快適でした。
消費電力の推移はこちらの通り。最大消費電力は1155W。安定時には550W以下になりました。
各計測地点の温度の推移はこの通り。デロンギ同様、消費電力が下がった後も、ちゃんと設定温度に向かって温度は上昇し続けました。
オイルヒーターのネガティブな部分 確かに大幅に改良されてました!
今回の両製品とも、空気を汚さないので、換気の必要もなく、エアコンのような乾きもなく、本当に快適でした。
さらに、暖房特有の顔がほてるような嫌な暖かさがないので、暖房がついていることに無意識になれたのは意外な発見でした。誤解を恐れずに言えば、「暖かくない暖かさ」という感じです。伝わりますかね?
他の部屋から入ってきた際にも暖房がついていることに気がつかないほど自然な空気が流れているような状態でした。
同じくテストしたパネルヒーター、オイルヒーター、グラファイトヒーターという他の輻射式暖房器具と比べても確かに優秀でした。
以下、他の輻射式暖房器具でのテスト結果です。パネルヒーターは近くでは確かにじわじわ暖かいんですが、(サーモグラフィーでは暖かくみえますが)部屋の各所でひんやりするところがありました。オイルヒーターは、第3のヒーターと比べると、やっぱり暖かくなるまでに時間がかかりました。グラファイトヒーターは、正面をとにかく暖めるという性質上、場所によって温度差が激しいという結果になりました。
ただし、寝室用としてはToo Much感も 6畳程度の広さならパネル式で十分です
特に、バルミューダのヒーターは、寝室での利用を推しています。確かに部屋の暖まり方は理想的ですが、寝室の広さによっては別の選択肢もアリです。今回、リビングでのテストと同様のテストを6畳の寝室でも行いました。
その結果を見ると、オイルヒーターとグラファイトについてはリビングと同じ傾向にあり、寝室でも第3のヒーターの方が優れてました。しかしながら、パネルヒーターは、第3のヒーターとほぼ同じような結果で、30分後の温度はむしろ上でした。しかも、パネルヒーターは価格がリーズナブルで、電気料金もオイルヒーターやグラファイトより安めとなると、6畳以下の寝室ではパネルヒーターも有力な候補です。
もちろん第3のヒーターも、寝室用として優秀ですが、正直、寝室だけで使うのはもったいない。しかも、バルミューダは本体自体が大きいので、6畳くらいの寝室では邪魔になる可能性も高いです。寝室用の暖房器具をお探しの方は、その辺もぜひ参考に!
イーグルジャパン
遠赤外線パネルヒーター ROSSO
実勢価格:1万7800円
第3のヒーターの電気料金は オイルヒーターのほぼ半額でした
最後に電気代です。今回のサーモグラフィーテストと同様の設定で8時間の電気料金を比べてみました。1日8時間、30日使用した料金を試算してみると……
1位 バルミューダ 約3990円/月
2位 デロンギ 約4020円/月
3位 パネルヒーター 約5910円/月
4位 グラファイトヒーター 約6120円/月
5位 オイルヒーター 約7350円/月
という結果に。第3のヒーターは効率的な運転をしている分、他の暖房よりも電気料金が安い結果になりました。
[結論]第3のヒーターは買い! ただし、寝室暖房ならパネルもアリ
以上のテストを行いましたが、結局、第3ヒーターは旧世代機の欠点を解消できたのでしょうか? 公式では5倍とも2倍とも謳っている「即暖性」については、今回の検証では2倍とはいかないものの確かに旧機種のオイルヒーターよりも即暖性が高いことが確認されました。
また、今回のテストでわかった第3のヒーター最大の特長は「頭の良さ」でしょう。計測後20分時点で、両者ともに消費電力がかなり下がり、そこからは最初よりも少ない電力で安定。消費電力が下がったタイミングと、暖かさを体感したタイミングがシンクロしている点も注目です。
確かに、私の実家(長野県)のような雪が多くて、真冬には廊下とリビングとキッチンに石油ストーブ&ファンヒーターを置いて、一日中フル稼働しているような環境(笑)では、だいぶ違った結果になると思いますが、都内のマンションや雪が少ない地方には適した暖房器具だと思います。見た目よし、性能よし、あとは価格。ココが納得できれば「買い」です。
第3のヒーターのポイントは暖房に対して「無意識」になれる「暖かくない暖かさ」です。もっと直接的な暖かさを求める人には、グラファイトヒーターや、それこそ石油ファンヒーターの方が断然オススメですが、顔がほてるような「暖かさ」がイヤという方はピッタリです。
一方で、寝室用でお探しなら、パネルヒーターもアリです。6畳程度の広さでは、第3のヒーターの性能はToo Much。本体価格を考えると、さほど効果が変わらないパネルヒーターでも十分という人は多いと思います。第3のヒーターは、そこそこの広さの部屋でこそ使いたい暖房器具だといえるでしょう。